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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
10章 手と手を繋いで ~キセキ~
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214話 トランウィザードの正体

 駐屯所を出て、2時間ぐらい経っただろうか?今、俺はモンスターにサインを求められるアイドルのように逃がさないとばかりに囲まれて絶賛売れっ子アイドル一直線が約束された身になっていた。

 呆れるように眺めながら、ここまでして俺達と戦うのを敬遠するかっと思う。勿論、トランウィザードの事である。ガチで戦っても強いはずだが、どうしてかアイツは戦おうとしない。アイツがチキン野郎であるのは確かだとは思うがどうやらそれだけではないのではっと思い始めている。

 何が起因してるかまでは想像が付いているが、どういう問題を抱えているかが分からない。だが、あそこまで徹底するとこから見て、想像以上に重いペナルティがあるんだろうとは思う。


「それはともかく、目の前のこいつ等を無視して進むのは簡単だけど、捨て置いた奴らが駐屯所を襲うとなると面白くないな。数を減らしておくぐらいはしておこうか」


 俺はミラさんに散々やられたツララを上空に大量生産する。座標探査を使い、モンスターの位置をロックし、マーキングする。俺は腕を振り下ろすと一斉にツララはマーキングされた場所へと狙い違わず飛んでいく。一部のモンスターは避けるなり、遮蔽物で守られたようだが、大半のモンスターの駆除に成功した。


「さすがに、この数だと取りこぼしが出てくるか・・・後は皆に任せるかな」


 少し遅れてきてると感じた俺は、マラソンをするように走り始めるが、モノの10分ほどで足を止める。勿論、息が切れて走れないと言う理由ではない。

 俺は辺りを見渡す。


「いるんだろう?出てこいよ」


 その場の空気が変わり、纏わりつくような視線を感じたのである。予想を違わないのなら、それは最後の魔神の加護持ちのトランウィザードである。

 辺りに視線を走らせて捜すがどことは特定できないので、早速、奥の手を使おうかと思っていると、毎回のお約束かっと問いたくなる、ふぉふぉふぉっと笑い声から始まる。

 俺は全開でウンザリしながら、気配が生まれる右手方向に視線を向けると相変わらずの仕込みネタを披露するように老人のローブ姿で現れる。


「あっさりと気付かれましたが、何で分かったのですかな?匂いですかな?」


 これでも身綺麗にしてつもりなのですがっと気持ち悪い笑い方をされる。


「俺は犬かなんかか?ちげぇーよ。お前が登場するのが好きそうなタイミングだったという事と、どうやら気付いてないようだけどさ、お前の視線ってすげー気持ち悪いからな?」


 まあ、お前の存在も言えた事なんだがよっと笑ってやると引き攣った笑いで、そうですかっと余裕ぶりたいようだが、思いっきり失敗していた。

 俺は早速、奥の手を使う為に仕掛けを始める。こいつと違って俺は無駄な溜めを作らないが少し時間がかかるので話を振る事にする。


「しっかしよ、モンスターの波状攻撃で疲弊を狙うって定石とは思うがセコイ手を使ってるな?」

「そのセコイ手で疲弊して、軍はもう機能してない同然ではありませんか、こういうのを成功したと言えるのですよ?」


 自分の優位さを伝えられる事柄だと思い、急に盛り返して楽しそうに語り出す。馬鹿を操るのは容易く、笑いを堪えるのが大変である。


「そんな事しなくても、お前、単品でも今と同じ結果を1日で出せたんじゃねぇーか?」


 美紅達がいるからそれはないっと分かっていたが、こう言われたら調子に乗ると思って言ってみると、鼻息荒くして、嬉しそうなのを隠さす言ってくる。


「ええ、まあその通りなのですが、私がそこまでする理由はないかと思いましてね。轟君を煽って行かせたのですが、あっさりと貴方に返り討ちに合うという情けなさを露呈させて、本当にヤレヤレですよ」

「もう、いいよ。もう黙れ。お前に轟の事を語る資格もないし、これから、お前は悲鳴だけ上げればいいからな?」


 何を?っと不思議そうにするトランウィザードを無視する。

 準備は完了した。もうコイツに無駄口を叩かせる必要は無くなった事に安堵を覚える。

 そんな俺の様子を見て、まさかっと呟くが時は既に遅しであった。

 俺は、明後日の方向にアオツキを投げつけると目の前の擬態のトランウィザードが砂になって崩れる。

 アオツキを投げた左手を引っ張るように振り抜くと、空間にヒビが生まれ、そこからアオツキの刀身が現れ、アオツキが右腕に刺さった状態で叫びながら飛び出してくる。以前、見た仮面を着けた少年であった。

 必死にアオツキを抜こうとしてるトランウィザードに俺は気のない声で、声をかける。


「ちょっといいか?お前がトランウィザードでいいんだよな?」

「そんな事より、これを抜けっ!!」


 俺は、わざとらしく、何を?っと惚けて聞き返す。

 半狂乱になりながら、痛みに叫びながら必死に抜こうと頑張り続けるトランウィザードを見てて、ニヤリと笑みが漏れる。


「もしかして、アオツキの事か?轟なら寝てても避けそうな攻撃にわざわざ当たってるから何か意図があるのかと思って、警戒してて損したな」


 本当に俺は心配症でいけないなっと、はっははっと笑い、頭を掻く。

 トランウィザードは、いいから抜けっと叫ぶので、俺はヤレヤレっと呟いて、近づく。近づくとアオツキの柄を逆手に握ると一気に抜いて、仮面を切り裂く。

 引き抜かれた痛みと仮面を切られたショックで茫然とする顔が目の前で見つめた。慌てて、左手で覆って隠そうとしたが、ばっちり見てしまう。


「若く見えるのは体だけか?顔は老人そのもの、ああ、だから顔を伏せ続けたんだな?」


 老人のマネではなく、本当に老人だったようだ。

 顔を隠しても無意味と感じたのか、左手で隠すのを止めて傷口が開いている他の場所を抑え始めた。


「ふざけやがって、どうやら女神から対策を授けられてたようだが、こっちも無策だと思ったか?次はもうないぞっ」


 そう言うと、宙を左手を彷徨わせるようにして何かを探すような仕草をしながら、自信ありげにこちらをみているトランウィザードを俺は余裕を持って見つめ返していた。

 すると、トランウィザードの彷徨わせる手の動きが活発になったと思ったら、トランウィザードの額から汗が滲みだす。


「どうしたんだ?異空間の入り口がどこか分からない残念な人みたいな動作を繰り返す、お馬鹿さん?」

「何をしたぁぁ!!トールぅぅ!!!」


 泡を吐くようにして、叫ぶトランウィザードを見つめて、ニヤつく。


「お前みたいな奴を手玉に取ると本気で楽しいな?お前も対策があったように俺も逃がさない対策を取ってたんだよ。お前が最初から出し惜しみせずに、その奥の手を使っていれば、結果は逆になってたかもな」


 こんな状況でも中二してるからそんな目に合うんだよっと俺は笑みを深める。こいつはきっと、前にルナにされたように1回やられて、対策を講じて、2回目は通じんよっと言いたかったのだろう。自分で勝てる可能性を潰した事は気付いたようだから、嬉しさが倍増である。


「俺がした対策で、お前は1日、異空間に渡れないぜ?」


 轟とどっちが強いか、俺が確かめてやるとカラスとアオツキを握り締めながら歩きながら近づくとビビるように後ずさりをする。

 さっさと片付けると気合いを入れると後ろから予想外の人物から声をかけられる。


「トール様、申し訳ありませんが、その役目を譲っては頂けませんか?」


 空間に生まれた扉から出てきたのは、灰色の長い髪に相変わらずドレスから零れそうな胸を揺らして、近づいてくる褐色のエルフが俺に声をかけてきた。

 俺は肩を竦める。


「正直、俺はスーベラが表舞台に出てくるとは思ってなかったよ」

「私もそのつもりはなかったのですが、この者とは因縁がありましたので」


 因縁?っと俺は疑問の声を上げる。スーベラは、アローラに来てから、こっちの世界で介入してなかったように言っていたのにっと思う。


「トール様にも少しお話した事ですが、私の国は隣国の大国に襲われました。その隣国の王の名が、ウィッチトラン。目の前にいる者がそうなのです」


 あの『神を渡せ、それは私達が上手に使ってやる』と言った者ですっと付け足すように言ってくる。

 スーベラに聞いている限りでもどうやって生き残ったかっと思うが、スーベラの視線に迷いが見れないほど真剣な様子から確信を持っていそうだ。

 俺が勝てるか?っと問うと妖艶な笑みを俺に送りながら、切なそうに視線を送ってくる。


「トール様、そこは、ケツは持つ、思う存分やれっと言ってくださるのでは?」


 紳士ならそうおっしゃいますよ?っと言われるが紳士はケツとか言わないだろうっと思いつつも俺は肩を竦める。

 お互い、トランウィザードの挙動は見ているが、存在を無視するように会話を楽しむ。


「そうしたいのは山々なんだが、男としての矜持は勉強中の身で出来ない事が多くてごめんね。おまけに俺も忙しい身でね、任せろと言われたら100%任せるよ?」

「しょうがありませんね。大人の女としての余裕で許してあげますから先を急いで貰っていいですよ。後でしっかり時間を取ってくださいね?」


 いつの間にか立場が逆転して貸しを作られていた事に腹立つ以上に呆れつつも凄いなっと笑う。


「じゃ、お言葉に甘えるよ」


 そう言うと俺は勇者召喚の場所を目指して、再び走り出した。



 徹を見送ったスーベラはトランウィザードに向き直り、ナイフを構える。

 それを見たトランウィザードは腕を押さえながら、逃げ道を捜しながら後ずさる。


「さあ、今回は確実に逝って貰いますよ」


 スーベラの不敵な笑顔が輝いた。

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