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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
4章 ユグドラシルに導かれた者
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49話 モンスターパニック

 では49話になります。よろしくお願いします。

 俺はさっさと食事を済ませて、2人を急かしてマッチョの集い亭を出た。

 出てからルナが、ねぇ、さっきなんでミランダは笑ってたの?としつこいので頬を左右から引っ張ってムニムニする事で封殺する事に成功したが、今の態度で美紅にはなんとなしに気付かれた気配があり、俺を見つめつつ微笑ましそうに見られる始末で居心地の悪さを感じつつ、特に目的も考えずに出た為、どこに行こうかと思っていると美紅が助け舟を出してくれる。


「冒険者ギルドに行きましょう。シーナさんに会ってトオル君が見たというエルフ絡みの話と、Aランクの事とかも聞いておきたいですし」


 特に行きたい場所が思いつかなかったので美紅の意見に従って俺達は冒険ギルドへと向かった。



 冒険者ギルドに着くといつもと違ってピリピリとした雰囲気が全体を包んでいた。あちこちで仲間同士で話し合いをしてる姿が見える。


「何かいつもと様子が違うの。とりあえずシーナのところに行って聞いてみようよ、徹」


 入口で棒立ちして聴き耳立てても意味ないし、カウンターへと歩いて行った。

 カウンターに行くといつもなら誰かしらどこかの受付嬢に対応されているのに関わらず、誰もおらず、受付嬢達は全体に暗い雰囲気を振り撒いていた。その中でも特にシーナが酷く、よく見るとシーナを意識してか廻りの受付嬢達はシーナにチラチラ視線を送っていた。

 辺りの雰囲気のおかしさに若干尻ごみしつつも、シーナの前に行くと声をかけようと、あのーと言ってみると、俯いてたシーナが弾かれるように前に乗り出すように話しかけてくる。


「緊急依頼を受けて頂ける・・・あ、トールさん、受けて頂けるのですか!」

「ちょ、ちょっと待って、緊急依頼って何?ギルドの雰囲気がおかしいのと関係あるの?」


 乗り出した体を椅子に戻すと、そうですか、まだ知らないんですね、と呟いた。


「シーナ、まずは緊急依頼って何ってとこから説明してくれない?」


 ルナがシーナさんに聞いてくれる。正直、あまりの必死さにどこから聞いたらいいものか悩んだから助かる。


「はい、まずは緊急依頼というのは多くの人命、街、村、場合によっては国に危機に瀕した時に発令される依頼です。強制ではないのですが冒険者は参加の要請をされます。状況が状況の出来事ですが、この依頼は達成するとギルドの覚えは良くなりますが、報酬が雀の涙ほどにしか出ないという人気のない依頼になります。危機に瀕したという相手から報酬を毟り取るというのは難しく、ギルド単体からの気持ちだけになる為です」


 ここまで、話をしてシーナさんが辛そうに眉を寄せるが続きを話す。


「今回の緊急依頼はエコ帝国とエルフの森の境界にあるエルフの村にあるダンジョンの機能が壊れたらしく、壊れた時に起こると言われている、モンスターパニックが発生しました」

「モンスターパニックって何?」


 聞いた事のない言葉が出てきたので俺は聞いた。


「ダンジョンのモンスターはなんらかの力でコントロールされているそうです。しかし、ダンジョンの機能がおかしくなると統率できなくなり、ダンジョンを出て暴れまわると言う事の総称です」

「なるほど、で、ギルドとしては何を求められているんだ?」


 なんとなく嫌な予感がするが聞いてみる。


「エルフの国としてエコ帝国へと救援依頼をしましたが、第3王女の、身内のごたごたで手を貸せないと突っぱねたので、ギルドへ、緊急依頼をしてきました。モンスターの大半が魔法の抵抗が強い種のようでエルフの軍隊は大軍を相手に拮抗するのがやっとで救出に動く事もできません」


 確か、エルフの国とエコ帝国は南門の向こうにあるおっさんの住んでる山側の反対の奥あるって聞いた事がある。隣接した国の要請を突っぱねるか?普通。

 くそう、今回の事でもそうだが、美紅の件、王女の件についてもエコ帝国には良い印象は持つのは無理だな。


「それで内容になりますが、大軍を引きつけている間、今から2日以内に住民を避難させるのが依頼になります」

「何故、2日以内なんですか?」


 美紅がタイムリミットについて聞く。


「エルフの国は村にですら、緊急用の結界があります。あの規模のモンスターパニックを防ぎ続けられるのは後2日が限度のためです」


 これは大軍を引きつけているとは言え、これは達成困難とみんな判断して受付に誰もいないのであろう。もしかしたら受けた冒険者はいないかもしれない。


「で、クラウドの冒険者ギルドからはどれくらいの戦力が出るの?」


 ルナがそう聞くと、シーナさんが俯いて、短い沈黙の後、ポツリと言う。


「・・・0です。誰も依頼を受けた方がいません。トールさん私、酷い事を言っている自覚はあります。でも聞いてください。あそこには私の家族が住んでいます。どうか、私の家族を助けてください」


 お願いしますっと言いつつ崩れ落ちるシーナさん。廻りの受付嬢のあの反応はこのせいか。

 俺は振り返って、2人を見つめる。2人は穏やかな顔して俺を見返してる。


「ワリィ、巻き込んででいいか?」


 苦笑いをして2人に頭を下げる。


「徹の思ったままに動くといいと思うの」

「どこまでもトオル君に着いて行きます」


 俺は2人のその言葉を有難く受け取り、廻りでグダグダやっていた冒険者達に目を向ける。俺達の話を聞いていてどうするか気になってか、視線がこっちに大半向かっていた。その様子にカチンとくる。


「テメェラ!ここで何をやってるんだ!国同士のやりとりなんか知らねぇよ、俺達の隣人が助け求めてきてるのに、ここでグダグダやってて助かると思ってるのか?」


 ギルド中に響く、俺の声を受けて、その場にいる冒険者達は強制じゃないとか命を切り売りするのに割が合わないなどピーチクパーチクと囀る。


「うるせぇ!結局、お前らはビビってるんだよ!平時は良い顔して隣と付き合って、いざ、大変となるとそいつらを見捨てて、理由見つけて自分に言い訳してるっていい加減認めろよ。本当はお前らも分かってるんだろ?」


 俺の言葉に言い返す奴ら次第に減っていく。冒険者達の間を俺は闊歩する。


「ビビってる事が悪い事じゃねぇよ。隣人より大事なものがあるだろう、否定しねぇよ。股の間にあるものを股で挟んでベットで2日ほど寝てろよ」


 そして、冒険者ギルドの扉に手をかけると振り返り、ニヤリと笑って叫ぶ。


「ベットで寝てるのが暇だっていう馬鹿がいるなら、俺は3時間後に南門から出発する。着いてきたい奴はこい。俺は来た奴らに「俺が冒険者だ!!!」って気持ち良く叫ばしてやるぜ?」


 俺はそのまま、冒険者ギルドを出ていった。



 トールが出ていった直後に起こる。その場に残った大半の者達が起こす怒号。

 ちょっと強いからってガキが調子乗りやがってとか、俺をチキン野郎呼ばわりしまま無事で済まさねぇ!などの叫ぶ者も入れば、仲間内で短く話しあいをしたかと思えば、受付に来て、依頼を受ける意思を示して、ギルドを飛び出す者も現れた。

 更に怒号を挙げてたパーティ達の大半も依頼を受注してギルドを急ぎ足で出ていく。


 トールが来るまで、絶望に囚われかけてた、この状況をトールがひっくり返して出ていった。時間にして5分とかかってないと思われる。人が言う運命、エルフではユグドラシルの導きと言う言い回しを使うが、まさに今、目の前の出来事を私はユグドラシルに導かれてやってきた者ではないかと思ってしまった。

 もし、トールがユグドラシルに導かれし者であったら・・・私は一生、トールの為に生きると決めるだろう。例え、思いが届かなくとも、ただ、貴方のヤドリギでありたいと。


 エルフは一度、思い人を決めると死別しようが何をしようが意思を変えない。それがこのアローラのエルフの生き様であった。



 急ぎ、俺達は準備に追われた。追われた先の店などで冒険者にすれ違う度に立ち上がってくれた人がいるということに頬が緩むが今はそんな事をしてる場合ではない。

 あっちこっちで準備に追われているとグルガンデ武具店の前を通りかけた時におっちゃんに呼び止められる。


「急ぎ、準備してるってこった、行くんだな?」

「ああ、時間が押してるから悪いけど行くわ」


 話を切り上げようとした時、おっちゃんは入り口に立てかけてた両手剣を美紅に投げる。

 美紅は慌てて受け取る。


「嬢ちゃんが前より自分と向き合う覚悟が出来てきたというなら武器を差し替えていけ。武器の調整は今使ってるやつと同じようにしてある」


 美紅はおっちゃんの目を見つめて、美紅は目を細めてその剣を抜き、見つめる。美紅の瞳が意思の閃きといっていいのか紅く煌めいた。


「この剣を使わせて貰います」


 そういうと背中にある今まで使ってた両手剣をおっちゃんに渡す。


「今ある材料でできるワシの最高傑作使いこなしてみせろ、いいな、嬢ちゃん」


 そういうとおっちゃんは店に戻っていった。


 俺が美紅を見つめると頷き返してきた。さあ、俺達の時間は有限だ。

 俺達は再び、準備に街中走りまわった。



 準備が済んで、マッチョの集い亭に帰ってくるとミランダが言ってくる。


「行くのね。エルフの国へ。」

「ああ、行ってくるわ」


 モンスターパニックが起きたと聞いた時からこうなる気がしてたわと言い、お弁当を俺達に渡す。


「気を付けて行ってくるのよ」

「おう、頑張ってくる」


 そう言う意味じゃないのって嘆くミランダにルナが行ってきますと手を振る。美紅はおじぎをしてから俺達は南門に向かった。



 南門に着くと俺を見て黙って頷く者、罵る者、そしてこっちに敢えて視線を向けないツンデレさんなどがいた。50名ぐらいいるか?思ったより集まってびっくりだな。


「待たせたか?人間の心意気、いや、クラウドの冒険者、ここにアリってエルフに胸を張って示してこようぜ!!」


 俺は拳を突き上げ、叫ぶ。

 血管が浮き出るぐらいに叫ぶ者もいれば拳を鳴らす者、声を出さずに拳だけ挙げるツンデレさん。



 俺達はエルフの国の国境にある村、シーナさんの家族のいる村へと南門から出発した。

 感想などありましたらよろしくお願いします。

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