84話 襲撃!魔剣を携えた者
ついに盆休みが・・・笑ってる学生がいたらバイブルの呪いの言葉をプレゼントだ・・・宿題は終わったかい?(笑)
纏わりつく気持ち悪さを感じた俺は一気に覚醒した。
ー主、気付いたか?時々、やたらとカンが良くて仕えがいのない主だよー
カラスのどこか呆れた声がする。抱きしめていたカラスをポンポンと叩く事で許しを請う。
隣で寝る、ガンツを揺すって起こそうとすると意外とあっさりと起きる。
「どうした、トール?」
「厄介事がきそうな気がする。準備しておこう」
根拠のない俺の言葉をガンツは疑いもせずに起き上がると体を解し始める。
俺は自分が寝てた場所にあったサンドイッチを発見する。きっと美紅あたりが買ってきてくれて置いて行ってくれたのであろうと判断する。
半分、ガンツに渡すと俺達は腹ごしらえをしていると外が騒がしくなってきてたのに気付き、手早く済ませる。
済ませるとガンツは自分の得物、片手斧にしてはちょっと大きめな斧を肩に担ぐのを確認すると行こうと言ってきた。俺もカラスとアオツキを腰に下げると、ああっと言って声がする方へと歩き出した。
近くに寄ると受付のドワーフと言い争いするドワーフの姿が見える。受付のドワーフは型通りの対応を繰り返すのみで必死に訴えるドワーフの言葉を考えもせず寄せ付けないようだ。
聞こえてきてた言葉を繋ぐとモンスターの群れが首都へ向かってきているという内容のようだが、事実なら不味い事になるのに何故、確認なり対応なりしようとしないのかと驚愕する。
更に近づくと必死に訴えるドワーフが言うセリフを聞いた時、俺は介入する事を決めた。
「この一大事に馬鹿の事言ってるんじゃない!ワシはとんでもなく強いオナゴにその男に知らせてくれと頼まれたんじゃ!!」
俺は直感した、きっとルナ達の事だと思った俺は、廻りのドワーフを押し退けて、必死に訴えるドワーフの前に出ると廻りがいるドワーフを無視して言う。
「その話、詳しく聞かせてくれないか?」
そういう俺を見つめた訴えてたドワーフは確認の意味を込めて聞いてくる。
「拳で噴水を一撃で粉砕できるオナゴの知り合いか?」
「とっても遺憾ではあるが旅の仲間だ」
あの馬鹿、何をやってるんだ。多分、意味もなくやってはないとは思うが他にも手があっただろうに。
頭を抱えたくなる衝動と戦いながら、話を促す。
「山の麓にある洞窟からモンスターの群れがこの首都を目指してやってくるのを見たワシはみんなに知らせに廻ろうしたんだが、今の受付と同じようなやりとりをしてるところにそのオナゴ達がやってきて、みんなを動かしてくれたんじゃ。そして、この事をガンツさんの傍にいる人間の男に知らせてくれと言っとった」
ガンツをチラっと見てから、お前がその男じゃろ?と聞いてくるドワーフに俺は頷く事で認める。
「で、あいつらはどうしたんだ?」
「門を閉める時間を稼ぐと言って、門へと走って行きおった」
あいつらが行ったのなら有象無象のモンスターぐらいなら万いるって言われない限り心配する必要も感じないから問題はないが、どうやら問題はこっちにありそうだ。
「あいつらが行ったのなら門のほうは問題ないだろうから大丈夫だろう。アンタはあいつらに頼まれた事があるんじゃないのか?こっちは大丈夫だから次の事を頼む」
俺がそう言うと頷くと鍛冶ギルドから走って出て行く。
「あいつらが門を閉じようとさせているとなると他の外と繋がる場所の閉鎖、戦えない者の保護を指示してるだろう。ここにいる者は各地に散って手伝ってきてくれ」
「し、しかしだな、鍛冶ギルドを放置する訳には・・・」
煮え切らないドワーフ達に俺は叱咤する。
「お前達の作る武具は何の為にある!飾って傷を付けないように大事にする事か?間違えるな、守るべきモノは場所なのか、お前達が作った武具で守るべき者達なのかを!職人がグダグダ言わず、行動で示せっ!!」
俺のその言葉を聞いたドワーフ達は怒りの感情を見せるが噛み締めることで耐える。反論すると言う事は自分が職人ではないと伝えるようなものである。それは自殺に等しい。
その場のドワーフの怒りの視線を一身に受けるとドワーフ達はフンっと言うと各自、得物を持つと鍛冶ギルドから飛び出していく。
「すまんな、本来ならワシが説得せんといかんかったのに。」
「いや、この後、起こる事を想像すると今の立ち振る舞いをガンツがやるとまずそうな気がする。ガンツも薄々気付いているんじゃないか?おそらく、このモンスターがやってきたのは偶然じゃない」
身内の始末の為にガンツが使ったというより、よそ者の俺にやらされたのほうがいいだろうと俺は思った。勿論、この場から人をいなくさせた理由は別にある。みんなに対するケジメの為、それ以上に傷ついたガンツの心の修復の為にも甥のザバダックを安らかに眠らせる事をガンツ自身にさせる必要があった。
その為、他の者がここにいるのは色々やりにくいと意味もあった。
「やはり、アイツはワシに挑みに来ると言う事か・・・」
「俺も手伝う。しかし、ザバダックを楽にしてやるのはガンツ、それはお前がやるべき事だ。俺の友達は決して負けないと信じてるぞ」
俺はガンツの胸を拳で突くように押し付ける。ガンツが見せる瞳を見つめ、やれそうだなっと思い、笑みを浮かべると強い笑みで返される。
ガンツを連れて鍛冶ギルドの外に出ると、俺がこの首都に入った門から死角になる角度の空からグリフォンに乗ったドワーフがやってくるのが見える。
俺はこれからの事を言う。
「廻りのモンスターは俺に任せてくれ。絶対にガンツの邪魔をさせない。が、自分の甥のザバダックはガンツ、お前自身の手で決着を付けてこいっ!」
「スマン、助かる」
自分の得物を握り締め、こっちに向かってくるザバダックを睨みつける。
俺もカラスとアオツキを抜く。ガンツの手により打ち直された二刀は見違えるような美しさになっていた。カラスの色は黒から漆黒といった風に変わり、光の反射させることもなく吸収してしまうかのような美しさを表している。アオツキはくすんだ蒼い刀身だったのが水を連想させる透き通るような蒼さを秘めた神秘さを醸し出していた。
ー主よ、我は初めて、武器として活躍できそうな予感がするぞー
(なんだそりゃ?)
カラスの感想を笑ってしまいそうになりながら聞く。勿論、カラスの言いたい意味は理解している。今までは能力でごり押しといった感じだったから武器としての自分が使われ方をされるのを楽しみにしているのだろう。
(とはいえ、まずはあいつ等が降りてきたら、あの魔剣持ちとモンスターを分断する為に能力のほうから頼む)
ー御意だ、主ー
俺達は空を睨み、ザバダックがやってくるのを待つ。挑戦者は向こうでガンツは王者だ。挑む者がやってくるのが道理である。
降りてきたザバダックはグリフォンから降りると一緒にやってきた飛行系モンスターを一斉にガンツにかからせる。
「腐ったのは体だけにしとけよ!性根まで腐らせてどうする!!」
俺はカラスが生み出す衝撃波と炎の翼を生み出すと全てのモンスターを一か所に叩きつける。叩きつけると同時に俺はモンスターの目の前へとダッシュするとアオツキを地面に突き刺す。
「頼む!アオツキ!」
集めたモンスターを俺を中心にして結界の中に閉じ込める事に成功させる。
「ガンツ!後はお前次第だぜっ」
そう叫ぶ俺に応えるかのように片手斧を構えたガンツの腕に血管が浮き上がり、視線でザバダックを殺さんとばかりに睨む。
「叔父貴がいなければ・・・叔父貴がいなければ・・・俺は認められたはずなんだ!!」
そう叫ぶザバダックを見つめ、一瞬顔を顰め、憐憫の情に駆られる表情をする。
「お前はワシに潰されたのではない。お前は自分に潰されたのじゃ。自分の弱さを他人にぶつけている、お前に負ける姿をワシを友と呼ぶ男の前で見せれる姿じゃないのじゃ」
地面に片手斧を叩きつけると土煙が起きる。土煙が収まった時に現れたガンツの瞳は決死の覚悟を背負った男の光があった。
そして、血縁者同士の戦いが今、再び、終わる為に始まる。
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