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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
9章 会者定離(えしゃじょうり)
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197話 俺をアローラに導いた女神

 眩しかった光が薄らぎ、そこの中にいた人物の姿がはっきりしてくると栗色のウェーブがかかった髪を後ろに流し、足元に着きそうな豊かな髪、やはりこれが女神の基本の服装なのかとさすがに思い始める至る格好のルナやミドリのような布を巻き付けたような格好で、溢れる母性といった豊かな胸をあの細い腰でよく支えるなっと思わず、思ってしまったスタイルをしている。

 表情はあえて感情を殺しているように見えるが穢れを知らぬ少女のような美しさを隠すには至らず、普段の俺なら見惚れていただろうと思っただけに留まった。


 2歩、3歩と近づいてきて、俺達が跳びかかったら一瞬といったところまで来ると立ち止まると口を開いてくる。


「私の名はヨルズ、徹、貴方をこのアローラに導き、主導した女神です。私が知る限りではありますが、全ての質問にお答えしましょう」


 そこから溢れる威圧いや、格の違いを感じさせられたかのように美紅とテリアが委縮したのに気付いた俺は2人の肩に触れてビクっとして振り返った2人に力強い笑みを見せて、大丈夫さっと言ってやると肩に入った力抜けたのを確認すると俺は前へ出て口を開いた。


「正直、前なら腐るほど聞きたかった事があるが、今となってはどうでもいい事が多すぎて、選別に苦労してるが、ここにいる俺達が真っ先に聞きたいのは、何故、介入しなかった?俺がルナを連れ出したせいという責任を無視する気はないが、俺をこの世界に導いたのは、アンタ達だ。まったく関係ないって言わせないぜ?」


 俺は睨みもせず、ただ、聞くべき事を聞いているだけといった力の入ってないように見えるが、目は口以上に物語るというを実践しているようでヨルズの表情にひび割れが見える。


「ルナさんが逝ってしまった事は心苦しく思っています。ですが、そうなると分かってした事ではない事だけは御理解ください。介入しなかった事もそうですが、今、こうやって姿を現せるようにするのにも貴方達に手順を踏んで貰う必要があったのです」

「手順っ?そんな事私達はやってないわっ」


 そういうテリアに目を伏せながら首を振るヨルズを見て、俺はそういう事かっと納得する。


「俺達が3人の女神と邂逅する事になんらかの意味があったんだな?」

「はい、正確に言うなら徹、貴方が会う事に意味があったのです。貴方が生まれてからノルンに貴方の魂に少し細工をするように私は指示しました。分かり易く言うなら文字を書く為のインクを貴方に付けるようなものです」


 ノルンが言うような理由もあったのだろうが、やはり違う意味もあったのだろう。それも伝えたかったが、この辺も手順なり制約で話せなかったと理解した。


「その役割を持った徹が各地にいる女神に会いに行く事でパスが繋がります。そして、私に会う事でそれが完成するのですが、自分で言うのもなんですが、これでも神格が高い女神な為、強引にこちらの世界へやってくるだけで崩壊させてしまうのです。そこで、この世界の女神が残した神を召喚する魔法陣を破壊する時に生まれるエネルギーを利用して、どさくさに紛れて降臨するという手間を取る必要がありました」


 これでも限界まで神気を抑えてやっとこちらにいられる状態なのですっと申し訳なさそうに言われる。

 それが事実ならどうしようもなかったのだろうとは思うが、不思議に思う事に気付き、口にする。


「何故、ルナは俺がパスを繋いでいる事に気付けなかったんだ?最初のうちならルナならって思えるが、ここに来るまでの間で気付けないほうがおかしくないか?」


 俺の言葉に逡巡を見せるヨルズだが、美紅も同じ事に気付いていたようで、ヨルズに詰問するように問う。


「知る事は全て答えるのではなかったのですか?」


 それでもまだ迷いが拭えないのか、どうやって切り抜けようかと悩んでいるように見えた。

 それに苛立った美紅とテリアが声を上げようとしたのを見て、溜息を吐くと、分かりましたっと告げて話し辛そうに口を開いた。


「これは、ルナさんは語りたくなかった事だと思ったので伏せようかと思いましたが、厭らしい話ですが貴方達の信用を失くすのは私には痛手になりますのでお話します」


 美紅とテリアは、えっ?っと言って固まる。おそらくヨルズにとって都合が悪い事だと思って問いかけていたのであろう。

 俺はヨルズが悪い女神だと思ってない。あの逡巡した顔を見た時から俺達に気を使っていたという事は理解できていた。

 それでもやはり、話し辛いと思っているようで1度目を閉じて呼吸を落ち着かせるように深呼吸をすると話始めた。


「ルナさんは女神ではありますが、まだ正式な神ではなかったのです。私達の神の世界でいう補助神と呼ばれる。それぞれの神の代替品と呼ばれる存在でした。ルナさんの主軸になる神、ルナマリアの死、もしくば神格放棄がされた時、それを受け継ぎ、神となるのです」


 そうか、和也の足跡を追う時にルナマリアの神殿跡で彫像を見つめるルナに声をかけた時のあの反応はそれが理由なのかと理解した。それと同時に使徒がいないというのもそういう事なのだろう。


「そういう事か、だがな、ルナは神格がなかろうが、代替品のままだったかもしれない。それでもアイツ以上に女神を名乗れるヤツがいるなら見てみたいと思えるほど女神してたぜ?」

「そうですね、私を含めて、ルナさん以上の女神を連れてくるアテはありません。人だろうが女神だろうがその生き様が眩しいと感じるのは当然ですね」


 やっぱり最初にあったのがルナで良かったと俺は左手にある首飾りに触れて微笑んだ。

 そして、前を見つめて質問を再開する。


「会う為の手順は分かった。それが魔法陣なり、なんなりの役割をしたんだろう。その細かい理由はもういい。次に聞きたいのは、500年前に和也に入れ知恵して、力を貸したのはアンタだな?」

「はい、知識と予知した未来を伝えました」


 やはり、この2人が繋がったなっと俺は思った。いくら和也が優秀だったとはいえ、人知を超え過ぎてる部分がチラホラし過ぎていた。

 それを聞いた美紅が聞き返す。


「どうして、初代勇者には介入したのにトオル君には介入して手助けをしなかったのですか?」

「それも先程の話に繋がるのですが、和也の時はまだこの世界にルナマリアさんが存在しました。その世界の女神が存在するだけで世界の歪みが発生しても軽微なら自動で修復してしまいます。だから、介入できましたが、ルナさんは・・・」


 その修復能力がないから介入したら致命傷になる恐れがあったという事なのだろう。


「私が介入してアドバイスを与えた事でルナマリアさんは和也の心が自分から、この場合、私に移ったと勘違いしてこの世界から去ってしまうという事になって本当に申し訳ありません」


 なんだろう?この負のスパイラルといった残念さは、多分、ルナマリアという人はルナよりは頭が切れるのだろうが、中途半端に頭が良く、ルナの母体になってるだけあって、うっかりしたところがあるのであろう。それを発動させて、この世界に見切りを付けて去ったと分かると思わず項垂れそうになる。


「本気でコメントに困るから、その話はそれでいいよ。俺達の個人的な疑問はこんなものだ。そろそろ、本題にいこうか。魔神とは何なんだ?俺の世界でも語られている堕ちた神との戦いがあるように何故、神同士で争わない?人の世界にも影響はあっただろうが、そのほうが結果として傷は浅く済んだんじゃないのか?」

「もう知っておられる事もあるでしょうが、魔神は毒に塗れた神です。それと戦う事は最悪、第2、第3の魔神を生む恐れがあったのです。勿論、それに対する対策も講じてはいましたが完全ではありません。魔神に挑む以上、魔神より神格の高い者が少数で挑む事になります。対策でなんともならなかった場合、今の魔神より手に負えない存在が生まれる事を意味します。それに過去に暴走して、毒に塗れた魔神を助ける為に戦いを挑み、助ける術がないと楽にする為に倒す事に成功しますが、その女神も毒に侵されて第2の魔神になってしまいました。その魔神が今、私達が語る魔神の正体です」


 最初の魔神が倒したと言った時に顔が曇った事に気付いた俺は、気になったので聞く事にした。


「最初の魔神はアンタにとって大事な存在だったのか?」


 そういうと驚いたような顔をした後、申し上げにくい事ですがっと言って説明してくれた。


「最初の魔神となった女神は私の孫にあたります。それを助けようとしたのがその母、私の息子と結ばれた女神なのです。余談ですが、その妻を助けると単細胞の息子が挑もうとするのを我ら神達が総出で止める騒動で神界から弾かれたノルンが貴方に気付いて人間に転生しまいした」


 何度かあった、貴方に介入する機会がある度に、俺が行くと騒ぎ出して結局何もできずに過ごしてしまいましたっと語り、少女のように見えていたのに一瞬で母親に切り替わり、あのバカ息子がっ!と怒る姿を見て自分の母親を思い出していた。母さんは元気にしてるだろうか?してるだろうなっと自己完結する。

 コホンっと咳を吐いて、仕切り直すように少女のような笑みを見せるが、もう手遅れだと俺は思ったが胸に仕舞っておく事にした。


「という事で、唯一、神界で貴方を見つめている男神ですよ」


 とっても残念そうに言われて、俺も微妙な気分になる。

 美紅もそう思ったようで俺をチラチラ見てくる。


「なんかっ、トールと同じ匂いがしそうな気がするっ」


 テリアに失礼な事を言われて、俺は目を剥きだして、待てっと言うが明後日を見てこちらを向かないテリアに舌打ちして前を向いた時に俺を見つめるヨルズの目が俺はなかったことにした。


「それで、毒に侵された神に挑んで勝つには人間でないといけなかったのですね?」

「ええ、正確に言うなら、間違った加護を受けていない人間がです。そういう意味では和也は勝つ事はできますが、根本的な解決には至れないのです」

「加護を与えた女神に移るか・・・ところで間違った加護とは何なんだ?」


 どう説明したらいいか悩んでいるように眉を寄せて少し考え込んでいたが口を開いた。


「簡単に言うと自分を偽った思いで加護を与えるとそこから毒が発生してしまいます。人間で言うところの正義を振り翳してる者が統合が崩れてくるところを嘘で固めていき、自分に酔って暴走していくという感じが近いでしょうか?」


 嘘は一旦付くと嘘の上塗りをしていかないといけない。それが重なると引き下がれなくなり、無茶苦茶な論理が正しいと思い込み、正常な判断ができなくなる。魔神の場合は毒があり、それが天井知らずなのであろう。

 和也達は何を間違ったのかはここで聞くべきではないし、本人に問い詰めるものでもないなっと思い、その先は考えないようにした。


「さてと、聞きたい事はだいたい聞いたと思う。あの馬鹿、和也がここを破壊したら門を開けるって言ってたという事はアンタからアイツに報せがいってるんだよな?」

「ええ、いつでも、ここに門が開けれる状態です。呼びますか?」


 ああ、頼むっと俺がいうとヨルズは言霊を唄うように唱えるとヨルズの隣に光の扉といったものが現れ、そこから和也とミラさんが連れだって出てくると俺は地面を踏み抜き、全力で和也に飛びかかる。

 それを見た和也は驚きもせず、静かに目を瞑って体から力を抜いた。


「こん、クソ野郎がぁぁ!!」


 驚くミラさんを尻目に俺は右拳で和也の左頬を打ち抜いて壁まで吹き飛ばした。

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