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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
10章 手と手を繋いで ~キセキ~
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203話 史上最強の魔法使いの頂き

 さあ、どこで折れるか、トトカルチョします?(笑)

「トールさん、よく聞いてください」


 そう言うミラさんは指揮者のように踊るように手振り身振りをする姿を必死に逃げながら見つめる。


「魔法とは色々、応用が効きます。トールさんのように組み合わせる事で新しい魔法を生んだりできますが、そんなのは所詮は小細工でしかありません。以前に魔法とは何かと言った事を覚えてますか?」


 穏やかに語りかけるように笑みを見せるミラさんだが、俺にはそんな余裕は一切皆無であった。今も頬をスレスレで掠りそうになりながら避けた俺の腕より太いツララを横目に冷や汗を掻きながら絶え間なく襲ってくるツララを避け続けた。

 トールさん?っと可愛く首を傾げて、返事待ちのミラさんは待ちきれないようで、ミラさんの背後にツララを増産していく。

 これ以上は無理ぃ!!っとばかりに、叫ぶようにして答える。


「イメージ、そして思いを込める事!」

「はい、その通りですね」


 手をパンと叩いて可愛い顔で褒めてくれるが、手を叩いた瞬間、ミラさんの後ろに増産されていたツララが一斉に襲いかかる。


「ちゃんと答えたのにぃ!!」

「ええ、だから1本減らしておきましたよ」


 100を超えていそうなところから1本減らしたからってどうなるんだぁーっと叫びながら必死に全部を避け終わると、ぜぇぜぇっと息を切らせる。

 前に修行を付けてくれた時は本当に滅茶苦茶、手加減されていた事が分かる。しかも今もまだ本気ではないと分かった。史上最強の魔法使いは伊達ではなかった。


「私は怒っているのですよ?そう教えたのに、トールさんはそれを忘れたかのように力づくで魔法を使っているのですから。私の教えた事をちゃんと理解して使っていれば、轟君と戦っている時に使った魔法の制御の失敗からあんな目に会わずに済んだはずなのに・・・」


 俺はしっかりイメージして使ったつもりだ。それでも魔力の暴走のほうが強かったから俺はあんな目にあったはずである。


「トールさん、難しく考え過ぎてませんか?魔法とは言葉と被るところがあるのです。幾千幾万の言葉を費やしても、心に響かなくとも、たった一言が胸を打つ事があるのです。そう、例えば『大好き』と言う言葉に込められた言葉とかですね」


 俺はドキっとする。

 そんな俺の動揺に笑みを浮かべたミラさんが右手で払うような動作をしたのに気付いていたのに俺は動作が遅れて、ミラさんの魔法に寄る突風を受けて、吹っ飛ばされる。


「まだまだですね。誰に言われたかは知りませんが、そこに込められた思いは、どれだけの言葉を費やせば語れるか、想像できますか?トールさんの魔法にはその想像を超える思いを込めていないのです。だから、小手先に頼ってしまっているのですよ」


 地面に叩きつけられながらも立ち上がり、俺はミラさんを旋回するようにして駆け出す。

 自分の周りに火の球を生み出して、ミラさんに手を出せなくさせる為に絨毯爆撃のように走りながら乱打する。

 ルナが俺に言ったあの言葉、確かに、今まで言われたどの言葉よりも俺の胸を貫いた。ルナ、お前はどんな思いを詰めて俺に言ったんだっと思いつつも乱打しつつ、集中を始めた。


「右手に土を、左手に風を、混合魔法、『粉塵煙幕』」


 ミラさんが包まれたのを確認して、火の球を打ちこむと、大爆発が起きる。

 俺は爆風から目を護るように左手を掲げながら、爆発の中心にいるミラさんがどうなったか見つめていると煙が晴れた先には傷一つないミラさんが笑顔で俺を見つめて言ってくる。


「今のはちょっと思いが詰まってましたよ。でもまだまだ足りません。自分を覆う殻を脱ぎ棄てなさい」

「ミラさん、さすがに今のでは傷ぐらい受けてくださいよ。貴方は化け物か何かですか?」


 かなり本気で相手の事を考えずに使った魔法だったのに傷どころか笑顔なミラさんに嫌味を言う。

 酷い、私はこんなに可愛い女の子ですよ?っと言ってくるので、そこは否定する気もまったくありませんけどね?っと返すとちょっと嬉しそうに笑うが、照れ隠しのように打ってくる魔法が余りにも可愛くなかった。


「それはタイダルウェイブか何かかぁ!!!」

「大丈夫です。きっと死なないと思いますから」


 嘘こけぇ!!と俺は叫び、虎の子の時空魔法を発動させて、ミラさんの背後を取る。そして、背中に掌を当てて、カッコ良く『チェックメイト』と言おうと思って触れるとミラさんは水になって崩れ落ちるのを眺めて、騙されたっと思って後ろに飛ぶと後頭部に固い物が辺り、コーンと軽い音をさせる。目の前に火花が散ったように見えた。頭を押さえて振り返るとフライパンを持ったミラさんが笑顔で立っていた。


「時空魔法は確かに便利だと思いますよ?ですが、ここぞっという時に使わないと宝の持ち腐れです。困ったらすぐ使ってくると思われたら、罠をかけられます。その魔法を無駄に信頼しているから、罠だと考えずに安易に動いてしまうのですよ」


 後、トールさん、咄嗟に不味いっと思ったら真後ろに飛ぶ癖は直したほうがいいですよっとフライパンを叩きながら言ってくる。

 何も言い返せないとはこういう事だと思わされて項垂れる。


「魔法は、込める思いは最大限、使う力は最小限。目に映る物に騙されないで、どんなに強力なものであれ、どれだけ巨大な物であれ、同じように対抗するのは馬鹿のする事、自分が何をしたいのかを常に考える。基本こそ最強だとしりなさい。分かりますか?トールさん」

「正直、ちんぷんかんぷんです・・・」


 困った生徒さんですねっという目で俺を見ると、やっぱりトールさんにはこれしかありませんねっと言ってくるので、どういう事?聞き返す。


「やはり、トールさんは、理屈では学びません。体で体験して骨の髄で理解しないと分からないようですね。という事で実践あるのみです」


 ニッコリ笑うミラさんの背後に再びツララが100を超えるぐらい浮かび上がる。それを魂が抜けるような思いで見つめながら、ミラさんに問いかけた。


「なんすっか、これ?」

「えっ?さっきと一緒でしょ?ツララですよ?」


 俺は目を瞑って、瞼の上から目を揉んで、もう1度見つめるが、俺が見えている物は変化しない。


「さっきは腕サイズのツララだったと思うんですけどぅ?」


 目の前のツララを見つめる。どう見ても俺の全身・・サイズにしか見えない。


「これは私からのサービスです」


 ウィンク付きのミラさんからのラブコール。これを受けない男はいないっ!俺は明日から女の子になるから、パスさせてっ!


「返品でお願いします」

「これはクーリングオフ対象外です♪」


 えっ、なんでそんな事知ってるのっ!ってか、あのクソ野郎が教えた以外に有り得ないっと気付き、愕然とする俺を無視して、ツララを俺に向けて発射させる。

 必死にかわすが叩きつけられて割れたツララの跳弾に叩きのめされながら、俺は叫ぶ。


「和也ぁ!!絶対に殺すぅぅ!!」



 気絶する徹の頬に触れながら、回復魔法を行使するミラの傍に和也がやってくる。


「どうだ?馬鹿野郎の成長具合は?」

「えっと、どう言ったらいいのでしょうか?本当に分かっていないのっと聞きたくなるような事を不意にしてくるのでコメントに困るのですよね」


 和也が来た事で思わず止めてしまった回復魔法を再びかけつつ、続ける。


「意識して魔法を使おうとすると出来てないのに、咄嗟に使った時は完璧といえるレベルの魔法を行使しています。あれを意識的にできるようになれば・・・」


 しかし、下手にできるからこそ、意識してできるようにするというのが困難だと、この場の2人には分かっていた。

 それでも、和也は鼻で笑うようにして肩を竦める。


「ギリギリまで面倒を見てやってくれ。教えがいのない生徒だと思うがよろしく頼む」

「トールさんはきっとできるようになります!」


 プリプリと怒るミラはブラコンの姉のように徹を擁護する。その姿を和也は苦笑しつつ眺めながら、首を横に振ってくる。

 そういう意味じゃないっと徹を見つめながら言う和也にミラは首を傾げながら見つめた。


「じきに分かるさ。回復魔法が済んで目を覚ましたら、次は剣の修業だと伝えておいてくれ。俺は扉の前で待っていると」


 そういって、去っていく和也を見送って、徹の頬を撫でながら呟く。


「なんだかんだ言いつつも、トールさんの事を一番理解しているのは和也かもしれませんね」


 少し、和也に嫉妬してしまっている自分の心の動きに微笑み、ミラは有限の今を楽しんだ。

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