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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
2章 10年ぶりの再会
27/242

24話 覚悟と使命とちょっと青春

 では、24話になります。よろしくお願いします。

 クラウドの北門に抜ける時にちょっとした問題が発生した。美紅の身分証明である。とりあえず仮証明書を銅貨10枚払う事で一時的な問題回避は見たが今後どうやって身分証明をするか考える必要がある。

 しかし、俺達がクラウドに入った時、お金を払わずに済んだ事を今回初めて知った。おっさん、恩着せがましいヤツはウザいが、ちょっと何も言わなすぎだろ。手土産を持って改めて礼を言いに行かないと心に刻んだ。



 門を越えて、夕方の家路に急ぐ人の姿、夕食の準備をしている最中なのか、いい匂いが漂う。北門は比較的住宅街といった面が強い。ちなみに西門は倉庫や仲介業者などが多い場所になっている。西門の方向が王都になっている為、商品、商人の出入りが多い為、必然的に多くなっているようだ。東門側は職人街である。一般的にクラウドは職人の街と認識されているらしい。その為、駆け出しの職人の憧れの地らしく、見る目がないと質の悪いモノも掴まされる。ミランダが紹介してくれたグルガンデ武具店はきっとアタリだと思われる。あのハイスペックな変態マッチョ存在の正体をいつか知りたいものである。最後に俺達が最初にきた南門は冒険者ギルドがあることから想像が付くかもしれないが元の世界で言う官庁街といった感じの場所になっている。王都から中途半端に離れているせいか、意外に貴族はあまり住んでいない。比較的、クラウドはその為か自由の気風のある街であった。



 周りの景色を珍しそうにキョロキョロ見ている美紅がいた。


「そんなに珍しいモノはないだろ?」


 俺は疑問に思って美紅に問いかける。


「え、えっと、それは」

「徹、美紅は城にずっといたし、多分、初めて出たのが今回の封印でだと思うの」


 ルナは美紅をフォローする。

 フォローされた美紅は自分の足の先を見つめる。

 やらかした俺は頭を掻きながら美紅に近寄り


「俺さ、気を使うの下手でさ、すまねぇ。俺にはもっと我儘になってくれていいんだぜ?言ったろ?お前の楽しいを見つけてやるって」


 締まらないなって思いながら、そんな事を思ってる自分がおかしくて笑いながら美紅の頭撫でる。撫でられて真っ赤になっていく美紅を見て面白くなって更に笑ってしまった。

 手を離しても真っ赤のままの美紅を見たルナがたまらなくなったようで抱きしめたと思ったら美紅を抱えて走り去った。

 暴走したルナはマッチョの集い亭の方向に向かったようだ。


「美紅が拉致られた・・・」


 ヤレヤレと肩を竦めて、俺もマッチョの集い亭に向かった。



 マッチョの集い亭に着くと既に2人はカウンターに座ってミランダにジュースを出して貰って飲んで俺を待っていた。


「おかえり、トール」


「ただいま、ミランダ」


 お互い挨拶を済ませて、空いてるルナの隣に座る。夜の部の開店前のようで店には客がいないのにあえてカウンターに座る俺達は既に指定席になりつつあった。


「ミランダ、また部屋を借りていいかな?」

「勿論いいわよ。でも前と同じ部屋だと3人はキツイと思うから移動したほうがいいと思うわ。4人部屋用意できるけどそこにしとく?」


 今まではルナだけだったから、なあなあで乗り越えてきたがさすがに美紅も加わった2人も同じ部屋でというのは問題がある気がする。


「悪いんだけど、前の部屋と一人部屋もしくば同じ部屋を二つじゃダメかな?さすがに今度は女の子2人と一緒となると問題も出てきそうだし。」

「こっちは別に構わないけど、トールはそう言ってるけど、お二人さんはどうする?」


 ミランダはルナと美紅に問いかける。


「どうするって言われても、今まではどうしてたんですか?トオル君とルナさんは」

「うんとね、一緒の部屋で生活してたの」

「ええっ!問題とかなかったんですか?」

「着替えようとしてるのに気付けば席を外してくれるし、特に何もなかったの」


 美紅は俺を信じられないモノを見るような目で見た。

 俺は紳士だよ?とある特徴がある女性には極めて安全な男だよ?

 ルナから一瞬だけ殺気を感じられたが、俺のボカし方の勝利のようで本当に一瞬だった。


「バラバラに生活するのも寂しいからまた一緒でいいと思うの」

「実体験してるルナさんが大丈夫って言うなら・・・」

「だそうよ、トール」


 まあ、2人がどう思うかだし、問題が出ればその時は部屋を変えて貰おう。


「じゃ、4人部屋で頼むよ」


 肩を竦めながら俺は言うとミランダが楽しそうに笑って俺を見つめていた。




「そうそう、ルナちゃんに美紅ちゃんだったわね?夕飯までまだ時間かかるのよ。公衆浴場のタダ券があるから2人で行ってきて時間潰してらっしゃい」


 ん?何故かミランダが俺に目配せをする。2人と俺を引き離そうとしてる?ミランダが俺達を陥れるとか思うほど俺のミランダに対する信頼度は低くない。何か俺に話があるんだろう。


「でも、トオル君だけ置いて行くのは悪い気がします」

「3人で行ったほうがいいと思うの」


 2人は俺が行かない事で難色を示しだす。本当にいい奴らだ。


「いや、俺は風呂とかそこまで好きじゃないし、何よりお前達は俺が飲んでないジュースを飲んでたじゃないか。俺も飲みたいから飲みながら待つから行ってこいよ」


 2人はお互いの顔を見合わせて、笑いだす。


「分かったの、2人でお風呂にいってくるの」

「じゃ、失礼して行ってきます」


 2人を手を振って見送って店の外に姿が消えたのを確認して、ミランダに問いかける。


「で、何か用なのか?」

「ちょっと待ってね」


 ミランダは厨房に入って行った。そして、ルナ達が飲んでいたジュースを俺の前に置く。フフフと笑いながら言った事には責任を持ちましょうと俺に言った。

 俺が一口飲むのを確認して、ミランダが話始める。


「トール、美紅が勇者なのは私は知ってると言う事を先に言っとくわ」


 思わず、身構えてしまう俺を見て、苦笑いをしたミランダが俺を落ち着かせるように違うから心配しないでと手を振る。


「状況的に腹の探り合いになるを避ける為、先に伝えたの。強引な手だとは思ったけど時間は有限だから」


 店に客が来る時間とルナ達が帰ってくるまでがリミットだからだろう。


「私が知る限り、この辺りで美紅の顔を見て勇者と分かる人物はザウスと私ぐらいね。美紅の瞳の色を見て、疑問に思うかもしれない貴族がいるかどうかってぐらいだから、そこまで神経質になる必要はないわ」


 ミランダは俺に何を言いたいのか、ここまでではまだはっきりしない。

 続けて、ミランダは語った。


「封印に使われてた勇者をどうやって連れ出したかは聞かない。でも、連れ出した意味は理解してるの?」


 曖昧な答えは許さないという視線に込めて俺を見る。


「ああ、分かってるつもりだ。美紅が封印の地から離れたからその力の持続は1年しか持たない。魔神は俺がなんとかする」

「それはトール、使命感から、誰かの為にやろうとしてるのかしら?」


 小さい変化も見逃さないとばかりに俺を睨む。凄い眼力だ、いつものオネェやってるミランダとは思えない。

 俺も負けるかと腹に力を入れて答える。


「俺の為にやってる。俺がそうしたいと思ったからやっているだけだ」

「トールの我儘の為にアローラが滅ぶとしても?」


 今までで一番怖い、殺気が籠った視線で俺を射抜くように見る。


「だとしてもだ。自分の世界を自分達でなんとかできないようなら、それは自然の摂理として受け入れるしかない。しかもだ、延命処置するために自分の世界と違う世界から人を呼んで人身御供する他力本願は間違っている」


 ミランダの視線はそのままで、俺に続きを促す。


「だからと言って、滅ぶのを座して待つ気はない。アローラにも守りたいもの、ルナや美紅、勿論、ミランダもおっさんもきっとこれからも増えていく。今までなかった解答を俺は生み出すつもりだ。だから、魔神は俺がなんとかするから任せておけ」


 虚を突かれた顔したミランダが爆笑しだす。


「満点よ、トール。ううん、それ以上かも。でもちょっと欲張りすぎな気がするけど男の子だからそれぐらいがいいわね。トールの覚悟は確かに聞いたわ。私は貴方達を応援するわ」

「ありがとう、俺、頑張るよ」

「だそうよ、2人ともちゃんと聞こえた?」


 えっ?と呟いた俺はミランダが見ている厨房のほうに視線を送るとルナと美紅が現れる。マジでどういう事?ルナはエグエグと号泣してるし、美紅は涙目になりつつ祈るように俺を見ている。

 俺が人形なら油が切れているような音をさせてミランダを見て目で説明を求めた。


「ルナちゃん達が先に帰ってきたでしょ?勿論、すぐに美紅ちゃんが勇者って気付いて事情を聞いたんだけど、トールはどういうつもりでやって覚悟があるか知る必要があると思った私が1芝居打つ事にしたの。で、2人も自分達がいない所でのトールの本音が聞きたいって事になって、今に至ると」


 落ち着いて考えたらあんな真剣な話をするために厨房に戻って言い訳に使ったジュースを取りにいく理由なんかなかったはずだ。あれは、2人が裏に回るのを確認しにいった理由作りだったのだろう。つまり、俺はしてやられたってことになる。

 きっと、今の俺はルナ達と違う理由で涙目だろう。


「私は嬉しいの、徹。格好良かったの」

「ありがとうございます。トオル君。私は信じて付いて行きます」


 プルプル震えた俺は、


「お前らなんか大嫌いや~~」


 勢いのまま、マッチョの集い亭を飛び出した。


「青春してるわね、トール」


 決して大きな声じゃなかったのに俺に届いた。



 飛び出した俺は夕飯の時間には戻ってきた。

 着々と俺の黒歴史のページは順調に埋まっていっているようだ。

 感想などありましたらよろしくお願いします。














      後日、本当にタダ券で公衆浴場に行った3人



「風呂か~クリーナーが使えるから水で拭く以外にしなくなって久しくて入って

なかったな」


 肩にタオルを乗せて歩く俺の横で美紅が頷く。


「そうですね。私はアローラに来てから数えるぐらいしか入った記憶がありませ

ん」

「私なんか1度もないの。あそこでは汚れる事もないからそんな心配なかったし


 まあ、あの世界で汚れるってイメージできないわな。ルナと会った場所を思い

出しつつ、あそこからルナを連れ出して良かったと思った。


 そうしてる間にミランダに教えて貰った公衆浴場に到着した。

 到着して入り口を見ると男湯と女湯、そして混浴とあった。それを見た2人は

俺を疑わしい目で見て言ってくる。


「私達は女湯に行くの。間違っても混浴なんかに行かないから!」

「トオル君も男の子ですから仕方がないのかもしれませんが自制心を持ってくだ

さい」


 俺は呆れたような顔をして言う。


「初めから一緒にとか考えてないって、まして、混浴にいっても、おばちゃん、

バアちゃんしかいないって」


 はっはは、と笑って言う俺を左右から殴る2人。


「なして?」


 殴られた理由の分からない俺はシナを作って哀れさを強調するが、フンっと鼻

を鳴らして無視される。

 悲しみに暮れる俺の前を赤ちゃんを連れた胸の大きな(ここ重要)若い奥さん

が混浴に入っていくのを目撃する。


「ヤレヤレ、とりあえず風呂に入るか~」


 俺は風呂へと向かおうとすると左右から片方づつの手首を捕まえられる。


「徹、どこに行こうとしてるの?」

「どこって風呂だよ。当然だろ」

「その行き先です。私の目には混浴に行こうとしてるように見えるのですが?」


 俺は短くてできないのに髪を首を振る事で掻き上げてるつもりで仕草をする。

そして、遠い目をする。


「何事も経験じゃないかと思うようになったんだ」

「嘘なの!明らかに今通った若奥様風の人見てから考えを変えたの!」


 ルナの意見に美紅もうんうんと頷く。


「人妻の裸を見ようというのはどうかと思います!」

「分かってないな、2人とも」


 俺は揺るがぬ意思を見せつける。今日の俺は一味違う。


「見るだけならそんな設定どうでもいいんだよ!男って生き物はっ!!」


 身体強化を全開にして振り切ろうとするが元々の実力が既に負けてる相手の2

人に押さえられてるのに俺は諦めない。今、頑張らないといつ頑張るというんだ

!!


「いつもより頑張ってるのは分かるけど通さないの!」


 俺の手首を万力のように締めあげる。


「エッチな事は駄目だと思います」


 美紅により俺の手首は紫に変色し始める。

 2人がかりで引っ張られ、地面に叩きつけられる。

 俺をゴミを見るような目で見下しながら最終勧告をしてくる。


「「おとなしく、男湯にいきなさい」」

「はい、いってきます・・・」


 怖くてそうとしか言わせて貰えなかった。



 俺はブツブツ言いながら脱衣場で服を脱いでいた。服を片付けると扉を閉める

簡易キーが付いていてるのを見てアローラでもあるんだっと変な感心をしながら

鍵を腕に通そうとすると激痛が走る。2人にやられたところが痛む。

 仕方がないから足首に付けて入る事にした。


 中に入ると正面に小学校のプールぐらいの黒の石を鏡のように研磨されたもの

で敷き詰められた風呂が目に入る。左を見ると体を洗う場所があり蛇口などはな

く目の前に常に流れ出るお湯を使って洗うタイプのようでかなり元の世界のイメ

ージからすると凄く贅沢に見えた。逆に反対側を見るとサウナ室ぽい所があり、

湯気が出てないところを見ると水風呂もあるようだ。その奥には打たせ湯もあっ

た。


「今更ながら本当に異世界なんだろうか?」


 どことなく懐かしい景色だ。銭湯や旅館に行ったらありそうな感じがそれを感

じさせる。

 とりあえず、体を洗うべく洗い場に移動して洗う事にした。


 洗いだすと何故か視線が纏わりつくのを感じた。なんとなく気持ちが悪い感じ

がしたが頭などを洗ってる時にやたらと視線を感じるアレかな?っと思い無視す

る。

 洗い終わると俺は湯船の淵で足湯をしながらまったりしてると、俺の隣にマッ

チョが据わる。ビクっとした俺は気付かれない程度に反対側に移動するが、どう

したことでしょう!マッチョも同じだけ移動してくるではないか!そいつに注目

してると反対側からもマッチョが座ってくる。

 そして、2人同時に言ってくる。


「「この後、一緒に食事でもどうだい?坊や?」」


 俺は全身に鳥肌が立った。


「イヤァァァーーーー」


 まるで生娘のようなセリフを叫びながら風呂を飛び出し、マッチョの集い亭の

ベットを目指し身体強化全開で走った。ベットに辿りつくと毛布の中に逃げ込ん

でガタガタと震えた。


 しばらくするとルナ達が帰ってきた。


「徹、どこにいるか捜したの。番台さんに聞いたら悲鳴上げて出て行ったって聞

いたから心配したの」


 涙目の俺はルナを目視すると飛びつくと抱きついて男泣きする。

 ルナはびっくりしたようで美紅と俺を交互に見ている。


「トオル君はよっぽど怖い目に会ったようですね」


 エグエグ泣く俺の頭を撫でながら言う。



 結論、銭湯にはもう行きません!




 バイブルさんも人伝なのでどこまで真実かは知らないのですが、公衆浴場、ス

パとか言われる類の所で足に鍵を付けてる人は恋人募集と意味らしいと聞いた事

があります。これが真実かどうかはともかく、念のために足に付けて入らないよ

うにお勧めします(^。^)y-.。o○

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