215話 生きているから触らせてあげない
今年中に終わらせる見通しは立った!エンディングは見えた・・・はず・・・多分・・・だといいねっ!
難しそうなら年末の休みに頑張って書いてみます(;一_一)
それは、ともかく90万文字に到達したけど、さすがに100万文字まで届かないだろうな~
ナイフを構えて、トランウィザード、いや、ウィッチトランを見つめるスーベラは話かける。
「貴方の様子を見る限り、加護を使う代償が普通より大きいようですね?その顔以外が若返っている。いえ、存在を切り売りしていると言ったほうが良いのでしょうか?」
ウィッチトランは忌々しそうにスーベラを睨みながら、虚空に手を彷徨わせてる。
その姿を見つめながら嘆息するスーベラ。
「まだ諦めていないのですか?トール様は基本、嘘は吐きません。演技を器用にこなす事ができない人ですからね。あの方が1日と言ったら本当に1日使い物にならないのですよ。あの方は素直過ぎます。見ていてハラハラするほどにね」
やっと諦めたのか、彷徨わせるのを止めるとスーベラに向き合う。小馬鹿にするような顔を浮かべると口を開く。
「いえねぇ、2人の神から加護を重ねて受けている期間があったせいで、代償が大きいモノになってしまって、困ってますが、既に加護を得てない、得られない貴方が加護のある私をどうしようっと言うのですか?」
今、存在してるのも蓄えた加護の力を小出しにしてるから生き残ってるだけでしょうにっと嘲笑ってくる。
スーベラは、ウィッチトランが言った言葉に眉を顰める。
「そうですか、貴方だったのですね。私が始まりの魔神と戦い、トドメを刺そうとしたところを邪魔する一撃を入れて、逃げる隙を作ったのは?」
ウィッチトランはとっても楽しそうに嗤い、スーベラを見つめるのみで何も答えないが、否定もしてこない。
更に眉を潜めて、汚らわしいものを見る目をして見つめる。
「そして、今の魔神の女神が始まりの魔神を倒し、毒が移って、新たな魔神になると擦り寄って加護を得たと言う事ですね?毒を受けて、必死に抗う女神を誘惑するように加護の毒が増すと楽になれると囁いたのでしょう?」
「くっくく、ええ、その通りですよ。神、女神と言ってもその程度の者達なのですよ。人より高潔なイメージを持っておられましたか?いえいえ、神達など、人より欲望に素直と言っても差支えがないのです。だから、簡単に暴走する。神の鉄槌っと言って、人を怯えさせる。単純な者達です」
ウィッチトランは天を仰ぎ、見てるのでしょう?違うっと言うなら結果で示してみると良いですよっと高らかに嗤い、酔っていた。
その酔っている男を気持ち悪そうに見つめながらも、嫌々ながら同意する。
「ええ、確かに、神は良く言えば、素直に生きてますね。なのに、あれだけの力を持っているから扱いに困る。ですが、貴方だけには嗤われたくはないでしょうね。例え、その事に自覚症状がある、なし問わず」
「何が言いたいのです?」
スーベラは本当に気付いてないのですねっと今度はスーベラがウィッチトランを嗤う。
「貴方は今、相手にしてる者達にどういう認識で見られているか知ってますか?貴方と会った者が知らぬ者にどう説明しているか、盗み見の好きそうな貴方は見てないのですか?」
「恥ずかしながら、トールと1戦やってから、忙しかったもので偵察はしてませんので」
これはおかしいっとばかりにお腹が捩れるのを必死に押し留めるようにして嗤うスーベラを見つめ、忌々しそうに見つめるウィッチトラン。
「下手な三文芝居を一流と勘違いして演技をする気持ち悪い存在で、イヤラシイ性格をした存在、いえ、物体のような言い回しをされてましたね」
プルプルと震えるウィッチトランを見つめて、やっとのことで抑え込んだ笑いが我慢できずに噴き出す。
「私だって、因縁がなければ関わり合いを拒否しますよ?ああ、ごめんなさい、間違えました。貴方と因縁があるなんて恥辱なので、汚名返上させる意味でも、もっと早く関わりたかったです」
再び、笑いだそうとするスーベラの横顔を掠らせるようにして、水流が迸る。
もう余裕などどこにもないと言わんばかりの目を血走らせたウィッチトランがそこにいた。
「もういい、黙れ。お前などに代償を支払ってまで戦うのが馬鹿馬鹿しいと思ってましたが、そこまで言われたらご希望に添いましょう。自分の愚かさと無力を呪って逝くがいい」
そう言うが否や、醜いと言う言葉が似合う顔をしたウィッチトランが飛び込んでくる。スーベラは持っているナイフで応戦するが素手で来るウィッチトランの手にかすり傷をつけるのがやっとであった。
「くっくく、神より生み出された金属の武器があれば、この程度では済まなかったのでしょうが、どうされたのですか?ああ、そう言えば、あの時に呪われて手放されたのでしたな?」
スーベラを嘲笑う狂喜する顔をするウィッチトラン。その顔をされるのが忌々しいのか、その言葉通り、かすり傷しか付けれない状況に苛立っているのか、表情が優れない。
「先程の余裕はどうされたのですか?口だけでしたか。あのままおとなしく、自分の世界に閉じ籠っていれば良かったモノを!」
ここでスーベラの表情に怒りが一瞬走るが、ウィッチトランはそれを見逃した、無駄に嘲笑っているが為に。
ウィッチトランは、距離を取って溜めを作るとスーベラの目では捉えきれない速度で突進する。スーベラがウィッチトランを認識した時には既に目の前にいた。スーベラの胸部を腕で貫いた状態のままで。
ウィッチトランは貫いた腕を引き抜くと、その腕で支えられていたスーベラは背中から地面に倒れていく。
血を激しく、吐きだし、息絶え絶えといったスーベラに笑みを向けるウィッチトランは嗤いながら近づいていく。
「所詮、加護があったから戦えたという事を忘れて、私に挑んでくるからこんな目に合うのですよ。では、あの世から、この後の出来事を眺めていてくださいね?今まで通りに1人で」
再び、腕を振り上げるウィッチトランであったが、ピタリと動きを止める。良く見るとウィッチトランの胸には光る刃が突き刺さり、背中まで貫通していた。その光る刃を両手で押さえ、引き抜くと膝を吐きながら血を吐きだす。
その目の前には足元も覚束ない姿のスーベラが立っていた。
「な、何故、立てるのですか?」
「力を使って、心臓を動かして致命傷を避けたからですよ。とは言っても延命しただけで助かりませんけどね」
ゆっくりと近づいてくるスーベラから逃げたいと思うウィッチトランであったが、心臓を貫かれたウィッチトランは加護で強引に命を維持するのが精一杯で動く事が叶わない。このまま時間が過ぎれば、加護の力でウィッチトランは助かると分かるが、目の前のスーベラがその時間をくれそうになかった。
「つまり、私と相討ちするつもりでやっていたと?そのナイフで自分に致命傷を負わせられないと思わせ、胸に隙を作ってそこに攻撃させたという事ですか?」
本当に悔しそうに歯軋りをするウィッチトランを虚ろな視線で見つめるスーベラにも時間が迫っていた。
妖艶な笑みを浮かべるスーベラはウィッチトランに笑いかけながらナイフを掲げる。
「演技というのはこうやってやるのです。相手を怒らせるなり、視野を狭くし、目の前のものが全てのように思わせ、気付いた時にあれは演技だったのかと思わせて初めて本物です。だから、貴方の演技は三流なのですよ」
「くそぉぉがぁぁ!!」
悪態を吐くウィッチトランを楽しそうに見つめながら、残る加護をナイフに宿らせると迷いもなくウィッチトランの首を切断する。切断されたウィッチトランの体が色褪せ、灰のようになり、風に運ばれるのを見届けるとスーベラは役目を終えたと目を瞑ると再び背中から地面に倒れるとその衝撃で再び、吐血する。
「まったく、あの馬鹿女神の口車に乗ったせいで、最後までトール様を眺めていられなくなりましたか・・・ですが、この結果もまずまずでしょう。因縁を自分の手で付けれましたしね」
ふっ切れたような笑顔を空に放つ、スーベラは何故、このタイミングで私に太陽は微笑まずに雲の向こうに隠れるのかと苦笑するが今まで過去から逃げてきた私には当然の報いかっと自分をせせら笑う。
「でも、頑張った私を見て、トール様は今の私の胸なら触りたいと言ってくださるでしょうか・・・まあ、言ったとしても今回は触らせて上げませんけどね」
自分の体から灰が舞い始めるのを見つめながら、スーベラは願う。
「トール様、どうか、御無事で。貴方は希望そのものなのですから」
雲に切れ目が生まれ、そこから零れる太陽光がスーベラを照らす。照らされたスーベラが何かを呟いたようだが、声にならずに灰となって、空を舞い、その雲の切れ目を目指すように飛んでいった。
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