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第9話 エドゥ鉱山内 3  - 騎馬戦 前編 -

『スタートだ!』


 眼帯の部下が持つ黒い旗は大きく振り下ろされた。ジャックはアクセルを踏み、4WDは唸りをあげ走り始める。同じくゴルグが乗るジープも部下が踏んだアクセルによって、タイヤが前進し始めていく。

 スピードが出始め、メーターの針は一気に60から70へと示されていく。乗車初体験のハスラーは少々、顔色を悪くし、後部座席のシートにしがみ付きながら絶叫している。

 緑色しているワニ顔が青色に変色しつつある状態。


「止めてくださいぃぃぃ!! いやだーー!」


 歯を食いしばりながらジャックはハンドルを切った。


「我慢してくれ! ハスラー」


 ジャックは闘技場のカーブを必死にハンドルを切って車を曲がらせる。ボスが乗るジープもエンジンの轟音を上げた。 2台の騎馬車は走る。

 騎馬車が発生させる砂煙が、闘技場で舞い上がっていく。

 現時点、2台の騎馬車は左右に並び、攻勢が変わってもおかしくない。先に仕掛けたのはゴルグ側だった。


『手始めにこれだ!』


 ジープに備わった機関銃をボスは持ち、照準をジャック達が乗っている車に向け、銃口を向ける。


「まずい……」


 ジャックはアクセルからブレーキを変えて踏み、ハンドルを切り、ジープから距離を取る。奴らが乗るジープが小さくなった。

 ゴルグは機関銃の引き金を引く。引いた事により、マガジンに込められていた弾丸が銃口から勢いよく微量な黄色い火炎を放ちながらジャックの車を襲う。

 ジャックは一度、ブレーキを強く踏み、機関銃の攻撃から避け、後退した。

 先頭を走るジープを見て、ジャックは後部のワニ顔に叫ぶ。


「ハスラー、後ろのボウガンをつかえ!」


「は、はい」


 ハスラーはボウガンを持ち、ゴルグのジープに向けて、弾を放ったが、当たらない。すでに彼らの車は、遠くに行き、姿が小さくなっていた。再び、ジャックはアクセルを踏み、車は再発進。ゴルグの後を追う。砂煙が立ち込め、前は見えない。

 エンジンの音だけが遠くで響いているのが分かる。走りながら視界を遮ろうとする砂煙をジャックは払った。

 弾丸をまともに受けてしまったのか、愛車からは少し白い煙を纏いだし始めている。


「ハスラー! 大丈夫か?」


「もうこんな乗り物なんか乗らないですよ! ごめんです!」


 ジャックは力強くアクセルを踏み、ボスが乗るジープを探すが見えない。


「くそ! 何処だっ!」


 愛車のエンジンから出される音とは違う轟音が後ろから接近しているのが理解できた。


「後ろだ!」


 青い顔になりながら、ハスラーはもう一度ボウガンを構え、後ろから接近しているジープに照準を合わせた。


「しっかり狙って撃てっ!」


「はい!」


 ハスラーは引き金を引き、ボウガン6発放った。

 1発は、ジープのヘッドライトに直撃。ボスは、ほくそ笑む。

 もう2発はフロントガラスを破るが途中で止まった。放った弾丸に勢いがあったがガラスに吸収され、引っかかってしまっている。後の弾丸は、ジープをそれてしまい、当たらなかった。


『撃ってきたか……残念だったな』


 ボスは機関銃台を回転させ、ジャック達がいる方向へ銃口を向けた。


『俺に挑んできた事が運のツキだったな……』


 再びボスは引き金を引く。余裕を持っているせいかあまり車には当てず地面に向けて撃ったり、闘技場の外装に撃ったりと、挑発していく。

 それでも何発か放たれた弾丸が、ジャックの4WDを襲う。ハスラーも後部座席のシートに身を潜め、頭が当たらない様に隠れる。


「うわわっ。これは危ない!!」


 ジャックもハンドルとアクセルを操作をしながら体を助手席のシートに身を当てる。

 機関銃の音が妙に頭にくる。


「くそっ!」


 弾丸は、車の車体をはじいたが、一発ジャックの左頬をかすめた事を痛みが示す。

 何とも言えない激痛がジャックの顔を襲い、左目を開けなくなってしまい、それまで踏んでいたアクセルから足が離れ、ブレーキに足がついていた。

 足は勢いよくブレーキを踏み、車は360度に何回もスリップしていき、車は止まった。ゴルグの乗るジープはそれを追い越していき、再び闘技場を駆け抜けていく。両手で痛みを抑えようともがいているが、しびれが左目で起き始めてきていた。

 ハスラーはジャックの異変に気づき、叫ぶ。


「大丈夫ですか!?」


 彼はハスラーの声に苦しそうに答えた。


「だ、大丈夫だ。や、や、奴らは今どの地点にいる?」

 


「えっ!? えーと!」


 戸惑っているハスラーにジャックは、両手で顔を抑えながら叫ぶ。


「ハスラー!!」


 ハスラーは背をピシっと正して、報告する。


「はい! ゴルグ達は、対角線上にいるかと……」


 闘技場は広い。ゴルグ達が乗っているジープの速さを考慮して数十秒の考える余地はあるらしい。

 ジャックは右頬から生える痛みを抑えながら、奴らに勝つ方法を考え始めた。


「奴らはスピードが出ているし、今のボウガンでは奴らのジープに勝つのは不利だ」


「じゃあどうするんですか? あと20秒ぐらいで奴らが来ますよ!」


 ジャックはワニ顔の男に告げる。


「ハスラー。車から降りろ」


「えっ?」


 再度、彼に告げた。


「車から降りろ」


「はい」


 ハスラーは車から降りる。降りた事を確認しジャックは、再びハンドルを持ち、エンジンをふかし始めていく。


「ここからは任せろ。大丈夫だ。すぐ戻る」


 彼を心配そうに見つめながらハスラーは叫んだ。


「ジャックさん!!」


 叫ばれた本人は今、その言葉が耳に響いても気づく事も視線をハスラーに向ける事もせず、左手でハンドルを構え、右手でシフトレバーを持つ。

 目線は真ん中。

 ジャックは深呼吸をした。


第9話です。ボスゴルグVSジャック&ハスラーの対戦です。後編に続きます。

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