70話 喧嘩両成敗!
では70話になります。よろしくお願いします。
俺は夢だと自覚する明晰夢を見ていた。
今、俺はある男と向き合っていた。その名を和也という。黒髪の線の細いイケメンで俺が一番、ホットに嫌いな奴NO.1の初代勇者である。
「なんで俺の夢に出てくるんだ?お前は俺の夢の産物じゃないだろ?」
目の前の初代勇者は俺の夢とは関係ないモノと俺のカンがいっていた。
俺の顔を見てクスクス笑う。自分がイケメンだからフツメンを笑っているなら相手になろう!
「考えている事が言葉に出ているよ。ここは夢なんだから腹芸は難しいよ」
特に君は下手そうだよねっと再びクスクスと笑う。
バレているならやれるところまでやってやると身構えようとする。
「2代目勇者、轟とあったんだって?」
機先を反らす抜群のタイミングで話しかけてくる。
お前に関係ないっと突っぱねようとすると、
「みっともなく見逃して貰って帰ってきたんだろ?俺だったら~勝てたよ?」
グゥの音も出ないとはこういう事と思わされる。しかし、疑問である。俺を小馬鹿にするだけの為に現れていないというのは分かる。では何の為に。
そんな俺の様子を見ると1つ頷く。
「やっとちょっと冷静になって頭を働かせてくれたようだね。じゃ、本題だ。徹、君は轟と再戦する気はあるのかい?」
「当然だ、次は必ず勝つ!」
俺は間髪入れずに言い切る。
初代勇者は首を横に振り、言ってくる。
「今の徹が頑張って訓練なりしても勝てる見込みはないよ。しかしだ、俺の剣の修行を徹が受ける気があるなら、剣だけならわずかな望みを繋ぐ力を身に付けられる。どうする?」
一瞬、迷ったがコイツに翻弄されている現状でも頭にきているのに教えなど請えるか!
「断る、自分なりの方法で強くなってみせる」
「そうか、でもこれだけは覚えておいてくれ。俺から修行を受けない限り勝ち目は出てこない。受ける気になったら、俺に会いたいとインプに言いに行くといいさ」
断っているのにまだ言う初代勇者にイラつきを感じる。
「お前なんかの手助けなんかオッパイ!」
へっ?っと自分が言った言葉に混乱する。
初代勇者はクスクスから爆笑に変わり、言ってくる。
「そろそろ、目を覚まそうとしてるようだね。俺が言った言葉忘れないでおくれよ?」
「速攻忘れて、オッパイ!」
言いたい事が言えない気持ち悪さが残るまま、俺の意識が浮上するのを感じると顔にこの世のものと思えない幸せに包まれる。
そして、俺は目を覚ました。
「ここは、まるでオッパイの桃源郷や!!!」
目を覚ました途端、俺は叫んだ。何故、こんなセリフを叫んだのだろうと状況を理解しようとすると素敵なオッパイに顔を包まれてました、マル。
とっさに叫んだ内容はバッチリと俺は思い、このチャンスを逃すまいとこの感触を楽しむ事にする。耳元でミザリーがキャーキャー煩いが気にしない。フワフワの中にしっとりとしたモノが曲者でこのキメ細かさ、いい仕事してます。そうそう、下半身から伝わる、ズンっといった魂が抜けるような激痛が・・・
「ぎゃーー、俺の息子が死んでしまう!まだアドベンチャーしてない息子が!!!」
「おはようございます。兄様、やっと起きられて本当に安心しました」
にこやか笑顔をしてるティティの目元が暗い気がするの見間違いでしょうか?それと先程から前蹴りを素振りされてのか問いたいがあの目で見つめられると余程の事情があるのだと思い聞くのを止めた。
決して怖いからではなく、幸せの塊は遠くに行ったのを確認後、廻りを見渡す。とりあえず絶句した。そこから立ち直るとティティに質問する。
「えーと、どういう状況?」
この場にいない2名の事に気付いていた俺はとても嫌な予感がした。
「簡単に言わせて頂くと、宰相が私達がいない間に自分がユグドラシルの使者を名乗り、部下を使って兄様と私を拘束しようとしたのでルナさんに強行突破して、お父様か宰相のところまで道を切り開いて貰う為に依頼したところ、宰相の部下の兄様の事を悪く言う事にキレてしまわれた美紅さんが暴走して、お父様か宰相を目指していかれました。ルナさんは美紅さんの暴走を止めようとされてたので・・・」
ティティは後ろを眺める。
ん、考えたくはないがきっと答えは分かったね、つまり、アレだろ?困ったもんさ、ハッハハ!
「兄様、現実逃避はお止めください。急ぎ、美紅さんを止めてきてください」
そうは言うが美紅がそこまで怒ったのもびっくりだが、もうあれだけ壊れてる城はどうにもならん。
「まあ、美紅だから人の命まで取ろうとは思わないだろうから丁度いい薬になるんじゃないのか?」
「いえ、ルナさんの見立てではかなり微妙なラインのように感じてられたようです。帰り道でも様子がおかしかったように思いますので、2代目勇者との戦いで引きづってらっしゃるように私は見えました」
美紅は轟に一矢報いる事もできずに殺されそうになったところを俺が助けたそうだが正直、覚えていない。それよりも君が勝てなかったから今の事態を生んでいるんだ、本当に僕の力はいらないかい?とドヤ顔する初代勇者がちらつく。
クソッタレっとドヤ顔する初代勇者に唾を吐きかけたい気持ちを飲み込んで俺はティティに言う。
「俺に何ができるか分からないが行ってくる」
「はい、お願いします。美紅さんをよろしくお願いします」
飛び出す俺にティティはカラスとアオツキを投げて渡して見送ってくれる。
それを受け取った俺は王の間を目指し走りだした。走ってる間に廻りを見渡すと怪我人は沢山いるが死人は出ていないように思うが、美紅にしてはやはりやりすぎのようだ。あいつら2人なら正面突破でも触れさせもせずに王の間に辿りつけるような規格外の存在だ。ここまでする必要はないはずである。
これは思ったより、やばい状況なのかもしれないと身体強化を意識して強めて走った。近道をしようと壊れた場所から一直線に向かう。
王の間の壊れた所から覗くと美紅が火の魔法を無数に打ちまくり、ルナがそれを風を利用して反らしたり防いだりしていたが自分に被弾する魔法があり、おかしいと見ていると後ろにいる王と宰相に向かう魔法を優先に防いでいるようだ。
俺は飛び出して止めようとした時、後ろから抱き締めるようにして手で口を防がれる。目だけで後ろを見ると懐かしい顔があった。水色に近い長い髪を後ろで纏め、所謂、ポニーテールにしている活発なイメージさせる人物がいた。そう、俺に占いの結果を伝えに来て、カラスとアオツキの事を言ってきた、お姉さんだ。正直、なんでこんなところで?と思うが初めて会った時もあんな場所で待ち構えているような人である。考えるだけ無駄な気がしてきた。
「どうして、こんなところに?」
手を話して貰った俺はお姉さんに問いかける。
顎に指を添えると、ウーンと悩んでるそぶりを見せる。
「久しぶりにどうしてるかな?って思って来てみたんだけど、さっきまで様子見てたんだけど、君はしばらく彼女達の本音に向き合う為に聞く必要があると思ったから介入しそうになってる君を止めに来たんだよ」
ここにきた理由はいかにもウソですって感じで騙されようがないが、後半は本気で言っている気がする。しかし、前回の占いの時も思ったが何故、ここまで介入してくるのだろう。1度目だけならモノ好きな占いの名人とかで良かったがそれがとても不思議に思った。
「色々、思う所はあるだろうけど、とりあえず黙って見る」
そういうとお姉さんはルナと美紅のいる方向を見る。
確かに何を話しているかは興味は沸いてきた、すぐにどうこうってことはないだろうから聞き耳を立てる事にした。
「美紅!そんな事をしてまで、王と宰相を仕留める必要あるの?それが徹が望むと思っているの?」
直撃する小さな火の玉に衝撃を受けながら美紅に語りかける。
美紅は涙を流しながら叫ぶ。
「私は何もできない。使いこなせもしない力で道も切り開けない。そんな私ができるのはトオル君の進むべき道の障害物をどけることだけ!だから、お願いです。私ができる唯一の事を邪魔しないでください。引いてください!ルナさん!」
何を言ってるんだ、美紅は?
勿論、俺は美紅という存在に本人が言うような障害物がどけるだけとか思ってない。彼女の良さは優しさゆえに苦しむがそれでも前向きに向き合おうとする心だと俺は思ってた。一旦、2人から視線を切る。
そうか、これがティティが言ってた様子がおかしい所か。2代目勇者にコテンパンにされた事により自分はいらない子のように思ってしまったのであろう。追い詰められた美紅は自分を助けた俺なら自分にできない事をできると信じて露払いをしようとしているのであろう。
だが、どうやらルナも気付いているようだが、美紅はそんな事を思っている自分を否定されたがっている。自分でも間違った事をしてる自覚はあるのだ。だからと言って簡単に否定すると美紅という存在を壊すだけになってしまう。
そんな美紅に俺はなんて言ってやればいいのか・・・いや!
俺は一旦下げた視線を前に向ける。俺が取るべき手段なんて考えるまでもなかった。俺は2人の間を目指して飛び出した。
「頑張れ、徹。君ならきっと為せるよ」
後ろからお姉さんの声がした。
ふと、思う。お姉さんは会った最初の時から俺の名前を徹だと知っていたのであろうか?冒険ギルドで知ったのならトールのはずなのに・・・気になるが今はその疑問を飲み込んだ。
俺がすべき事、為すべき事をする為に特大の魔法を打ち出そうとしている美紅とルナの間に割り込み、切り裂く為にアオツキを握りしめて飛び込んだ。
そして、美紅の魔法をアオツキで切り裂くと2人が俺に気付き、俺の名前を呼んで、それぞれ、バツ悪い顔をしつつもホッとする者、恐怖に顔を歪ませる者と分かれる。
「お前ら、お説教の時間だぞ?分かってるんだろうな!!」
俺は腹から声を出して張り上げた。
感想などありましたらよろしくお願いします。




