40話 やっかいな騎士と四面楚歌な第3王女
40話になります。よろしくお願いします。
地図に示された宿に到着した。しかし、その建物を見て、コメントに困る。王女が泊るとこと聞いて来たからそれなりのを想像したが、俺達が寝泊まりしてるマッチョの集い亭と比べてだいぶランクが落ちる建物だった。勿論、マッチョの集い亭のレベルは高いのだが、それを差し引いても王女がいるとは思えない宿であった。
「ギルド長に担がれてるんじゃないのか?」
それが俺の感想だが、目の前の宿で王女が泊ってるなら結構頭の痛い事態に陥ってるとカンに頼らなくても分かる。
2人の顔を見ても俺が考えてる事分かるようで苦笑いをしている。
俺は自分の頬を両手でパンっと叩いて気合い入れて、いくかっと2人に呼び掛けて宿の扉を開いて入っていった。
中に入ると食堂になってる所に客が1人もいなくてどうやって経営が成り立つんだろうと思いつつ見渡してるとカウンターにいた親父に声かけられる。
「ガキか、飯なら余所で食ってこい」
いきなり営業放棄してきた。呆気にとられたが持ち直して、ギルド長の言葉を伝える。
しかめ面したと思ったら、
「2階の一番奥の部屋だ。さっさと連れて出ていってくれ」
そういうと俺達を無視し、コップを磨きだす。
どんなにやっかいな王女なのだろうか?それが状況なのか本人なのか、両方ってのは止めて頂きたい。
俺は戦々恐々しながら2階に上がり、奥の部屋にやってくる。部屋の前に立つとノックをする。すると中から男の声で、誰だ、と聞かれたので下の親父に言ったようにギルド長の名を出す。すると、少しドアが開き、俺を見てからドアを開く。
ドアを開けた男はいかにも騎士ですっといった身なりで、女にキャーキャー言われるのがデホな感じのいけすかない銀髪イケメンだった。この戦力比覆す術が思いつかない!
「こんなマヌケ面したやつしか寄こせなかったのか。あのギルド長は」
うん、多分コイツとは一生友達になれないと思う。
チッっと舌打ちして、俺の後ろにいるルナ達に気付くとさっきの顔はどこにいったっという感じに好青年といった笑顔を浮かべて、中へと俺達を入れた。
中に入ると、唯一、1脚だけ椅子がありテーブルもない部屋に座ってる女の子がいた。金髪のウェーブがかった髪が肩より長く後ろで根元で縛っているのが見える。顔を見れば可愛い感じはするが目が勝気なため台無しになってる。スタイルは良く、おそらく年頃は俺と変わらないだろう。どことなく気品が感じさせる目の前の人物がクリミア王女であろう。
しかし、王女というのに市井の女のような格好をしている。やはり、面倒事は避けられそうにない。
王女は最初は澄まして俺達を見ていたが、美紅に目が止まった時、目を剥いて声を上げる。
「どうして!あなたが・・・」
「すいません!少々、先にお耳に入れておきたい事があるのですがよろしいですか?」
俺は不敬と言われる覚悟で王女の言葉に被せる。
王女は俺の声に驚いたのだろうが沈黙は肯定と勘違いしました作戦に出る。
急ぎ、俺は王女の耳の傍で本人にしか聞こえない声でお願いする。
「美紅の事は後で必ず説明します。共の騎士は気付いてないようなのでおとなしくしてください」
しかし!と言ってくる王女に更に伝える。
「貴方に会う事がリスク以外の何物でもないと理解した上で貴方の依頼を受けた美紅の気持ちが汲めないですか?」
さすがにこう言われると黙るしかなかったようだ。
「おい、お前、王女に不埒なことをするではない!」
何やら勘違いしたイケメン騎士が俺を注意してくる。今回はその勘違いに乗る事にする。
「失礼しました。高貴な美しさに惹かれ、少々余計な事をしてしまいました」
「フン、鏡を見て自分の立場を理解して行動するようにするんだな」
イラっとするがここは我慢するしかない。頭を一つ下げて、王女から距離を取る。
そんな俺を見て、美紅が申し訳なさそうに見てるが軽く美紅にしか見えないように手を振って気にするなと伝える。
「大変失礼しました。話す順番があべこべになってしまいましたが、私達がギルド長、オルバに依頼を指名された。Cランクのトールです」
イケメン騎士がCランクだと?っと噛みつきそうになると王女が止める。
「構いません。ギルド長が指名するという事はランクで計れない実力があると見たのでしょう」
美紅がいる事から俺達も普通じゃないだろうと予測できる王女は余裕を持って答える。
イケメン騎士は渋々、引き下がる。
「ギルド長から聞いているとは思いますが、私の名前はクリミア。エコ帝国の第3王女です。隣にいる者はシュナイダー、私専属の近衛です」
俺を嫌そうに見ていたが視線を後ろの2人に固定して笑顔でお辞儀してくる。
「ご紹介されたシュナイダーです。私だけでも護衛を務め切る自信があったのですが王女のご希望なので致し方がなく、ギルドに依頼を出しました。しかし、見目麗しき乙女と出会うきっかけになって存外の喜びに包まれております」
そう言われたルナが、聞いた?今の聞いた?と俺に報告してくる。ルナは意外と褒められ慣れしてないからな。美紅は笑顔に見えるが微妙に引きつってるのが俺には分かった。
「ギルド長の口ぶりだと、あまりお時間がないように受け取れました。単刀直入にお話を窺ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、その通り、猶予はないと言っていいので説明に入ります。重複するところもあるかもしれませんが、質問は最後にしてください」
俺達を見渡し、確認してくる。代表して俺が頷く事にした。それを見た王女は説明を始めた。
「今回の依頼は護衛。目的地はモスになります。今、隠しておいてもしょうがないので、はっきり言います。クラウドを出たら私は刺客に襲われるでしょう。まず間違いなく腕利きの相手との戦いになります」
やはり、面倒事になるようだ。しかし、王女の口ぶりだとまだ続きがありそうだ。
「私は、来たる魔神との戦いの為に地下に潜る覚悟で国を出てきました。つまり、襲ってくる相手は国という言い方もできるのです。私はこの国の罪人という立場になる。それでも受けて頂けますか?」
俺の目を見つめ、真偽を見破る気のようだ。
美紅がいるから胸襟を思いきって開いたってことはあるんだろうが、思い切りのいい王女だ。博打打ちみたいな斬り込み方だなって思う。凄く立派に見える。しかし、いつ弾けるか分からない膨れ続ける風船のようだ。
「私は冒険者です。依頼内容以外の事に関知するつもりも必要もないと思っております。貴方をモスに送り届ける過程で戦闘があって、モンスターか人かの違いしかありません。そんな事は些事ですのでお気になさらず」
俺がそういうと呆気に取られた王女は、やっぱり可愛かった、ではなく聞き返してくる。
「良いのですか?危険というのを理解していない訳ではないのですね?」
「はい、私はこの依頼を受けた段階で選択肢など用意しておりません。確認を取られようと答えはこの場にいるのが全てでございます」
チラと美紅を見て言い切る俺を見つめ続ける王女。
横にいたシュナイダーはプルプル震えて、
「王女に対してなんて物言いをするのだ!斬ってくれる」
突然、怒鳴った奴は本当に剣を抜こうとする。
それを止める王女はすべき事決めた為政者の顔をしてた。
「止めなさい。仲間内で争ってどうするというのですか?私はモスに着かない事には何も始まる事はできないのです。それは貴方も理解してたのではないのですか?」
くっ、と呻くと俺の顔を一睨みして王女に頭を下げて、後ろに下がる。
最初から思っていたがコイツ、俺が嫌いとかじゃなく、自分以外の男に嫌悪感があるんじゃないのかって気がしてきた。
「では、すぐにでも出発したいのですが出れますか?」
隣村に行った時のままの中身のカバンを持っているからいけるなっと思った俺は、後ろの2人に目配せすると頷いたのを確認してから答える。
「はい、いけます」
俺の言葉に頷いた王女はシュナイダーを呼ぶ。
「すぐに馬車の用意を!」
はっ!っと答えて扉を開けて走りだす、イケメン騎士。
受けると決めたとは言え、この1カ月ゆっくりする暇まったくないなっと心で嘆いていたところ、王女が俺に近づいてくる。
「美紅の件、必ず説明してください。必ずですよ?」
何やら、念押しまでされるほど、嘘つきそうな顔でもしてるのかしら・・・地味にショックを受ける。
そのまま、外へと出ていく王女の後をついて行くように俺も部屋から出る。
正直、襲いかかる刺客より傍にいるシュナイダーのほうが頭痛いかもしれない。あいつは本当にやっかいな性格してそうだ。が、しかしだ、もっと頭が痛い話がある。
俺は耐えれるのだろうか・・・かなり自信がない。さっきまでも、だいぶ実はグラついていた。
あのクリミア王女の形の良いおっぱいに粗相しそうで本当に心配だ。
俺の戦いはまさにこれからだった。
1階に降りると店主に早く馬車を出せと催促して騒ぐシュナイダーがいた。
うんざり顔した店主が俺を見て、やっと出て行ってくれるといった思いがありありと出てた。
ああ、状況が面倒な王女がいて、面倒臭いシュナイダーがいるから出ていって欲しいと言ってたんだなと得心した。
感想などありましたらよろしくお願いします。




