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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
間章 帝国のはみだし王女
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42話 第3王女の1歩、今はすれ違っても

 では42話になります。よろしくお願いします。

 闇に包まれた森の中を突っ切っているとクリミア王女との距離が近づいているのが分かるがまだだいぶ距離がある事に苛立ちが生まれる。チラっと隣の崖を見るとかなり高いと思われる。闇の中だから余計にそう感じるのかもしれないが希望的観測は無理だとカンが訴える。しかし、そこを通ればショートカットできるのは間違いないのは分かってるが・・・


「ええい!男は度胸!!ルナに紐なしバンジーさせられた崖よりは余裕で低いからいける!!死なないよね?」


 ルナによる特訓で得たトラウマが疼くが自分を奮い立たせる。俺は涙目になりがながら闇に包まれた崖に向けてヤケクソになりながら飛び込んだ。



 一方その頃、囚われたクリミアは拘束され、縛られた状態で2人の男に担がれ、後方を確認してる1人の合計3人によって連れ去られていた。

 シュナイダーがいなくなってすぐ現れたこの3人を見た時には、ここで殺されると思ったがどうやら私は、魔神に汲みしようとした罪人として、この処、国民の不満が溜まってたガス抜き要員にさせられるあたりだろう。貴族達には国家転覆を狙った王女と知らせ、反対意見を封じて、今の誘拐に至ってると私は見てる。少ない数とは言え、私を擁護しようという勢力は存在する。それを封じてからじゃないと捕まえてから火種を抱える事になるからだろう。

 ああ、私は1歩目すら進めずにこんな所で人生が終わる、諦観に包まれて頭も心も真っ白になろうとしたその時、過るモノを感じる。

 それは1人の男、いや、自分と同じぐらいの男の子の顔であった。


 自分が欲しいと願い、切り開きたいと熱望した事を全て乗り越え、そして、その先にも行こうとしている男の子。勇者でもないのに先頭を走り、その後ろに勇者である美紅がその男の子の背中を追いかける。何なんだと言いたい、私は先頭に勇者である美紅が走り、その後ろのバックアップできる自分の未来予想図を描いて今までやってきた。美紅の前に立つ者などいると僅かの可能性すら考えてなかった。勇者である美紅を救い、私の手が届かない遠い距離を走り続ける男の子。何度振り払おうとしても頭から離れない。何者なのだろう、喉元まで答えがきてるのに出ないもどかしさ。そして、絶体絶命の美紅を救ったのに、今、絶体絶命な自分を救いに来ない、理不尽と知りつつも、あの男の子に腹が立ってくる。イライラしてくる自分を制御できずに、無意味と知りながら私は叫んだ。


「貴方が本物なら、私、1人ぐらい助けて見せなさい。トール!!!」


 そう、叫んだ時、横合いの木々を突っ切ってくる黒装束達とは違う黒い衣装の二刀流使いが私達の行方を遮るように現れる。

 私は呼吸をするのを忘れて見つめていたようで思い出したように慌てて息をする。嘘と思わず呟いた私は間違ってないはず、今、ここでの状況は物語でしか語られないような絵がそこにあった。本当にきてくれた。

 剣を突き付けたトールが凄味を利かせて黒装束に言う。


「クリミア王女を降ろして降伏するなら命は取らずにおいてやるぜ?」



 正直、死ぬかと何度思ったか、あの崖、ルナに突き落とされた崖より高いし、駆け下りる足場が少ない事。最後には南無三と祈って近くに見えた木に飛びつき、2本目の枝で落下の阻止した。1本目が折れた時は終わったと思ったぞ。思いっきり腹も打って、痣になる自信が無駄にあるね。

 しかし、その痛みに見合う労働の対価は得れそうだ。連れ去られたクリミア王女に追い付いた。素直に降伏するとも思えないコイツ等どう料理して憂さを晴らしてやろう。


 1歩近づくとクリミア王女を抱えてない黒装束が王女の首にナイフを添える。その時に歪むクリミア王女の顔を見た俺の中で何かが弾けた。


「おいおい、誘拐するつもりなのに殺せもしないってバレてるのにその無駄な行動はなんだ?クリミア王女が生きてない状態で帰ってお前ら生かせてもらえる思っちゃってるの?それとも奪われるぐらいなら殺して、自分も死ぬとか言うつもりか?」


 それでも近寄ってくる俺にビクつく黒装束達。


「女の子にそんな顔をさせやがって・・・五体満足に息ができると思うな!!!」


 全力の威圧と腹の底から出した全力の声を黒装束達に浴びせる。硬直する黒装束達を尻目に俺は飛び出す。先頭にいた王女にナイフを添えてた黒装束はカラスで斬りかかる俺にギリギリで反応し、ナイフで庇うが吹っ飛ばされてナイフは砕ける。俺はそいつは無視して、王女を抱える2人に肉薄する。足を持ってる奴に右ストレートをぶち込み、足を抑えていた奴がいなくなった事でバランスが崩れた黒装束にカラスで胸を一突きする。引き抜いて、落下する王女をアオツキを仕舞った左手でキャッチすると後ろに全力で飛ぶ。


 黒装束達の様子を窺いながらクリミア王女の拘束を解く。


「遅くなってごめん。後は俺に任せて、そこで待ってて」


 俺はクリミア王女に笑いかける。



 最初会った時、私から見たトールは凡人、顔はどこか呆けているし、使い慣れない敬語を使う教養のない覚える必要も感じない人物というのが初見の評価だった。そして、美紅の事情を知る過程で自分の評価は大きく外れ、大幅な上向きに方向に評価を修正する羽目になった。その結果、激しく嫉妬もした。

 今、目の前にいる人物がトールだと分かるのに同じ人物と思えない。あの2人はこのトールを知っているのだ。このトールだから美紅はその背中を追いかける。また私はトールという人物を見誤っていた。

 そして、刺客に攫われて、助けられた今、どうしても聞きたい事が生まれる。自分の深いところで理解してる、きっと美紅も同じ質問をしただろうと。


「どうして、私を助けるの?」

「女の子を助けるのに理由は必要か?」


 そう言うとトールは残った2人の黒装束との戦闘を再開すべく、飛び込んで行った。

 本当に卑怯だ。これを卑怯と言わずとして何が卑怯と言えばいいのか。

 素直に嬉しい。そして、悔しい。今度は彼についていける美紅に嫉妬する。

 私はこんなに醜い心を持っていたと実感する。

 今の私では彼の隣を後ろを歩いてついていけない。そうできる自分の未来想像の地図を模索し出した。


 私が見つめる先ではトールは最後の黒装束に最後のトドメとばかりに斬り捨てるところだった。



 俺が黒装束との戦闘が終了して、帰る道程にうんざりしてた頃、ルナと美紅がすごい勢いで目の前に現れる。息切れも酷く、相当急いできたのであろう、顔を真っ赤にして、クリミア王女の安否を確認する。

 2人がジッと見つめていると思ったら、ルナは仰向けに大の字に倒れ、美紅は項垂れて地面に手を付いて嘆く。


「間に合いませんでした・・・」


 え?っと思って俺はクリミア王女を見るがどこも怪我らしき跡も見つけられない。無事じゃね?と王女の顔を見つめると顔に朱が入る。じろじろ見るものじゃないなっと思って視線を前でだらしない格好してる2人に向け、声をかける。


「びっくりさせるなよ。替え玉とか疑ったじゃないか。それはそうとシュナイダーはどうしたんだ?」


 そういうと、2人して、あっと言うと顔を見合わせる。お前ら忘れてほって来たな?まあ、アイツだからまあいいかっと思う俺も大概酷かった。


「さあ、モスに行かないとダメだから戻るぞ」


 3人に声をかけて、とりあえず馬車があった場所を目指して歩き出した。



 馬車に着くとシュナイダーが馬車を死守しておりましたっとか調子のいい事を言っていたのを見てイラっとしたぐらいの特記することはなく、その後は順調に進み、早朝になった頃、モスの門が見える距離まで来た時、クリミア王女は俺達に声をかける。


「ここまででいいです。有難うございました」


 クリミア王女とシュナイダーは馬車から降りる。俺達も馬車から降りて見送る事にする。


「本当にお世話になりました。特にトールにはなんとお礼を言ったらいいか分かりません」

「いえ、そういう依頼でしたよ」


 俺は笑いかける。


 「確かに、報酬は報酬でギルドから出るでしょう。しかし、それだけでは私の気が済みません。私で出来る事ならなんでも言いなさい」

「な、なんでもですか?」


 俺は唾を飲み込む。いいのか本当にと思いつつも、大抵の事ならなんでもできる射程に俺は入る。

 すると、顔を真っ赤にしたクリミア王女が目を閉じる。お好きなままにってことか!

 周りでシュナイダーを含めた3人が騒ぎ出す。ちぃ!!邪魔される前に実行せねば、ここでものにできない男じゃあらへんで~

 俺はそうと決めたら即行動した。



 鷲掴みした!そう、おっぱいを!!!!



 余りの驚きで固まってるクリミア王女を尻目におもむろに揉んだ。


「この立派で綺麗なおっぱいをどれだけ揉みたいと思った事か・・・」


 色々感想を述べようとしていたが、硬直が解けたクリミア王女に平手打ちを受ける。吹っ飛ばされる俺。

 立ち上がると目の前には鬼、もといルナがいて怒りの形相だ。離れた所で美紅が頭を抱えてる。あの目は後で説教する気だ。とりあえず、今はルナから逃げる。



 ルナに追いかけられながら、男ならあそこで揉まないという選択肢はないんだ~と叫びながら逃げるトールを呆れた目で眺めていると込み上げる笑み。

 せっかく、私の初めての唇をあげようと思ったのに、と考えた自分が急激に恥ずかしくなってくる。

 しかめ面してトールを眺めている美紅の隣に立って、


「私は諦めませんよ?」


 美紅に宣戦布告をする。

 私にそう言われた美紅は少し慌て気味に言ってくる。


「私は負けま・・・勝てないかもしれません」


 ううっ、と呻くとしゃがんで頭を抱える。

 私は、苦笑をしつつ、モスに顔を向けて、シュナイダーに声をかける。


「シュナイダー、行きますよ」


 はっと言って私の後ろについてくる。


 今の私は彼に着いていけない。そう、はだ。次に彼に会う時に横にいても恥ずかしくない自分になろうと心に秘める。

 それまで、さようなら、私の・・・

 その先は飲み込んで、遠い先を走る背中の幻視を見たような気がした。


 次、私達の運命が交わるその時を楽しみに、私は自分のすべき事をする為にモスへと向かった。

 私の1歩目はここから始まる。

 感想などありましたらよろしくお願いします。

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