74話 示された道
同じ時間に幕間もいれています。
では74話になります。よろしくお願いします。
次の日になると、一応確認ということで宰相の最後の時の話を求められてやってきた騎士の質疑応答に付き合った。何も疑われてないからか淡々と進み終了する。
外に出ると俺達は城の者に遠巻きに見つめられる。昨日の昼間の一件で美紅とルナが怖がられているのだろうと俺達は思った。
ルナ達が俺に謝ってくる。
「ごめんなさいなの、私達が事を大きくしたから徹まで巻き込んで」
ルナはシュンとして肩を落とし、視線を地面に移す。美紅に至っては唇を噛み締めて泣くのを我慢してる。
俺は気にするなと両端にいる2人の頭を撫でた。
「あの2人を怒らせたら命がいくつあっても足りないぞ」
そう呟く声がする。正直怒鳴りたいが怒鳴ると状況は悪化するから耐える。
「でも、トール様が近くにいれば、おとなしいし、遠目に見る分には保養になる。姫様が言うにはトール様がいればあの2人が暴れる事があっても被害は全部、トール様にいくから安心と言っておられた」
俺は避雷針扱いか!と呟いたが隣にいた2人にしか聞かれなかった。
「ごめんなさいなの、私達が事を大きくしたから徹まで巻き込んで」
プークスクスと笑いが堪えられないルナと唇を噛み締めて顔を赤くして耐える美紅がいた。
先程の言ったセリフが同じなのに、どうしたこうも違うのかと48時間ぐらい議論したいのだが誰か付き合ってくれないだろうか・・・
そして、俺は項垂れながら歩く。その後ろを着いてくるルナ達の弾けるような笑顔を見つめ、本当に良かったと思う。だからさっきの噂を流したティティはグッジョブだ。
だから俺はちっとも悲しくない。とっても俺は幸せ者なのだろうなと思い、こいつらを色んなものから守ってやれる男になると心に秘めた。
瓦礫撤去は手が空いたルナが手伝ってくれた事により夕方には終わる事ができた。夜までかかると思っていたからホッとした。
そして俺達は疲れた体が食事を求め、その欲求を満たすと部屋でまったりしていると、王とティティが部屋にやってきた。突然の王の来訪に俺達は慌てるが、王は今はティティの親として来てるから普通にしてくれと頼まれる。そうは言われても若干落ち着かせるので精一杯であった。
「兄様、良かったら、お風呂に入られませんか?」
突然、そう言われて目を白黒させる。いつもクリナーを使う事で清潔でいられるから長い事、風呂に入ってない事を思い出す。撤去作業で疲れた体を解す意味でも魅力的な誘いを断る術はなく俺達は頷いた。
ティティに案内される時にルナが持っているモノを見て俺は驚いた。
元の世界で見かけた事がある。銭湯に行った時に見た桶で桶の底に「ケロ○ン」と書かれていたのを見て俺は戦慄を感じた。
「ルナ、その桶はどうした?」
「私の私物なの。いいでしょ?」
それをどこで手に入れたかと聞こうとしたが、何故か聞くのが怖くなった。
その後もどんな風呂かなっとかどうでもいい事を話ながら歩くとティティが止まる。
「こちらがお風呂になります。右が男湯で左が女湯です。一緒に入れると思って喜んでいましたか?兄様」
「いや、まったく考えてなかった」
俺があっさりそう答えると3人の目が剣呑な輝きが宿る。何か読めてない事いったのだろうかと考えていると、女湯のほうからミザリーが出てくる。
「姫様お待ちしておりました。さっさ、お背中を流させて頂きますのでどうぞ」
ティティを女湯に案内しようとしてるミザリーを見て、俺は王の胸倉を掴む。
「どうして、混浴にしておかなかったんだ!それでもアンタは男か!!いや、今はそんな事より、王専用の覗き穴があるはず、それを俺に使わせてくれ!」
俺は男泣きしながら懇願する俺を見て王は呆れていた。
それを見ていたルナが桶を持って振りかぶって俺に投げる。
「徹の馬鹿!」
ルナのケロ○ンの桶が俺の頭に直撃する。そこに響き渡る音はスイカだったら決して買ってはいけない音が響いた。
ルナの攻撃によりダウンした俺を美紅とティティはしっかり踏んでから女湯に入っていった。ティティなんて一旦戻ってから踏んでいくという恐ろしさである。
そして俺は色気もなく男気だけしかない風呂に身を沈めていた。
王の装束を脱いだ王は着痩せするタイプのようで所謂、痩せマッチョであった。ギリギリ、我慢できる領域で意思の力でトラウマを抑え込む。顔もよく見た事はなかったが、ティティの親と分かる。どことなくティティを思わせる顔をしていた。ティティはきっと父親譲りの顔なのであろう。
王が胡坐をかいた状態で俺の方を見る。タオルは巻いているがその体勢だと見たくないモノがコンニチハしそうでビクビクしていると、顔を湯船に付けるようにして頭を下げる。
「数々の我らの苦難を取り払ってくれた事を感謝する。何を報いればトール殿の偉業に釣りあうのかすら矮小な私には分からないが、まずはエルフ国代表として礼を言わせてくれ」
「止めてください。王が俺みたいな奴にそんな頭を下げるなんて」
慌てて、頭を下げるのを止めさせようと近づこうとするが、掌をこちらに向けて止めるなという意思表示をする。
「確かに王としては頭をこうも下げるべきではないかもしれない。今は王という衣も脱ぎ、タオル一枚同士の男と男の話だ。そして、トール殿は自分をもっと誇っていい事をしている事を自覚されるといい」
「俺は2代目勇者に見逃して貰って生き残ったような奴ですよ・・・」
王から視線を切ると遠くを見つめる。
アイツに勝たない事には今、胸に渦巻く悔しさを払う事ができない。
顔を上げた王はフッと笑う。
「トール殿、私は思うのだよ。個人の戦いでいくら勝っても目的を達せないなら負けていると。だが、トール殿は目的を果たし、生きているではないか。だからトール殿は胸を張って良い。負けて悔しいなら次に果たせばいい。生きているから出来る事なのだから」
王の男臭い笑顔に釣られ、俺も笑みを浮かべる。
そして真顔になった王が言ってくる。
「それで何かないだろうか?私個人に求めるモノでも、王としての私に求めるモノでも良いので言ってくれないだろうか?」
俺は王にちょっと無茶なお願いでもいいですか?と言うと笑顔で頷かれる。
そう言って貰えると俺の願いなど1つだ。
「俺達の後ろ盾になってくれませんか?今回の事で俺達はエコ帝国に注目を浴びたはずです。おそらく美紅の事も漏れたと思います。そうなるとクラウドにいる俺達の知り合いに危害が及ぶ事も考えられる。守ってくれとは言いません。俺達に強権を振りかざせなくするぐらいの牽制をお願いできないでしょうか?」
「牽制?馬鹿を言うな。全力でバックアップさせて頂く。それ以外でも必要ならいつでも声をかけてくれ。きっと力になる。ユグドラシルに誓おう」
迷いもなく言い切る王に今度は俺が湯船に顔を付けるように頭を下げた。
そんな俺の肩に手を乗せられるのに気付くと王は人好きさせる笑顔を浮かべたと思ったらとても愉快な事だと言わんばかりに高らかに笑いだす。俺も釣られて笑う。気付けば俺達は肩を組みながら笑っていた。
そうすると王がサラッと言ってきた。
「だが、娘はやらんぞ?」
俺はもう笑っとけ精神で高らかに笑う。追従してくる王の笑いが先程のような明るい笑いではなかったとだけ言っておこう。
次の日、俺達はクラウドに戻るべく、エルフ国で用意された馬車に揺られていた。王都エルバーンがあった方向を見つつ、俺は出発する時の事を思い出していた。
「兄様、申し訳ありません。本当なら一緒に着いて行きたいのですが国を立て直す為にお父様だけに任せていくのは不安が残るので」
横目で王を睨む。
睨まれた王は肩をビクっとさせるがどことなく嬉しそうである。きっと娘の旅立ちを阻止できたからであろう。
「まあ、ティティのすべき仕事ってことだろう。頑張れよ」
そう言うとティティの頭を撫でてやる。
潤んだ瞳で俺に私の事を忘れないでくださいねっと言われ、俺は最高に男前な顔して言ってやった。
「ティティはいつまでも俺の可愛い妹だ!」
サムズアップ付きで言った俺はきっとティティは喜んでくれると思って見つめるが可愛い笑顔なはずなのに恐怖が募る。
「足が滑りました」
そう言うと俺の弁慶を蹴る、そして、連続コンボのようにヒールでその足の甲を踏み抜く。痛みに俺はその場で転がり続ける。ティティ、お前のハイヒールは武器なのか?しかも使いこなし過ぎだ。
それを見てた美紅が困った顔してコメント不能ですと呟かれる。
さっさとこの場から逃げねばと思った時に思い出した事をティティに聞く。
「エクレシアンの女王という言葉に心当たりはないか?」
先程まで攻撃色を見せていたティティだったが眉を寄せて考え込む。
「エクレシアンの女王というのには心当たりはありませんが、エクレシアンの鍵ということなら少しあります。そちらのほうでよろしいですか?兄様」
俺は頼むというと説明を始めてくれた。
「伝説なのですが、昔、私達のエルフの上位種、ハイエルフがいたという伝承があります。そのハイエルフがドワーフに依頼して作って貰ったとされるのがエクレシアンの鍵と言われています」
きっとミドリ、ユグドラシルが言っていたのはこれの事だと俺は直感した。
「その鍵は今どこに?」
「ドワーフ国のどこかにあるとしか・・・エルフ国とドワーフ国は敵対こそしてませんが、仲が良いとは言えません。国交も開かれておりませんので私側からのアプローチは難しいと思います」
充分だと思った。少なくとも進むべき方向は分かったのだから。
「いや、充分だ。ありがとう」
笑顔で感謝を述べる。
タイミングを計っていたかのように馬車の用意ができたと御者が言ってくる。
俺達は王達に挨拶をすると馬車に乗り込んで出発した。
徹達が出発して昼食を親子でしていた時に王としてではなく父親として聞いてみた。
「正直、何もかも放り投げてついていくかもと思っていたがよく思い留まってくれたな」
食事をする手を止めた娘がクスリと笑う。
「実はそのつもりだったのですが昨日の夜にユグドラシルの宣託、いえ、アドバイスですね、それを頂いたのです。今、付いて行って何も得る事はできないとエルフ国を立て直す道を走り抜けた先に兄様へと辿りつく道があり、その時、初めて私にチャンスが訪れるから、残りなさいと」
フフフと笑う娘を見て、パパの為に残ってくれたと言ってくれないの~と思った。
「私が進むべき道は兄様に続いている。兄様、覚悟しておいてください。次、会う時は決して逃しませんから」
トール殿が向かったクラウドのある方を見つめながら語る娘が少し大人になったように見えて、嬉しいようで悲しいような複雑な気持ちで見つめた。
感想などありましたらよろしくお願いします。
徹達と別れて、湯船に身を浸すと溜息とは違う気持ちよさげな吐息を洩らす。
女湯は、近頃、ティテレーネにより改修工事を指示し、男湯とは雲泥の差と言える素晴らしい状態に仕上がっていた。大理石で敷き詰められた風呂はキマイラの彫刻で作られた口からコンコンと沸く湯で掛け捨てされており、バラが浮かぶ湯船はバラの高貴な香りに包まれるといった贅沢な造りになっていた。
「こういう、お風呂ならたまには入りたいの。とっても香りが良くて落ち着くの」
はぁ~っと息を吐くルナ。きっと徹がいたらおばさん臭いと笑われた事であろう。
「確かに良いお風呂ですが、一般人の私の感覚では贅沢過ぎて落ち着けません」
贅をこらしたお風呂に庶民的な美紅にはクラクラするような風呂で思わず、これをするのにいくらかかるのだろうと考えてしまうあたり、その年で主婦視線が養われつつあった。
「ふっふ、いくら私でも毎回、こんなお風呂にしてませんよ。今日は皆さんと入るので奮発してるだけです。しかも、このお湯はユグドラシルの生命の水経由できてますので、バラなどなくても肌がツルツルになるのは間違いありません」
ティテレーネがそういうとルナと美紅の動きがお湯を肌に刷り込むように動く手に気付き、ティテレーネはにやりと笑う。
「兄様に褒めて貰おうと思ってますか?」
「そ、そんな事ないの。せっかくの機会だからお湯を堪能してるだけなの」
「ええ、その通りです。ユグドラシルの生命の水でお風呂する機会が今後あるか分かりませんからね」
少し離れて一緒に湯船に入ってたミザリーがボソっと言ってくる。
「あの人がそんな細かいところに気が回るようには見えませんが?」
巨大な果実をプカプカと浮かせている人物の言葉にフリーズする2人。
そんな様子を見てヤレヤレっと呟くと、イタズラを思いついた顔をする。
「さすが余裕ですね。確かにミザリーはその無駄に大きな果実を兄様の顔に押し付けて陥落させただけはあります」
ティテレーネがそういうと慌て出すミザリー。
解凍された2人が幽鬼のようにふらっと動きだし、2人に睨まれてミザリーはひっ!っと悲鳴を挙げる。
「お二人とも洞窟で眠る兄様の扱いが適当になった時の殺気より酷い事になってますよ?」
「いえいえ、そんな事はありませんのことよ?ミザリー、その時の事を詳しく聞かせて欲しいの」
聞かせてくれますよね?っと美紅にまで詰め寄られたミザリーは聞かれた事は全て答えた。
その結果、徹がギルティ宣告を受けようが自分に害がないのであれば見ない聞かないをする用意があるようだ。どうやら徹はギルティと本人を呼ばない裁判で決められたようだがミザリーは知った事ではないっと貫いた。
湯船で体を温めた4人は女のマッサージ師によりマッサージと共にバラの香油を塗られていた。うつ伏せになった時にミザリーの頭の位置が高くなっている事に3人が舌打ちしたとかないとか。
「そういえば、ミザリーはその凶悪なものを持ってる割に浮いた話を聞きませんがどういう男性が好みなのですか?」
「好みですか?誰かとお付き合いした事がないのでよく分かりません」
首を傾げるミザリーを見て、逃がさないとばかりに追撃をしてくる。
「例えばでいいの。どんな感じの人ならお付き合いしてもいいかなって」
ルナにそう言われて頭を抱えるミザリーを見て、美紅とティテレーネは顔を見合わせて、本当に考えた事ないんだっと語り合う。
2人の呟きを拾ったミザリーはここで引いたら負けな気がして必死に考えて自分が好感を抱ける相手の理想像を伝える。
「あけすけで、自分のした事をたいした事だと思わず、無駄に語らず、誰かの為に頑張れるそんな人ですかね?後できれば自分が困ってる時にどんなボロボロの状態でも駆けつけてくれるような人だと文句はありません」
どうですか、自分で言いながら、そんな人だったらお付き合いしてみたいと思ってしまいましたっと大きな胸を張るミザリー。
ルナと美紅はお互いに見つめ合い、これって不味いですかね?っとルナに美紅が言っている。
ティテレーネは苦笑しながらミザリーに現実を突きつける。
「つまり、ミザリーは兄様のような人が好きなのですね?」
ティテレーネの言葉を聞いてミザリーは固まる。
慌て出したミザリーが言ってくる。
「ちょっとお待ちになられてください。どうして、あの方が私の理想に近い人物だとおっしゃるのですか?」
「近いとかじゃなくて、少なくとも私が知る限り、該当人物は兄様しかいませんよ?まず、最初のあけすけ、の部分ですが兄様がそういう隠し事、ミザリーの胸を見ないフリとかするように見えますか?」
あの人はスケベな方なのでそんな事しませんと首を振る。
「エルフ国民が避難する時間を稼ぐ為に体を張られましたが自慢されたり、誰かに語ってるところを見た事ありますか?」
「い、いえ、ありません」
順序よく説明されていくと段々逃げ道が塞がれていくミザリーはテンパりだす。
そして、意地悪な笑顔でミザリーを見つめるティテレーネはトドメを刺しにくる。
「ルナさんと美紅さんに殺気をぶつけられて絶体絶命の中、私に解雇処分を受けようとしている中、生死を彷徨っているような状態で貴方を救ったのは誰でしたでしょうか?」
ミザリーはテンパりすぎて目がグルグル回していた。
そんな様子を見てクスクス笑うティテレーネを見てルナが聞く。
「徹の大好きな大きな胸の子に徹の事を好きだと気付かせてどうするの?」
「どうもしませんよ?どれだけ多くの女性が兄様を慕おうが私が1番になってみせますから」
と、ティテレーネは会心の笑顔をルナと美紅にぶつける。
ルナと美紅はティテレーネに慄く。現時点最強はこの子だと。
ふと、美紅があたりに視線を走らせる。そうするとティテレーネに顔を近づけて小さな声で聞く。
「お風呂に入る前にトオル君が言ってたようなものはあるのですか?」
美紅にそう問われてティテレーネは間の抜けた声を出す。
「美紅も気付いたの?だったら私の気のせいじゃないみたいなの」
2人の言葉から何を言ってるか理解したティテレーネは表情はいつも通りな風に装い、
「少なくとも私は知りませんが、必要なら多少なら壊してもいいですよ?」
「その言葉を待ってたの」
そう言うと2人は一斉にある場所に手を向ける。
「エアブレット!」
「インフェルノ!」
2人の狙い違わず直撃すると2人の男の叫び声が爆発の中から聞こえる。
「やっぱりいたの!捕まえてとっちめてやるの!!」
「どうやら、お説教が足らなかったようですね!」
そういうと怒りに染まった2人がバスタオル姿で飛び出していく。
「ああ、ルナさんはともかく、美紅さんはきっと後で羞恥で居た堪れなくでしょうに・・・」
2人から必死に逃げる兄様とお父様を見つめ、おかしそうに微笑むティテレーネは大物であった。
後日、お風呂の修理費に王のお小遣いを差し押さえされ充てられたと追記しておこう。




