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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
1章 こんにちは!アローラ
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7話 夏の日のトラウマ

 そろそろ、全国的に梅雨シーズンかな?食中毒などの体調管理を気をつけて元気にいきましょう。

 では、7話になります。よろしくお願いします。

 手に残るぬくもりが愛しく感じつつ、指の隙間から漏れていくを切なげ見つめる。広げた手の先に失ったものが見え、掴めぬと分かっていながら握りしめる。届かなかった、お宝に指を差し、


「迎えにいくからな!必ず、戻ってきてやる!」


 歯を剥き出しにして、俺を引きづる手の力に抗いながら叫ぶ。


「徹、うるさいの。早く依頼を決めてご飯食べて、お仕事するの。働かないとご飯食べられなくなるの!」

「らって、らって、オッパイがオッパイが・・・」


 おもちゃ売り場で描かれるような子供が母親におもちゃを強請る為に床でジタバタする光景の中に俺とルナがいた。

 溜息をついたルナが、今度ね、今度、と言うと俺は愚図りながら、ウンって頷いて立ち上がる。

 離れたとこに、おっさんがいて他人のフリをしていた。



 持ち直した俺はギルドで初仕事をすべく、貼り付けられてる依頼を眺める。やはりというか当然というべきか、Fと書かれてる依頼はお使い系の依頼が目立つ。ざっと見ただけではあるが、総依頼数の6割はFと書かれたお使い系の依頼が占めているように見える。既に昼前という時間ということもあり、他のランクの依頼は取られてるだけなのかもしれないが、Fの依頼は多いように見える。FでもEの依頼が受けれる以上、わざわざFの依頼を受ける人が少なく結果、飽和状態なのではというのが俺の見解だ。

 俺は飽和してるものの中にアタリが隠れているような予感がしていた。


「なあ、ルナ、討伐系ができるかどうかは置いておくとして、時間も時間だからお使い系のFでいいよな?」

「うん、そんなに時間かけてられないし、寝る場所の確保もしないとダメなの」


 と、寝る場所の話が出たとこで、おっさんが


「寝る場所だが、ワシの知り合いを紹介してやるから、多少は安くあがるように交渉してやるから、任せて貰っていいじゃろ?」

「ありがとう、おっさん。宿屋の面倒まで見て貰って」

「なに、ついでだから気にするな。中途半端にすると気持ち悪いしの」


 本当に面倒見のいいおっさんである。ルナがご飯は美味しいの?聞いて、おっさんが飯が一番の売りじゃっと伝えられたルナは飛び跳ねて喜んでいた。ルナって食う事に本気で貪欲だ。欲の強い女神ってどうなんだろ?

 寝る場所はおっさん任せでいいとして、依頼はどうしよう、さっき流し見した限り、気になったのは3つ。


 [薬草採取、1束、銅貨3枚。10束まで]


 鉄板の定番の初依頼に相応しい依頼ではないだろうか。


 [倉庫整理、清掃。4時間拘束。1人、銅貨30枚]


 大変そうだが、手堅く稼げるのではないだろうか。


 [マッサージ、1時間、銅貨5枚。]


 マッサージってしんどいんだよな、備考があるな。何々?最近、胸が大きくなって肩がこって仕方がないんです。色々、大変だろう。是非、俺が力にならねば。


 受ける依頼を決めた俺は依頼書に手を伸ばす。横から出てきた手に叩かれ、薬草採取の依頼書を押し付けられる。


「徹はこれをやるの。私は、掃除にいってくるの」

「おい、俺は受ける依頼決めてたんだぞ」

「いいの!これをやるの。10束集めるまで帰ってくるな!」


 良い?握り拳を交渉材料に俺に依頼書を再度押し付けてくる。

 そろそろ、俺のHPも切れる危険が出てきそうな今、オッパイを断腸の思いで諦める。ルナのオッパイの過剰反応は半端ない。


 受付に向かい、HP不安からルナの睨みに怯えて、素直に依頼を受理してもらう。薬草の見本を見せて貰い、近場の採取場所も聞いておいた。今日、山から下りてくる道にあったようだ。なんとなく無駄に歩かされてる気分になってしまうのはしょうがないが気持ちを切り替えていくとしよう。

 おとなしくギルドから出る。お腹が減ってるせいかドンドン凶暴化してるルナを鎮静化させるためにも。


「宿をやってる知り合いのとこは1階が食堂になってるんじゃ、紹介するついでにそこで済ませよう」


 俺達は、おっさんの先導を受けて宿を目指して歩き出した。


 ギルドからそれほど離れてない、木造の2階建ての建物に到着した。中から美味しそうな匂いが漂う。扉の前にある看板を見る。

 「マッチョの集い亭」

 俺は迷わず、回れ右する。おっさんに肩を掴まれる。


「離せ!おっさん、俺は行かないとダメなとこができた」

「まあ、落ち着くんじゃ、小僧が何を考えたかは分かるが着いてこい」

「早くするの。徹」


 俺の野生のカンが逃げろと言っている。確かに店の中から漂う匂いは心惹かれるものはあるが、フラグが待ってる予感がヒシヒシとしてる。落ち着いて考えれば、ギルドで新人に絡む冒険者や、ルナにちょっかいをかけるやつに絡まれるという定番がなかった。ここで来る。しかもよっぽど、ギルドで絡まれたほうが良かったと思うハメになりそうだ。


「後生だ、おっさん行かせてくれ!」

「いいから、入るぞ、小僧」

「早くするの。徹」


 ルナさん、さっきも同じ事言ってますね、もう既に匂いにやられてますね。食べる事しか考えられなくなってますね。でもね、でもね、ほんとヤバいの。前の世界にいた時、去年の夏の思い出というかトラウマが蘇る。


 おっさんに引きづられて店に入る。なんか俺って引きづられすぎじゃね?

 中に入ると酒場って感じの普通の店の作りをしていた。しかし、未だに俺の危険信号は止まる事はない。落ち着かない感じはまさに嵐の前の静けさのように感じる。どこだ、兆しはどこに、せわしなく周りを見渡す。その時、凄いプレッシャーが厨房のほうからやってくる。


「あ~ら、ザウスじゃない、店に顔を出すのは久しぶりじゃない?」

「久しぶりじゃの、ちょっと頼み事と昼飯に顔を出させてもらった」


 俺の眼の前にあるものを見て、膝をガクガクさせる。そして、去年の夏の海のトラウマが蘇る。


 あれは、人間観察をするために先駆者である強者のダチと電車3駅でいける海に夏休みを利用してやってきた。

 俺達も14歳という歳であり、人を見る目を養うための訓練を乗り換えて真贋を見極められる一流の男になるためである。

 双眼鏡を覗き込み、人間観察開始である。


「2揺れか、なかなかだな」

「3、いや4揺れがいるぞ」

「マジか!どこだ!なんだあれは、このビーチの化け物か」


 男2人して幸せが溢れそうな顔をして訓練に打ち込む。

 中には嵩増しをして偽装を見破る訓練だとかを繰り返し、俺達は成長していった。


 突然、ダチが騒ぎ出す。


「なんだと、何度揺らすんだ!あの物体は!!」


 ダチのセリフを聞いた俺は色めき立つ。


「どこだ、どこなんだ!」

「俺が指さす先の集団だ」


 俺は食いつくように双眼鏡を覗き込む。

 覗きこんだ先には褐色のいい色に焼けた肌が躍動的に跳ねまくる胸がそこにはあった。二の腕は太く、筋肉が踊るといった感じにポージングする無駄に白い歯をした、マッチョ、そうオスがいた。


「男やん、無駄にマッチョな男やん、誰得なんだよ!」


 俺は怒りに任せて砂浜に双眼鏡を叩きつける。


「すまん、自分だけ見て不幸になってたのが許せなかったんだ。反省はするが後悔はしてねぇ!!」

「ふざけんな、このボケがー」


 そんな暑苦しい青春の1ページが描かれるかと思われたが、軽い取っ組み合いが始った辺りで2人を止める声がする。


「ヘイ、ボーイ達、ケンカはいけないよ」


 無駄にポージングを変えながら止めてくる変態マッチョがいた。それはさっき双眼鏡で覗いたマッチョであった。


「若いってのはいいことだけど・・・ん?ユー、ユーだよ!」


 急にテンションが高くなったマッチョは俺を指差す。


「オオ、リトルプリティボーイ。2人で肉体言語、キ・ン・ニ・クしないか?」


 頬を染めたマッチョがポージングして近寄ってくる。お友達もどうだいっとダチにも声かけると、マッチョに結構です!と言って俺を置いて逃げたした。


 目を覚ますと知ってる天井、つまり俺の部屋で寝ていた。

 あの後の事はよく覚えてない。迫りくる肉、汗の匂いと無駄に暑苦しかった事は断片的に覚えてる。

 俺が目を覚ますと号泣するダチが土下座しながら謝り続ける姿があった。俺はどんな酷い目にあったのだろうか。思い出そうとすると俺の中のブレーカーが落ちそうになるのを感じた。




 俺は忘れる事にした。




 生まれたての小鹿のようになりながら、おっさんの後ろでかろうじて立っていた。


「なんで、そんな格好をしとるんじゃ?」

「昼のピーク時に暑くなっちゃって、思い切って脱いちゃった」


 そこには、赤い、もっこりパンツを履いたスキンヘッドの変態マッチョがいた。描写を省いたのではなく、本当にパンイチだったのだ。

 生きるためには逃げるしかないと判断した。自分に注意を向けさせないように細心の注意をしつつ、その場から離れ始める。


「ザウスさん、お腹が減ったの。お話は食べてからでもできるの」


 馬鹿、ルナ、なんでもう少し我慢できない。というか、この異常事態でも腹ペコ女神全開か。マッチョと目が合う。目と目で何か通じ合う、そんな関係になりたくないな!


「まあ、カワイイ坊やが一緒にいるじゃない、どうしたのザウス」


 小指を立ててシナを作るマッチョ。そして、狙い通りとばかり頷くおっさん。


「この2人が事故にあって荷物全部なくしてな。イノシシの肉を売る事で少しは金を手に入れたが、それだけではやっていけないってことでギルドで働くためにクラウドでの拠点を探しておったのじゃ。で、だ、お前のとこで割安で泊めてやってくれんかの。」

「そうねぇ、ザウスとも古い付き合いだし、頼まれたらイヤとは言わないわ。坊やも私好みだし。」


 俺に向けてウィンクしてくるマッチョをおっさんを盾にしてなんとか逃れようとする。


「じゃ、銅貨10枚で朝夕の食事付きで1泊でどうかしら?あ、でも、坊やが添い寝してくれるならタダ、むしろ払ってもいいのだけど?」


 即死系の流し目を俺に飛ばすが、無駄だ!俺にはおっさんがある。


「銅貨10枚でお願いします」


 俺がやや大きい声になりながら答えるとマッチョは笑いながら手を差し出す。


「私はミランダ。これからよろしくね」


 いきなり偽名確定の挨拶に、俺達も名前を伝え、挨拶をする。


「お腹空いてるんでしょ?日替わり定食出すからテーブルに着いて待ってて」


 腰を左右にスイングしながら歩くマッチョは厨房に消えた。

 まだ依頼を受けただけで始めてないのに既に疲労を感じている俺がそこにいた。


 宿を銅貨10枚で泊まれる上、食事付きでこれほど破格の値段はないだろう。ランチメニューで5枚って話だから食事代だけで泊めてもらえるのに文句言いようがない。

 せめて、食事だけでもまともである事を切に願うばかりである。

 次回、更新は1日空くと思います。

 感想などありましたら、よろしくお願いします。

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