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第13話 旅立ち ~ 時計塔の街 ベルマン  終 ~

 お祭り騒ぎが終わって、ある程度、平穏なベルマンに戻った。ジャックとハスラーは、次の場所へ向かう為、旅の準備をし始める。


 準備をしている中の部屋で、バリーが2人に訊いた。

 

「どうしても行ってしまうのか?」


 グレンは少し、残念そうな表情をしている。


「君達にはぜひともこの街にいてほしいんだが……」


 バリーとグレンの親子は2人の旅人に訊いた。

 だが、2人の答えは変わらなかった。


「俺達はある物を探しているんだ。それを見つける為に旅立たないといけない」


 2日酔いが出て頭痛を我慢しながら準備しているハスラーも答える。


「いずれまた戻ってきます。ここのフレータ酒とロブサンドを食べに」


 グレンはその言葉を聞いて、少し安心する。


「ああ、必ず来いよ。待っているからな。あ、旅立つ前にちょっと待っててくれないか?」

 

 彼はそう行って、自分の部屋へ向かって行った。ジャックとハスラーは、荷造りを終えて、グレンの言葉を聞いて待つことにした。

 その間にバリーはジャックにある事を訊く。


「そういや探している物って……?」


「ああ、俺達が探しているのは……」


 ハスラーはバッグから一台の映写機を取り出して、バリーに見せる。


「僕達はこの映写機のフィルムを探しているんです」


 青年は自分が歩んできた人生の中で初めて目にする新しい物に興味を持った。


「それ、見せてくれないか?」


「ええ、どうぞ」


 映写機を手渡され、青年は少年の心に戻った。初めて手に触れる物。ボタンを押すとからから音が鳴る。


「動いた!」


 バリーの反応は共通だったらしく、ハスラーもその反応が正解と言わんばかりの表情でいる。


「でしょ? 僕も最初は、驚きましたよ」


 ハスラーに手渡されたこの世界にはない物を触った青年は興味津々。自分の目でしっかり確認する。


「これは面白い。珍しい物を持っているんだね。だけどフィルムっていう物は知らないやごめん。でも父さんなら知っているかも」


 映写機をハスラーに返し、バリーはそう返答する。


「そうですか。ありがとうございます」


 彼は青年の手から返ってきた映写機を再びバッグの中へ戻す。


 そうやり取りをしているとグレンは自分の部屋から戻ってきた。手には、布のような物が2つ。


「2人にこれを渡したくてな」


 その布の絵柄は大きな牙と骸骨の歯並びがイラストされたマスクとバンダナだった。


「ベムーの民は勇敢な者、家族と認めた者にこれを渡すんだ。もし使うタイミングがあったら使ってやってくれ」


 なかなか良いイラストにジャックは気に入り、さっそく口と鼻をマスクで覆ってみる。


「おお! なかなか似合っているぞ」


 ジャックは鏡でその姿を見つめて喜んだ。

 息苦しさはあまりない。


「いいじゃないか。悪くない。ありがとう」


「格好いいですね!! じゃあ私も。このバンダナをいただきます」


 ハスラーはバンダナを手に取りつけてみる。ジャックにとってその姿は、どこか自分がいた世界のアニメかゲームに出てきそうな海賊だった。


「なかなか似合っているぞ」


 ジャックは少し笑いながら反応する。


「そうですかね? おお! いいですね」


 鏡に映るハスラーはまさに海賊の一味みたいな姿になっているが本人は相当、気に入っている。


 2人の姿をグレンは満足そうにうんうんと首で反応しながら腕組みしていた。


「2人とも似合っているじゃないか。何かに役に立てるといいが。使ってくれ」


 マスクを下にはずしてジャックは礼を言った。


「勿論だ。ありがとうな。グレンの旦那」


「良いって事さ」


 ハスラーはバッグから本を取り出して、グレンに映写機とそレに連結させて使うフィルムのイラストが載ったページを見せる。


「あっ、そうだ。旅立つ前に。僕達、この映写機に合ったフィルムを探しているんです。こういう物なんですけど」


 ハスラーの本を手に取り、よく目を凝らして読んでみた。。


「ふむ。これが、君らが探している物か」


「フィルムっていう物がこれ。映写機は、今このバックの中にあるんですけどね」


「俺とハスラーは、このフィルムを探しているんだ」


「そうか。うむー。こういったものは知らないな」


 だが、ハスラーが期待している答えではなかった。


「そうですか……」


 グレンは、本を閉じてハスラーに返した。


「力になれなくてすまない。ただ、ジャック、あんたと同じ種族とそっくりな奴で、その絵とよく似た物を持っている奴を知っているよ。ただその奴は、フィルムという名前は言わなかったがな」


 ジャックは、彼の口から出た言葉に大きく反応した。


「本当か!?」


 グレンは太い首を縦に振って答える。


「ああ、1.2か月前に宿泊しに来てな。そいつはこの街の南に向けて行ったからもしかしたら追えば、会えるかもしれんぞ」


 ハスラーは拳を握りしめて、自分に気合を入れた。


「よし! そうと決まれば、さっそく出発ですね」


「ああ」


 2人の旅人は、バッグを背負って宿屋を後にする。お別れの時が近づいた。

 グレンとバリーは2人をベルマンの出入り口の門まで見送る。


「俺達、ベムーの民はいつまでも君らの味方だ。幸運を……」


 バリーも同じ言葉を追って繰り返した。

 

「幸運を……」


 見送りをしてくれた親子に向けてジャックは礼を告げる。


「ああ、ありがとう」


 ハスラーも返した。


「ありがとうございます。では、行ってきます」


 2人の旅人はベルマンに背を向けて、歩き始めていく。


「気をつけてな!」


 そうグレンが返すと、2人の旅人は踵を返す事無くジャックが手を振って反応する。

 旅人の背が小さくなっていく。遠くなっていくベルマンから大きな金属を叩いた鈍い音が2人の耳に響いた。

 それは時計塔の鐘が2人を見送る様に鳴り響いている。

 ジャックとハスラーはそれを受けながら次の街に向けて南の方角を歩き始めていった。



 

 彼らの探す旅はまだ始まったばかり……



       

13話です。


時計塔の街 ベルマン編終了です。 2人は南に向けて、歩き始めました。2人は今後、どうなっていくのか!?


第14話をお楽しみに!

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