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第17話 守衛巨人ウオール 3  神経衰弱 後編




 ハスラーは心臓の鼓動が早くなっているのと、自分の腕が微量の振動を起こしているのを感じ取りながらカードを選んでいる。

 もし失敗すれば、ジャックと自分が負ける確率がより高まってくるからだ。

 緊張の一瞬が近づいてくる。ハスラー自身、選ぶカードが、覚えている限り、ペアが揃うきっかけの絵柄であってほしいと願っていた。


「どれにするべきか? うーん。迷いますね」


 ジャックは隣でハスラーが負けない様に応援する。


「大丈夫さ。お前ならいける!」


 だが、ハスラーは眉間にしわを寄せて少し、ふてくさった態度で返す。


「大事な場面で変わるんだから、ずるいですよ。ジャックさん」


 ハスラーの言葉を聞いてもジャックの口から出た言葉は変わる事がなかった。


「大丈夫だ」


 ジャックの言葉にハスラーは少し怒った。


「何処が大丈夫なんですか!? 緊張してるんですからね! 下手したら通れず、フォンダ払えないまま迂回するかもしれないんですから」


 ウオールは2人のやり取りを見て大きな笑い声を付近の地に響かせている。


「はっーはっはー。時間はまだたっぷりあるからゆっくりやってもいいよー」


「あ、ごめんなさいね」


 ハスラーはカードを選び始めるが、まだ開かれていないカードの数が多く、外れる確率が高い。

 より慎重に選ばなければ、カードのペアが揃うのも危うくなる。彼の指がゆっくりと切り株のテーブルの真ん中に向けて動いていく。真ん中にあるカードは9枚。

 ハスラーはカードの真上で手を止めて、考える。


「どれにしますかね」


 カードに目を配りながら彼は、相手の巨人を分析する。


 

【ウオール……笑顔を振りまく優しき巨人。だが、神経衰弱となるとそれすらが恐ろしく感じてきますね。内を考えているのかも良く分からない】



 次はカードを見つめていく。



【カードのうち自分が覚えているのは数枚。ウオールがおそらく次でペアを揃えるのは難しいでしょう。だけど、自分も2つペアを揃えないといけませんし、この現状で揃えるには難しい状態ですね。ならばどうしましょう? ……】




 ハスラーはある決断をした。



「よし! 決めましたよ!」


「おお、きめたのねー」


 2人のプレイを隣でジャックは見ている。


「これにします!」


 ハスラーは勢いよく全く開かれていなかったカードを2つ選び、裏面から表面へ返す。

 彼の行動を見たジャックは軽く驚く。


「お、おい!」


 表面に返されたカードは綺麗な絵柄を表した。1つは、ハートのエース。もう1つは、クローバーの10。


「あらー。残念だったねー。じゃあ、次は僕の番だねー」


 ウオールは背伸びをし、軽い欠伸あくびを2人に見せながら、しまっていた棒を取り出して再び、カードを取り始める為に、考え始めた。

 巨人がどのカードを選ぶか考えている間に、ジャックはハスラーに小声で耳打ちする。


「おいおい。大丈夫なのか?」


 彼の言葉に対して、ハスラーの表情は変わる事なく冷静に、答えた。


「ハイリスクですが、逆によりペアを揃いやすくしておけば、後々、僕らにも有利なってくるかと……」


 ハスラーの言葉を受けて、ジャックは少し眉間のしわを寄せ、少し怪訝そうにしている。

 自分が交代した事が功を奏すのか、はたまた痛手を負うのか、心配になってきたが、ハスラーには頷くぐらいで身を委ねる事にした。


「そうか……。お前に任せるよ」


「あー。外れた―」


 そうしている間にウオールは決めてカードを2枚、開いていたらしく、ジャックとハスラーはカードの方に目線を向ける。

 カードの絵柄は、ダイヤの4とクローバーのKだった。


「あらあら、はずしたか」


 カードを元の裏面へ戻して、ウオールは溜め息をついた。


「くそー。うー。揃うと思っていたのになー」


「残念でした。僕のターンですね」


 ハスラーはそう返して、カードを選び始める今度もあまり開かれていない方へ。でも今回は自信があった。


「これにします!」


 ハスラーの決断は早い。

 彼は自分の左端付近からカードを選び、裏面から表面に返した。表面があらわになり、絵柄が見える。そのカードの絵柄はクローバーのエース

 ジャックは見た事のある絵柄に反応する。


「これは……」


 ハスラーは少し、自信ありげな表情でジャックを見た。


「クローバーのエース。だとすれば……」


 ウオールはその絵柄を見て、両頬にそれぞれ手を押さえる。


「あー。しまったー!?」


 その言葉を聞く事なく、先ほど自分で開いたハートのAのカードを手に取り、開いた。

 2つ目のペアカードをゲット。これにより不利な条件から一時的にジャックとハスラーの2人に、有利な条件となっている。


「2つ目です! 並びました!」


 ウオールは、足をばたつかせて、悔しがっている。ばたついた足が3人のいる領地の周りに震動を起こした。


「うおおお!! 揺らすな! イテッ」


 ジャックは揺れに耐えきる事ができず、腰かけていた切り株から地面へ尻もちをつく。


「うおおおおおお!! いやだーーー。このままだと負けちゃうーーー!」


 巨人は赤ちゃんの様に悔しそうにじたばたする。そのじたばたによる振動によって領地や近くの木々を揺らした。

そんな現状に対してハスラー1人だけ動じる事もなく、揺れながらカードを選ぶ。

 彼の手は速かった。もうどのカードを引くかは決めていたから。

 ハスラーは揺れるテーブルから手に取るカードを守るために素早く動いた。それと同時に、巨人の振動で切り株のテーブルが壊れて、カードが衝撃により宙に浮く。


「あっ、カードがっ!?」


「させません! これです!」


 ハスラーは、カードを選び、絵柄を裏面から表面に変え、2人に見せる。

 カードの絵柄は、ハートのクイーンとクローバーのクイーン


「僕たちの勝ちです!!」


 ハスラーの引きの強さを見たジャックは、喜んだ。


「勝った!」


 旅人達の勝利。


「ぎゃーーーーーー!?」


 ゲームの負けを知り、ウオールの振動は止まり、大声で叫び始め、体が後ろに倒れる。大きな衝撃音がジャックとハスラーを襲った。

 巨人は目を回して気絶している。


「おい! 大丈夫か!?」


「気絶していますね……」


 数分待ってみるが、巨人は反応する事無く、気絶したままだった。

 しびれを切らしたジャックはぼそっと口から呟く。


「……通るか……」


「はい。行きましょう」


 ハスラーは揃ったカード3つを切り株のテーブルに置いて、残りのカードを片付けておく。揃ったペア3つの上に置き石を置いた。


「通らせてもらいますね」


 小声でハスラーはウオールに言って、置いていた鞄を背負う。

 ハスラーの声はウオールに届いておらず、巨人は気絶したままで目をぐるぐる回している様だった。


「聞こえてないだろうよ。やめとけって」


「はい……」


 ジャックは、巨人が気絶しているのを確認して、バッグを背負い立ち上がった。

 2人は歩き始め、領地へと再び足を踏み入れる。


第17話です 話は続きます。

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