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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
10章 手と手を繋いで ~キセキ~
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216話 魔神召喚

 スーベラと別れてから、6時間。思ったより遅れていると自覚し、少し速度を上げて走ると少し拓けた場所でイライラした雰囲気を隠そうとしないロートル勇者と永遠の乙女のミラさんが俺を待ち構えていた。ミラさんは、イライラしている和也を見つめて困った笑みを俺に向けているのが分かる。


「ミラさん、お待たせ。行きましょうか?」

「えっと、トールさん?目の前の危機をなんとかされたほうがいいんじゃないかなって?」


 俺はミラさんに笑顔をを送り、横にいるロートル勇者には誠意を込めて、半眼と唾を地面に吐く事で気持ちを伝える。


「よし、上等だぁ!魔神との戦いの前の準備運動に馬鹿野郎を仕留めてやる!!」

「大丈夫か?イライラが収まらないのか?それは更年期障害ってやつだな。養○酒を飲んでおけ、多分、よくなるはずだから」


 俺は優しげな笑みを浮かべながら、和也を労わる。大丈夫だよ?お爺ちゃんはまだ若いよっと励ます事も忘れない。


「馬鹿野郎がぁ、それは滋養強壮だから関係ないわっ」

「そうなのか?俺の爺ちゃんは、養○酒は老人の体にいいっと良く言ってたんだけどな?おかしいな」


 爺ちゃんは、同じ酒の名を持つ、日本酒も体にいいんだぞ?っと言って朝っぱらから飲みながら、婆ちゃんと母さんには内緒な?っと笑っていたんだけどなっと首を傾げる。

 首を傾げる俺の胸倉を掴んで、持ち上げて揺すりながら言ってくる。


「酒飲みの言い訳を真に受けてんじゃねぇ!それに俺は老化が止まってるから更年期なんかこねぇーよ!!」

「和也、貴方はトールさんが絡むと別人みたいになるから、落ち着いたほうがいいですよ?」


 本気で心配するミラさんに和也は気を付けるっと言うと俺を下ろす。俺も和也を心配して、大丈夫さっと肩を叩くがギリっと歯を噛み締める姿を見て、メシう・・・俺が優しくして上げねばっと心に戒めた。


「トールさんも和也が怒ると分かって言ってますよね?トールさんも和也が絡むと人が変わってますからね?どうして、この2人が顔を合わせると子供になるのでしょうか・・・」


 ミラさんは頬に手を当てて、溜息を吐く姿が、聞き訳の悪い幼児を面倒みて疲れる保母さんのように見えたような気がするのは、見間違いだと俺はミラさんから視線を反らすと同じようにしてる和也に気付き、額を突き付けて、ガンの飛ばし合いが開始されて、ミラさんがあっちの世界から帰ってきて、俺達の様子に気付いて止めに入るまでその睨み合いは続いた。


 インターバルを取って、落ち着いた俺達は、最後の打ち合わせだと言う事で地べたに座って話し合いをしていた。


「先に聞いておきたいんだが、お前が来た方向から加護持ちが消えた感触があったんだが、何があったんだ?」

「トランウィザードが現れたから交戦する事になりそうになった時にスーベラが現れたんだ。どうやら、スーベラとトランウィザードは浅からぬ関係だったようで、譲ってくれっと言われたから、譲ってきたけど、目的は果たせたみたいだな」


 そうかっと和也は言うと、話を戻そうっと言って、今後の話を始める。


「魔神の召喚時間だが、ミラの見立てだと、後2時間後に現れると予想される。言う意味はないとは思うが、召喚自体を止める術はない。召喚陣を潰してもそこから既に離れたプロセスを取られているから、無意味だ。先に潰して、なんらかの次の不測の事態を防ぐ意味でというのも、また無駄っと言っておこう。魔神が現れた時点で破壊されるからだ」


 勇者召喚の場所まで徒歩1時間ってところだから着いたら1時間は余裕があるだろうなっと言うと、ここまではいいかっと俺に聞いてくる。ミラさんとは既に何度も打ち合わせが済まされているのか、ミラさんは話をしてる最中も俺の変化を見るように見つめてるだけで会話に参加しない。俺は、大丈夫だっと伝えると和也は頷き、口を開く。


「なら、打つ手はないのかというと、そうでもない。魔神が召喚される瞬間がもっとも無防備な状態で好機だ。もう、加護持ちが俺を残して最後になった事で、魔神側でまともに動ける者が誰もいなくなった。横やりを気にせず、思いっきりやれるようになった。魔神は俺とミラで動きを封じる。だから、徹。お前が決めろ。これができるのは俺じゃない。お前とお前の持つカラスとアオツキがないと出来ない事だ」


 加護持ちの俺には殺し切れないんだっと唇を噛み締める。

 俺は生唾を飲み込むと、ああ、任せてくれっと言うが、緊張のせいか、舌を少し噛みそうなった。

 やるべき事はシンプルだが、最後を決めるのが自分だと思うとやっぱり緊張してくる。少し落ち着きなく視線を忙しなくしていると、同じように落ち付かない和也が、俺に何か聞きたそうにしている。

 ミラさんに聞きたいなら、さっさと聞いて楽になったほうがいいですよっと言われると踏ん切りが付いたのか、俺を見つめて聞いてくる。


「美紅ちゃんはどうなった?無事なのか?」

「ああ、なんとか間に合って、命には別条はないが、今回の魔神戦はリタイヤだな」


 そうかっと安堵する和也は、目を一度瞑ると気持ちを切り替えたのか、緊張感のある目になると、行くぞっと言って立ち上がる。

 そして、俺も和也の背を追うように、早鐘を打つような心音と掌に掻く汗に気付きもせずに勇者召喚の場所を目指して歩き出した。



 勇者召喚の場所へ到着すると入り口を目の前にして和也達は立ち止まるので俺は2人に問いかける。


「中に入らないのか?」

「馬鹿か?馬鹿だったな。1時間前に説明したばかりだろう?召喚されたら召喚陣は破壊されると、あそこで現れた魔神に壊されて、生き埋めにあうぞ?」


 言われて焦るが俺は魔神がどれくらいの大きさか聞いてなかった事にも今、気付き、聞くとガ○ダムだと答えられ、簡潔で分かり易く説明される。思わず、どれくらいだよっと突っ込みそうになったが、もし詳細を伝えられたら、和也を見る目が変わりそうだったので俺の為に聞かず、おおよそそれぐらいなのかと納得した。ガ○ダムって戦闘機より小さいって話だからそこまで大きい訳ではないはずである。


 それから俺達は黙ったまま、その場で腰を落ち着けていた。そろそろ時間だと雲の切れ端から漏れる太陽光がオレンジに染まるのを見て、逢魔が時かっと思い、狙いすぎだろうっと笑おうとするが失敗する。呼吸が荒くなるのを深呼吸して落ち着こうとするっと和也が立ち上がり、切迫した声で叫ぶ。


「魔神が来るぞっ!」


 その言葉に慌てて、俺は立ち上がる。横を見ると落ち着いた様子で立ち上がるミラさんが和也の近くに寄ると言ってくる。


「召喚されたら、一気に封じに行きます。和也は私にタイミングを合わせてください。私がメインでいきますのでよろしくお願いします。後はトールさん、お任せしますね」

「俺達が、封じ始めたら、飛び上がり、魔神に特攻して、カラスで縫い止めて、アオツキでトドメを刺すんだ!魔神を拘束はするが抵抗されない訳じゃないっという事を忘れるな。聞いてるか徹っ!」

「おっおう!ちゃんと聞いてる。任せてくれ」


 俺は和也の言葉に生唾を飲み込みながら頷いた。


 すると、目の前の光景に小さな黒い渦が生まれる。それが徐々に大きくなるとそこから左手が飛び出してくる。

 それを見た和也とミラさんが魔法を唱える準備に入る。

 俺はその動きを見ただけで思わず、飛び上がってしまう。


「馬鹿がっ!!先走り過ぎだぁ!」


 和也がそう叫んだとは分かっているが俺はどうしたらいいか分からなくなっていた。

 黒い渦から飛び出した左手は腕を立てるようにして上半身を飛び出させる。魔神の顔は元の女神が美人だったのだろうなっと分かるだけにかけられるプレッシャーが強く感じられ、恐怖が引き立った。

 飛び出した魔神は闇色のオーラに包まれて、黒い涙を流す。そんな魔神を見て、怯んでしまう俺を見ると悲鳴を上げる。

 俺はその声に委縮する思いに抗おうとしてしまい、反射的に飛び出してしまう。


「トールさんっ!!戻ってぇ!!」


 そういうミラさんの言葉にどう反応をしていいかも分からないほど混乱した俺は無策に直線的に飛び込む。そこを魔神の左手に黒い大きなボールのような神気が籠った魔力のボールを握るようにして、俺を殴りつけるとボールを俺に向けて投げつけた。

 そのボールを避ける事叶わず、俺は直撃して、凄まじい衝撃と痛みで意識を奪われそうになる。薄れゆく意識の中で、ボールに遠くへと運ばれるところまで意識をしたがそこより先は分からない。俺は意識を保つ事ができなくなり気を失った。

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