幕間 徹の過去 後編
はぁ、バイブルは学園モノの小説は書いては駄目だと感じた幕間でした。お見苦しいかとは思いますが後篇スタートです。
俺達はこのままで帰るのは無理と判断して水で洗い流し垂れない程度に絞ると気持ち悪かったが着ると教室に置きぱなしになってる体操服に着替えて帰る事にした。7月に入って暑くなってきてる時期で捜してる時はウンザリしたが今は感謝した。
「しかしよ、どうして徹を陥れようとしたんだ?」
先生から貰ったビニール袋に制服を入れたバックの取っ手を頭に引っかけながら歩く坊主頭を見てよく滑り落ちないなっと思いながら聞いていた。
「さあな、確かに何度か喧嘩したがお互い関わり合いを避けたところがあったから特に接点がないんだがな」
お互い誰とは言ってないが通じ合っている。俺達が佐藤のペンダントを盗んでいないし、勿論、俺は投げ込んでない。となると矛盾な証言をしている人物が怪しいと言う事になる。つまり、加賀山が犯人筆頭と言う事になるのは自明だ。
だが、普段のアイツを見てるとおそらくは実行犯ではないだろう。取り巻きに命令してやらせたというのがきっと事実と俺達は見ている。
しかし、どうしてっとなると単純にイジメの対象として俺がターゲットになったのかなってぐらいしか思いつかないがスッキリしない。それだけで納得するのは危険だと俺のカンが訴えていた。
「とりあえず、佐藤のペンダントは見つかったんだ、今はこれで良しとしようや」
隆の肩を叩き、帰り道を歩く。しかし、俺達は失念していた。先の話よりすぐ目の前に現れる鬼と戦いが待っているという事を・・・
俺達は各自、家に帰ると制服をドロドロにしただけではなく考えもなしに適当に洗った学生服を母親に見られ、説教を受ける事になったのである。
「制服は高いのよ!」
多分、結局はそこに行きつくと次の日、隆と語り合ったのは言うまでもない話であった。
次の日、教室に入ると隆が寄ってくる。
「さあ、胸を張って返しに行こうぜ!」
別に胸を張るような事じゃないだろうと苦笑しながら、とりあえず頷く。
俺は佐藤達がいる席のところまで行くが相手に警戒されているのを見て分かっていた事ではあるが、それなりにショックだなって思いつつも顔に出さない努力をして進み出る。
俺はポケットからハンカチを取り出し、佐藤の前で開いて見せる。
「佐藤、お前のペンダントはこれで間違いないか?」
「え、そ、そうだけど、どうしたの?まさかドブ池に入って捜して来てくれたの?」
俺は曖昧に笑い、ハンカチの上にあるペンダントを佐藤に差し出す。
「巻き込んで悪かったな」
後ろを振り返ると加賀山が取り巻きを連れて俺を囲おうとしていた。俺は真っ先に佐藤に離れるように言うと俺は逆に前に出た。
「話がある、着いてこい」
命令口調でイラっとこない訳ではなかったが、こうなるとある程度想定していた為、俺から目線を切って歩き出した加賀山に着いて行こうとしたら、隆が俺の肩を掴んでくる。
「おい、まさか行くのか?マジで話があると思ってるのか?」
「そうだな、最初からそうなるとは思ってないが俺はアイツが話したがってるように見えた。どことなく似たような傷を持ってる気がするんだ。隆、俺は貰ったモノをくれた人に返すのは勿論、誰かに贈れるようになって初めてくれた相手に恩を返せると思うんだよ」
はぁ?っと俺が言っている意味がさっぱり理解できてないらしくプチパニックを起こしている。俺はそれを見つめ、この馬鹿はこのままが一番いいと思い、笑う。こいつの凄さは何も考えずに行動してしまい、悩んだ末に導き出す答えを当然のように選んでしまう馬鹿さなんだから。見栄も虚勢もないこの友人に誇りを感じつつ、俺は言う。
「だから、俺は行くよ」
「止めても無駄のようだから俺も行くわ」
俺がなんでだ?と聞くと、お前1人であの人数相手にする気か?穏便に済む訳ないだろうっと言ってくるのに笑い、俺は言った。
「弱いお前がいても何も変わらんよ」
「うるせい、人の好意を素直に受け取れよっ!」
俺のケツを蹴りながら着いてくる。
前方で俺待っているのか振り向いてこっちを見ている加賀山に向かって歩き出した。
加賀山に連れられてきた場所は、まあ、なんと言えばいいのか・・・
「お前は、お約束過ぎるだろ?校舎裏とかいつの不良だよ?」
呆れた隆が加賀山を挑発する。
いつもだったら簡単に今の挑発で切れただろうが今日はどうやら一味違ったようで表情をピクリともさせない。俺の見立ては間違ってない気がする。
「立石、お前、むかつくんだよ。ちっとはおとなしくしてられねぇーのかよ」
「なんで、むかつくか分かってるのに、俺がおとなしくしたぐらいじゃ何も解決しない事も分かってるんだろ?」
俺は迷わず、加賀山に切り返す。隆の挑発にはピクリとも反応しなかった表情に歪みが出る。
それを見た俺は自分の考えに自信を持った。
「俺はよ、隆とダチになる前にお前と喧嘩してると自分と向き合ってるようで気持ち悪かったんだ。多分、お前もだったんじゃないか?だから、普通ならとことんまでぶつかり合う間柄なのにお互い距離を取っていた」
俺の言葉に唾を地面に吐き捨てるが俺は続ける。
「同じ存在だと思ってた俺が隆と触れ合った事により立ち直ろうとしてるのが腹ただしいんだろ?」
うるせぇ!っと怒鳴ると俺に殴りかかってくる。それを避けずに受けた俺は踏ん張って耐えると加賀山を睨みつけて言う。
「慌てるなよ。今日の俺は逃げたりしない。お前が気が済むまで付き合ってやるよ!」
そう言うと俺も殴り返す。
しばらく、無言の応酬が続くと息が切れてきた俺達は離れて呼吸を整える。すると加賀山が話しかけてくる。
「俺の親はな、1流大学を卒業しててな、親父はどこぞで呼ばれるぐらいの学者で、母親は教室を開いたりするような絵に描いたような親なんだ」
「なんだ?いきなり親自慢か?」
口に溜まった血を苦々しく吐き捨てる加賀山を見て、そんな訳ないよなって俺は苦笑いする。
「ああ、確かに外から見たらそうだろうな、だが、実際は違うんだよ。自分より下の者を同じ人間と思ってない。俺が付き合う友達もあそこの親は高校も行ってない父親の子だから遊んでいけませんだとか、3流大学の出の夫婦の子と一緒にいたら人生の負け犬になるとか言いたい放題だ。俺の友達に親の履歴書を持ってこいとでも言いたいのかってぐらいに見下すんだよ。自分が大事なモノを否定され続ける」
「なるほど、それなのに1人、楽になろうとしてる俺が許せないってことか」
俺がそう言うと加賀山はもう否定はしねぇけどよっと繋げる。
「お前がむかつく理由はそれだけじゃないんだよ!!」
再び、俺に殴りかかろうと飛び出した俺との間に小さい影が飛び込む。
「加賀山君、立石君に何してるの!」
飛び出してきたのは、やや短めの髪をポニーテールのように結んでいる小柄な女の子。俺はこの子を知っている。同じ小学校でそして・・・
「山田・・・なんでここに?」
そう、山田 理沙。同じ小学校で修学旅行で犯人に囚われた女の子であった。
「なんでじゃない!まだ私の質問に答えてないっ!」
同じ年頃の女の子と比べても小柄な山田に詰め寄られる加賀山は半端ないうろたえ様である。さっきまでの威勢はどこに行ったのであろう。
「なるほど、そういう話に繋がるのか・・・」
後ろで俺達を見ていた隆が溜息混じりに納得するに気付いて俺は近寄って聞く。どういうことなんだ?と聞くと呆れ気味に伝えてくる。
「理沙は、俺の遠縁の親戚で同じ市内である事から家族間の付き合いも古いんだ。で、徹の事も理沙から聞いてた。だから入学したてから、お前の事が気になってて、お前と友達になるキッカケをくれたのが理沙なんだが、その理沙に最近、コクったヤツが現れたというか、結構の相手にされてるらしいが全て断ってたらしんだが、その中に加賀山もいたんだよ。しかも、加賀山は振られても振られた理由をしつこく聞き出そうとしてたのに折れたアイツは話をしたらしいと聞いていたから・・・今の状況が出来上がったんだろうなっと」
なるほど、だから加賀山は押されているのか、惚れた弱みってやつだな。山田のおかげで隆と知り合えたのか、機会を設けて感謝を伝えるとしよう。しかし、それが理由で俺に突っかかってくる加賀山が分からない。あ、山田を助けたのが俺でなんとなく羨ましくって嫉妬したのかっと自分の考えを隆に伝えるが、隆は頭を抱える。
「掠ってるのにそこまで明後日の方向に話が行くお前を尊敬するわ」
気付くと山田が俺の傍に来ていて俺に声をかけてくる。
「徹君。あそこに見えるモノなんだろう?」
山田は隆がいる方向と逆を指を差す。俺は素直にそっちを見るが大きな木があるぐらいで特に見るべきものがあるようには見えなかったが、後ろからウゴっと痛みに堪えるような声がする。後ろを振り返ると隆が弁慶の泣き所を押さえながらしゃがんでいる横で山田が何かをいっていた。隆は顔を真っ青にして壊れた人形のようにカクカクと頷く。
「どうしたんだ?隆」
「なんか、足をぶつけたらしくて、大丈夫?って聞いたら平気って言ってたからすぐに収まるんじゃないかな?」
可愛らしい小動物のような笑顔を向けてくる。が、しかし、おかしい・・・俺の背筋に漂う寒気の理由が分からない。
俺達のやり取りの隙を狙って脱出しようとする加賀山を見つけ、俺は叫ぶ。
「加賀山!鬱憤があるならいつでも相手になってやる。だからよ、他のヤツにあたったり、自分を傷つけるのはもう止めろよな!」
加賀山は何も言わずにそのまま去っていったがなんとなく俺達は1歩進めた気がした。
「ちょっと前のお前に聞かせたい言葉だな?」
後ろで呟く馬鹿に俺は無言の右ストレートをプレゼントしておいた。
そして、俺達はゆっくりとアンダンテのようにみんなとの距離を縮めて行った。
トールの昔話を聞いて、コイツも苦労した事もあるんだと思う。しかも巡り合わせにも恵まれたってあたりも女神の祝福があったんじゃないかと邪推したくなるほどあるが結局はコイツが受け入れて立ち上がれるかが全てである。
「なるほど、そうやって歩み寄っていったんですか」
「まあ、焦れそうになった事も結構あったし、トラブルもあった。でも隆と理沙や佐藤達が俺の背中を押してくれてなんとか楽しくやってたよ」
恥ずかしそうに照れるトールを見て私はクスっと笑ってしまう。
しかし、ニコニコ笑いながらトールを見つめる2人を見て背筋が寒くなる。
「徹が友達に恵まれたのはとても良かったと思うの。今の徹はそのお友達のおかげだと思うけど・・・」
「そうですね、ルナさんの言う通りでとっても良い事だとは思うのですが、色々確認して置きたい案件が生まれたと言う事は動かぬ事実のようです」
2人はトールに馬を止めさすと私に振り返った美紅が言ってくる。
「テリアちゃん、ごめんなさいだけど、しばらく御者してくれませんか?」
「なるべく早く済ませるの」
2人してとっても良い笑顔をして言ってくるがトールが無理無理っとギブギブっと私に助けを求めてくる。
「ごゆっくりっ、なんなら私が今日1日、御者してもいいからっ!」
裏切り者っと叫ぶトールの言葉を聞き、最初に裏切ったのはそっちだと必死に自分に言い聞かせて、トールの断末魔を聞こえないフリをして御者を務めるのであった。
明日の更新はもしかしたら止まるかもしれませんので止まったらごめんなさい。帰ってくるのが遅くなりそうなので間に合わないかもしれません。
感想などありましたらよろしくお願いします。




