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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
間章 帝国のはみだし王女
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39話 美紅の初めての我儘

 39話になります。よろしくお願いします。

 俺は心に軽い傷を負ってコルシアンの屋敷を後にした。後ろから付いてくる2人の視線がとても生温かい気がするのは気のせいと信じたい。


 もうすぐ夕方になる時間帯になったので朝に行った冒険ギルドに顔出す事にする。


「やあ?シーナさん、朝は怖がらせてごめんね?」


 頭を掻きながら話かける。

 いえ、と首を振って潤んだ瞳で俺を見る。やっぱり朝の怖かったようだ。今なら簡単におっぱい触らせてくれそうだが、強要してやるのはポリシーに反する。本調子に戻るまでセクハラは自重しよう。(いつでもしろよって言わないであげてください)

 後ろでルナ達が警戒レベルを上げないとダメなのって呟いて美紅と2人で頷き合っている。何をしてるのやら。


「今朝の事は本当に申し訳ありませんでした。ペナルティについては今、協議中なので決まり次第お知らせします。今日の事でギルド長から、お詫びをしたいとおっしゃっているので、報酬もギルド長直々に渡したいとのことなので、ご案内いたしますので着いて来て貰えますか?」


 綺麗にお辞儀するシーナさんの揺れる胸に奪われる視線に気付いて反らす。自重すると思ったばっかりで頑張れ俺!


「分かりました。案内お願いします」


 カウンターから出てきたシーナさんは、こちらです、と言って先導してくれる。前を行くシーナさんのお尻も素晴らしいな。


「こちらになります」


 一番奥の部屋の前に止まったシーナさんが俺達にそう言うと、ドアをノックして、

「シーナです。トールさん達3名をお連れしました」


 と、ドア越しに伝えると、入れっという声がする。声からすると男のようだ。

 

 シーナさんはドアを開けて俺達を中に入るように促して入ったのを確認してドアを閉じて出ていった。

 シーナさんを目線で追ってた俺は正面を向いた瞬間、強烈な威圧を受ける。不意打ちを受けたがそんなのでビビる俺じゃねぇっと奮い立たせて逆に威圧する。


「くっ、かけた側が逆にやられるとかどんな化け物だ、お前、俺が悪かった威圧するの止めてくれ」


 敵意はない威圧だったのは受けた時に感じてた為、素直に解く事にする。


「ふぅ、これじゃ、Bランクじゃ話にはならんわな。Aランクですら耐えれる時間が延長ぐらいの差しかなかったんじゃねぇーか?」


 スキンヘッドの頭を撫でながら、ヤレヤレと呟く男の顔は疲れて見えた。スキンヘッドはマッチョじゃないといけないのか?目の前の男がマッチョである事実がさっきの威圧より俺を威圧してくる。


「しかも、後ろの2人は意にも介さないとか、本当にこの3人でお前が一番弱いのかよ。ワシも歳を取ったってことか・・・」


 多分、50前ってぐらいの歳だろう。しかし肌から感じる存在感がまだ現役と俺に知らせている。


「で、そんな言い訳続ける前に言うべき言葉があるんじゃないのか?」

「むぅ、確かに、まずはすまん、正直、ゴブリンキングを倒したってのは疑った訳ではないのだが、さすがにBランクパーティをソロ撃破はびっくりしたんでな。あいつら、しばらく入院だな。精神的なものはもっとヤバいかもしれん。まあ、自分達で撒いた種だ、自業自得だがな」


 俺は肩で溜息を吐く。その様子を見た、ギルド長はニカって擬音が聞こえるような顔をする。ただのノウキンかと思ったら、俺が怒ってないのを感じとってるようだ。ギルド長は結構なタヌキかもしれない。底意地は悪くなさそうであるのが救いだが。


「とりあえず、これが報酬の目録だ。目を通してくれ」


 正直、こういうおっさんは嫌いになれない。苦笑いしながら受け取って目を通す。結構な額になっている金貨50枚、ゴブリンキングが相手とは言え、多いと思われる。おそらく詫び込みだろう。


「後、坊主、トールには、綺麗どころが揃ったとこに連れて行ってやるわい。おっぱいが好きって聞いてるぞ?」


 好きなんだろ?っと胸の前でエアーオッパイを作ってニヤつくギルド長。

 やっぱり、このギルド長は良い奴!


「トオル君にはそんな所に行ってる暇も行く必要もありません!」


 顔を真っ赤にさせた美紅がギルド長の机を叩き割る。


「ギルド長、余生は楽しみたいよね?どうなの?」


 冷気を感じさせる殺気をギルド長にぶつけるルナ。横にいる俺に向けられてる訳じゃないのにスゲー怖いのに、ギルド長は大丈夫なのか?


「スンマセンでした!!調子くれてました!!」


 ギルド長はジャンピング土下座を披露した。

 俺は笑わない。それが正しい。笑って矛先がこっちにくるかもしれないから絶対笑わない。


 2人が矛を収めたのを確認したギルド長は俺の後ろに避難して


「トール、お前はすでに尻に轢かれてねぇーか?」


 どうなんだろう?教育ちょうきょうに力を入れているようには思うがそんな甘いものじゃないな。そんな訳ないだろうっとギルド長に言って用がないなら帰るとばかりに言う。


「貰うもの貰ったから帰っていいなら帰るけど?」

「いや、待て、まだ話がある。飛び級にはなるがAランク昇格試験を受けてみないか?」


 おお、目標としてたAランクの扉が目の前にやってきたな。だが・・・


「受けたいのは山々なんだが、3日後に個人的に受けた依頼があるんで試験受けてる時間はないかな」

「まあ、あんまりゆっくりされても困るがそれが終わった後でもどうだ?」


 それならいけそうだ、頼むとギルド長に言う。


「あ、そうだ、急ぎの護衛募集の依頼があるんだが受けてくれないか?馬車で往復2日かからん距離なんだが?これを済ませたらBランクにして次の試験でAランクにすれば周りもそれほど騒がんだろう。これってナイスアイディアじゃねぇーか?」


 なんとなくどういう展開でも受けさせようとしてた気がする。特に時間の問題もなさそうだから受けるのはいいんだが。


「どんな内容なんだ?」

「エコ帝国第3王女クリミア王女の護衛をクラウドから隣町のモスまでの護衛だ」


 よりによって、王族かよ、美紅の事知ってると思われるやつの依頼受けれるかよ。断ろうとした俺の手を握ってくる美紅がいた。


「トオル君、お願いします。その依頼を受けてください」


 とても辛そうにした美紅が俺に哀願してくる。どうして、自分の身の危険になる事をしようとするんだろう。

 俺はルナを見た。俺と同じでどういう事情があるのか分かってないようだが目を見て頷いてくる。


「分かった、その依頼受ける。依頼人に会いたいどこにいけばいい?」


 ギルド長は紙に簡単な地図と店の名前を書き込む。


「受付でオルバの紹介できたと言えば取りついでくれるはずだ。王女の名前を言うんじゃないぞ?」


 ギルド長の名前はオルバっていうのか。正直どうでもいいが。

 しかし、そんな馬鹿はするつもりはないが、それほど神経質になる依頼になるのかもしれない。受けて早々に後悔しだした。



 ギルド長の部屋を辞した俺達は、外に出ると日は暮れ、夜になっていた。俺は美紅に理由を聞く事にする。


「どうして、受けたんだ?受けたら、美紅が結界から出た事が王族に知られる恐れがあるんだろ?」

「それでも受けたかった。クリミア王女は城にいた時の私の唯一な友達、ううん、理解者だったと思う。ついでに言うと信じられないかもしれないけど、多分、アローラでルナさんの言葉を真剣に考えて行動した唯一の王族だと思います」


 ルナが衝撃を受けた顔をしてる。誰にも相手されてないと思ってたのに考えるだけじゃなく行動してた人物がいた事にびっくりしてるんだろう。良かったな、ルナ。


「ですが、それ故、周りから疎まれ、距離を取られました。そんな王女だったからか、時々、私に会いに来てくれました。その時々しかない時間が私のささやかな楽しみでした」


 美紅が俯く。

 俺は美紅の頭をグリグリと乱暴に撫でた。


「じゃ、俺達は王女を助けるんじゃなくて美紅の友達を助けに行くでいいんだな?」


 俺はルナに呼び掛ける。美紅が友達じゃなくて、と言ってるが無視をする。


「当然なの。美紅の友達は私の友達なの」


 何、それとなくのジャ○アニズムやってんの、ルナ?お前のもんは俺のもんか?


「美紅、友達を助けるのに理由はいらねぇーよ。ただ、俺達に友達を助けてって言うだけでいいんだ」


 俺の腕に抱きついた美紅が絞るような声で


「私の友達を助けてくれませんか?」

「おう、任せろ」

「当然なの、私達にお任せなの!」


 結界から出てから初めて言ってくれた我儘断る理由などない。どんなに困難でもやってみせる。



 許された時間はそれほどないが、王族の急ぎの依頼とか正直、良い予感はしない。逆に言うと美紅の友達のピンチとも言える。疎まれてた王女が冒険者に依頼しないとダメな状況、普通なら近衛、そこまでいかなくても国の兵士が護衛について問題ないはずに関わらず、そういう話ではなさそうだ。

 俺の頭で考えられるのは3つ。

 1つは、単にお忍びで城の兵士が使えない。2つ、暗殺などの命が狙われている。3つ、・・・あんまり考えたくはないな。ルナの言葉を真剣に取られて動こうとした行動派だ。追い詰められての強硬じゃない事を祈る。その上、何も理由が1つとは限らない。勿論、第4の選択肢もあるかもしれない。

 正直、美紅はやっかいな友達を持ったと思う。しかし、美紅はきっと見捨てたりはしないだろう。1人でも行きかねない。

 あの優しい美紅の為に頑張ってみますかと俺は目的地へと急いだ。

 感想などありましたらよろしくお願いします。

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