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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
1章 こんにちは!アローラ
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5話 初めての街、クラウド

 5話です、よろしくお願いします。

 女の子の声が俺を呼ぶ声に誘われるように意識が浮上するのを感じた。正直まだ眠く俺を呼ぶ声を無視しようと決め込み、寝返りをうつ。

 声の主はまだ諦める気がないようで俺の肩を揺すりだす。


「徹、起きて。準備して出発の用意しないと!起きないんなら力づくで起こすの!」


 夢にまで見た、女の子に朝に起こされるイベントが発生しているようだと寝ぼけた頭で認識したが、所詮は夢と判断して、まだこの夢見を味わうために寝る事にする。

 すると、揺らしてた肩に触れていた手の感触が遠くなったと思ったら、息遣いが荒い感じの呼吸音が耳音でする。もう少し意識がはっきりしていたらおかしいと気付けたのだろうが、俺は寝る態勢に入ってた為気付けなかった。

 顔をペロンと舐める舌を感じる。1度舐めたと思ったら勢いがついたのか激しさが増す。

 さすがの俺も異常事態に気付き、起きようとするが覆い被されて身動きが取り辛い。顔を蹂躙するように舐められて目を開けるのも難しい。舐める位置も顔から首元に移り、シャツの中に侵入してくるのを感じる。


「らめぇぇ、まずは恋人、友達から始める清い関係からで!!徹、大人の階段登っちゃうぅぅ!」


 身悶えする俺を軽蔑するような視線を向ける存在に気付く。


「徹、何を言ってるの?しっかり起きて、目の前のものを見るの」


 その声を聞いて、意識がはっきりしてきてる俺は最初の声もルナのものであった事に気付いた。そして、目の前のものを見るとゴールデンレトリバーのような犬が俺の顔をハッハハっと息の荒くさせ、舐めていた。


 意識がはっきりしてきて思い出してきた。アローラにきて、クマ(おっさん)に連れられて山小屋に来て、イノちゃんを食べた俺達は、神託と勇者の事を聞いてアローラでの当初の目的を得た。で、物置で寝てたら、朝は犬に襲われそうになっていると言う、びっくりな状況が今、目の前にって事である。


「徹、良かったね。その子、メスらしいよ。とっても好かれてるし」

「俺の初めては、巨乳の女の子に包まれていう夢があるんだ、しかも相手は犬とかないから」


 巨乳の件からルナからの冷気が伴う殺気が俺を貫き、後半は尻つぼみになりつつ言い切る。いい加減、学習しようぜ?ルナに胸の話は禁句ってことにはよ。


 しかし、昨日、山小屋に来た時に犬がいたのには気付かなかったな。それを話題転換に使う意味でもルナに振ってみる。


「この犬、昨日いたか?気付けなかったけど?」

「いなかったよ。餌を時々、強請りに小屋に来るってザウスさんがいってたの」


 野良犬ってとこか。ザウスって誰だ?ああ、おっさんの名前がそんな感じだったかもしれない。俺の中で未だに人類(笑)のままである。

 犬の頭を撫でながら、起き上がるとルナに聞く。


「もう街に向かうってことか?」

「朝ご飯を食べてからって話だけど、とりあえず徹、顔が涎まみれだから近くにある湧水があるからそこで洗ってきたらいいと思うの」


 確かに獣臭い涎が顔を蹂躙された俺としても異論はなくルナが示した方向に向かって歩きだす。本当に小屋の傍ってあたりに自然に出来てると思うんだが岩が水で抉れたようで、自然な洗面所といった感じの部分に水が溜まっていた。手を差し込むとヒンヤリとした水が気持ちよい。ついでだから上半身だけでも軽く汗を流す事を決めてシャツを脱ぐ。顔を洗い、水を体に付け、手で切るように水分を取っていく。まあやらないよりマシだろってぐらいに済ませるとシャツを着て後ろを振り返ると恐らく、完全にばれてないと思ってそうなルナが木の陰から顔を真っ赤にして見ていた。

 男だから上半身見られても恥ずかしいとは感じないが、ルナの様子がちょっと怖かった。まあ、あんな世界にいれば見る機会もなかったから興味があったんだろうとは思うが、知らんぷりするべきか、気付かせるか悩んだが、他人にやって致命的な事態に陥らないように気付かせる事にする。


「ルナ、そんなとこから覗かれても困るんだが」


 俺がルナに呼び掛けると、


「ヒャイ、ゴメン、なさーい」


 かなり動揺したような謝り方をしたルナが小屋に向かって逃げて行った。

 あんなのとこにいたせいか、ルナはこの世界の住人じゃない俺より心配な存在かもしれないな。世間を知らない、箱入り娘の常識知らずぐらいの感覚で見ておいたほうがいいかもしれない。


 ルナは何ができて何ができないか早い段階で確認して、もちろん、俺も何ができるか理解、例えば、この世界にある魔法が使えるかどうかなどをする必要がありそうだ。よく言うテンプレって言われるように超人のような力が俺に備わっているかもしれないしな・・・ふっふふ、楽しみだ。(その滾りが中二と気付けないうちは完治は遠い)


 そんなことを考えながら小屋に向かって歩いて、小屋の扉を開けた先のテーブルにルナとおっさんがパンとイノちゃんの塩スープを用意して、俺を待っていてくれたようだ。ルナはさっきのことがあったせいか少し頬を赤くしてスープ皿に視線を合わせてこっちを見ようとしない。意外と腹減って早く食べたいとか思ってるだけかもしれない、この女神は侮れない。


「さっさと食って、街に向かうぞ。イノシシの肉だって早く売らないと腐り始めたら買ってくれないからな」


 俺が席に着くやいなや、おっさんはパンを齧りだす。ルナも釣られるようにスープを掬って飲み始めた。せかされてるようでちょっと落ち着かない気持ちもあったが、手を合わせて「いただきます。」と言ってパンに手を伸ばす。おっさんとルナがこっちを不思議そうに見ていたが、2人とも食事を優先したようで食べだした。

 いただきます、はないかもしれないけど、アローラでは食事の時に言う言葉や、儀式といえば大げさだが祈るみたいなことはないようだ。

 まあ、文化の違いってやつだから、どうする必要もないかと切り替え食事を再開する。

 パンに齧りつくと正直硬い。スープにつけて食べれば柔らかくなるかな?うん、漬けると食べやすくなった。俺がいた世界と違ってパンは硬いのが普通なのかもしれないな。他にも色々違いが出てくるだろうな。多分、味噌があるぐらいだからきっと米はあると思うが、味噌と思ってるのが俺が思ってる感じでなく、味が似てるだけの別物って可能性があるから過信はしないようにしておこう。本当に米なかったらどうしよう・・・せめて、パンがあるなら麦飯とかにチャレンジできるのだろうか?パンにするやつではできなかったりするのかな?米に飢えたらチャレンジする日がきそうだ。


 3人の食事が終わり、おっさんに聞く事にする。


「近くの街までどれくらいでいけるんだ?」

「山を降りて、街までで、今から出たら昼時には着くはずじゃ」

「へぇ、案外近いとこにあるんだな」


 おっさんが、そうじゃないとワシの生活が大変じゃって言うのを聞いて、違いないと返しておいた。山を降り始めたら街が見えるらしい。まあ見えるだけで着くまでには何時間かは歩かないとダメらしい。正直、もっと近かったらいいのにとは思わなくはなかった。


「そうじゃ、忘れる前に餞別がわりにこれをやろう」


 テーブルの上に鞘付きのナイフを置く。


「護身用としては心許なさすぎるが、冒険ギルドで金策するなら剥ぎ取り、採取などに使えるじゃろ。持っていけ」


 ベルトに通して固定するタイプのようだ。早速、装備する事にした。たかが剥ぎ取りナイフなのになんかちょっと興奮してる俺がいる。指抜きグローブがすごく欲しいと思い始めている俺はちょっと病気かもしれない。(察してやってください)


 さっきからルナが静かだなって思ってたら、目の前にいたはずのルナがいなくなっていた。窓の外を見ると俺を唾液まみれにした犬のモフモフを堪能してる女神がそこにいた。女神だよな?なんか本当に自由人みたいな神もいたもんだ。


「着く時間が中途半端にならんようにそろそろ出ようか?おっさん」


 うむ、とおっさんは頷くと、肉を背負い外へと歩き出す。おっさん優しいな、正直、あれを持って山を降るのきつそうと泣きが入りそうだったから・・・惚れてまうやろーーー、そんな展開はないがな。

 モフりまくってたルナに声をかけて、俺達は山を降りて街に行くべく歩き出した。


 歩き出して30分ほど経った頃だろうか?おっさんが俺達を呼ぶと指を差しつつ話しかける。


「あそこに見えるのが最寄りの街、クラウドだ」


 おっさん曰く、それなりの街らしいが俺から見ると分譲売り出し中ってチラシの上空写真で見る住宅地の写真を見る感覚に近い、それよりはでかいが、街という感じはしない。住宅地はあるが、関所前で開かれた露天市場のよう場所のように見える。遠目で確認した限りでは、あれがアローラの水準であれば、中世のヨーロッパのイメージが近そうだ。まあ着いてから判断したらいいかもしれない。


「おっさん、なんか街を壁で覆ってるように見えるのは見間違いじゃない?」

「ああ、戦争も長い事ないし、占領する価値も少ない場所だからいらないようにも感じる場所なんだが、人対策ではなくモンスター対策の意味で壁が作られてるんじゃ。他地域よりモンスターの襲撃が多いらしく、しかも、過去の記録にはドラゴンに襲われた事もあるらしく、ないよりあったほうがという思いから作られておる」


 いるのか、ドラゴン。確かに魔神がいるんだからいて不思議じゃないよな。でも会いたいとは思わないな。知性はあるかもしれないが人間に優しいドラゴンなんてレアな感じがするから関わらないのが賢い。


 そんな会話をした後はルナが迷子になりそうになったり、周りの動植物に目を奪われて、崖に落ちそうになったりした事を除けば、至って順調に進み、山を降り切った。山を降り切ると街の壁が少しづつ近づいているのが分かる距離にきた。山なんて歩きなれていなかった為、正直、根をあげそうになっていた。壁までの距離が歩けば近づいてるという実感が気力を持ち直してくれた。


 自分を奮い立たせて入口が見えるとこまでやってきた。ルナを見るとまったく疲れてないって訳ではなさそうだが、俺より余裕がありそうに見えてなんとなく悔しく思ってしまった。

 入口の門の前に着くと俺より2,3歳上かなって感じのソバカスが目立つ兵士ぽい人が立っていた。


「ザウスさん、こんにちは。今回はいつもより早く街にきましたね。どうかしたんですか?」

「山で迷ってた後ろの2人を保護って訳じゃないが見つけてな、川で事故にあって荷物も流されたらしくギルドで生計を立てるらしいから、そこまでの案内がてら買い物に降りてきたってとこじゃ」


 なるほど、と兵士は言うと


「ザウスさんが変な奴連れてくるとは思わないけど、お前と・・・お嬢さんはしっかりギルドで登録して身分を示すものをちゃんと用意して迷惑かけないようにするんだぞ。今回はザウスさんが保証人ってことで通すってことで処理して良いですか?」

「すまんな、それで頼む」


 今朝から俺の中のおっさんの株は急上昇だな、いつか、礼をしないといけない。しかし、あの兵士、ルナを見た時、思いっきり鼻の下伸ばしてたな。確かに美少女であると思うし否定する気もないが・・・ルナの視線が一瞬強くなった気がした。相変わらずピンポイントに恐ろしい。


「南門の担当のピーターだ。とりあえず、ようこそ、クラウドへ」


 兵士は人好きする笑顔を浮かべて俺達を歓迎してくれた。


 おっさんとルナは街に入っていこうとするが俺は躊躇して踏み出せずにいた。たいした理由がある訳じゃない。


「小僧、早く行くぞ」


 ルナも首をかしげて俺を見てる。

 分かんないかな~結構大事なことだと思うんだが、初めてきた世界の初めての街の一歩目を右にするか左にするかの重要な案件を。

 動かない俺に焦れたルナは俺の所まで戻ると手を取って引いた。


「徹、早く用事済ませてご飯にするんだから行くの」


 この腹ペコ女神め、俺の一歩目の悩みを無視しようなんて。


「待て、待て、急かすな」


 腹ペコ女神に引っ張られた俺は自分の意思ではなく右足から入場を強制されて異世界の初めての街に入った。

 明日か明後日には更新する予定です。

 感想などありましたら、よろしくお願いします。

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