75話 ただいま、クラウドとはいかないようです。
書きたい病が発病した為、鬱憤が爆発するように書いてしまいました。
こっちの病気はしばらく治らないで、お付き合いよろしくです。
学習しないバイブルは一気にやったせいかフラっときたので今日の残りはおとなしくするつもりです。
では中盤1話目、75話になります。よろしくお願いします。
今回は急ぐ必要性がなかったのでゆっくりとした馬車の旅をしながら帰った。途中、国境沿いのエルフの村を通りかかったが建物がまともに残ってるモノが存在しない悲惨な状況に陥ってるのを見て、この村の再興する人、そして国に残ったティティに心の中でエールを送った。
「早く、クラウドに戻ってミランダのご飯が食べたいの」
ルナが楽しそうに帰ってからしたい事を話し出す。ってかいきなりご飯の話ってあたりがルナらしくて思わず、笑みが零れる。
しかし、美紅が眉を寄せて難色を示す。
「確かに早く食べたいという気持ちもありますが、今の私達の立ち位置を把握する為にも冒険ギルド、できればギルド長と面談する必要があると思うのです。トオル君はどう思いますか?」
確かに、早い段階で知っておいた方がいい事もあるし、冒険ギルドに協力を得るにしても少しでも早いほうがいいだろう。ゆっくりしてからでもという気持ちが背中を押す気持ちもあるがそれをして困る事態になって泣くのが俺達だけじゃ収まらない恐れを考えるとそうも言ってられなかった。
「そうだな、なるべく急いで冒険ギルドには顔を出したほうがいいかもな。俺達はエコ帝国に喧嘩売ったに等しい行動を取ってるから少しでも足場を固める必要があるだろうな」
悪いけどそっちを優先するからとルナに詫びるが俺がそういうならいいのって気持ち良く許してくれた。
クラウドに着いた時、俺達の今までの行動の結果が待っているかもしれないし、杞憂に終わるかもしれないと判断が付かないまま俺達はエルバーンを出てから2泊野宿をして3日目の昼過ぎにクラウドに到着した。
南門に行くとピーターが俺達に気付くと近寄ってくる。
「お、エルフ国の救国の立役者の凱旋ってとこだな!お前が国境沿いの村でやった事や、王都に襲いかかるモンスターを相手に立ち回った話をクラウドで知らない者はいないぜ?」
ピーターの話を聞いた俺達は顔を見合わせた。色々思う事はあったがこの場で話す事ではないと思い、ピーターには適当に話を合わせて俺は門を潜った。
門を潜って俺達だけになると俺は早速疑問を口にする。
「いくらなんでも情報の流れが速すぎる。勿論、あの場にいたものがあのモンスター襲撃後、すぐにクラウドにやってきて噂を流して広がったという見方もあるがどうもきな臭い」
「はい、何かお膳立てされている気がします。しかも私達には面白くない理由でのような気がします」
美紅が俺の言葉を肯定し、繋ぐ。それを聞いていたルナが俺と美紅がそう思うのか分からないらしく聞いてくる。
「そんな事して誰が得するの?むしろ私達が褒められて嬉しいぐらいじゃ?」
「確かに、そんな呑気な展開があるなら、たらふく美味しいモノを食べて寝れば終わりで理想的だが、例えば、エコ帝国が救援できなかったのを代わりにやって救ってくれて有難うと言うだけで廻り国にポーズが取れたりするとかな」
国って面倒なのとルナは愚痴るが、俺は正直そんな簡単な展開は待っていないと思っている。やはり美紅もそれは楽観的だと思っているようだ。
とはいえ、今、ここであれこれ考えるとしても判断材料が足らなさ過ぎる。
「やはり、最初に冒険ギルドで状況確認が先決だな」
俺達は頷き合うと、早足になりながら冒険ギルドへと急いだ。
冒険ギルドに着いて扉を開けて中に入ると中にいた冒険者達が俺達を見ると大半の者が目線を反らした。
その様子を見て、更に不安が増した。正直、素直な展開ならここで俺達は揉みくちゃにされる歓迎で良かった良かったって展開になるのだろうが、これは良くない展開が待ってるということらしい。
そんな空気の中、受付に近づこうとすると俺の肩を掴む人がいた。
ダングレストこと、ダンさんだった。
「よう、トール。あの時の事で色々礼をしたいとこではあるんだが、今は受付に行かず、商談室に直行しろ。タイミングが悪い事に今、受付に王都の者がやってきている」
そこでシーナが待っているから事情を聞いてこい、と言われ、商談室があるほうに向けて押される。情報もないのに今、国に絡む人物に会うのは得策ではないと分かる俺達は素直に商談室へと向かう事にする。
すると、俺達が通る道から受付側から見えないようにするかのように人だかりが不自然じゃない程度に壁のようにできる。その中の1人、俺より2~3歳年上に見える小奇麗な盗賊といった風の男が俺達に商談室へと指差し、視線を明後日へと向ける。
あ、あなたは、あの時のツンデレさん!相変わらずツンツンしながらデレる貴方は健在ですね!俺がサムズアップすると頬を染めるツンデレさん。やっぱりホンモンやぁー。ルナと美紅は笑いをこらえながら俺の後をついて商談室へと向かった。
俺達は商談室に到着し、ノックをすると間もなくドアが開く。
「すぐに入ってください」
俺達が急ぎ入ると速やかにドアを閉めるシーナさん。2回か?
「すぐに説明をしますので、お座りください」
振り返ると俺達に目の前の椅子に座るように言って、自分は急いで対面の席へと走っていった。
頑張れ、俺の動体視力!俺の心のHDはフル回転で頑張っている。ドアを開いた時に揺れたシーナさんの胸揺れを見た瞬間から俺は胸以外見ていない。今も席へと走るシーナさんの素敵な揺れを永久保存すべく俺は目と脳以外の活動を無視して頑張っていると、ドスっと言う音がどこからか聞こえたと思ったら遅れて激しい痛みが脇腹からやってくる。
「徹?状況分かってる?壊れてるの?」
「調子が悪い時にお婆ちゃんがやってるのを見た事ある方法を試しましょう」
ドスの効いたルナのセリフを聞いて、お婆ちゃんの知恵袋を披露しようとする美紅。しかし、よく見ると美紅の目にも剣呑な光があった。
「調子が悪い物に斜め四十五度から抉るようにチョップ!」
待て、それは昔の調子の悪くなったテレビの間違った治し方やん!
ふっ、しかし、俺も色々な危機を乗り越えてきた俺にはオチが見えてる攻撃など当たる訳がないのだ!っと避けようとするとルナが後ろから俺の両肩を押さえる。
「当て易いように押さえておくの」
なんですと!逃げれないではないかと思い、ルナの顔を見るとなんとも女神とは思えない暗い笑顔をしていた。
そして、俺は無抵抗に美紅にチョップされてしまった。
ディラディラダン♪
徹の秘密のメモリ最新話が消えてしまいました。
「えっと、相変わらずのようで安心しましたで、いいのでしょうか?」
シーナさんがちょっと困った風のようで嬉しそうに聞いてくる。
一部の記憶の欠落を感じるが俺は笑って言う。
「俺達は俺達ですよ。いつも通りにしてください」
そんな俺の言葉にルナ達も頷く。俺達は顔を見合わせて再会を笑顔でシーナさんに言われる。
「おかえりなさい。みなさん」
「「「ただいま、シーナ(さん)」」」
俺達も笑みで返し、ルナが真面目な顔に戻って聞く。
「無事再会は良かったんだけど、私達の情報の流れるのが早いのと冒険ギルドでの事を聞きたいの」
「はい、その為に皆さんをこちらにお呼びしました」
シーナさんは俺達の顔を見渡す。
「まずは確認なのですが、トールさん、貴方は緊急依頼を受けて、住人を助けて避難したところで村に戻られ、どういう理由かは分かりませんが王都エルバーンに行かれ、モンスターの大軍を相手にエルフ国の住民を守る為に1人で立ち回ったというのは事実ですか?」
その件は正直、掘り返したくない話だからなんて答えようかと思ってると美紅が溜息混じりに言ってくる。
「残念ながら事実です。ギリギリの戦いをされましたが、守り抜かれました。」
死にかけても、治れば、その後にした忠告なんてサラっと忘れる本当に困った人ですと付け加えながら睨まれる。
そうですか、事実ですか・・・と言われ、考え込むシーナ。
「それが今回の事と関係があるんですか?シーナさん」
俺がそう聞くと、難しい顔して、はいっと答えられる。
「その噂が広がるとエコ帝国側からトールさんを徴兵しようとする為に王都の人間が頻繁に訪れ、トールさんの行方を捜されてます。かなり焦れられておられるようで、捕獲すれば報酬を払おうという動きもあり危険な状態になりつつあります」
やっかいな状態にあるようだが、美紅の話が出てこないがもしかしたらバレてない?
まだ油断は禁物だが、とりあえず目先の事をどうにかしよう。
「そんなの断ったらいいんじゃないの?」
ルナがもっともな事を聞いたので俺も頷いた。
しかし、シーナさんは悲しそうに首を横に振る。
「他国ならそれで多少の不便、嫌がらせを少し受ける程度で済みますが、このエコ帝国でそれをすると賞金首にされ、下手をすると知人にすら被害が及びます」
エコ帝国のやり口に怒りが沸いて来て、上等だ、やってやるという気持ちが沸き上がるが、そんな方法で抑え込んでも、第2の魔神やエコ帝国になるだけだと気持ちを落ち着かせる。
「そんなの納得できるできない以前の話なの!」
椅子から立ち上がって激昂するルナの肩を掴み、俺を見るルナに首を振って落ち着けと伝える。
ルナを落ち着かせてる俺に代わり、美紅が聞いてくれる。
「すぐに逃げろと言わず、私達をここに呼んでるという事はなんとかする方法があるんですね?」
「はい、みなさんをAランクにしてしまえば、徴兵を堂々と拒否できる状況ができます」
そう聞くと俺達の表情が明るくなるが、シーナさんはまだ難しい顔をしたままである。
「ですが、それだけ特権があるAランクになるとギルド長だけの独断では難しいのです。しかし、トールさん達はエルフ国を救ったという実績があります。エルフ国にAランク推薦状を書いて頂ければどこからも文句も出ずに晴れてAランクになれます。ですが、通常の方法でやろうとするとAランクになる前に徴兵されるか賞金首になるでしょう」
「なるほど、だから王都の人間は必死に俺を捜してるという事か・・・となるとマッチョの集い亭で見張りがいると考えたほうがいいかな?」
俺がそう言うとシーナさんに頷かれる。
「そして、Aランクの手続きが済むまでクラウド、いえ、エコ帝国を離れて欲しいのです」
そうなるよなっと俺は思う。今、俺達は次にドワーフ国に行こうという予定があったからそれは構わない。ミランダに会っていけないのは残念だが、グルガンデ武具店のドワーフのおっちゃんとは会っておかねばならない。
「エコ帝国を離れるのはいいんだが、どうしてもグルガンデ武具店の主人とコンタクトが取りたいんだが、なんとかならないか?」
あのドワーフの鍛冶職人のですか?と聞かれ、頷くとシーナさんはドアを開くと、通りかかった職員に何やら伝えている。
「今、会う為の段取りを取らせてます。少々お待ちください」
俺にそう伝えてくれる。
「後、何かお聞きになられたい事はありますか?」
「そうだな、俺の噂は広がってるのは分かったけど、ルナや美紅の噂とか信憑性があるなし問わず何かない?」
少し、考えてから、特にありませんねっと返事される。
微妙に気持ち悪さはあるが今はこれ以上問題が増えない事を信じたいので考えないようにする。
今のところ質問はもうないよっと返事すると、シーナさんは俺の傍に来て、頭を下げる。
「本来なら会った時に1番最初にするべき行動だったかもしれないのですが、有難うございました。トールさんが緊急依頼を受けてくださらなかったら、冒険ギルドで啖呵を切って、他の冒険者達を奮い立たせなければ、私の家族は助からなかったでしょう。それに聞きました。私の村の者がとても失礼な事をしたと。それでも助けてくださって有難うございました」
2度も礼を言われて恐縮するばかりだ。あの時の俺は色々不味い状況だったから最悪の選択をしてなくて良かったと思うばかりだったのでこの状況が居心地が悪かった。
「俺だけじゃどうにもなりませんでしたよ。みんながいて初めてできた事です」
はい、この話はこれで終わりとばかりに話を切ろうとするがシーナさんが続ける。
「しかし、トールさんは途中で依頼放棄した事になってますから報酬が出ません。でも、それだと私の気が済まないので、この気持ちだけでも貰って行ってください」
シーナさんは俺に近づくと頬に触れるだけのキスをしてくれる。
俺達の時間が止まる。多分、5秒だけ。でも充分だ、俺の脳は高速に回転している。シーナさんがキスしてたという事はあの素敵なオッパイは既に片方ぐらい俺のモノじゃないのではあろうか!
そして、俺は覚醒した。
「そのオッパイ貰った!!」
俺の秘儀、千手観音がついに発動する。今まで何度チャレンジしても出来なかった事を今の覚醒した俺ならできる!
シーナさんとルナが俺の猛攻を受けるが前のように互角ではなく明らかに俺が押している。
「絶対におかしいの既に人間の限界を超えてると思うの!」
「まあまあ、駄目ですよ。そんなオイタしたら」
ルナは必死であるがシーナさんは手の動き自体は頑張ってるのが分かるが触られる危険を危険と感じてないように見えたルナと美紅は戦慄を覚えた。
「だから、そんな事は駄目だと前にも言ったでしょ!トオル君!」
俺の死角から抉るような拳を脇腹に入れようとしてくる。が、しかし、俺の脚により止められる。
その様子を見てルナと美紅は驚愕する。
「男とは成長する生き物なのだよ!」
などと調子にのっていると後ろのドアが開く音がするが今は目の前の事が大事である為、勿論無視した。
すると、股下からズンっという衝撃と共に俺は空を飛ぶような浮遊感を感じる。ここ、1週間の間で2度目の体験だと醒めた俺の思考が冷静に伝えていた。
感想などありましたらよろしくお願いします。




