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第18話 次の街まで

 ジャックとハスラーは領地に入り、歩き続けた。地図によると次の街まではもう少しだが、実際の距離から考えると今日のでその町にたどり着くのは難しいとジャックとハスラーは判断し、近くの安全な場所で野宿する事にした。

 近くの木を倒し、薪を作る。フレア杉の粉を振りまき、火打石で、火花を発生させる。火花がフレア杉の粉を振りまかれた薪に落ち、勢いよく薪が燃え始めた。

 細長い木の棒で、薪をより燃えやすいようにする。


「おお、この粉優秀だな」


「僕達みたいな旅人や流浪の民には、フレア杉は重要ですよ。火を起こすのに、最適ですからね。さて、ご飯にしましょう」


 バッグから木製の箱を取出し、ハスラーは封を開く。

 箱にはベルマンの宿屋店主グレンから作ってもらったロブサンドとロブのチップ、ジャックの世界で言うレタスの様なベルマンタスとチャック鳥のささみチキンが入ったチキンサラダが入っていた。


「はい。ジャックさん」


「ありがとうな」


 手渡されたロブサンドをゆっくりと口にほおばる。

 エビの食感に、野菜の様な葉と、グレン特製のドレッシングがバンズといい調和を起こす。


「やはり、グレンさんのロブサンドは美味しいな」


 ジャックはそう言いながら、サンドをゆっくりと味わう。


「ええ。チキンサラダも美味しいですよ」


 ハスラーはフォークに刺したベルマンタスとチキンを口に入れて味わう。

 ジャックは木製の皿の上に食べかけのサンドを置いた。


「次の街はどんなところなんだ?」


 ハスラーはサラダの味を実感しながら彼に告げる。


「……えっと。次は占い街と呼ばれているカーラングですね」


 ジャックにはあまり聞きなれない言葉が耳をよぎった。


「占い街?」


「ええ。占いで生活を養っているポンヤ族の街です」


 ハスラーはそう返答して、彼に一冊の本と地図をカバンから取り出して彼に見せる。

 ジャックは本のページとページの間にしおり代わりで挟まれている地図を取り出し、そのページを目にすると、そこには、ポンヤ族の事について記載されていた。

 ポンヤ族の絵も描かれている。

 外見は、狸に近く、身長はそんなに高くない。肌には動物特有の毛並みでこげ茶色で2足歩行の種族。ポンヤ族の大半がローブをつけている。

 ジャックは、本の説明を黙読し始めた。



《ポンヤ族の特徴として主にあげられるのは占い。ローブの色を付けている。現在判明している色の数はおよそ15種類。ローブの色によってどのような占いをするのかも決まる。

 また、ポンヤ族は他動物の変装も得意であり、ポンヤ族の子供が行う悪戯には注意が必要。

              

             著 ベーター・フランクリン≫


 本を閉じて次は、地図を見ると、2人がいる位置とカーラングの位置が黒い丸印で表示されている。

 どうやらカーラングはもう少しのところらしい。


「なるほどね」


 ジャックは本を閉じて、地図と一緒に彼に返した。


「ところで、ハスラーの種族って聞いてなかったな」


 ハスラーは水筒に入った水を口に流し、ある程度体内を落ち着かせてから反応した。


「……あっ、そうでしたっけね?」


 ジャックは皿に置いていたロブサンドの食べかけを手に取りほおばり始める。


「……聞いてみたいね」


「そうですね。じゃあ何処から話そうかなぁ……そうだ。僕はいわゆるクロックス族です」


 ハスラーの話すことにジャックは興味津々で聞いている。


「クロックス?」


「クロックス族のほとんどは旅芸人や行商人として栄えてました。僕の両親も行商をしながら地図を作っていたんです」


「そうなんだな……」


 ハスラーはフォークでサラダの残りを刺して口に入れる。


「ええ。だけど、小さい時に、両親を亡くして、拾われたんです。ブラウンさんに……」


「ブラウン?」


 ジャックにとってはあの世界ではよくある名前だからどこか親近感を感じていた。


「あ、言ってなかったですね。映写機を持っていた方の名です。名はエド・ブラウン。その人が言うには、別の世界から来られてこの映写機を使って仕事をされていたそうなんです」


 彼の言う言葉を耳にしたジャックは、軽くつぶやく。


「俺がいた世界でか……。映写技師か」


 ハスラーは続けた。


「その世界がどんな物かは、あまり教えてくれませんでしたがね。でも、演劇やその映写機とフィルムについて教えてくれたんです。僕が探しているフィルムがどんなものかは分からないんですが、中身を知りたい」


 彼の話を親身になってジャックは聞いている


「それに、あの人が必死に守って僕に託してくれたんです。なおさら見つけないと、ブラウンさんに示しが立ちませんよ」


「だな」


「……今考えれば、ジャックさんがいなければこういう旅も実現できなかったんでしょうね」


「何をいきなり?」


 ハスラーの顔が前に近づいてきた。

 ワニ顔となると若干、恐怖感がある。


「だって、あの森であなたと出会わなかったら、今頃僕は……」


 ジャックは彼を落ち着かせようと努力した。


「分かった。分かったから……でも、俺もお前がいないとさこの領地に入れなかったかもしれないからさ。感謝しているよ。ありがとう」


 彼はジャックの言葉を聞いて照れ、少し、顔をそらした。


「いえいえ。こちらこそです。あ、そうだ! ジャックさんの世界の事教えてほしいです。ブラウンさんと同じ種族だと思いますし」


 ハスラーの質問についてジャックは、困惑し、頭を掻いた。


「そうなのか……? まぁいいや。俺の世界か……」


「難しいなら少しだけでもいいですよ」


「そうだなぁ。お前の世界とほとんど同じもんかな。どこかで勢力が争って、金持ちは知らんぷり。流浪の民族もいれば、貧富の差を持った俺と同じ種族が自由に生活しているそんなものだよ。俺はあっちの世界で演劇をやってた。それも自由だからさ。でも幸せだった。演じることが俺にとって全てだったからな」


 『ハスラーがいる世界とほとんど同じ』という答えが返ってきて、ハスラーは自分で質問しておきながら少し微妙な反応をした。


「な……なるほど。どの世界も同じもんなのですねぇ」


「そんなものさ。世界っていうもんは……ごちそうさん」


 ジャックはロブサンドを食べ終え、紙の包みで口を拭った。


第18話です。話は続きます。

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