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漢になる  作者: ありの大群
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プロローグ①

処女作です。とりあえず書いてみただけなので文の表記の仕方とか全然わかりません。賞賛だったりお褒めの言葉だったり(もちろんダメ出しもお願いします)様々な意見、お待ちしています。



 うっすらと浮かぶ赤ん坊の頃の記憶。ゆらゆらと揺らされながら、緩い睡魔に襲われながら、まるで語りかけるように聞かせられたお話しの記憶。


誰かが俺を抱きかかえながら、優しくあやしてくれている。おかげで睡魔はみるみると膨らんでいき、瞼は今にも閉じようとしている。そんな中、誰かが独り言のように呟き始めた。


「争いや戦いは決してなくなることは無い。そこに生きとし生ける者がいる限り。長い歴史の中でたくさんの、本当にたくさんの争い事があった。それにこれからも、争い事は決して絶えないだろう。例え争い事の果てに失うものしかなかったとしても。得るものなんて一切ないような戦いでも。ただ未来を信じて、ただ前だけ見つめて。皆、そうやって前に進んで行くんだ━━━」


「あうぅぅ」

もう少しで寝れるところを邪魔されたのがすごく不快で、小さな手を伸ばして話を遮ろうとしたことをわずかに覚えている。


「あぁ、ごめんごめん。邪魔しちゃったな? もう少しで終わるから、簡潔に終わらせるから」


「うぁぁうう」

睡魔が限界に達して伸ばしていた手がだらりと崩れていく。


「ようし、いい子だ。ええっとどこまで話したっけな・・・。まあ、とりあえず君は≪漢≫になってくれということだ。皆のために泣くことができ、皆のために怒ることができ、皆と共に笑うことができ、皆とともに戦うことができる。そんな素晴らしい漢になってくれ━━━」


漠然とした赤ん坊の頃の記憶の中で、何故かこのシーンだけが強く、強く鮮明に残っていた・・・。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「「「うぉぉぉおお!!」」」

「「「Gyaaaoooooo!!」」」

多数の叫びがひしめき合い、唸り、衝突する。

モンスターと人間の己が種族の将来を天秤にかけた歴戦の戦。


「絶対に倒してやる!」

「負けれるかよぉ!」

二つの信念がぶつかり合い、傷つけ合い、ぶつけ合う。

拳や剣、さらには魔法までを駆使して全身全霊、己の一存を賭けた、血湧き肉踊る戦い。


「計画どおり…」

「そんな、そんなぁぁあ!?」

互いの知恵を絞り合い、競い合い、高め合う。

武力を使わずに己の知識、知力を余す事なく出し切り合う白熱の頭脳戦。


「あんたねぇ! いい加減にしなさいよ!」

「ひぇぇ!お慈悲を、お慈悲を下さいぃ!」

かつて愛し合った事も忘れて、感情に任せてパートナーを攻撃する。

そんな毎朝の光景に馴染んでしまうような、戦い。(一方的な夫婦喧嘩ともいう)


一人の異性を得る為の愛憎まみえる戦い。

復習に駆られて相手を叩きのめすまで終わらない戦い。

時には他愛の無い痴話喧嘩………。


人間界のはるか上空、人間界を管理・監視する場所、天界。

そんな所で闘争、戦いの監視を担当している男神「アレス・ライト」は今日も人間界で起こる様々な戦いを観察、報告している。


「おんどりゃあぁぁぁ!!!」

「ひょえぇええ!!」


そして、今現在。

アレスはここ最近毎日行われている、お気に入りの夫婦喧嘩をスナック菓子を片手につまみながら、まるでテレビ鑑賞でもするように眺めていた。


「あはは、こいつらまた喧嘩してやがる!どうせまた奥さんが勝つに決まってるくせに」


どこか無機質さを感じ、薄暗く、なぜか湿り気を覚えた薄気味の悪い空間。

加えてその部屋にはお菓子の食べカスやら、何かが入っていたであろうダンボールなどのゴミが部屋中に広がっていた。その光景を見るだけで、この部屋の主がどれほどいい加減で、雑な性格をしているかが理解できる。そんな雑多に物が散乱した部屋の中に、ひと際目を引くものがあった。薄暗い部屋の壁の一面に大きく広がる液晶の画面。


そこには共に30代くらいの中年夫婦が映っていた。その二人とも、普通にしていれば美男美女の微笑ましい夫婦なのだろうが今は、なんとも状況が良くなかった。

奥さんの方は怒りにわなわなと震え、顔を真っ赤にして今にも夫に殴りかかりそうになっている。

夫の方はと言うと、息遣いは荒く、身体をガクガクと震わせている。視線に至ってはもうどこを見ているのか分からないほどである。なんかもういろいろな意味で可哀想であった。

アレスはそんな恐ろしくも、愉快?な夫婦喧嘩を彼の特等席とも言える仕事場から眺めていた。


「ん、奥さんのこの構えは?

出たぁああ!奥さん必殺の右フック!

よくこの夫の方も毎日果敢に挑むもんだよな。毎日殴られて、本当可哀想にな」


アレスは奥さんの豪快な一撃を頬に喰らい、それでも何故か笑顔で倒れている夫を見て笑っていた。

そんな時。映像を眺めているアレスの後ろで扉を開き、彼の名を呼ぶ声があった。


「おーい、アレス〜!」


その声に応えるように彼は映像から目をそらし、声のした方向へと顔を向ける。


「どうしたんだ、エルロンド?」


エルロンドと呼ばれた中性的でいかにも真面目そうな青年は部屋を一瞥すると、大きなため息を吐く。


「はぁ…君は少しは掃除でもしたら?こんな散らかった状態で、ちゃんと仕事ができるとは思えないんだけど。この前も勤務態度について色々言われてたじゃん…」


エルロンドはゴミや必要のなさそうな物で溢れかえり、数少なくなった足場を慎重に選びながら、アレスの元へと近づいていく。


「いやいや、別に仕事に影響は出ないから良いんだって」

「でも、今度また勤務態度が悪かったら《罰》を与えるぞ! とかも言われてたじゃん」

「俺は権力には屈しないぞおお!」

「………ハイハイ。頑張ってねえ」


青年は部屋の中に所狭しと置かれている雑貨や散らかし放題となっているゴミたちを見て、悪態をつく。


「流石にこの汚さは異常だって…。天界広しと言えどもゴキブリが出るのはこの部屋くらいだよ?」


「ちょっと待ってくれ。あの子達をそんなに悪く言うもんじゃないぞ? なんたって俺の食べ残しを処理してくれる優秀な掃除機達なんだからな」


アレスはまるで我が子を自慢するかのように彼ら(G)を自慢する。


「随分と斬新なゴキブリとの関係性だね?! まさかゴキブリに敬意を払うなんて……」


エルロンドはそんなアレスにあきれながらも手に着くところから、部屋の掃除を開始する。


「そんな事を言いながらも友人の仕事場を掃除してくれるお前は本当に良い奴だよなぁ…。あっ、そこの菓子を取ってくれ」


「君は友人を手伝う気も、礼をする気さえもないのかよ‼︎」


エルロンドは掃除をしながらも、怒りに任せて菓子の袋を投げつけた。


「いやぁ、怒りながらも取ってくれる心の広さ。今、俺の中での一番の彼女候補はお前だもん」

「うん、そろそろそ本気で怒るからな?」


エルロンドが語気を強めて言うと、流石のアレスも少しばかり反省したのか掃除を手伝う為に立ち上がる。


「それはそうと、どうしてまたお前は俺の仕事場に来たんだ?まさか悪態ついたり、掃除をしたり俺からの好感度を上げる為なんかじゃないんだろうし」


「誰が君なんかの好感度なんて上げようとするかよ…。バットエンドへ一直線だよ」


「べ、別にお前のことなんか気にしてなんかないんだからね!」

「……………………」


複雑な表情でしばらく膠着した後、はぁ…と深いため息をつくとエルロンドは持っていたゴミ袋を置いて話し始める。


「まぁでも、確かにそうだね。君の所に来たのは他でもない、上司のお使いだよ」

「お使い? と言うと誰かが俺を呼んでるとか、そんな感じの?」

「ああ、そうだよゼウス様直々のね。今すぐに大神殿の神長室に来いってさ」


アレスはゼウスという名を聞いて、愕然とすると共にうなだれた様子で尋ねる。


「まじか…あのジジイがかよ…。まさか説教垂れるとかじゃないだろうな?」


「その確率は高いだろうね。相当に怒られているご様子だったからね、早く向かった方が良いと思うよ?」

「そういうことは先に言ってくれない⁈ お前のそういう所、彼氏として俺は遺憾に思うよ?」

「あっ、すでに攻略済みなんだ⁉︎」


エルロンドのツッコミを無視しながらも、アレスはそそくさと出掛ける準備を始め出した。


「うーん。正直、気は向かないけど行ってくるか」


だぼっとしたタイプの軽く着られる服装に、起きたままの寝癖を軽く直した程度の髪形。


アレスは扉の前まで行くと、くるりと振り返る。

「戻ってくるまで掃除でもやっといてよ」

「君って僕の事をなんだと思ってる⁈」


エルロンドはゴミ袋を大振りで投げつけると、アレスはそれをひらりと躱し、近くの菓子を一掴み

すると部屋の扉に手をかけた。

「じゃあ、ちゃちゃっと行ってくる!」

アレスは扉を勢いよく開けると、口にお菓子を含み意気揚々と出掛けたのであった。





「恐らくちゃちゃっとでは済まないんだろうけどね…」




外の光が届き、明るくなった部屋に一人残されるエルロンド。

エルロンドは少しずつ遠くなっていく友人の背中を見ながら何か物寂しげな表情を浮かべ、誰にも聞こえないような小さくな小さな声でそう呟くと掃除を再開した。


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