53話 ユグドラシルの使者と私の導き
では53話になります。よろしくお願いします。
行き先は分からず、なんとなくで根拠がないまま俺は少し丘になってるとこに建っている家を目指して走っていると、扉の前に人影がある事に気付いた。
「黒装束達と女騎士が戦ってるの。女騎士の劣勢なの」
黒装束は5人いるの、と俺に伝える。
どうやらルナにはとっくの前に見えてたようで俺に教えてくれる。黒装束というところに引っかかりを受けるがルナに言う。
「女騎士を助けるぞ!」
「当然なの!黒装束とか黒一式の格好なんて疑ってくれって言ってるようなものなの・・・徹は別だからね?」
ルナのフォローがちょっと悲しかった俺は近いうちに黒の統一した服装を改めるべきかと真剣に考える。
それはともかく、俺はその女騎士がいる所へと足への身体強化を意識して強め全力で走りだした。なんなく着いてくるルナと俺は到着する。
「助太刀するぞ、そこの女騎士」
女騎士をチラ見して確認しようとすると、思わず二度見してガン見してしまう。なんてエロい体したエルフなんだ。もう鎧からポロリもあるよ?って思わず聞こえてきそうなビキニアーマー。とてもいいものです!
「本当に助けにきたのか?本能が黒装束よりお前を消せと訴えてきてる気がするんだが」
「大丈夫なの。黒装束達をなんとかするまでは安全を保障するし、終わった後ならやらかそうとしたら私の拳で黙らせるから。それより、徹、前にいる黒装束を見るの。あれってあの時の奴らと一緒みたいなの」
あの時って?まだ頭の中を占めるオッパイアーマーで一杯になってる俺は前を見る。ピンク色に染まってた自分の頭に冷水を被せられるような感覚になる。こいつらクリミア王女を襲った奴らと同じだ。となるとさっきのゴスロリの子も同じ奴らってことになりそうだ。つまり、これって・・・その前に確認だ。
「おい、女騎士」
「女騎士というな!私はミザリーだ」
「OK、ミザリー。ちなみに俺はトールだ。確認させてくれ。お前が守ってるのはこの周辺というか、後ろの建物にエルフ国の重鎮か、もしくば秘宝があるのか?」
さっきまでの好色そうな目ではなく真剣な目になってるのを見てどもりながら答える。
「ど、どちらとも言える。第1王女であり、ユグドラシルの宣託の巫女でもあられる」
なるほど、もう確定かもしれない。このモンスターパニックもどきを起こしているのはエコ帝国だ。落ち着いて考えれば、第3王女のゴタゴタを理由に断るのはやはりおかしい。むしろ隠しておきたい内容であるし、多少無理してでも救援するというのは国としての面子に関わるはずだ。何もエコ帝国に隣接してる国はエルフ国だけではないのであるから、今回の断るという行動にはリスクが発生してたはずだ。それでもやったという事が目の前の事態を生んでいるようだ。しかし、何の為に?まだ必要なピースがあるようだが、目の前の奴らを何とかしよう。
「よう、先日はお前らのお仲間さんにお世話になったものなんだけどさ?今回もお世話になるのかな?」
戸惑いを見せる黒装束達。俺という存在に敵として扱っていいのか、協力者と扱っていいか迷いが生まれているのであろう。
俺はトドメを差す事にする。
「クリミア王女を襲った奴らは何人帰ってきた?」
「汝を敵と認識した!」
そういうと四人が同時に俺とルナに襲いかかる。2人づつ別れて攻撃してくる。俺に襲いかかってきた奴らの1人目をかわすと2人目の胸へと剣を突き立てようとするが、腕で払うように弾かれる。腕に何か仕込んでるな?と渾身の力でカラスで頭目掛けて振り抜く。黒装束は腕をクロスするようにしてカラスを受け止めようとするが、振り抜く前にアオツキを黒装束の首元へと投げる。首に吸い込まれるように刺さると血が噴き出すと仰向けに倒れて行く。
「次っ!」
俺は後ろを振り返ると手を払うルナがどうしたの?といった顔して俺を見つめる。ルナの足元には3人の黒装束達がいて、どうやら、ワンパンでやられたらしい。有難いのに有難くな気持ちって・・・
微妙な気持ちになりながらオッパイアーマーもといミザリーの傍に行くとミザリーの隣に小柄の子が立っていた。
近くに寄ると、その子は女の子と気付く。まだ10歳になったかどうかの子供のようだが、冒険者風の格好をしているが違和感が拭えない。緑の髪を地面に着きそうなほど長い髪を後ろに流し、よく見るとオッドアイの可愛い子であった。
俺に視線をロックしたようにルナに一瞥すらせず、何かを確認するように見つめ、向こうから俺に近づいてくる。それを見たミザリーは止めようとするが、ミザリーを見ずに掌で止めるなという意思表示するようにミザリーに向ける。
そして、俺の前に来ると両膝を着いて、教会とかでみかけるような手の組み方をして、神前で目を一旦下げるような格好をしたかと思えば、再び俺を見つめて口を開く。
「お待ちしておりました。ユグドラシルの使者よ、そして、私、ティテレーネのユグドラシルの導きよ」
へっ?っと俺は呟く。きっと俺の今の顔は埴輪のような顔をしているだろう。
どういう意味?っとルナに聞こうと思って顔を向けるがルナも俺と似たような状況というか埴輪ってた。
1人、大慌てな人物がいた。ミザリーである。
「姫、ユグドラシルの使者のお話は伺ってましたが、いきなり導きと言われるのはどういうおつもりですか!」
「そのままの意味です。ユグドラシルの宣託でも伝えられてましたが、会って見て自分でも確信いたしました。彼は私のユグドラシルの導きです」
状況が飲み込めない俺は介入しづらいが頑張って介入してみる。
「すいません、状況が飲み込めないんで説明して頂けませんか?」
「煩い、黙れ、今、聞いた事は全て忘れろ」
頑張ってみたが見事にミザリーに粉砕される。くそう!このオッパイアーマーめ、おっぱいは素晴らしいのに優しさがなさすぎるぞ。
いつか、揉んでやると誓っている俺に触れる手があった。
「いえ、覚えていてください。そして説明をむしろ私のほうが聞いて貰いたいのです。しかし・・・」
ティテレーネは結界があるほうを見つめる。
「もう、結界も持ちません。エルフ国の王都、エルバーンに来ては頂けませんか?説明もそこでさせて頂きたいのです。見て頂きたいものもありますし、何より私の言葉を信じて貰えると思います」
うーん、と悩んでいると後ろから俺とルナを呼ぶ声がする。振り返ると美紅が合流してきたようで走って俺達の傍まで来る。
俺達を見て、美紅は聞いてくる。
「あの、今の状況と目の前の方達の説明お願いしていいですか?」
俺も状況整理するつもりで美紅に説明する。
説明を受けた美紅が提案してくる。
「そちらの方達と行動を共にするかは後回しにしても、今、クラウドに戻るのは得策ではないと思います」
「どうしてなの?」
ルナが疑問に感じて聞いた。俺も同じ事を思ったから美紅の返答を待つ。
「相手の黒装束を1人逃がしたのですよね?だと、私達の行動は筒抜けで帰ったら、知り合いを人質にして拘束、殺害される恐れが高いと思ったからです。なんらかの手、もしくば、知り合いに注意するようにと伝える手段を講じてからじゃないと危険だと思います」
なるほど、そうなると帰るという考えは今は捨てる必要がありそうだな。ミランダ達が危険に陥る未来は見たくないしな。
「じゃ、行き先もないし、誘われてる事だし、エルフ国の王都に行くでいいかな?2人共」
「はい、それでもいいと思います」
「私もそれでいいと思うんだけど、もう悠長な事言ってる時間なさそうなの。結界も完全に消えるの!」
やばいなっと思った俺がミザリーに王都に向かう道を聞く。俺を睨むようにしつつも律儀に道を教えてくれる。
「じゃ、急ぐか!ティテレーネ王女、急ぐから悪いけど抱っこするぞ」
左手で持ちあげる。ティテレーネ王女は俺の首に捕まった。
3人、特にミザリーが煩いが弾けるような満面笑みのティテレーネ王女は俺に言ってくる。
「ティティと呼んでください。王女も姫もいりません。ただのティティです。導きのあなたの名は?」
トールだっと笑顔で伝えると俺は王都があるという方向へと走りだす。モンスターが行く手を塞ごうとも蹴散らすのみである。
私が初めてトールを見た時、胸が締め付けられるかのようなトールの悲しみと焦りが襲いかかってきた。トールという人物はとても優しい。その優しさゆえに今、とても傷ついている。ひたすらに、がむしゃら行動する事で紛らわせようとしてるように見える。おそらく一見するといつも通りに見えるという困った人物のようだが、傍にいる2人はなんとなくでは気付いているのではと思う。
きっと私がトールを癒してみせると意気込み、ギュッと抱きつく。
モンスターを切り捨てて進む今の状況でもまったく自分の身を心配するという気持ちがまったく沸かず、場違いな事に悩んでいた。
高鳴るこの胸の鼓動がトールに気付かれないといいなっと目を瞑ってトールの存在を感じていた。
感想などありましたらよろしくお願いします。




