218話 信じる心
みぞれ雪が降りました。寒いっすよ(゜Д゜;)
世界各地では、魔神召喚に影響を受けたモンスターとの戦いが激化していた。
獣人国の港町のフレッチュでは、ゴビが率いる義勇軍として街を護る為に、奮闘していた。
ここもやはり、モンスターの数に対して明らかに人出が足りてない状態であったが、そこは獣人の男の意地で戦い抜いていた。
例えば、こんな感じである。
「ゴビ隊長・・・もう、もう無理です。休ませてください!」
「うんむ、戦線離脱を許可する。ルナピョンには、お前は○漏だったと伝えておこう」
「俺は早○じゃねぇ!!何回戦でもイケるぜぇぇ!!休憩は済みました、戦線に戻りますっ」
だとか、
「もう剣も折れて、戦えませんっ!!」
「馬鹿野郎、この世で最強の武器はなんだっ!!腹の底から声出して言ってみろ!!!」
「ミクニャンの肉球グローブでありますっ!!!!!」
「お前の腕の先に付いてるものはなんだ!本当にもう戦えないのか!ミクニャンから何を学んだ!!」
滂沱の涙を流す獣人が叫ぶ。
「私が間違ってました。最強の名を本物にして参りますぅぅ!」
まさに獣人国は勇者の巣窟であった。
それで、戦線を維持するどころか押している、この民族性の恐ろしさを見たように思う。
ドワーフ国の首都では、死なない受付の男と呼ばれる男は、モンスターの集団に踏みつけられても、死ぬかと思ったと言いながら立ち上がる。
職人達は襲い来るモンスターに舌なめずりをして、叫ぶ。
「素材が歩いて、いや、走ってきよるぞぉ!」
職人達による醜い取り合いという蹂躙が起こり、戦況は不利なはずだが士気は高かった。
実際の話、立地上、集団で襲うには向いてない場所に首都がある為、凌げているだけであったが、ドワーフ達は逞しかった。
エルフ国のエルフ城では、首都の国民が慌てず、城へと避難していた。
城の一室では宰相がボサボサの髪を掻きながら報告書を読む眼鏡をかけた男と対面していた。
「これで国民の避難は無事に済みました」
「そうですか、ありがとう、トラブルもなく、スムーズに避難を済ませてくれて助かります」
宰相はモンスターに怯えてた国民が駆けこんで来て、大きなトラブルになり、被害が広がるのを恐れていたが、こうも上手くいって、ティテレーネ王女が付けてくれた副官である目の前の青年の存在に感謝した。
「お褒め頂き嬉しく思いますが、実際のところ、以前のモンスターパニックで慣れとトール様を信じる国民が協力し合い、避難したのが大きいです。今回もきっとトール様がなんとかしてくれる。それまで私達は耐えればいいだけだと」
徹を褒められて、オルソンは嬉しそうに微笑む。
宰相もそうですかっと微笑み、男2人、エコ帝国の方面に目を向けて、そこで戦っていると思われる、救国の使者に祈った。
「それはともかく、ルナさんが張った結界は凄いものですね。城の外壁ができるまでの代わりにっという事でしたが、モンスターが近寄れません。入ってくるには門からのみという破格の性能ですね」
宰相はそう言うと、オルソンが先程、ドラゴンが結界にぶつかって崖に落ちて行きましたっと笑う。
「そのおかげで兵達も門を守れば良いだけなので、休憩を取りつつ、戦えるので長期戦もいけそうです。後、姫様の指示で、地下には非常食などが大目に常備されておりましたから、そちらも問題はなさそうです」
「そうですか、私達は救国の使者様が魔神を打倒すると信じて、守り抜くだけです」
2人は頷き合うと、オルソンは失礼しますっと言って退出していく。オルソンがやらねばならない事はまだまだあった。
宰相も自分のすべき事をする為にオルソンの後を追うように部屋を出ていく。
戦場とは何も武器を持って行く場所だけではないのであった。
場所は移り、クラウドもやはり、モンスターの襲撃にあっていた。マッチョの集い亭前では、食糧の配給が行われており、そして、珍しい組み合わせの2人がそこにいた。ルルとコルシアンであった。
「ミランダはどこにいるか分からないんだね?ルルちゃん」
「ああ、店を閉めてから誰も見てないらしい。以前から、自分がいなくて店が必要なら好きに使うようにって言ってたのはこの事を見越してたのかな?後、ルルちゃんって言うなっ」
ルルは、店から引っ張り出した道具で備蓄してあった材料で食べれそうなもので簡単なスープを作り、みんなに配っていた。
先程から三角巾を被り、エプロンを着けたルルを見るコルシアンの目がアヤしかった。コルシアンの闇は深い、それも魔神と比べてもいいレベルに・・・
ルルは自分の隣にいるメイドに抱きつくと見上げながら、泣きつくように言ってくる。
「あのオッサンに危機感を感じるんだけどぅ!」
「だそうですよ、ご主人様。そろそろ戦場に戻ってください」
「ま、待って、僕、今、戻ってきたところだよっ?休憩もしてないし、ご飯も食べてないよ?」
セシルは、うんうんっと頷き、分かっているとばかりに言ってくる。
「先程、ご主人様は、ルルさんを見つめながら何度も飲み込んでおられたではありませんか?あれだけ飲み込んでいたら充分では?」
「それは、自分の生唾じゃないかな?さすがにそれでは栄養もお腹も満たされないからねっ?」
ルルはこの2人の主従漫才に付き合うのが馬鹿らしくなったようで、空を見上げる。この空の下ではきっとトールは頑張っているはずだと、雲で隠れた月を捜すように目を彷徨わせながら、最終的に首都バックのほうを見つめて、一度目を瞑ると三角巾を締め直し気合いを入れる。次の食事の下準備を開始する為に離れていった。
各地で善戦をしていたが時間の経過と共に、数で押され始め、どんどん劣勢になっていく。
折れそうな心をギリギリに保っているのは、魔神と戦っている、あの男がいる以上、諦めるには早いと自分達を叱咤している為であった。
そして、人々は思う。あの者がいる、あの者だったら、あの者であるならっと。
未来への希望を願う想いが絶望の中で輝いていた。その輝きが、少しづつ集まりだし、大きなうねりとなり、ある方向へと延びていく。
傷つき倒れる英雄に想いを届ける為に。
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