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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
3章ー1 初代勇者の足跡との遭遇
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35話 オルデール

 では35話です。よろしくお願いします。

 神殿での戦いから1晩経った朝というには遅い時間ではあるが俺はベットに横になっていた。昨日の筋肉痛があるというのもあるがオルデールと共有した記憶について、1人でゆっくり整理して考えたいと思ったからである。


 ルナと美紅の2人にはさすがに昨日の今日できついから寝てると言うと、


「徹はおじさんなの?そんなの動いてる内に楽になるの!一緒に出かけて、市場にできた屋台のクレープを食べに行くの!・・・徹のお金で」


 この馬鹿女神め、2日前にやった銀貨1枚を貰ったその日に使ったな?やはり金の管理を任せなくてほんと良かった。


「まあまあ、ルナさん、トオル君も昨日は酷く疲れてましたし、養生するのもいいと思いますよ」


 クレープで良ければ、私が出してあげますからとルナに言う美紅はしっかり者のようだが、身内に甘そうだから渡すと困った顔しながらルナに色々買ってそうだから美紅も却下だな。


「美紅、大好き。徹はいらないの~ごゆっくり寝てるといいの~」


 美紅に抱きついたルナは鼻歌を歌いつつ拉致っていく。

 扉を出る間際に美紅がお大事にと言って笑顔を見せてくれた。



 そんな感じで俺は今1人だ。

 目を瞑る。瞑ったからといってあの時の世界に行ける訳じゃないが落ち着く意味でも気分も大事だ。あそこで見た記憶を思い出す。



 オルデールという魔導師は元々は学者というか発明家といった存在だったらしい。15歳で結婚して2年後に子供を得て幸せとしか言えない人生を謳歌していた。しかし、それも長くは続かなかった。母子は流行病にかかった。しかも治療法が確立されていない。不治の病であった。


 オルデールは自分の分野の打てる手を必死に探すがないと分かると医学、薬学、思いつく限りの分野に手を伸ばし、妻と子を助けるために知識をがむしゃらに吸収する。元々、優秀な男ではあったが異常といえる学習能力であった。これが愛の力と良い結果で終わればハッピーエンドだったのだが、オルデールの頑張りは実を結ばず、母子はこの世の人ではなくなった。

 嘆き苦しんだオルデールは至ってはならない考えをする。人の限界を超えれば全てをチャラにできるのではないのかと・・・


 それが神になるという結論に至るのに時間はかからなかった。神の事を調べ、理解するとこから始まり、神の殺し方から全てを、そう全てを知る為に人の命すら材料としか見れなくなるまで狂気の実験が繰り返された。そんな中、母子の命を奪った流行病の特効薬が生まれる。病にかかった者がカビが生えた食べ物をヤケになって食べたところ、緩和したという偶然から生まれた薬らしい。

 しかし、それを聞いたオルデールはピクリとも反応を示さなかった。もうこの時には手段が目的になってしまっていた。


 あらゆる知識、あらゆる魔法を極めたと言われたオルデールは老人になっていた。もう何十年、研究と実験をどれだけの数をやってきたのか分からない日々を送っていたある日、初代勇者とオルデールは出会う。

 オルデールも初代勇者が魔神封印に成功したという話は聞いて、1度会ってみたいと思っていた。魔神の話と初代勇者に加護を与えてる女神などの話を聞いて研究に役立てたいという思いからである。

 その初代勇者が向こうから会いに来た。

 オルデールは何十年ぶりにか、研究以外に興味を覚えた。何故、初代勇者は自分の元に訪れたのかと。

 初代勇者は射抜くような視線を向けてくるがオルデールには暖簾倒しに終わる。無駄と知ってホッとしたような諦めたかのような複雑な表情をして口を開き、語りだす。


「神を殺す力を超える、神の因果を断ち切る力を作って欲しい」


 オルデールの口がこれもまた何十年ぶりに笑みを作る。本来なら対極にいるべき2人の協力関係が生まれた瞬間であった。



 それから、初代勇者の手引きで女神の神殿に作られた隠し部屋に案内される。ここを研究室にするつもりらしい。神のお膝元でやろうなんて初代勇者は肝が太い。初代勇者と関わるようになってから歪ではあったがオルデールの感情が動くようになってくる。神になるという手段が目的になった思いも色付き始める。


 初代勇者から魔神を封印した時の話を聞いて、オルデールの研究に拍車がかかる事になる。何故ならーーーーーーーーであるからである。

 神というのはそういうーーーーーーーーで回っているのかと色々知っていく。

 加護の秘密、あれはエグイ。加護を受ける者には良い事づくめだが与える側のリスクというかペナルティはオルデールの感情が爆発しそうになるほど狂喜に包まれる。


「なんと救われない世界、そして愚かな神々。私が神となってその因果から解放してやろう」


 だから、救えなかった、と呟いた一瞬だけ理性の火がオルデールの瞳に揺らめいたがすぐに虚無に戻る。



 それから2年後に初代勇者の協力の力が大きく、試作品ができる。

 2本の剣が生まれる。初代勇者は長いほうをカラス、短い方をアオツキと名付けた。カラスは思念の強さが力になる剣、アオツキは思念を打ち消す力になる剣と説明した時の初代勇者の違うといった顔をしたが説明する気はないようだ。


「お前が求めた力だ、使いこなせるものなら使ってみろ」


 初代勇者は剣を取って解放しようとする。それを見てオルデールはニヤリとする。あの剣を解放しようとすると、触れている者の心の闇と向き合う事になる。人の闇に打ち勝つのが勇者と一般人は言うだろう。が、しかし、勇者とはいえ、1人の人間、自分の闇と向き合った時、目を反らしてきた、逃げてきたモノが一斉に襲いかかる。勇者となると大を救う為に小を切り捨てたりする罪悪感を飲み込み進んできたりしただろう。


 さて、見物だ。初代勇者はどれくらい持つのであろう。限界を迎えたらその時には初代勇者の体を奪い、神への階段を登り始める。


 初代勇者は剣を取ると解放するための集中に入る。カラスの刀身は真っ黒になり、アオツキはくすんだ蒼色になる。

 解放した直後から苦しみ出す。初代勇者を見てオルデールは笑う。

 その状態になって5分もしない内に初代勇者は片膝を着くが剣の制御には至らない。どんどん消耗する初代勇者を見て、今か、今かとタイミングを計っている。


 ついに両膝を着いた初代勇者を見て、時が来たと思い、この日のために生み出していた自分の体から魂を抜きだす魔法を唱える。

 体を奪うために抜き出た魂で初代勇者に襲いかかる。勝利を確信していたオルデールだったが初代勇者も最後の力を振り絞り、カラスとアオツキを使ってオルデールを地面に串刺しにする。


「時間稼ぎしただけだ。すぐ傍で逝くお前の体をゆっくり奪ってやるから安心するといい」

「お前の思い通りになると思うな」


 最後の捨て台詞を言い切ると再び膝をつく。そうすると初代勇者の影があった場所から下級悪魔、インプが出てくる。


「インプよ、契約を履行しろ」

「君はーーーーーーになり、悠久の時の苦しみを味わう事になるかもしれない。再度確認するよ?本当に契約するんだね?」


 くどい!と力強い目力でインプに行動を促す。


「何をするつもりだ!勇者!」

「お前が裏切る可能性は高いと分かっていて何も手を打ってないと思ったか。お前の狙いは加護を受けた俺の体だろうとは予測は付いてた。俺の体は隠させて貰う。お前はそこに縫い付けられてどれだけの時間、自我を保ってられるかな?」


 死相が浮かんで凄味が増した初代勇者はオルデールに笑いかける。そしてインプが魔法を唱え出し、初代勇者の体が光に包まれ始める。それを見て、オルデールは悟る。勇者の体をどこかに飛ばすつもりだと。


「足掻くな、勇者、私の最後のチャンスなんだ!おとなしくその体を寄こせーー!」

「ふざけんなよ、俺の髪の毛1本まで先約がいるんだ、なんで爺にやらにゃならんのだ」


 ニヤリと笑いながら仰向けに倒れる。


「-----、すまねぇ、約束もお前も守れなかったよ。願わくば、俺の意思をついでくれる奴が現れる事を祈る。」


 初代勇者の瞳から一滴流れると光と共に転移した。


 それからそれほど長い時はもたず、オルデールの自我は崩壊する。ただ、神へ、元の人へとなることの欲望だけが残り、力を蓄える為に人の恨みに反応し、願いを叶えて代償を取り続けた。



 そして、オルデールは俺達に倒された。確かにオルデールは可愛そうなやつではあったが同情してやって良い奴ではないのであろう。

 オルデールの事はともかく、記憶の乱れの為か俺が拾い切れなかっただけなのかは分からないが重要な部分が歯抜けになってしまっている。

 なんとか知る方法はないのかと悩むが思いつかない。

 そういえば、インプが最後の質問の答えの後に、初代勇者の足跡を追えば分かるとか言っていた。そこに答え、もしくばヒントがあるかもしれない。


 そんな事を考えてたらお昼を告げる鐘がなる。昨日から何も食べてないと思い出し、糖分がないと頭に血が巡らないと苦笑してベットから起き上がる。それに初代勇者の足跡を知る方法を何か知ってそうなここの主に食事と相談をお願いするために俺は扉を開けた。



 下にある店に降りてくるとミランダがコーヒーを作ってるところだった。


「そろそろ降りてくる頃だと思ったら扉が開く音がしたからコーヒーを用意してたわ。お昼はルナちゃん達が帰ってからって言うんでしょ?」


 完全に見透かされてた俺は苦笑いしながら頷くと、できたてのコーヒーを出してくれる。砂糖もミルクもガンガンに入れて混ぜる俺を見て笑うのを我慢してるミランダがいた。


「ミランダ、相談があるんだがいいかな?」


 照れ隠しもあって単刀直入に話題転換を図る。

 ミランダも追及する気がないらしく、なにかしらと聞いてくる。


「初代勇者の事を知りたい特に魔神を倒してからの行動などを知ってそうなやつを紹介してくれないか?」


 少しだけ溜めたミランダは質問を質問で返してくる。


「どうして、私が紹介できる相手がいると思ったの?普通なら情報や調べる術がないかとか聞くのが普通じゃない?」

「ミランダは顔が広いし、もちろん、普通ならと言ったもの何かあるかもとは思ったが、ほとんどカンなんだ。しいて言うなら、おっさん、ザウスのおっさんと知り合いだったからかな?」


 フッフフっと笑うミランダは俺の顔を優しげに見つめる。


「説明としては評価に値しないわね、でも、トール。あなたのそのカンは大事にしなさい。咄嗟に迷った時、それを信じて動いて生まれる時間がトールを救うかもね。ルナちゃん達に聞いてる限りでもそれで救われてるところがかなりあるわね。でも過信はしないで、打てる手を打った後の話なんだから」


 俺は今のミランダの言葉を心に刻み、礼を言う。


「確かに、心当たりはあるわ。でも街出て王都に行ってるの。1カ月後に戻る予定になってるから待つしかないわ」

「王都に直接行けば会えるんじゃないのか?」


 移動時間を考えてもこっちから行ったら早く話が進むんじゃないかと思い、伝えるが、


「残念ながらそうはうまくいかないの。王都にいる間は会う事はできないわ。かといって出たところにミランダの知り合いですって行っても怪しまれるだけよ。それに美紅の事を忘れたの?無駄に危険を増やす必要はないわ」


 まさにグゥの音も出ないとはこの事か。


「トール聞いていい?なんで初代勇者の足跡を知ろうとするの?」


 なんと言葉にしたらと思いつつ、甘ったるいコーヒーを一口飲んで


「守りたいモノがあるからかな?色々と」


 ミランダがそうっと呟くと店の扉が元気よく開く。


「あっ!徹、丁度いいとこにいたの。クレープ買ってきたの。みんなで食べるよ!」

「そんなに急いで出そうとしたら潰れちゃいますよ、ルナさん」


 ルナは俺と美紅にクレープを突き出す。

 俺を見るルナは悩みがなさそうな底抜けした笑顔を見て、あの事実はしばらく伏せる事に決める。

 美紅は俺達の間に流れる空気にくすぐったそうにしてルナからクレープを受け取る。

 2人といるこの世界が守りたいモノと再認識し、守って見せると腹を括る。


「おいおい、これから昼飯だぞ?」

「甘いモノは別腹なの!」


 馬鹿ルナ、それは飯食った後のセリフだっと苦笑しながら俺達はクレープを齧りだした。



 トールの守りたいモノを見つめつつ、暖かい気持ちになりながら私は、この子達に何をしてあげられるのかと考える。胸に疼きが走る。昔を思い出し、過る悔恨。私は2度と同じ思いはしないと誓いを立てトール達を眩しく眺めていた。

 ーーーになってるとこは伏字です。数とかは特に意味はないんで深読みしなくても大丈夫です。その辺りも今後、足跡を追う事で分かってきますので気長に読んでいってください。

 感想をよろしくお願いします(^O^)/

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