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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
3章ー2 初代勇者の足跡を追え!
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46話 初代勇者からのメッセージ ①

 タイトル通り、初代勇者からのメッセージの最初になります。次話が②っとかってオチじゃないので安心してください。

 では、46話になります。よろしくお願いします。

 結界が解けたと同時に私は徹へと駆け寄る。息と脈を調べて、まだ間に合うと回復魔法を唱えようとするが失敗する。徹を見る私の視界がぼやける。泣いているからという事も気付かないまま、何度も回復魔法を唱えようとして失敗する。


「ルナさん、落ち着いてください。そんな状態じゃ、どんな簡単な魔法も発動しません」


 私ほど回復魔法が得意ではない美紅が魔法を行使しながら言ってくる。

 そんな事を言ってくる美紅に私は噛みつくように言い返そうとして顔を見ると泣くのを我慢して、唇を噛みきってしまい血が口から流れる姿を見て、我に帰る。辛いのは自分だけではないと、やっと気付く。

 私は深呼吸を1つすると、精神集中して改めて回復魔法を唱える。今度は発動して徹は光に包まれる。


「ごめん、美紅」

「いえ、気にしないでください」


 そう言って首を振る動作で瞳から涙が零れる。


 魔法を行使しながら徹の顔を見る。もう涙は流れてないのに未だに泣いているような顔をして眠っている。

 どうやら、私達の声は届いてなかったようだが、逆にこっちは全て隣にいるかのように聞こえていた。おそらく、あのドラゴンの仕込みであろう。

 徹の苦悩までがしっかり伝わってきて、誰か助けてくれと叫んでいるように私は感じた。

 もちろん、すぐ傍に行って支えてあげたかった。しかし、あのドラゴンが張った結界を破る事は叶わなかった。

 徹はドラゴンの命を賭した思いに応えるべく、剣を取った。

 ドラゴンは気付かなかったようだが、徹は左手を折られて接近戦に挑んだあたりで既に意識はなかった事に私は気付いていた。

 徹はいつも誰かの思いを守るために立ち上がるような男だと思っていたが、あそこまで貫く男とはいつも傍にいて気付く事はなかった自分が恥ずかしい。

 こんな状況なのに、まだまだ、私が知らない徹がいる事に少し嬉しかった。



 回復魔法は確実に効果を及ぼしているはずなのに一向にトオル君はは目覚めない。既にどこにも異常はないはずなのにどうして?

 眉間に皺が寄ったり、歯を食いしばったりしてるトオル君をみてある予想が頭に閃く。

 辺りを慌てて見渡す。すると正面に光のモヤが現れる。


「徹ほどではないがお前もカンが悪くないようだな。今代の勇者だな?」


 思わず、身構える私を見て、ルナさんが美紅?と不思議そうに見ている。私にしか見えてないのか。


「もう、何もできんよ。それに今の我は名残でしかない。すぐ消える。徹は今、我の記憶を見ている。見終わったら起きるからそれまで心配せずに見守っていればいい」


 そう言うとドラゴンは消えていこうとする、ドラゴンを捕まえてもっと詳しい話をと思って手を伸ばすが捕まえられずに霞みのように消えた。


 心配でトオル君を揺すっているルナさんに今、見て、聞いた事を話す。


「どこまで徹を苦しめたら気が済むというの!」


 唇を噛みしめて耐えるルナさんを見て、同じ思いも抱いたがそれに応えたのはトオル君だ。きっと乗り越えて帰ってくる。私の可能性はこんなところで潰れたりしない。目覚めの時を待つ為にトオル君の傍で2人で待ち続けた。




「どういう事だ。もう我と会うのが最後かもしれないというのは!」


 フレイが目の前で背中を向けている黒髪の男に怒鳴りつける。

 なんだ、これは、場所はさっきの洞窟の入り口のようだが雨が降ってる中、フレイとエルフの女性はその黒髪の男に詰め寄っている。


「そのままの意味さ。俺は次にお前に会いに来たくても来れなくなってる。きっとな?勿論、そうならないように足掻いてみるが希望は薄いな~勇者って呼ばれててもできる事と出来ない事があるってことさ」


 振り返った男の顔は爽やか系の線の細いイケメンであった。こいつがもしかして初代勇者か?確かに顔で勝てる気はしないからフレイの言う通りだったぽい。


「貴方の魔神討伐戦時からの行動は理解が追い付かない事が多すぎます。だいたい、魔神も分割封印しなくてもあなたなら完全消滅させる事ができたはず、何故、わざわざ、手間で後世に憂いを残す方法を取ったのですか!」


 巨乳のエルフが胸を揺らしながら初代勇者に詰め寄る。俺だったら即答でなんでも答えただろうが初代勇者は、飄々とした態度でエルフの女性に返答する。


「それについては、君に頼みたい事に絡むから後で説明するから待ってくれないか?今はフレイに頼みたい事があるんだ」


 視線をエルフの女性からフレイに移す。


「俺はこの剣を触媒にして武器を作り直すつもりだ。その武器を持って俺が現れたら、何も問題ないが、俺以外の者が現れたら、そいつを試し、そいつの超えるべき壁となり力になってくれないか?」


 先程の飄々とした顔がどこにいったとばかりの苦しそうな顔をして頼む。


「どういう事だ?我は嫌だぞ、お前以外のものと旅に出るのは」


 難色示すフレイに初代勇者は首を振る。


「いや、力、そのものになってくれと言う事だ。フレイ、俺にその命くれないか?」


 初代勇者はフレイに土下座して頼む。


「お前がそこまですると言う事は女神の為か。友の頼みだ。この命でいいなら好きにするが良い」

「すまない。もし、俺が持って来なかったらそいつが現れるのは100年後か1000年後か分からん。待ってくれるか?」


 フレイは二言はないと初代勇者を睨む。そして、我はどこで待てばいいと聞いた。


「魔神と戦ったあの場所だ。あそこに、そいつに送るメッセージを残しておいた。持つべき者が持てば必ずそこに現れる。余計なやつにあの場を見られたくない。結界で封鎖してその前で待っていてくれないか?」

「なるほど、だから我に頼むということになるのか。1つは理解した。他の事は理解させてくれないのか?」


 すまない、と頭を再び下げる初代勇者にフレイは嘆息1つで許す。


「ただ、そいつを目の前にした時にお前は悟ると俺のカンがいってる」

「それを聞くと安心する。分かった。その時を待とう」


 そして、ブラックアウトするように周りの景色がなくなり、白い世界。ルナがいた世界とちょっと似てるけど違う場所に俺とフレイが対面していた。


「さっきのはなんだ!お前は何故、命を捨てないといけなかった」

「さっきのは魔神討伐戦後1年ぐらい経った時の我の記憶だ。我は命を捨ててなどない。種を撒いたのだ」


 そう、俺に言って目を瞑って、続ける。


「徹という男の未来に繋げるという大きな意味を持った我の思いはお前の中、そして・・・はっはは、その先はすぐにお前も知る事になる」


 俺に背を向けるフレイ。


「アイツの足跡を追え、追えば、お前が今、知りたいと思ってる事はだいたい分かるはずだ」


 インプに続いてフレイまで、何なんだ!初代勇者の足跡、足跡と・・・


「徹、アイツを恨んでやらんでくれないか?アイツも断腸の思いだったと我は思う。その思いを知るためだけでもいいから、追いかけてやってくれ」


 言いたい事を言い切ったといった顔をしたフレイが、俺を軽くトンと前から押す。すると、俺は真っ暗の場所に飛ばされて落ちてる実感する。


「さらばだ、徹」


 フレイのその言葉を最後に落下から急浮上するような慣性を無視するような体験をした。



 私は徹を見つめ続けて1時間ぐらい経っただろうか?良く見ると徹の瞼がピクピクさせている。目覚めようとしていると気付いた。

 前を見ると美紅も気付いたようで、2人で徹を呼び掛ける。その呼び声に反応したのか徹は目を覚ました。



 どうやら、あの世界から現実に帰ってきたようだ。起き上がって、2人を見ると、かなり心配かけたようだ。折れたはずの左手も治っている。だいぶ無理をさせたかもしれない。

 ルナを見るとまだ拳の傷がそのままになっているのに気付き、


「美紅、ルナの手も頼む」


 2人して、あっと忘れてたみたいな顔をする。本当に良い奴らだ。


 治療を開始したのを見て俺は立ち上がる。


「どこにいくの?徹」


 治療を受けているルナが俺に問いかける。


「俺へのメッセージがあるらしい。それを見てくる」


 なら私達もと付いてくる2人。


「手の治療はいいのかよ」

「歩きながらでもできますよ」


 少し困った顔して言う美紅を見て本人もじっとしながらやったほうが効果高いと気付かれているだろうと分かってて言ってる。

 俺は2人の好きなようにさせる事にする。


 結界で封鎖されていた場所に入ると、コルシアンが既に入って調べ回っていた。


「目を覚ましたのかね?良かったよ」


 作業をしてた手を止めてこっちにきて背中をポンポンと叩く。

 俺は有難うございますと伝える。


「それはそうと、まだ調べてる最中だが、私の研究が一気に進みそうだよ」


 ホクホク顔のコルシアンだが、すぐに暗い顔になる。


「だがね、あの中央にある石碑に書かれている文字がまったく読めないのだよ。多分、文字だと思うんだが」


 おそらく、それが俺へのメッセージだと直感する。

 俺はコルシアンが言う石碑の前に立つ。


「あ、これ、日本語じゃないですか?でも私は、ひらがなを読むのが精一杯でなんて書いてるか分からないですが、トオル君なら分かるんじゃないですか?」


 そう言って俺を見る美紅。

 俺はそのメッセージに目を走らせる。そのメッセージを読み切ると、俺は石碑を殴りつける。


「ふざけるな!フレイの命を賭してまで守らせ、俺に伝えさせたのがこれかよ、引き下がれないならだって、とっくに引き下がれないようにさせてから言うのか!この卑怯者!!」


 そう怒鳴る俺を見つめる3人にはなんで怒っているか分からないのであろう。

 その石碑にはこう書かれている。



 これを読めているという事は同郷の者であると思う。


 最初に読んでる君に問いかける。


 君に神を殺す覚悟があるか?


 引き下がりたいなら今の内にしとくといい。


 引き下がれないという、君へのメッセージだ。


 エクレシアンの女王を尋ねよ。


 再度、問う。今が引き返す最後のタイミングだ。


 強制はしない。君の心のままに。



 本当にふざけている。俺はとことん初代勇者を嫌いになれそうだ。

 もう一度、石碑を殴りつけた。

 感想など良かったらよろしくお願いします。

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