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第7話 エドゥ鉱山内 1

第7話でございます。 話は続きます。


 炭鉱の入り口前まで2人は歩き、立ち止まった。太陽はちょうど真上に昇り、あたり一帯を光で差している。夜になるまでまだ時間はあった。

 中は真っ暗で、懐中電灯やライトの類がないと見えない状態だった。勿論、人もいない。

 ジャックは前もって作っていたフレア杉の松明に、火を灯す。


「ハスラー。これを」


「ありがとうございます!」


 ハスラーが松明を持ち、炭鉱内へ入る。

 先頭はハスラーその後ろをジャックがついて歩く。中は暗い。


「暗いな。炭鉱備え付けの松明はつかないか?」


 ハスラーは火がついている松明を使って、松明に火を灯そうとするが、風化してしまっているせいかつかない。


「つかないですね」


「仕方ないな」


 2人は、岩と砂利と石でできた洞穴みたいな所を歩きながら下っているのを確認し、どんどん奥へ進む。

 ある程度進んでいくと、大きな炭鉱作業場へと入った。どうやら、作業場の照明はまだ消えていないらしく、火が灯っている。


「あの奥から明かりがともされていますね?」


「行ってみよう」


「はい」


 2人は、奥の方へゆっくりと近づいていく。

 明かりは作業場の地面が崩れて、下から発生しているのが分かった。

 息を殺しながらゆっくり近づき、下の方に2人は目線を当てる。

 下には大きなホールみたいになっており、ゴルグの大群が集まっていた。


「あ、あれは……」


 ハスラーが指を指す。

 示した場所は砂利や岩石を入れる集積箱。そこには、冒険者や住人、商人から奪った金品や装備品が入れられており、その頂点に歯車が置かれていた。


「あれか……」


「みたいですね。どうしましょう。ざっと見て、100はいそうですね」


 すると下にある奥穴から眼帯をつけたゴルグが現れ、大群の真ん中に立つ。


「おい、あれが、ゴルグのボスか?」


「ちょっと隠れましょう」


 2人は、気付かれないように隠れる。眼帯をつけたゴルグは、部下のゴルグ達に告げる。


『聞け! 今、この手に、あの忌まわしい街の歯車がある。襲うなら今だ。昨日も仲間たちが八つ裂きにされた。やられたままでいいのか!? いいや! 良くない! 俺たちが奴らを襲い、死んでいった仲間の復讐をするのだ!』


 ゴルグ特有の鳴き声が、炭鉱内に響き渡った。2人は耳を両手で塞ぎ、音が聞こえないように頑張るがキツイ。

 奴らの鳴き声で、鼓膜への衝撃が半端ないのだ。ジャックはもちろんだが、ワニ顔のハスラーもきつそうにしていた。


「うわぁ……」


 ついはずみで、石ころがゴルグのいる下に向けて落ちていく。石は群れになっているゴルグの一体の頭にぶつかった。

 その途端で鳴き声は収まり、ゴルグ達の視線が2人に向けられる。


「……やばい」


 2人は状況が一変した事を察した。

 眼帯を掛けたゴルグが、叫ぶ。


『侵入者だ! 捕まえろ!!』


 ゴルグは、2人の姿をとらえて急いで上に上がろうと岩を昇ってくる。

 ジャックは、覚悟して、ゴルグのボスの付近に飛び降りる。

 飛び降りながら両腰のソードホルダーからソードを抜き出し、ゴルグのボスの首に向けて刃を突き刺そうとするが、ボスは素早く、後ろに下がり、背中に着けていたタガーを抜き出して、ジャックの剣から自分の身を守る。

 ハスラーも同じように、飛び降り、槍を駆使して、ゴルグ達を倒そうと格闘している。

 ボスは戦いながらジャックに訊く。


『何者だ……貴様ら!?』


 ゴルグのボスから出てくる声が必死そうであるが、ジャックも必死だった。


「ただの……観光客!」


 小さな体を駆使してジャックの死角から、脇へとタガーを突こうとするが、ジャックは右手の剣の刃でガードして、左手の剣でゴルグの頭に向けて、振り下ろす。

 奴もそれは予測済みだったらしく、後ろに下がって周りを取るが、ジャックの振り下ろした剣は、ゴルグが持つタガーをはじいた。弾かれたはずみでタガーは、宙を舞って、地面に落ちていく。

 ゴルグは取ろうとするが、ジャックは先に手を打ち、両手のソードをボスの首に交差させた状態で、突きつけた。


「そこまでにしようや。眼帯さんよ」


 お芝居で交渉人の役を演じた経験が今のジャックに活かされる。


「俺は、無駄な被害を出す事は嫌でね。交渉といかないかな?」


『断ると言ったら?』


「その後を知る必要が無くなる。分かるか? 殺し合いは好きじゃないんだ。だが、歯車を返してくれないとそうはいかなくなる」


 武器を持っていないボスは、笑い出した。ゴルグ特有の低めの声がジャックにとっては耳障り。


『はははは。貴様らがそんな事言っている間に、部下が囲んでいくぞ』


「何、やってるんですか!?」


 ハスラーは、槍で、ゴルグ達の腹を突いて動けないようにしている。

 ジャックは、ボスに告げた。


「部下が囲むのはいいさ。次第にお前を挟んでいる剣が次第に迫っていくだけさ」


 刃はめり込んでいく。

 ある程度めり込み、勝手に外れないようにした後で、襲いかかろうとしてくるゴルグをジャックはグロッグで対処する。

 まず飛び掛かってきた2体。

 自分が持つ拳銃で正確に歩けない様に足を狙った。炸裂音が響き、微かな硝煙の香りが、鼻にやってくる。

 ハスラーも、ゴルグの足に刃を差して、歩けない様に、攻撃していく。気づけば、ゴルグ達は2人の戦闘によって、気絶と負傷で戦闘に出れない状態となった。

 残るは何とか逃げようとしているが2つの刃に交差して挟まれ、岩壁につかまったゴルグのボスが足をじたばたさせている。


「さあ、どうする?」


『決闘をしろっ! そうすれば歯車を返してやるっ!』


 ジャックは少々、考えた後で答えを明確に示した。


「……決闘か。いいだろう」


 ハスラーはボスの要求に応じた事実に、驚きを隠せず戸惑っている。


「えっ? ちょっと、えっ!? 大丈夫なんですか。ジャックさん!?」


 ジャックは笑顔でハスラーに返した。


「分からない」


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