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第14話 守衛巨人ウオール 1

 2人の旅人は南を歩き続けていく。森を越えて、今は山の峠に入った。道は、あまり舗装されていないせいか落ち葉や木の枝、砂利や岩、大小問わずに落ちている。これが道なのかとジャックは少し不安に感じながらも足を進めていく。その隣でハスラーは元気に歩いていく。

 ジャックに出会う前は1人で歩いていたのだろう。楽しそうに横を歩いている。


 


 旅は道づれ……。




 そう感じながら2人は険しい山道を歩く。ちょっとしてから、ジャックは歩きながらハスラーに呟いた。


「なぁ」


「はい?」


「本当にこの道なのか?」


 ハスラーは依然、足場の悪い所でも平気だったらしく、苦しそうな表情もせず、地図の端を見ながら歩いていく。


「ええ。地図ではそう書いてますし、ほら、共和国の看板が見えてきましたよ」


 あまり聞いたことない地図上の名前にジャックは反応した。


「共和国?」


「ええ。……まさかそれもご存じない!?」


 ジャックは申し訳ない気分になる。


「すまないな」


 ハスラーは、コンパクトに畳み掛けようとしていた地図をもう一度大きく広げた。


「説明しましょう。現在、僕たちがいる大陸は、1つの国が統治しています。それがこのクラウド共和国。だけど最近は、共和国に対して敵対している勢力が出てきたんです。それがガルマという帝国です」


 とっさに自分のいた世界の用語でジャックは簡単に例えてみる。


「なるほど、世界史で学んだぞ。ドイツみたいなものか?」


 勿論、ジャックのいた世界の言葉なぞ、ハスラーに分かるわけはなく、怪訝そうになりながらも答えた。


「なんですかそれ? まぁ、おそらくそんなところでしょう。で、これが国旗です」

 

 ハスラーはそう言って、バッグから1冊の小さな手帳を取り出して、ページを開く。開いたページには、共和国の国旗とイラスト、現在の国家元首のイラストが描かれている。

 ジャックはふと彼に訊いた。


「でも、ベルマンでは、そんな国旗は見た事がないぞ」


 ハスラーは淡々と答える。


「当然です。あの地はどの勢力にもどの国にも属さない中立地ですから……」


 中立地の意味をジャックはすぐに理解した。


「なるほどね……スイスか……」


「?」


 2人は目前の看板を立ち止まって見つめる。



《ようこそ! 共和国クラウド領地へ! 迷宮街まで後25レイル》


 領地内の境界線はどうやらない。境界線を守る兵士もいない。


「誰もいないな」


「いないですね。大抵は兵士がいるはずなんですけどね。あれ? おかしいな」


 自分がいた世界での国境は必ず入国ビザがいる。だが、この境界線内いるのは、ジャックとハスラーだけ。今この状況でジャックが思ったのは国境に対するカルチャーギャップというのがふさわしい。


「ここが共和国クラウドの領地に入るわけだな」


 ますます現実とは違う世界にいる事をジャックの脳に強調してくる。


「ええ。足を踏み入れましょう」


 2人は共和国の中へと足を踏み入れた。するとその瞬間、目の前から大きく野太い声が2人の前にこだまして響きだした。


『やぁやぁーー。クラウドへようこそー!」


 いきなりの声に、2人は何が起きたのかわからない。


『ここへ入るには、お1人ー、300フォンダだよー』


「なんだ?」


 声のする方を見ると4メートルぐらいの大きな巨人がゆっくりと重く響く足音を発生させながら一歩一歩近づいてくる。横は壁の様に太く、とても頑丈そうな体格をしている。

 ハスラーは思い出した。


「ああ、この国境は、ウオールが守っているんですね」


「ウオール?」


 ハスラーはもう一冊の本を取り出してページを開く。

 そこにはウオールのイラストと説明が書かれたページ。ジャックはそれを黙読し始めた。

 


《 ウオール 4メートルの巨人。顔は中央によりつつあり、非常に心優しい。賭けとお菓子甘い物が非常に好きで、旅人によく近づいてくる。 現在は共和国の領地付近で領地衛兵として、目撃されている

         

            

                     著:ベーター・フランクリン 》



「なるほど理解したよ」


 本を閉じて、ハスラーに返す。

 ウオールは2人に優しく笑顔で対応する。


『300フォンダ、持ってるならここを通すよー』


 ハスラーはバッグの中を確認するが、中の手持ちは250フォンダ。ジャックの手持ちも200フォンダぐらいしかもっていなかった。


「持っていないな」


 ハスラーはもう一回バッグの中を隅々まで探すが、250フォンダそれぐらいしかなかった。


「困りましたね」


 ウオールは少し、残念そうな表情でいる。


『ならば通すことはできないねー。でもー』


 ジャックはその言葉の続きを訊いた。


「でも?」


 残念そうな表情から少し、笑ったような表情で巨人は告げる。


『勝負して、勝てば通してあげるよー。負ければ、通さないよー』


 ハスラーは、腕を組み考えた。ジャックもその隣で同じしぐさをしながら考えている。


「勝負?」


 巨人は体を揺らしながら、2人に提案を投げた。


『うんー。僕と勝負しようよー 勝てば、ここをただで通してあげるよー どうするー?』


 ジャックとハスラーは彼が言う事に戸惑っていた。

 勝負? まさかこの場で勝負するとは2人は考えてもいなかったからである。


「勝負ですか」


「どんな勝負なんだ?」


 ジャックの質問にたいしてウオールは、表情を変えず優しいまま答える。

 それが若干、ジャックにとって不安でしかない。


『うーん。カードだねー。ある奴から、これをもらったんだー』


 ウオールは、大きな手の中にあるものを2人に見せた。その中にあるカードはジャックには見覚えがある。


 それは、クローバー、スペード、ダイヤ、ハートの形をそれぞれ表示されたカード52枚。


 カードを見たジャックはどこか懐かしさと共にこの巨人がどうしてこれを持っている理由についても、疑問に感じていた。


「トランプだな」


 ハスラーはこのカードがどんな物か全く知らなかった。


「トランプ?」


 巨人は、楽しそうに告げた。


『それで、勝負しようよー。そうだなー。神経衰弱で勝負だー!』


「神経衰弱!?」


 ジャックは4メートル巨体の喜んでいる表情に少し不安を感じていた。


第14話です。話は続きます!

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