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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
10章 手と手を繋いで ~キセキ~
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200話 徹のようにできなくても

 200話到達。良い事なのかどうなのか考えさせられる今日この頃。

 書き方が少し変わってますがごめんなさい。人が増えてくると徹だと問題ないけど、他になると途端に難しくなったので苦肉の策です。徹が出始めるとまた戻るのでそれまでは我慢してね?

 徹と別れ、勇者召喚の場所からテリアの狼を呼び出して貰い、乗る事、休むことなく走り抜けて、次の日の朝というには少し遅い時間にバックに美紅達は到着した。


「もう駄目っ・・・もう寝るぅ」


 そう言うや、エルフ大使館前でもう動くのも億劫とばかりに地面で寝ようとするテリアを慌てて支えた美紅は苦笑する。


「お疲れ様。後は任せて少し休んでください」


 有限な時間を無駄にしない為に、こんな長い事行使したことない魔法を維持して走り抜けたテリアの疲弊具合は酷いモノであった。

 頼んだ美紅からしても、休ませようかと思い、声をかけるほど酷い有様であった。だが、テリアは、そんな状況でも休みを取ろうともせずに駆け抜けた。

 美紅に抱き抱えられながら眠るテリアに、ありがとうっと告げるとテリアの頬が緩むのが分かった。


 このまま立ってたらテリアの頑張りが無駄になると思い、エルフ大使館の中へと入っていく。中に入ると美紅に気付いたメイドが駆け寄って眠るテリアを覗き込んで、寝てるだけだと分かると、お部屋をご用意致しましょうか?っと言われ頷き、後はお任せくださいと近くの同僚を呼ぶと2人がかりでテリアを連れて奥へと消えた。


 テリアを任せた美紅は、奥へと応接室を目指して歩くが途中で出会ったメイドにエルフ王一同がリビングに居ると言われて、先走り過ぎたと頬を染めながら、来た道を戻り、リビングの前に到着すると、扉をノックした。

 返事があるのを確認して扉を開けると、エルフ王は勿論、ティテレーネ王女、ユリネリー女王陛下、クリミア王女、ガンツの国の主要人物が勢ぞろいしていた。良く見ると、ティテレーネ王女の後ろにはミザリーがおり、窓際のテーブルにはクラウドのギルド長のオルバにシーナ、獣人国のギルド長のエルザ、後、見覚えのないドワーフが座っているがおそらく冒険者ギルドのドワーフ国のギルド長ではないかと推測した。


 美紅は理想的な状況に自然に笑みが漏れるが、それぐらいで喜んでる場合ではないと気を引き締めた。


「良かったです。エルフ王に頼んで皆さんを呼び出して欲しいと依頼しようと思っていたら、勢ぞろいされていて助かりました」

「それは、こちらにも言えた事です。兄様が目覚めて飛び出してから状況がさっぱり分からなく、困っていたところだったのです」


 お父様が出した兵の一部も戻ってきませんしっと呟くティテレーネ王女に美紅は今、結界に閉じ込められているが、命に心配はなく3日ほどすれば出てこれると伝える。それを聞いて、何があったのですか?身を乗り出してくる。

 廻りを見渡すと身を乗り出しているのはティテレーネ王女だけではなく、ここにいるほとんどであった。


「分かりました。順序立てて、お話しますが、私も聞いただけの部分がありますので、質問されても、答えられない部分があるのは、お許しください」


 そう言いながら、ここに居る者に確認を取るように見渡すと一同に頷かれて、美紅は説明を始めた。

 まず、美紅達が、エルフ王の依頼でエコ帝国の重鎮達が集まる場所へと向かい、モンスターを蹴散らして、隠れ家にしている洞窟へと向かうと重鎮達は死体になっており、罠の可能性に気付いて飛び出そうとした時には遅く、結界で閉じ込められた事を伝える。

 そこでクリミア王女が何かを聞こうとしたが、エルフ王に最後まで聞いて、最後に纏めて質問しましょうっと言われ、素直に引き下がり、腰を落ち着けたのを確認したエルフ王が続きを促してきたので、再開する。


「そして、トオル君ですが、目を覚ますとここから飛び出されたのは、 皆さん御存知なのでしょうか?」


 エルフ王とクリミア王女とシーナの3人が頷くのを見て、そうですかっと言うと続ける。


「飛び出したトオル君は、勇者召喚の場所へと向かいます。何故、迷う事なく向かったのかは私は知りません。向かったら、そこいたのが、ルナさんと2代目勇者です」


 2代目勇者という言葉が出た事で、その場は騒然とする。生きていたのかと騒ぎながら、あれこれと推測を飛ばし合う。


「2代目勇者は敵なのですか?敵じゃないのなら味方に引き込めないでしょうか?」


 ユリネリー女王陛下が代表して、皆の思いを言葉にするが、隣にいたティテレーネ王女が首を横に振り、美紅の代わりに答えた。


「残念なお話ですが、2代目勇者は魔神側の者です。味方に引き入れるのは事実上無理です」


 そうですかっとユリネリー女王陛下は嘆息する。

 付け加えるように美紅がその後を繋げる。


「ですが、初代勇者はこちら側と言っても差支えはないと思います」


 先程の2代目勇者の時の反応を超える。その場はハチの巣を突いたように騒ぎ出す。中には美紅に詰め寄って詳しく聞こうとする、オルバやエルザのようなものが居たが、ハンマーを叩きつけたかっと聞きたくなるような音が国の主要の者が使っているテーブルから聞こえた。


「落ち着かんか、そんな風に囀ったり、エサを催促する雛のようにしたら、続きを話せんだろうが?エルフ王も最後に纏めて聞こうといっとたではないか」


 剛腕一閃っといった感じにテーブルに拳を叩きつけた格好のまま、ザッと廻りを見渡すと皆、冷静さを取り戻したようで、すいませんっと言うと椅子に座り直した。


「初代勇者の思惑ははっきり言って不透明な部分が多いですが、間違いなく魔神を仕留めたいと思っている事だけは間違いありません。そして、トオル君は今、初代勇者と共にいます。自分の壁を超える為に、今、この時も頑張っているはずです」


 徹が諦めず、頑張っていると知ったこの場の者達の間に希望が芽生える。あの男が足掻いているなら先は真っ暗ではないと。

 だが、美紅はその希望の中にいるものに、心苦しいと思いつつも伝える。


「ここからが私がきた本題です」


 美紅がそう言うと、皆は身構え備えると美紅に先を促す。


「魔神の復活、いえ、召喚されます。これは阻止不可能な事です。現れるのは今日を含めて10日後にアローラに降り立ちます」


 先程までの明るい情報に沸いていた場が凍りつく。当然だろう。その魔神を恐れて、勇者が召喚できるエコ帝国に逆らわずに今までやってきた。

 エルフ王が、それは不可避なのかねっと問うので、美紅は、はいっと簡潔に答える。

 場が絶望に包まれたかのようになる。


「何をやる前から諦めてられるのですか?」

「いやぁ~もうこれは神頼みしかないなってな」


 オルバはスキンヘッドの頭をペシペシと叩き、諦めたようにおちゃらけをする姿に美紅の琴線に触れる。

 伏せておこうと思っていた話を開示する。


「それは無駄な行為ですよ。もうアローラに存在する神は魔神のみです。最後の女神、ルナさんは逝ってしまいました。私達に7日間という時間を与える為に。本当なら、魔神は今から3日後に現れる予定でした。それをルナさんが命を賭して7日延長させ、トオル君に看取られて、逝ってしまわれました」


 ルナが神であった事も驚きではあったが、縋る相手がいないという事実が場の空気を重苦しくし、沈黙が降りる。

 美紅も感情のままにやり過ぎたと思っているようで、どう対処していいか苦慮していると毅然とした態度で良いでしょうか?と手を上げて意見を述べようとしている者が居た。シーナである。

 エルフ王が頷くのを確認したシーナが語り始める。


「皆さん、何を諦めてられるのでしょうか?諦めたら10日後に死ぬだけですよ?美紅さん、トールさんはしっかり現状を理解したうえで諦めてないのですよね?」

「はい、間違いなく私より現状を理解してるはずです。先程も言いましたが今も頑張っています。勿論、魔神を倒す為にです」


 問いかけたシーナは美紅の解答に満足して頷くと廻りを見渡し、声を大にして語る。


「女神であるルナさんが逝ってしまったのはとても残念です。私にとっても女神である以前に友達のように思っていた存在の死を悲しく思います。何故逝ったのか?私達に抗うチャンスをくれる為だと何故思わないのですか?この場に居る人でルナさんと接した事がない人のほうが少ないはずです。どうでしたか?ルナさんという人は?全知全能の存在に見えましたか?全知全能でしたか?答えは否なはずです。あの人はいつも一生懸命でした。よく空廻りしてトールさんが尻拭いしている姿を良く見ました。あのひたむきな姿を見ていて、まだ誰かに救ってくれっと願いますか?今、立ち上がる時だとルナさんがくれた7日間をそう考える事はできないでしょうか?できないというならここから出ていかれたほうがいい。時間の浪費です。震えてベットで寝ている事をお勧めしますよ?」


 シーナは激情のままに言い、瞳には涙が浮かび、まだ言い足りないとばかりに何かを言おうとするが言葉が纏まらず、そんな自分が苛立って、もうっ!っと叫ぶと抑えが利かなくなったようで両手で顔を覆い涙を流し始めた。


 シーナに啖呵を切られて、隣に居るオルバは肩身が狭そうにしているのを横目に美紅がシーナにありがとうございますっと告げ、口を開く。


「皆さん、絶望されているようですが、その現実にもっとはっきりと直面したトオル君は、ルナさんを看取りながらでも絶望しませんでしたよ?諦めてませんよ?」


 エルフ王とティテレーネ王女を見つめる。


「あのモンスターの大軍に1人で挑みながらも折れずに戦い切った人が信じられませんか?」


 ガンツを見つめる。


「ザバダック襲撃で露払いをして、けじめを付ける為に見守ってくれた人が信じられませんか?」


 ユリネリー女王陛下を見つめる。


「エコ帝国の暗躍を表舞台に引っ張り出す為に、駆け回り、獣人国、そして、私も救ってくれた人が信じられませんか?」


 美紅は一呼吸置いて、


「魔神の欠片を倒したのは誰か、私ですか?ルナさんですか?いいえ、違います。トオル君がいたからです。この場にルナさんが居れば言ったでしょう。トオル君と同じ強さの人がいえ、それ以上の人が一緒に居ても勝てなかっただろうと。私もそう思います。その規格外の存在が諦めてない。勝てると信じる理由にそれ以上のものが必要ですか?私はそれ以上は過剰だと思うのですが?」


 言いたい事を言い切った美紅は口を閉ざすが、皆が固まったかのように動かない事に自分は失敗したのかっと後悔が背後に迫りそうになった時、弾けるように笑いだすモノがいた、エルフ王であった。


「まさに美紅殿の言う、その通りでしたな。トール殿が諦めてないという事で充分ですな。皆も思い出されるといい、この場に集まる面子ですら、トール殿がなくして実現させる事が可能だったろうか?というより、このように集まる絵空事と思いつつでも描いた者がいたのでしょうかな?」


 皆の反応を楽しむように見つめ、


「ここにおる者達は、トール殿の差し出した手を掴んで和になった者達ではないか。最後まであのトール殿を信じて我らも足掻いてみようではないか」


 その言葉を受けた者達の目に精彩を放ち始める。

 なんとなく、いいとこ取りされた美紅は少し不満そうだが、上手く纏まりそうだから飲み込む事にした。


「で、美紅殿。ここまで我らを煽ったのだ。それだけですっと寂しい事は言わないでしょうな?」

「勿論です。おそらく、魔神側の者は各地で散発的に襲撃などをしてくると思われます。ですので各地の防備を徹底する事。そして、間違いはないと思うのですが、決戦の地はエコ帝国になると思われます。できるだけの軍、そして冒険者をエコ帝国へ送って欲しいのです」


 各自、召喚されるまでの日数と現実的に動ける人数を考え出したのか黙って俯く者が増える。

 兵力をまったくというほど持ってないクリミア王女は肩身を狭そうにしているので美紅は声をかける。


「クリミア王女、もうエコ帝国と交渉する意味は無くなりました。何せ、魔神召喚に手を貸してしまった現エコ帝国の者達に舵取りする資格はありません。権限を剥奪して、エコ帝国の軍を使えるようにしましょう」

「できるでしょうか?」


 自信なさげにいってくるクリミア王女を励まし、微笑む美紅は怖い顔をしていた。


「エコ帝国が魔神召喚に関与したという生き証人という私が居て、それでも足掻くなら、もう力づくでいきます。こんな状況で判断できない人達の為に世界を滅ぼさせる訳には行きませんから」


 頼もしい事を言う美紅は、考えが纏まった者からリビングから出ていく者を目で追いながら、考えていた。力づくとは言ったが、本当にそれをやるとエコ帝国の軍を疲弊させる可能性があるからどうしたものだろうかと頭を悩ましていた。徹のように炎の翼、ルナのように破れない結界など、分かり易い力の象徴で威嚇する術が美紅にはなかった。

 そんな美紅に呼び掛ける者がいた。


ー我が力を貸してやろうか?-


 それは美紅の背負うバスターソードのフレイドーラからの初めてのコンタクトであった。

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