28話 男の娘になっちゃう
今回のお話は男性は覚悟して読んでください。その日の夢見が悪くなる恐れがあります。
では28話になります。よろしくお願いします。
シーナさんの熱い説得に心動かされた俺達はカーババードの目撃情報のある森の奥の池にやってきた。ギルドの傍の屋台で昼飯を買って歩きながら食べたせいかなんとなく胃もたれしてる気がする。
その池にいる派手な鳥を発見というか、ついた時点で見つけてくれと言わんばかりに自己主張しすぎなキラキラした銀の羽根を混じらせた赤い鳥であった。シーナさんの情報通り、10羽もいなさそうで群れという感じはしなかったがそんなものは些細な問題だった。
「無駄に派手で目が痛い鳥だな。なんか羽根の大きさからいって飛ぶ鳥には見えないし、ダチョウとかと同じで走る鳥なのかな?形的にはフラミンゴに近そうだけど」
「ダチョウとフラミンゴは保育園で動物園で見に行ったの覚えてます。確かに羽根の大きさからすると飛ぶ鳥には見えませんね」
ルナが話についてこれなくて、フラミンゴって何?っとか聞いてくるから答える事にする。
「赤に近いピンクの羽根を持つ鳥で、水辺であの鳥と違って、群れで生活する鳥がいるんだ。水の中に足をつける時は片足で立っている。あの鳥と同じようにな」
へぇー、というルナを見るが説明されるとどうでもいい話だったと思ったらしく適当に返事するルナ。思わず握り拳をする俺だが殴り合ったら確実に負ける自信ある。いやいや、女の子と殴り合いなんてしようってなんて思ってませんことよ?
「でも、なんで片足で立ってるの?バランス悪いと思うし、水の中ならなおさらだと思うの」
「ああ、俺の世界と同じ理由なら、あれって足が冷えるから片足立ちするんだ。だから多分、ここで見張っていたら足を入れ替えると思うぞ?」
と言ってる傍から足を入れ替える場面を目撃する。2人からの尊敬の眼差しを受けて調子に乗って話しだす。
「美紅は覚えてるかな?俺達の国にいた鶴も同じようにするんだぜ?ちなみにフラミンゴの羽根って実は白で、あの色になってるのは餌のせいで、あの色に染まるんだ。」
食べる物で変わるってとこでびっくりする2人を見て鼻高々で増長した俺がそこにいた。雑学で、調べたらすぐ情報ですぐ見つかるから暇があるなら見てくれ。
青に変わる食べ物とかもあるのかなっと呟くルナを見てイタズラを思いついた。
「だからな、ルナの好きな赤いジャムばっかり食べてるとそのうち肌が赤くなるんだぜ?」
「本当なの!どうしょう、赤いジャム食べるの止めないとダメなの?じゃ、オレンジのジャムで、でも肌がオレンジになるのも嫌。ど、どうしたらいいの?」
必死に笑いを堪える俺を見た美紅が困った顔して、トオル君はイジワルです、というと俺に釣られるようにクスっと笑った。
「なんで、こんな深刻な問題で2人は笑ってるの?」
「ルナさん、今のはトオル君のイジワルですよ」
美紅が真実を告げるやいなや俺の鳩尾を貫くルナの拳があった。
「食べ物の恨みは怖いの。覚えておいてほしいの、徹」
「はい、分かりました」
か細い声で必死に伝えた俺はその場で崩れ落ちた。
恐るべし魔物の襲撃で倒れていた俺が復帰して池を見ると何事もなかったようにノンビリしてる。カーババードがいた。
「こんな近くであんなに騒いだ俺らも俺らだが、逃げたりしないんだ?」
「私達の存在に気付いてないのなら野生で生き残れないし、きっと完全に舐められてるの」
まあ、そのあたりが妥当な判断だろう。くそう、絶対捕まえてやる。
いつまでも眺めていてもしょうがないから狩る為に近づく事にする。石を投げたら普通に当たるぐらいの距離に来た時、初めて、こちらを見たと思ったら自分の足元にぺっと何かを吐きだし、俺達を無視する。マジで舐められているのか?
俺達は身構えながら飛び出せば斬りにかかれるぐらいの距離に来た時ですら後ろ目でチラと俺達を見ただけで無視するこの馬鹿鳥。
「みんなで一斉にかかって潰すぞ!」
ルナはオウっと息を合わせるが美紅が申し訳なさそうに言う。
「私、訓練とかで何度も戦わそうとされたのですが、怖くて戦った事ないんです」
「そりゃ、無理に戦わそうとされれば、そう言う事もあるだろうな。でもよく考えて欲しい。美紅は1人じゃない。俺達が傍にいる。仮にここじゃない場所で美紅が1人しかいないとしても戦わないとまた会えない時は勇気を振り絞ってくれないか?俺とルナが美紅と会えないと寂しいからさ」
いきなりスムーズに戦えると思ってないさと伝えて、いつものように頭を撫でる。
「徹なんて、最初、ゴブリンに襲われて震えながら戦ったの」
「馬鹿、それは秘密にしとけよ!」
プークスクスっと笑って俺の恥部を晒す。
きょとんとした顔したと思ったら美紅もルナに釣られて俺の顔を見て笑顔を見せてくれる。
「私も頑張ってみます。ありがとう、2人共」
「できれば、俺の話は永久に封印しておきたかった」
2人は顔を見合わせて笑ってるのを照れくさかったから視線を前に向けたが馬鹿鳥は依然変わらずといった様子で視線すらこっちに向けてない。相手がこいつじゃなかったら呑気に話していた俺達は襲われていただろう。
そうか、俺達は敵にすらならんというのか。思い知らしてやろうではないか。
「今日の夕飯は鳥肉料理にするぞ!」
そういうと美紅の肩がビクっと震えた。相当食べたいらしいな。恐怖心を下げる役割はあるかもしれない。
いくぞ!と掛け声を出して、俺とルナは飛び出し、美紅も遅れて剣を抜いてついてくる。
飛びかかるタイミングを合わせたかのように馬鹿鳥は俺に向かって唾?を吐きだす。俺の頭ぐらいの大きさの球体になってまさに俺の顔に直撃した。
「徹、ばっちぃの!」
「トオル君、大丈夫ですか!」
ネバこくって臭いが毒とかはなさそうだがふき取るのが苦労する。
しかし、ルナと美紅の温度差はどういう事だ。覚えてろよ、ルナ。ってかこの唾をルナの服で拭いてやろうかと考えてたら、この世の痛みとは思えない激痛が俺を襲う。あまりの痛みに俺は絶叫したつもりだが実際は掠れた声が出たのみであった。
「あわわ、トオル君!」
「知識では知ってるの。アレは男の最大の痛みと言われてる事を」
呼吸困難になりつつ、馬鹿鳥を睨みながら内股になっている俺がいた。そう、この馬鹿鳥は俺のマイ・サンを蹴りやがったのだ。
痛みに耐えつつ、
「俺が、俺が、お前達を駆逐してやる!!」
内股で締まらない俺がそこにいた。
まさか俺の言葉を理解したのか、その場の近くにいた馬鹿鳥5匹が一斉に俺に襲いかかる。そして、狙ったかのように一点集中してくる。そう、俺のマイ・サンに・・・
俺のマイ・サンに何か恨みでもあるのかってぐらいに執拗に蹴ってくる。手でカバーしてるとはいえ、振動が先程のダメージに響いて体力が削られていく。もしや、男の冒険者が嫌がる理由はこれなのか!それなら分かりすぎる。知ってたらシーナさんの胸を鷲掴みして揉みくだしてもいいとしても・・・その条件なら受けたかもしれないが、断っていただろう。
「徹、ナイス囮!今のうちに鳥を仕留めるの!」
「トオル君、今、助けるから頑張って!」
脂汗を流しつつ耐える俺は今がチャンスとばかりに馬鹿鳥に殴りかかるルナと必死に俺を助けるために剣を振り上げて戦う美紅を見てやればできるじゃないかと暖かい気持ちになりつつ、意識が遠くなっていった。でも、ルナの言葉は俺は忘れないぞ!
○今回の依頼達成結果まとめ
依頼料 銀貨10枚
カーババードの肉 ×5×銀貨3
(2羽、お持ち帰り) 銀貨9枚
カーババードの卵 ×6×銀貨5
(3個、シーナ1個、2個、お持ち帰り)
銀貨15枚
カーババードの羽毛 10キロ×銅貨20枚
銀貨2枚
報酬総金額 銀貨36枚
○損傷
美紅の長剣 (折れた)
徹のタマタマ×2 (負傷)
以上
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