27話 俺は高いぜ?
では27話になります。よろしくお願いします。
オス、俺、徹。これから三途の川を渡るところさ!
向こう岸にいる俺の爺ちゃんが、まだいける、こっち来るな!って言っているが無理言うなよ?10日前後で既に2回ここまできたんだぜ?前を乗り切っただけでも褒めてくれよ。
しかも、前に俺を送った人物と同じ人にやられたんだ・・・もうゴールしてもいいよね?
ただ、巨乳の彼女を作らず逝くのは心残りといえば心残りだが・・・
でも、俺は悪くないと思うんだ、仕方がなかったと割り切って貰っていいことだったと思うのだが、こんな目にあっている。聞いてくれよ、とりあえず、冒険ギルドに着いたあたりからで、こんな感じだったんだ。
「ここが冒険ギルドですか、あっちの世界にいた頃の市役所みたいな場所ですね」
美紅が周りをキョロキョロしながらそういう。ああ、10年ぐらい前ならそんな感じだったかもしれないな。
「今はもっと綺麗になってるけど、人のぬくもりというか繋がり?が凄く希薄に感じる作りになちゃってるけどね」
そうなんですかっとたいして興味を覚えてないようだ。いくら元の世界が懐かしくても市役所に思い出があると言う人は少ないだろう。
今日、ギルドにきた一番の理由が美紅の登録であった為、依頼の張ってる掲示板などは無視して受付、シーナさんのもとへ行く事にした。
「あら、お久しぶり?2,3日見かけなかったけど、お休みしてたのですか?」
「まあ、そんなとこ。今日は新しい仲間の登録の為にきたんだ」
美紅を受付の前に引っ張り出す。
「美紅です。よ、よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いしますね、美紅さん。私は受付担当のシーナといいます。では早速登録をしましょうか」
手続きが進み、ジョブ確認に移って行った。美紅の職業なんて出るんだろうか、ちょっと待てよ?勇者とか出たらまずいんでない?でもルナも女神とか出なかったから大丈夫なんだろうか?
「はい、水晶に手をあててください」
シーナさんに言われて素直に手を載せる美紅。
「えーと、まあ凄い、魔法戦士ですね。見た目的に同じ魔法使うなら魔法剣士のイメージを連想しそうですけど、一撃系なんですね」
へぇー、美紅って敏捷でどうこうってタイプじゃないんだ。前に食べ物の話の時に捕まえて揺らされた時も強いなって思ったっけ。一撃系となると大剣とかランスとかなのかな?
自然な足取りで美紅の横に並んで手を伸ばそうとしたら横から出てきた手に捕まる。
「徹はもう調べたの、しかも手の方向が明らかに水晶に向いてないの」
「そこから変化してコースに乗る予定だったんだ」
じゃ、私が捻ってあげるのっと言うルナのセリフを聞いてニヤリとした。待っていたのだ、その瞬間を!
おおげさに痛がって捻られた方向に思いっきり体を送り、思わず手を離したルナを横目に自分の顔を目的地に軟着陸させる。
そう、シーナさんの幸せの塊にである。
チャンスとばかりに顔を左右に擦るように振る。1振り、2振り、3・・・振る事はできなく、俺の意識は闇に落ちた。
なぁ?俺は致し方がない状況だったと思うだろ?顔の前にあの幸せの塊があれば擦り寄って顔を左右に振るのは当然の義務だと思うんだ。
だから、いいだろ爺ちゃん?
なんて事を考えていたら後ろから強い力に引き寄せられるのを感じたと思ったら抵抗もできずに後ろに飛ばされる。それを見ていた爺ちゃんがまだ来るなよ~って手を振ってるのが見えた。
「はっ!ギルドの天井だ」
「ふぅ、蘇生魔法が間に合ったの」
俺って蘇生魔法かけられてたの?しかも間に合ったって・・・
「短い時間だったけど心臓が止まったの」
「トオル君、無事で良かったです」
やれやれっといったルナと涙目の美紅が俺を見つめていた。
しかし、シーナさんの有言実行ぶりは恐ろしいモノがあるな。あの意識の落ち方は躊躇しなかったと思われる。命がけだな、マジで。じゃ、やめとけって?馬鹿言うなよ。冒険者が冒険しないでどうするよ?そこに冒険があるなら行かないでどうする!
「あら、トールさん無事だったのですね。ふふっふ」
明らかに目が笑ってない。マジで怖い。揺れる塊を見て心の安定を取り戻す。
それからルナのガードが厳しくておとなしくするしかなかった。
美紅の登録が終了して、シーナさんが思い出したらしく、俺とルナに話をしだす。
「そういえば、前回の依頼でお二人はランクが上がりました。Eランクになります。カードの提出をお願いします」
そう言われて、おとなしく渡す。俺のカードはルナを経由して渡すように指示される。俺が何をした!うん、ちゃんと分かってるから・・・
受け取ったシーナさんは受付から離れて裏にいた違う事務員?にカードを渡して帰ってくる。
「少々、お待ちください。それと受ける仕事決めていたりしますか?」
「いや、登録が済んだら捜そうと思ってたから決めてない」
いつもより表情の明るい笑顔を見せたシーナさんがにじり寄ってきた。
「Dランクの依頼なんですが、依頼料の割に面倒というか嫌だという方が多い狩猟依頼があるんです」
「みんなが嫌がるような依頼をいきなりやるのはさすがに勘弁して欲しいんですが」
既に断る方向で話を進め出してる俺に待ったをかけるシーナさん。熱く語られてるせいか上着のボタンを一個緩められた。
「いきなり断らないで最後まで聞いてくださいよ。カーババードという、やたらと派手な鳥がいるんです。この鳥の生死は問わずで捕まえてくるという依頼なんです」
「そこだけ聞いていると普通に聞こえるんだけど何が嫌がられるんですか?」
俺もズズイとにじり寄って話を聞く。
「この鳥、人間の男に嫌がらせする変な習性があるらしくて、冒険者って男性の比率が高いじゃないですか?だから嫌がられるんですけど・・・」
もうこの時点で断ろうと俺は心に決めて1点集中して続きを聞く。
「そんな鳥なんですが、その肉は頬が落ちるような信じられない美味しさで」
「美味しいお肉?」
美紅が食い付き、
「その鳥の卵で作られるプリンは至高とか?」
「至高のプリン・・・」
ルナも食い付いた。
「場所はウサギ狩りされてたとこを更に奥に行った場所なんで行き慣れてると思いますから迷う事はないでしょうし、依頼は1匹ですがその鳥は群れといっても10匹も超えないらしいですが複数いるのでついでに取ってこられたらどうでしょうか?」
「いや、男にする嫌がらせが気になるから、ことわ・・・」
「徹、シーナさんのお願いだから受けてあげようよ、ね、ね?」
「トオル君、その派手さがどんなのか見に行くついでにいいじゃないですか」
君ら、言ってるセリフ、建前ってさすがに分かるからな?
「それ以前に美紅がFだから俺達受けれないんじゃないんですか?」
「仲間内の高ランクが基準として依頼は受けれるようになってますし、基本自己責任ですから」
ルナと美紅が縋るような目で見てくるがこんな依頼受ける気はまったくない。
どんどん外堀を埋められてる予感がヒシヒシするから撤退する事にしよう。
「お土産に卵持って帰ってきて欲しいな~」
ボタンが外されて見える谷間を寄せて強調して俺に見せてくる。
「無駄ですよ。俺の鉄の意思を砕く事はできません」
それから30分後、南門から森へと向かう俺達がいた。
チョロいと語るシーナさんの声が聞こえたような気がした。
感想などありましたらよろしくお願いします。




