204話 ルナマリアという女神
くだらないと思う方もいるとは思いますが・・・
当たり付き自動販売機でアタリを引きました(^O^)/
黒と白が激しく何度となく交差し、黒は毎度のように弾かれ、たたら踏むようにして耐えたと思ったところを上段からの袈裟斬りにより地面に叩きつけられて終了する。
「まだまだだな。攻める意識が強すぎて駆け引きが出来てない。相手の武器が弱かったらそれで押し切れる事もあるがそれなりの武器を携えている相手には通じないぞ?お前は手数とカウンターで戦えるようになるのが理想像なはずなのに、両手剣の俺にどうして同じように不利な力勝負に持ち込みたがる」
「そりゃ、それで押し勝って、『くぅ、こんなはずじゃ』とか言わせて、ざまぁーって言ってやりたいからに決まってんだろ!」
両手剣を肩に乗せながら、息絶え絶えで地面で大の字で倒れる俺を見下し呆れながら話す和也に、決まり切った事のように俺は自信ありげに語る。
俺の言葉を聞いて、片手で顔を覆って、わざとらしい溜息を俺に見せつけるようにしてくる。
「お前は何と戦うつもりなんだ?俺なのか?そうか俺か?」
「まあ、確かに、そろそろ準備運動はこれくらいで、真面目にやるか」
そう言う俺に和也はお前は準備運動に2日かけるのか?っと呆れた口調で言ってくるが無視して跳び起きると、呆れた顔のまま、とりあえず構えたといった和也を見つめ、俺は口の端を上げる。
俺は今まで抑えていた速度を全開に切り替え、和也に肉薄する。先程までの速度とは段違いで予想を超える俺の動きに目を見開いた。
さっきのお返しと言わんばかりにカラスで袈裟斬りすると辛うじてといった様子で和也は防ぐ事に成功する。
「楽しいのはこれからだぜ?回転上げていくから遅れるなよ?」
「どうやら、外で遊んでいた訳じゃなかったようだな。だが、調子に乗り過ぎだっ!」
袈裟斬りを防がれた状態で睨みあいを続けていた俺は和也に力づくで弾かれるとお互いの間に距離ができ、仕切り直しになった。
俺はそれも構わず、低姿勢で跳ぶように突っ込むと、タイミングを合わせて、和也が上段から叩きつけるように振ってくるのを眺め、アオツキを地面に突き刺し、急制動をかけると、空ぶる和也のマヌケな顔をニヤリと見つめて、アオツキを基点に倒立して跳び上がり、前転の回転の力を加えて、カラスとアオツキの二刀で同時に叩きつけるようにして、和也の頭上を狙い、崩れた体勢のまま、慌てて構えるが抑えきれずに膝を着く。
「まさか、力で押されるとはっ!」
「やっと言わせたぞ、こらぁ」
俺は地面に降り前にもう一発だと言わんばかりに回し蹴りを脇腹に入れると吹っ飛ばされた和也が地面に滑るように転がっていく。
「どうだ?地面の寝心地は?」
俺はざまぁーと言いつつ言ってやると、ゆっくり起き上がった和也は不機嫌そうに言ってくる。
「500年前にルナマリアに叩きのめされて以来の地面も悪くないな」
和也の顔が擦れて赤くなっているのを見て、イケメンがああなると何故、今日の飯は美味いだろうなっと思えるのかと俺はニヤけながら眺めた。
休憩して仕切り直して、いつも通りに地面に転がしてやるっと言うと和也はその場で胡坐を掻いて座った。
俺も倣って胡坐を掻いて座ると、ふと気になって聞いてみた。
「さっきの言葉で思ったんだが、よくルナマリアには殴られたのか?」
俺の言葉を無視するように明後日の方向を向いて無視をする。
和也の視線と態度から、単純に照れから言うのを拒絶してるだけで、話したくない内容ではないと分かっていたので俺はもう一度言う。
「ルナが姉のように思ってた人物がどんな人が聞いてみたいんだよ」
そう言うとバツ悪そうな顔をして、困った顔をして俺を見つめ、溜息を1つ吐いて和也は口を開いた。
「ルナマリアは、一言で言うなら面倒臭い女だったよ」
俺は目を白黒させて、マジで?っと言ってしまう。全てを敵に廻してでも助けたいと願った相手をそんな風に言うと思っていなかった為である。
「俺がハーレムの主のように周りに見られていると思うだけで不機嫌になるわ、目が合っただけで威嚇してくるのに一定の距離にはいつもいて、近寄ると機嫌が悪いと逃げるといった困ったヤツだったよ」
俺は、うわっ面倒臭いなっと同意しながら、ネコみたいな人だなっと思い、そういやルナもネコぽかったっと思い出す。ルナは頭の悪い、ゆるいネコ。ルナマリアは孤高を気取る気難しい癖に寂しがりなネコ。
俺は出会った女神がルナで良かったと再認識した。
「廻りの女達も俺に気を惹こうと色っぽい事や、抱きついてきたり、露骨に胸を見せたりしてくるんだ」
そう!巨乳のなっ!っと俺に自慢するように言ってくる癖に何故、涙目なんだ?そうか、こいつは貧乳信者だっけ。
「そうするとどこからか突然現れて、俺を殴りつけて去っていくんだ。フンっと鼻を鳴らしてな」
その当時を思い出す和也の顔に笑みが漏れる。振り返ると、あの時は、もう少し優しさをっとか、コンチキショウっと思った事でも眩しく思える事がある。俺も最近、それを身を持って知ったから今の和也の緩む顔を馬鹿にする気になれなかった。
「ハーレムの主と周りに思われながら冒険者をしてた時、俺は魔神と遭遇する事になったんだ。まさに突然だった」
今だから分かるが、突然に思えたがルナマリアが俺に間違った加護をした事から漏れた毒に引き寄せられたのだろうと和也は苦々しく語った。
「襲撃を受けた俺達は分断され、俺とルナマリアは谷に落ちた」
落ちた先の川に落ちたとはいえ、勇者と女神、それで簡単に死ぬような面子ではなかった。
俺がそこで楽になってればいいのにっと言うと和也がああん?っとガンを飛ばしてくるので返礼とばかりにデコとデコを突き付けてガンを送り返す。
和也が男同士で見つめ合って気持ち悪いっと言葉に俺も同意だったのでお互い舌打ちして視線を切る。
「そして、その時だ、俺とルナマリアが同時に気付いた。俺達は間違っていた事にな・・・」
おそらく、間違った加護を和也は得て、ルナマリアは与えてしまった事を。
和也は、一呼吸吐くと、再び口を開く。
「見つけた洞窟で冷えた体を温める為に暖を取りながら、お互いの本音を語り合った。俺は初恋の人にしてやれなかった事の代替行為をしていた事を、ルナマリアはアローラの為と言いつつ、俺との縁を繋ぎたかったという思いを。ルナマリアも話す時は辛かっただろうが、少なくとも、俺はルナマリアに話す事は血を吐く思いで語ったよ」
辛そうだとは思うが、経験不足でピンとこないが、元カノの代わりに付き合ってましたっと言うようなものなのだろうかと俺は思った。
「それを聞いたルナマリアは言ったよ。俺を許す、今からそれを本物にしていきましょうっと言われた時、俺は気付いたら泣いていたよ。代替行為のつもりで接していた俺はルナマリアに惹かれていた事をその時になって初めて気付いた。そして、俺達は思い合い、繋がった」
間違いから始まり、本物になればいいっと俺も思ったよっと言いながら何やら思い出して、苦笑いする。
「だからこそ、美紅ちゃんにああ、言われた時は、第三者から見ればそう見えるよなっと再認識した」
和也はあそこでミラが切れてなかったら俺は泣いたかもしれない。本当に危なかったと肩を竦めた。
美紅に代わって、謝っておくよっと言うと、あれは仕方がない、それはお前も分かっているだろう?っと言ってくるので俺は沈黙を持って返礼とした。
「普段は厄介な存在だったが、本当は懐の広い良い女だった」
そう言うと和也は立ち上がり、休憩はそろそろ終わりだと言ってくる。
俺は、立ち上がりながら、先程の話で気になるところがあったが聞くべきか悩んでいた。
両手剣を正眼に構える和也を見て、踏ん切りを付けて聞いてみる。
「なぁ、さっき言ってた。『そして、俺達は思い合い、繋がった』って言葉が不穏な響きを感じるんだが何があった?」
「そんな事聞くなよ?穢れなき新品の徹君。穢れた俺から見るとそんな質問してくる徹君が眩しくて堪らないよ」
穢れた俺の胸で良ければいつでも泣く為に提供するぞ?っと優しげな目をして両手を広げて、言ってくる和也を俺は深い闇を称えた瞳で捉えて、前に進む為に障害を取り除く覚悟を完了させる。
「お前を殺る」
往生せいやぁぁ!!!っと叫びながら斬りかかり、和也を滅する為に俺が体力が尽きるまで斬り合ったのは言うまでもない結果であった。
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