187話 馬鹿と火山と報せ
恒例になりつつある連休の複数話更新です。いかん、この流れはいかんのですよ(嘘)
暇なの?って聞かない大人になりましょうね?(;一_一)
それはともかく、応募が落ちたのはいいけど、やっぱりなんらかの感想は欲しかったなっと思いますな。
私はルナ。アローラ最後の才色兼備と巷で謳われている女神とは私の事。
アローラに降り立ち、数々の冒険を経て、アローラを駆け巡り、色んな場所へ行き、ついには違う世界にまで行って神が生みし金属で武器をゲットして帰ってきた才気あふれる女神。それが私。
そんな私が失われる瀬戸際に追い込まれていたりする。これはこの世の損失ではないだろうか?
「ルナっ!ブツブツ言ってる暇あるならもっと足を動かしてっ!!」
私の少し前を走るテリアに少しづつ追い付き始めているのに叫ばれる。実際な話、私に声をかける為に速度を調整しているだけなのだが。
遥か前方に高い位置まで避難した美紅がフレイドーラを構えてこちらを見ている。
「ルナさん、一撃入れますから間違っても当たらないでくださいね!」
そう言うと私の返事を聞く前に大上段が振り下ろして生まれる、かまいたちが私の後方に目掛けて飛ばす。
後方でかまいたちとブツかって弾けるような音と共に後ろから焼けつくような光に照らされるのが分かる。
「どうじゃ、この鋳造で作ったと思えない槌の出来栄えは?」
「ふざけろよ?ワシのほうが出来が良いに決まっておろう!ガンツの分もワシがやってやれば良かったと申し訳なくなってるぐらいじゃ」
ガンツとデンガルグは私に襟首を掴まれ、引きずられているが、まったくそんな事、お構いなく、自分の槌自慢をして騒いでいた。
この鍛冶馬鹿達の襟首を握ってる手を離してやろうかという衝動に駆られるが、この馬鹿しか、徹の剣を打ち直せないっと呪文のように心で唱える。
「のぅ、ルナよ」
「なんなの!忙しいから後にして欲しいんだけど!!」
ガンツがふむっ、っと唸るがデンガルグが言ってくる。
「忙しいのは分かったわい。どうでもいいが、溶岩が近づいてきて足が熱いんじゃが?」
そう、私は今、ドワーフ国の山の火山に居て、火山がグズって軽く噴火したので逃げているところであった。
一応、槌を作るのには成功したが、成功した槌をお互い自慢し出した時、火山で足元が揺れるレベルの地震が起きる。そうすると火口から盛り上がるように溢れだした溶岩に気付いた私達は逃げ出すが、そんなものに目に入ってないかのように騒ぐ2人に気付いた私は、取って返して、2人の襟首を捕まえて走り出して、今に至る。
こっちは必死に走ってるというのに、この2人は呑気な事をしてるのを見て、腹が立つ。
「その忙しい事は後で手伝ってやるから」
「うんむ、ワシも手伝うぞ、だから」
「「もっと早く走ってくれんか?」」
2人の言葉を聞いた私は何かが吹っ切れたような気がした。
「ねぇ、ねぇ、テリア。このゴミを後ろにポイしてもいいかな?問題ないと思うの」
「お、落ち着いてっ、ルナ。そんなのでも、生きてるモノなんだから、しかもトールの武器をなんとかできる可能性がその2人だけなんだよっ?」
それに女神として、その言動はどうなのっ?っと言われて、私は、ハッとする。確かに、女神として生きているモノをポイするというのは問題ありだったのっと反省する。
「熱くて掻いた汗で滑って落とすなら、セーフだと思うの」
私は口の端を上げて、うふふっと笑う。
「ルナっ、本当に駄目だからねっ!美紅っ!!ルナが壊れかけで怖い事言ってるっ!なんとかしてっ!!」
「そのなんだ、ルナは冗談が好きじゃの。そんな据わった目で笑われると本気みたいに見えるから、迫真の演技じゃ」
ガンツはデンガルグと、わっははっと笑うと、一度、お互いの目を合わせて頷くと私のほうを見てくる。
「「ワシらをポイしたり、せんよね?」」
縋るような目をして私を見上げてくる。
「大丈夫なの。これでも女神の端くれ、ポイなんてしないの。ただ・・・悲しい事故があるだけなの」
私はヤるといったらヤる女神なのっとニヤリと笑うと震えあがる2人。
「「いやじゃぁ!冗談と言ってくれんかぁ!!」」
叫ぶ2人を見て、幾らか胸の内がスッキリした私は、魔力で2人を覆うとエアーブレットを撃つ要領で前方に撃ち出す。
狙いは違わず、美紅がいる近くの地面に頭から突き刺さるようにして縫い止めた。
2人の馬鹿さ加減が私の遠慮を破壊してくれたからできた事であったが、これでみんな無事逃げれると私は溶岩に追い付かれないように加速して美紅がいる安全地帯へと駆け出した。
駆け寄ると美紅が突き刺さっている2人をどうやって抜こうかと試行錯誤していた。
「これって、2人とも無事なのっ?」
ガンツを指でツンツンとしているテリアが聞いてくると私は頷く。
「きっと丈夫だから平気なの」
えっ?そういう問題っ?っと私に詰め寄ってくるが、私は本当に大丈夫だと思っている。
テリアに突っつかれてピクピクと反応してるのを見て無事だと判断する。そして、私がおもむろに両足を掴んで引っ張り上げると、土塗れになった顔を濡れた犬が水飛沫を飛ばすようにしたガンツが呟く。
「ころさ・・・死ぬかと思ったわい」
私の笑顔を見て、言い直すガンツ。
それを見ていた美紅は溜息を吐きながら私に倣って、デンガルグの足を掴んで引っ張り上げる。
デンガルグもガンツと同じようにして、私を確認すると私から目を反らしてガンツの傍に行くと愚痴り出す。
「なんで、小僧の傍におるオナゴはこんなに怖いのばっかなんじゃ?ワシはこのオナゴに囲まれて平気そうな顔しとる小僧を尊敬の念を覚え始めたぞ?」
フレイドーラとも似たような事を言い合ったが、一人じゃなかったわいっとぼやく。
「確かにのぅ。ワシが友と認めた男はワシが想像してる以上に男、いや、漢なのだろう。決して真似したいとは思わんがの」
仲良くぼやく2人の後ろには、ガンツには私で、デンガルグには美紅が立っていた。私達は優しく肩に触れる。
振り返った2人は飛び退くと正座すると手を地面に着けると叫ぶ。
「「すんませんでしたっ!!」」
こんな素晴らしい槌ができて、嬉しくて浮かれておったのは悪かったからこれで勘弁してくれっと私達に許しを請う2人を見て、溜息を吐いて許してあげる事にした。
「まったくっ!2人共、溶岩に追われてテンションがおかしくなってるよっ?ガンツ達も大概だけど、ルナ達もちょっと過激だわっ」
決着が着いたのを確認したテリアが私と美紅を叱りつける。
今度は私達が正座してテリアにごめんなさいっと言って、謝る相手が違うっ!と怒られて、ガンツ達と頭を下げ合いをする事になった。
少し、時間が経ち、溶岩の流れも落ち着いた頃、一旦、少し山を降りて安全な所で休んで、今後どうするか考えようっという事になり、山を降りて鍛冶ギルドの建物へやってくるとエルフの兵士風の者がいるのに気付いて、近づくと向こうもこちらに気付いて、慌てたように走ってこちらにやってくるのを私達は顔を見合わせて、もしかして徹に何かあったのかと顔を強張らせる。
「皆様、こちらにおられましたか。エルフ王がお力をお借りしたいと言われ、各地に皆様を捜す為に人を走らせてます」
徹の事じゃなかった事に胸を撫で下ろしたが、エルフ王がわざわざ助けを求める為に各地に人を走らせる事態も大変な事だろうと気を引き締める。
「何があったの?」
私がそう聞くと、今、御説明させて頂きますっと言って、地図を開くと説明を始めた。
「まず、エコ帝国の首都のバックがここです。そこを北に進むと勇者を召喚していた場所があります」
美紅の表情が沈んだ事に気付いた兵士は続きの言葉を出し辛くなったようで視線を彷徨わせる。
それに気付いた美紅が気にせず続けてくださいっと言うと兵士は私を見てくるので頷いてやると話始めた。
「そこから更に北西に行った場所で主要のエコ帝国の重鎮達が集まっている事を掴みました、が、そこに調査員が向かうと周辺におかしいほどのモンスターの群れがいたそうです。軍を動かして無駄に戦力を疲弊させないなら数千の人数が欲しいと報告してきましたが、それだけ用意して動くとなると、とても時間がかかります。そこで・・・」
「なるほど、私達ならモンスターを壊滅、もしくば、切り開いてその集まりがある所に到着できるのではないかと期待されているのですね?」
美紅が求められている事を理解して伝えると兵士はその通りですっと伝え、
「エルフ王も、貴方達に頼るばかりで申し訳ないが頼らせては貰えないかとお伝えして欲しいと言われております」
確かに、エコ帝国の重鎮達が何をやろうとしてるか、気になるところなのっと呟く。何せ、ユグドラシルが魔神の関係者、おそらく、トランウィザードが絡んでいると思われると言っていた。放置しておいて良い存在ではないが、こちらも優先させないといけない事であると板挟みにあう。
「となると、ここは2手に分けるしかありませんね。私とテリアちゃんがそのモンスターをなんとかしに行きましょう。ルナさんはガンツさん達のサポートをお願いします」
「ちょっと、待って欲しいの。あの2人を連れて、さっきみたいな事になったら助けるのはキツいの!」
先程は私も慌ててたので気付きませんでしたがっといい、私を見つめて言ってくる。
「ルナさんの時空魔法を使えば、逃げられませんでしたか?」
あっ、声に出してしまう。思いっきり忘れていた。確かにそれに気付いていれば、疲れただろうが逃げるのは簡単だったと気付く。
「では、これがベストのようですね。テリアちゃんは嫌ならこっちに残って貰ってもいいですが?」
「仲間外れにしないでよっ、私も美紅と一緒に行くわっ」
私も戦えるっ、っと胸に手を当てて言ってくる。
「では、そのようにしましょう。テリアちゃん出発の準備をしましょう」
そう言うと兵士は馬車はありますので、そちらの馬車はルナ様に残して置いていかれる良いかと伝え、街の出入り口でお待ちしておりますっと声をかけると去っていく。
美紅達も準備の為、私達の馬車へ行って荷物を纏める為に向かい、私とガンツとデンガルグが残される。
ガンツが遠い目をして呟く。
「なんか、便利そうな時空魔法を使えば、簡単に助かったのか。ワシら地面に埋められ損かのぅ」
そのボヤきは山からの吹き下ろしの風に運ばれていった。
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