41話 嫉妬する第3王女
王女の護衛に勇者の足跡調べと休む暇もない徹ですが元気一杯で頑張ってます。
では、41話になります。よろしくお願いします。
夜の森の街道を行く馬車がいる。御者台にいる銀髪のイケメンはルナ相手に自分の武勇伝を語り、ルナは頷いているだけのなのにそろそろ飛びそうな気配がするほど浮かれていた。
アホがいると思わず呟いたのを目の前のクリミアが頭を抱えて、否定できませんと言う姿は一回り小さくなったように感じた。
刺客を呼ぶような事をやっているシュナイダーを殴ってやりたいが、今はアイツに聞かせない話をしたいが為、ルナに犠牲になって貰っている。
ルナは話を聞いてるフリしながら索敵してるから不意打ちを受ける事はないだろう。
「そろそろ、話してくれませんか?」
ついにクリミア王女が切りだす。
さて、どこまで話したらいいやら、と言ってもほとんど話さないと美紅が結界の外にいる説明は不可能だろう。色々、突っ込まれないといいな。
言葉巧みに話そうとも考えたがやはり王族、交渉術は向こうのほうが上だろうし、国を敵に回す胆力もある。基本。素直に答えよう。
「単刀直入に言いまして、私とルナで美紅の封印の地にいた魔神を倒しました」
少し体を固くなったように見えたが表情はそれほど動かなかった。その可能性もしっかり考えていたのだろう。
「よく倒せましたね。欠片と言っても魔神ですよ?」
「ええ、本当に色々な偶然が重なった結果です」
「魔神との戦う危険性を理解せず戦ったのですか?」
真意を見逃さないとばかりに俺を見つめている。
「私がそうしたかったとしか、お答えできません」
「勝てるとも分からない相手にそんな理由で戦ったというのですか!」
「では、王女は勝てる確証があって国を敵に廻し、魔神と戦おうとなされてるので?」
そ、それはっとクリミア王女はどもる。
そんなのあるはずはない。クリミア王女がやろうとしてる事は今までの為政者が無理と判断して、破棄した事である。何を根拠にできると言えるのだろうか。
「私もクリミア王女と同じですよ。できる、できないではなく、やると決めたからやった事です」
今まで、表情をほとんど出さなかったクリミア王女だったが、激しく動揺したのが俺達にもはっきり分かった。
徹に理解できる事ではないが今の言葉はクリミアの琴線に触れるものであった。
どれだけ、女神の言葉に耳を傾ける必要性を説いても、勇者と共に魔神に挑もうと訴えようと頭ごなしに否定され、どれだけ必要性にかられてる状況を調べ、アローラの危機が迫ってる現象などを突きつけても相手にされない日々。自分の言葉に肯定してくれるのは王女というハリボテと女としての魅力に惹かれた者だけ、そうシュナイダーのような者だけであった。
そんな中、逃げるように城を出て、アローラを救うと言えば聞こえはいいが現実逃避してるだけではと常に頭の隅でシコリとなって残っていた。そして、今、目の前に自分が言いたかったセリフを堂々と言い切った男が現れたのだ。3つの欠片の内、1つを倒しただけだ。1歩進んだだけの違いと言っていいだろうが、なんと大きな一歩なのだろうか。
今のクリミアすれば、今、徹が立っている場所は世界の果てであった。
クリミアは今の徹が眩しく、憧れる。そして、激しく嫉妬した。
女同士だからか、今のクリミアの気持ちを察した美紅は、声をかけてくる。
「トオル君はトオル君です。気にしないでください」
「私が魔神を倒したとして、あなたは着いて来てくれましたか?」
美紅は沈黙する。嘘を吐くのが下手な美紅の行動が示している。
どうして、私ではダメなのだろう。この男に何が劣っているというのだろうか?暗い感情に支配されそうになる。
2人のやり取りが何やら重いと思った俺は、声をかけようと口を開いた時、
「徹!刺客が馬車を囲っているの!!」
ルナの警告が飛ぶ。
俺は周りの気配に注意しながら馬車から飛び出す。
「シュナイダー!王女のガードに付け!」
「貴様に言われなくてもそのつもりだ、指示するな!」
あれでも騎士だ。きっつい不意打ちでも受けない限り一撃離脱はないだろう。
正面に意識を向けると黒装束を身に纏ったいかにもといった刺客5人に失笑が漏れそうになるが堪える。
足使い、肌に感じる感じからすると今朝のBランクとほざいていた奴らと似たような強さのようだ。だが、こいつらと正攻法でやった場合の実力。何をしてくるか分からないと肝に命じておく。
「1人は残してくれよ。拾えるだけの情報は欲しいから」
「ん、分かったの」
美紅は黙って頷いて剣と楯を構える。
そして、俺が駆け出したのがキッカケに戦闘が開始された。
飛び出した俺は戦闘の黒装束に肉薄する。鈍い光を放つナイフを迷いもなく俺の胸に向けて突き出す。それに気付いていた俺は、アオツキで払うと、腹に一発蹴りを入れる。たたらを踏んだ黒装束の後ろからもう1人現れ、斬りかかる黒装束にカラスで払うように斬る。ナイフを持っていた手首を切断し、血を撒き散らす。すかさず、喉元を突くように蹴って絶命させる。最初の男にカラスを突きつけて、
「お前で最後だ」
「なんだと?」
その言葉通りと言わんばかりにルナと美紅がその男を囲む。
ルナは完勝と言わんばかりの安定さで倒したが、対人戦が俺以外だと始めてだった美紅が躊躇しまくったようだがポテンシャルが違いすぎて、苦労せずに勝ちをもぎ取ってきた。
黒装束に尋問タイムの開始をお知らせをしようとしたその時、後ろ、馬車がある方向から閃光弾が上がる。
嫌な予感が俺を支配する。
後ろの草むらから音がする。そこから出てきたのはシュナイダー。
「敵がこないから加勢にきたぞ。感謝しろ」
ドヤ顔したシュナイダーを見た俺達は同じ予想にいき当たった。警戒するって思ってたのにコイツに離れる危険を伝えるのを忘れた自分に舌打ちする。
黒装束から俺達の意識が離れた一瞬を狙って、閃光弾を炸裂させる。
「しまった!逃げられる!」
目をやられた俺達の視力が戻った時には黒装束はいなくなっている。今頃だが気付いた。戦いながら馬車から引き離されてた事を奴らは囮だったと唇を噛む。正攻法じゃこないと分かってたはずなのにしてやられた。
「どうやら、あいつらの目的は王女殺害じゃなくて誘拐だったようだ。今、追いかけたら間に合うだろうが・・・俺が相手なら」
と言いかけた時、正面から20人ぐらいの黒装束が現れる。
「やっぱりそうくるか!」
「どういう事か説明しろ!」
キャンキャン吠えるシュナイダーに頭にきた俺は一喝する。
「黙れ、無能!お前が何をやらかしたか自分の頭で考えろ」
目の前の黒装束に意識を向ける。くそう、さっきのやつらより明らかに強い。こいつら相手にしていたら王女に追い付く事など不可能になる。頼れる相手はこいつらしかいない。
「こいつらの相手頼めるか?」
「わかった。任せてなの!」
2人に背を向けて走りだそうとした時に美紅が声をかけてくる。
「トオル君、いけるのですか?」
俺は、美紅を安心させるように笑う。
「大丈夫さ」
身体強化を全開にして俺はクリミア王女の気配がする方向の闇夜に飛び込んでいった。
トオル君が飛び出したのを見た私達は黒装束に身構える。シュナイダーさんはおろおろとどうしたらいいか分からないのかルナさんに声をかける。
「あんな奴に任せて大丈夫なのか?我々もいかなくては・・・」
「行きたいなら貴方だけで行って欲しいの。徹は大丈夫って言ったの」
そう、大丈夫といったトオル君の笑顔を私は信じている。きっとやり遂げるだろう。何の根拠もなくクリミア王女の命だけは無事だろうと確信する。
「美紅、全力で倒して最速で徹を追いかけるよ!」
私は、はい、ルナさんと頷いて、黒装束に飛びかかる。
「違う意味ですっごく心配になってきたの!!」
私は胸の内で激しく同意して頷いた。
感想などありましたらよろしくお願いします。




