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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
10章 手と手を繋いで ~キセキ~
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202話 戦の準備

 ふっふふ、さすがに今日あたりから2話更新は無理かも・・・頑張るけどね!

 やっちゃった美紅の演説が終わり、モスの街でクリミア王女に協力していた貴族達が、介入して、今ある腐った内部をごっそりと省いていく。建前としては、この緊急事態を乗り越えたら、また再雇用を募るという言葉で納得させた。

 馬鹿な者達は、こんな大変な時に関わらなくてラッキーと思って、復帰する日を夢見ているが、あくまで募ると言っただけで、能力、人格が伴わなければ採用されないという考えはなかった。


 そのドサクサに紛れに内部の人事をやりたい放題にやりつつ、魔神対策の為の軍編成、国民の避難指示などを進めた。

 内政関係のほうの者達の反応は芳しくはなかったが、軍関係者はすこぶる協力的な者が多い事が嬉しい誤算だったらしい。前任の近衛騎士隊長の残した言葉と、以前から裏からこっそりと何かあったら呼応して欲しいとも打診されていて待っていたと笑う者が多かった。


 3日目の朝を迎える。


 昨日のそんな嬉しい報告をクリミア王女から受けていた、ある一室には国の主要人物と美紅とテリアの姿がそこにあった。


「それは大変喜ばしい話ですね。美紅さんが頑張ったかいがあったものです。なんと言われたのでしたか?申し訳ないですが、私は目が見えないので聞いて覚えるしか手段がありませんので・・・もう1度聞かせて頂けませんか?」


 得物を追い詰めていたぶるキツネのような顔をしたユリネリー女王陛下は、すっとぼけた調子でクリミア王女に問いかける。

 クリミア王女も楽しそうに顔を綻ばせると、しょうがないですねっと呟きながら、1から説明しようとするのを美紅がバッサリと切って止める。


「それはもういいでしょう?時間は有限です。話を進めましょう!」


 この場に居る男のエルフ王とガンツを除いての女性陣に軽いブーイングを浴びせられながらも、怯まず、媚びず、顧みぬを貫く美紅がそこにいた。


「まあまあ、美紅殿、確かに拙速を説きたいとこではあるが、ゆとりも大事ですよ?とはいえ、そろそろ、現状報告をしましょうか?まずは我がエルフ国は」


 そう言うとティテレーネ王女が頷き、エルフ王の後を引き継ぎ報告を始める。


「エルフ国としてはエコ帝国で決戦に挑む為に割ける戦力は2500、それ以上は美紅さんの予想通りだった場合、各地で散発的に起きる戦いに対応できないと判断してこの人数が限界です」


 エルフ国の軍の戦力は5000を超えるぐらい、モンスターパニックと、前宰相のゴタゴタがなければ8000はあったそうだが、現状の半分を回す辺り、本当にギリギリだと思われる。


「次はワシのところじゃな。ドワーフ国は軍がないのでな、義勇軍を募った。ドワーフ国では情報規制しておらんから、今回の事はほとんどの国民がしっとったおかげで、義勇軍を募集するという情報と受付場所を指定しただけで1500ほど集まったわい。統制は取れとらんが、使い様じゃと思う」


 職人の国であるドワーフ国では軍がなかったが、我が国の首都の名前の由来の背中を追い、戦う事は誉れと意気を上げているらしい。


「獣人国ですが、口惜しい事ですが、元々、駐屯させていた1000としか言えません。首都とこのエコ帝国までの距離があり過ぎて、決戦の日に間に合うか不透明ですが、こちらを目指させてます。間に合えば合計3000に届くかと思います」


 ユリネリー女王陛下は悔しそうに手を合わせて握り締めている。しかし、こんな状況になると分かってない限り、首都から連れてくるといった行動を取る事はない。むしろ、エルフ国が何故、そんな大半の軍をすぐ来れる距離に置いてあったか確認を取ったら頭を抱えそうな解答が返ってきそうである。


「では、最後にエコ帝国は各地の防衛は街単位でする事になりましたので、3000の軍が動かせる見込みです」


 今までのエコ帝国の政治がダメダメだった事が良かったのか、今回のエコ帝国の交渉で街を包囲していた事で来てた各街の責任者が自分の街は自分達で護ると伝え、自己防衛意識が高かったようで、よっぽどの事がない限り、こちらを頼りにしないっと言って自分の街へ帰っていったらしい。

 クリミア王女は、今回はこれで良かったが、乗り切ったら、こんな国なんて信用しないという悲しい状態から脱却するとこの場に居る者へ聞かせるように宣言した。


「ふむ、各国の戦力を合わせて8000といったところですな。これが人と人の戦争なら圧勝じゃないかっと思うところ。さて、魔神相手にどこまで食らいつけますかな?」

「お父様、まだ各地の冒険者ギルドからやってくる数が入ってません。うまくいったら万を超えるかもしれませんよ?」


 エルフ王は、うんうんっと頷きながら、デレデレな顔を晒して、すぐ元に戻して話し出す。


「しかし、どれだけ来るか分からない戦力を数に入れずに考えたほうがいい。増えた場合どうするかと考えるのはいいが、それがあればっと思ってしまう状態にだけにはならないようにしないといけないよ?」


 不確定の事をアテにして崩れた時、立て直すのが困難だからねっと若い指導者達を見つめる。


「しかし、不確定要素という言い方でなら、トール様もそうなりますが・・・それも計算にいれないと?」


 ユリネリー女王陛下は、エルフ王に確認するように聞く。

 その言葉を受けたエルフ王は、笑みを浮かべて答える。


「勿論です。トール殿も不確定要素扱いになります。トール殿は、魔神に挑む事以外はどれだけ予想して対策しても、こちらの準備を無視して現れて、突き進むような御仁。アテにして色々考えるだけ疲れるだけですよ」

「トオル君は、きっと私達が必要とした時にきっと現れます。いつだってそう、困った時、泣きたくなった時、諦めそうになった時にふと横を見ればいるのがトオル君です」


 一緒に旅をして、隣で見つめ続けた美紅が言うと説得力があり、場の空気が和らぐを感じる。

 でもねぇっと美紅の隣にいるテリアが困ったように口を挟む。


「トールってねっ?よく遅刻するのよねっ。だからっ、ギリギリ過ぎて、助けて貰ったのに怒りたくなっちゃうのよねぇ」


 和らいだ場が一瞬で凍りついたかのような静けさに包まれた。美紅が堪え切れずにプッっと噴き出したのが合図になって、その場に居る者達、全員が笑いだし、笑顔が溢れる。


「確かに兄様ならありそうな事ですね」

「私は実際にそうなって、礼儀知らずにも、礼を言うのも忘れて、怒ってしまいました」


 ティテレーネ王女が追従して、クリミア王女が自分の体験を語る。


「トールの事はまあ、ええわい。ほっといでも来るなと言っても来るじゃろ。で、美紅よ。軍を纏めたら、勇者召喚の場所に集結させればええのか?」


 せっかちな職人は、さっさと話を進めようと緩みかけてた空気をばっさりと切り裂いた。だらだらっといってしまいそうな空気だったと皆は思ったようで、気を引き締める。


「そうしたいのは山々なのですが、向こうが率いるのが2代目勇者ならそれで済んだのですが、もう1人いる魔神の加護を受けているトランウィザードという者が曲者なのです。端的に言うならイヤラシイ性格をしています」


 思い出すだけで、うんざりしてくるようで眉間を揉んで胸に溜まる息を吐き出す。

 その様子を見て、廻りの者も微妙な表情をしている中、テリアが溜息混じりに言ってくる。


「人を罠に落として悦に入ったりっ、自分の偽物を使って戦ってきたと思ったら傷つけたら爆発させるしぃ、それなのに加護持ちだから無駄に強いっ。何より、嫌なのが、下手な演技なのに完璧だと信じて、演じ続ける気持ち悪さっ!」


 あの、ふぉふぉふぉっとか言ってくるやつなんて、5歳の子がやってたら笑ってあげるけど、痛々しくて堪らないっと言うテリアを見つめ、見た事もないのに皆は思った。関わりを持ちたくないっと・・・


「そんな相手なので、素直な戦いはしてこないと思われます。召喚の日に着くようにゆっくりと近づいて、どうなっても対応できるようにするか、バックと召喚場所の間に駐屯するのが良いかもしれません」

「正直な話、美紅殿はそのトランウィザードに勝てるかね?」


 エルフ王は説明中の美紅に突然切り出す。どんな意図があるか分からないがここは強がらずに本当の事を話そうと決めた美紅は答えた。


「いえ、勝てないでしょう。真正面から戦えばどうなるかは分かりませんが、トランウィザードの本体は異空間に隠れてますので引きずり出さないと勝負が始められない状態で攻撃はされたい放題になります」


 それで悦に入ってるって最悪に気持ち悪いですねっと呟くティテレーネ王女の表情は引き攣っていた。


「つまり、遭遇したら逃げるしかないという事ですな。先程までの言い方では何度か遭遇されたようですが、その時はどうやって?」

「ルナさんが異空間にいるトランウィザードを捉える術があったようで本体を直接攻撃してました」


 ルナ殿か・・・悔しそうに呟くエルフ王の言葉はここに居る者の言葉を代弁したようなものであった。


「これは確証がない話ですが、トオル君ならもしかするかもしれません。ルナさんが逝った後、ルナさんしか使えてなかった時空魔法を使っていました。もし、ルナさんがトオル君に何かしらしていたとしたら、トオル君はトランウィザードと戦えるようになっているかもしれません」

「つまり、トール殿が来るまでは、逃げ続けて、来たら取って返して前に進むという手が使えると信じるしかないですな。先程、不確定要素と言ったばかりなのにもう戦力に入れて、早く来てくれっと思ってしまってますな」


 ヤレヤレっと顔を片手で覆うエルフ王を見て、テリアが笑う。


「そんな状況で、ギリギリで来るトールを見てっ、思わず怒っちゃう気持ち分かるでしょっ?」

「あははは、まったくですな。その時は娘に怒って貰いましょう」


 そう言ってティテレーネ王女に目を向けると、嬉しそうに笑みを浮かべて、お任せくださいっと返礼する。

 エルフ王は、一度目を瞑ってから一息置くと口を開く。


「では、軍を纏めて、バックと勇者召喚の場所の中間地点で駐屯して、状況を見ます」


 異論はありますかっと廻りに問うが反対意見が出なかったので、各自準備をお願いしますっと言うと各陣営に戻る為に皆は立ち上がる。そして会議は解散した。胸にある不安を打ち消し、未来を勝ち取る為に。




 魔神召喚まで、後9日後

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