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第19話 依頼目標:ボルバス草

 次の朝、2人は早めに起きて、再び次の目的地となるカーラングへとむけて歩き始めた。カーラングまでの道のりは、地図によるとあと1つ山を越えた先にあるそうで、2人は気合を入れて足に力を入れている。


「カーラングについたらまずは宿屋だな」


「ええ、で、それが終わったらエシュピナの方に行かないと……」


 新しい単語がジャックに耳に入り、反応する。


「エシュピナ?」


 彼は、説明をする。


「旅人向けの依頼解決屋の事です。そこでは、それぞれの人達が色々な依頼を出して、僕たち旅人がその依頼を受けて、依頼を遂行して、報酬やフォンダをもらうんです」


「ほー。賞金稼ぎみたいなものか」


 ハスラーはバッグに手を入れて、依頼書の束を探す。


「まぁ、聞こえは悪いですけど、そんなもんです。何件か依頼を受けて完了していたので報告しに行こうかと……」


「でも、どんな依頼を受けてたんだ? 教えてくれ」


「いいですよ。あった。これが依頼書です」


 ハスラーはそう言いながら、依頼書の束を見つけ出して、ジャックに手渡す。

 紙紐でまとめて丸めて留められた6枚の依頼書。

 大きさは、B5ぐらいで色は普通の紙と同じだった。


「へぇ、フレア杉の花粉、1kg納品か」


「フレア杉は、重宝しますね。それのおかげでだいたい200フォンダもらえます」


「ふむ。色々あるもんだな」


 ジャックは依頼書の内容を見ながらそう呟いた。

 ハスラーはニコニコとした表情でジャックに熱い期待を示す目線を振りまく。


「ジャックさんも何か依頼を受けてもいいんじゃないですかね?」


 どこか熱い期待を感じたせいもあってかジャックもその依頼を請け負うことに対して反対は感じていなかった。


「それもいいな。考えてみるか」


「フォンダの他にも、宿屋の割引券とかもくれますし、奮発してくれる依頼は、武器丸々とかだってありますから」


「なるほどな」


「あ! あとこの山を越える前に、1つ依頼を済ませるんでした!」


「どんな?」


「ボルバス草を取り行かないといけません」


 ジャックは彼の言うボルバス草について、どういうものかを知らない為、簡単に思ってしまっている。


「草を取りに行くなら簡単じゃないか」


「これがボルバス草です」


 ハスラーはボルバス草のページにして、本を手渡す。

 ジャックはページに目向けた。



《ボルバス草。いわゆる動物食い草。近くの木々に根とつるを張って寄生し、栄養分を吸い取る。草の葉は有毒で、危険。花びらには酸性の液体が仕込まれている為手で採取するのは危険。採取する際は、道具で、根を刈り取る事。それによって、ボルバス草は動かなくなり、花の酸性液が出ることなく採取が容易になる。

 見つける方法は寄生している木を見つける事が重要。寄生された木は赤黒く変色を見せ、枯れ始めるからそういった木を見つけた場合は、気を付ける事。


また、方法によっては漢方および食用が可能。


              著:ベーター・フランクリン》


 ボルバス草のイラストはいかにもよくある人喰い草の容姿を捉えられており、文章と絵を見て、ジャックはハスラーに言った。


「前言撤回」


 彼は本を閉じて、ハスラーに返す。


「今のところボルバス草は見当たりませんから、もう1つの山にいる可能性が高いでしょうね」


 ジャックはため息をついて、背中に重くのしかかる不安をほどこうとするが、あまりほどかなかった。

 不安がまだよぎっている。


「大丈夫ですか?」


 ハスラーはジャックに声をかけると、彼はしんどそうな表情をわざとして告げる。


「こいつに会わない事を願いたいもんだよ」


 2人は、そうこうしているうちに、カーラングへ向かう為に登らなくてはいけない山へと着き、ボルバス草の探索が始まった。

 まずはボルバス草が寄生している木々を2人は探し始める。

 ハスラーが持っていた本によると、ボルバス草が寄生している木は、幹の色が茶色から赤黒くなって、枯れ始めている事。

 2人は目を凝らして、木々たちを見つめながら山を登る。

 今のところ、道が険しい事もなく、登る事ができ、登り始めてから1時間が経とうとしてる。


「見つからないですねぇ」


「だな……」


「この依頼はあきらめるしかないのかな……」


「どうだろうな……おい。あれ」


「えっ?」


 2人の目線の先には、他の木とは違って幹の色が赤黒く、変色している木があった。

 ハスラーは、ジャックにじっと左人差し指を口元に当てて、合図し、ゆっくりと変色した木に近づ木ながら背中にしまった槍を取り出し、ボルバス草の気配を確認する。

 本の説明では気を付けなければ、自分も毒の餌食えじきになる。ハスラーは、足場が悪い獣道を足の筋力で、バランスを保ちながら、近づいていく。

 木の幹まで2メートル。

 少しだが、幹にへばりついている蔓がよく見える。ハスラーは回り込み、蔓の本体を探す。

 回り込むと、そこに本体はいた。


「これは……」

 

 ジャックはちょっと離れたポイントで彼らの動向をうかがっているが、何が起きても良いようにグロッグ抜き、様子をうかがっている。

 ゆっくりとハスラーは槍の刃をボルバスの根と木の寄生部分に力強く抉る様に突き刺した。

 悲鳴はなく静かに風が流れている。蔓がゆっくりと山の地面に崩れ落ちる。彼は槍の持ち手を持ったまま動かず、今度は、ボルバスの花の部分に刃を突き刺した。

 完全にボルバス草が息絶えた事を確実にするため。

 花の部分から流れる酸性液が完全に流れ落ちているのが、刺した刃から発生している白い煙で判断した。


「ジャックさん。来てください。ボルバス草です!」


「やったのか?」


 ジャックは近づき、木の周りをよく見るとつるは地面に落ち、ボルバスの葉も地面に落ちている綺麗な緑色が見えた。


「これで依頼完了ですね」


 ハスラーはバッグから依頼書を取り出し紙面を確認する。

 すると、紙面からあぶりだして、【完了】という意味の文字が現れた。


「これで良し」


「これで終わりか!?」


「ええ。手伝ってもらえます? この木箱の中に、ボルバス草を入れるの……」

 

 ハスラーは依頼書をしまって、今度は小さな木箱を取り出した。


「ああ」


 ジャックは言われた通り蔓をゆっくりとハスラーの指示通りに触っていき、危険な部位に触れないよう慎重に草を箱へと詰めていく。

 作業をしながら本の説明もあまりあてにならないなと改めて感じたジャックだった。


第19話です。 話は続きます!

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