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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
4章 ユグドラシルに導かれた者
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64話 絶対強者

 前話の徹がティティと行動し出した辺りの説明。徹達は辿り着いた場所には行方不明になってたと思われるエルフの女性が乱暴されてた状態で発見され、その場にいた長髪の黒髪の男に同郷の異世界人だろうと言われた徹は何故かその男を2代目勇者と断定する。徹はどうなる?というとこで終わって続きが今回のお話になります。

 では64話になります。よろしくお願いします。

 俺の正面にいる男はニヤニヤ笑いながら話しかけてくる。


「なんで俺が2代目勇者だと思うんだ?2代目がこの洞窟でいなくなって500年ぐらい経ってるはずだ。普通なら死んでるだろ?おめぇ、頭は大丈夫か?」


 小馬鹿にするように言ってくるがさっきから頭で響き渡る警告音が鳴りっぱなしである。こんな奴、1人で相手するような奴ではない。なんとしてもルナ達の合流してあそこで打ち捨てられている女性達を回収して逃亡・・するしかない。正直、ルナ達がいても勝てる相手だとは思えないのだ。


「先日やっと2代目勇者の話を聞く機会を得てからずっと疑問だったんだ。魔神に挑めるほど強いはずの勇者が魔神に縁があるとはいえ、魔神そのものと戦う訳でもないのに逃げ帰ってくる事すらできないという、俺からすれば意味不明の事実が常識として通ってる事にな」


 ほうっと唸ると、顎をしゃくって続きを促す。

 正直、話で時間を稼げるこの状態は有難かった。


「それはこの洞窟を抜けてきた俺だから言い切るが、500年前と中の状況が変わらないなら勇者が死ぬような場所じゃない。罠にかかるかもしれないが力技で切り抜けれると俺は思う」


 男は腕を組みながら頷くと俺に質問してくる。


「確かに、この洞窟はそこまでの難易度はねぇな。それだったらなんで帰ってこなかったと思うんだ?」


 震えるティティに離れて物影に隠れるように指示するが逡巡するような表情を見せたが俺達から離れていった。


「今までのも推測でしかないが、ここからはもっと理屈や証拠がまったく上げられない俺のカンみたいになってしまうが、俺はここで魔神の縁の者と出会い、なんらかの取引が為されたのではと思ってる。例えば、不老不死に近しい何かとかな」


 ヘラヘラした笑いに変わって俺に語りかける。


「うんうん、確かにそれだったら、とりあえずの辻褄はあうわな?おめぇが言うように俺が2代目勇者だとしてもおかしくはないがそれだけだと理由がよえぇーだろ?」


 俺は唾を飲み込む、若干だが視野外だったのに視野に俺を収めたような感じだけなのにプレッシャーが跳ね上がる。


「さっきも言ったがほとんどカンだ。ついでに言うなら俺もお前を見た時、同郷だと思ったよ。それはお前も言ったはずだ。それに今代の勇者は女だし、それ以外で呼ばれてるならルナかユグドラシルが知らないのはおかしい」


 ヘラヘラしてたはずの顔が酷薄な笑みを浮かべる。


「なるほど、なるほど。まあそれで納得してやってもいいんだが、おめぇはそれじゃない理由で俺が2代目勇者だと思ってるよな?」


 明らかにターゲットされたと理解する。気持ちだけでも負けるかと口の端を上げる。


「ああ、お前を前にすると勇者と斬り合う時に受けるプレッシャーに似た感じと同時に魔神と向き合った時に受けた感覚がごちゃまぜになったように感じる存在がいるってだけで充分だろ?前に語った内容なんてこの思いを補完するための理由づけでしかない」


 男は嗤う。とても暗く重い感情をこっちに感じさせ委縮しそうになる。相手はそれを狙ってやってないのは分かってるが余りの邪悪さと力量の違い、強者と弱者の構図がそうさせる。


「おめぇ、面白い奴だな。名前はなんちゅうんだ?」


 ゆっくりと俺に近づいてくる。俺は思わず、1歩後ずさりしてしまう。

 トールだと告げるが男は首を振る。


「そりゃ、こっちの世界で名乗ってる名前だろ?」

「徹だ!お前の名前は何なんだ!」


 腹に力を入れて叫ぶ。

 男はキョトンとした顔した後、ヒャヒャヒャっと笑う。


「マンマじゃねぇーか!分かり易くていいがよ。俺の名前は轟だ。よく覚えておけよ?」


 姿が霞んだと思ったら、俺の耳元で、あの世までしっかり覚えて持ってけよ?と囁きが聞こえたと思ったら腹部を貫くような痛みが走ったと思った時には俺の右側にあった壁に叩きつけられて肺にあった空気を無理矢理吐き出させられていた。


 まったく見えなかった。魔神の欠片と戦った時ですら影のようなモノは見えていた。しかも今はあの時より、身体強化を使いこなしているし、強化幅はもっと上がってるから速度に対する目も前とは比べ物にならないし、ルナや美紅の動きを見る事でかなり慣れてきてると思ってたがコイツは規格外すぎる。


 多分、殴られたのだと思うが腹部のダメージは内臓まで傷ついてはいないようだ。身体強化を全開で守りに入ってた上、情けない事だが逃げ腰になって体重が後ろに逃げてたのが幸いして威力が拡散した為、この程度で済んだようだ。


 まだ戦える体ではあるが、コイツ、轟との戦力比がおかしすぎて勝負という言葉が使えない。完全なワンサイドゲームになってしまう。守るのもできるか怪しいぐらいだ。

 だが、俺には引き下がれない理由がある。勿論、あそこで転がされているエルフの女性の事もないとは言わないが、俺の後方で心配そうに見つめる我が妹に勝てないからとケツを捲る姿を見せる訳にはいかない。

 俺のプライドを捨てれば全てが救えるならいくらでも捨てる。足だって舐めてみせる。しかし、目の前の男にそんな事をしてもまったくの無意味。仮にやったらこっちが嫌がる事を余計にやると分からされる表情をしている。


 奴の楽しみは蹂躙する事の一言に尽きそうである。女性を襲うのも性欲からというより蹂躙するのが楽しいのであろう。


「まだ壊れてないようで何よりだぜ?」


 またあの酷薄な笑みを向ける轟。アイツにしたら俺は玩具と同義なのであろう。悔しいがそれを否定できないぐらいの戦力比がある。ルナ達が来ればみんなを助けて逃げれるかと思っていたが各自離脱ですら覚束ない恐れが出てきた。

 俺は決断する事にした。


「ティティ!俺がコイツを相手にしてるうちにルナ達と合流しろ!」

「分かりました!きっと連れてきます」


 俺は奴から目を離さないようにしながら首を振る。


「いや、合流したら、ルナ達と一緒に洞窟を離脱・・するんだ!」


 後方で絶句するティティの息遣いで分かる。あの幼い歳のティティに苦渋の選択をさせる俺は酷い奴だとは思う。しかし、それしか助かる術がない。


「そんなの嫌です!」

「その気持ちは嬉しいが気持ちだけではどうにもならない事もある。ティティ、兄としての命令だ。ルナ達と合流して逃げろ。俺の妹を名乗るなら兄の指示ぐらい聞いてみせろ!!」


 俺は有無を言わせないとばかりに声を張り上げる。

 ティティが走る去る気配を感じ、俺は呟く。


「ティティ、すまない」


 轟は俺から視線を切り、走り去るティティを見ていたが追いかける仕草は見せずに見送っていた。


「見逃してくれるんだな」


 俺がそういうと視線を戻すと軽そうな笑みを浮かべて言う。


「ああ、普段なら間違いなくすぐ壊れると分かっても逃がさず遊ぶんだが、今日は特別だ、もう何十年いや何百年か?それぐらいぶりに楽しいおめぇみたいな奴に出会ってしまったのにあんな小物で遊んだら興ざめもいいとこだ。女を蹂躙するのもちょっと飽きてきたところなんだわ。最近、燃えてないんだ、楽しませてくれよ?」

「そんなにハードル上げないでくれよ。緊張するだろ?」


 気持ちで負けないように軽口を叩く。


 轟はニヤっと笑うと人差し指をクイクイと動かしてかかってこいと合図をする。


 ティティ、そしてルナ達に心で詫びる。ここで1人で離脱して全てをお前達に任せてしまう自分の不甲斐なさを恨みながら。

 ルナのいた場所に召喚されて現れて、ルナを誘ってアローラに降り立って、おっさんに出会い、クラウドで四苦八苦しながらやった冒険ギルドの仕事。そして、魔神の欠片を倒して美紅と出会い、一緒に初代勇者の足跡を追いかけた。まだ、始ったばかりだと思っていたのに何も形にする事もできなかった。ティティ、兄として色々やって可愛がってやりたかったが結局傷つけるだけになってしまって本当に申し訳ない。宣託で選ばれた俺があっさりここで離脱してしまう状況を廻りの奴らに知られたら信用問題などでも叩かれるのだろうなっと思うと心が痛い。

 でも、今できる俺の最善がこれだと信じている。それでも見苦しいと自分でも思うが、もう一度会いたかったと思う。そして、もう一度、詫びる。許してくれと。

 俺は腹に力を入れ、視線だけで轟を殺すつもりで目力を意識する。そして、最後にカラスに呼び掛ける。


(悪い、最後まで付き合わせる事になる。こんな情けない主ですまない)


-付き合わせるとか言うではない。我は主と最後まで共にするモノだ。それに負けるつもりでやるのではないのであろう?-


「当たり前だ!!」


 俺は声に出して叫ぶ。

 もう後の事なんか考えない。全てを出し切って明日の事は考えない。今、自分にできる限界を引き出す事だけを考える。自分の中にあるリミッターを意識的に外す。魔力を暴走させるように身体強化を施す。

 俺はケモノだ!ただ、目の前の奴の喉元を食い千切る事だけを考えて力を溜める。


 そんな俺の様子を見て轟が狂気な笑み見せる。


「これは予想以上の食べ応えがありそうだなぁ!こいよ?」



 ティティが合流してルナ達と脱出するまでの時間を稼ぐ為の尊く、そして未来のない戦いをする為に俺は口の端を上げて轟に全力で飛び込み斬りかかって行った。

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