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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
9章 会者定離(えしゃじょうり)
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181話 いつでも私達は護られている

 テリアの手を聞いた私達はテリアから離れて、ファーブニルの意識をテリアから外すように牽制に廻る。

 オオカミから降りて消すと精神集中に入るテリア。まだ、使えるようになったという程度で発動させる為の精神集中の時間が多くかかるらしい。しかも、発動させる所を最初に決めてからしかできないらしく、動き廻る相手にはできないという弱点も持ち合わせているようだが、今回に限って言えば、ファーブニルはあそこから動く事はない今なら使える魔法である。


 テリアの言葉を聞いた時に美紅が以前いた世界で、そんなのを見た事あったような気がすると苦笑していたところを見ると徹が伝えたイメージが元になってるようである。


「美紅、私は右から行くの!」

「分かりました。私は反対の左側から行きます!」


 散開した私達を威嚇するように声なき咆哮を発すると、まずは私の方へとブレスを吐いてくる。

 咄嗟に避けるが距離が足らないと判断した私は急遽、簡易結界を張る。余波が簡易結界に届くと軽い音をさせて割れると私は少し飛ばされる。

 思っている以上に余波は強いと戦慄し、もっと意識を高めて、避けなければならないと手で汗を拭う。


 私に意識が向いているファーブニルの背中に美紅が、かまいたちを乱射する。傷を付ける事はできないが、美紅に向き直る。つまり、お前の攻撃など私には効かん!でも、痛くない訳じゃないのだよっ!っと言う事なのだろう。

 美紅はファーブニルに狙いを付けさせないようにステップを踏みながら小刻みに動き続ける。


 その動きに翻弄されながら左右に頭を振っている後ろにいた私は、弓を引き絞る。どの程度・・の力でなら撃ってもこの世界が安全か分からないので全力では撃てない事に顔を顰めつつ、ファーブニルの上空を狙って撃つと、時空魔法を使って、矢を時間差転移をさせる。同じコースを連続で時間にして1分分の矢を放つ。放たれたファーブニルはまったく寸分違わない位置に1分間同じ威力の矢が穿ち続けられて堪ったものではない。そこに縫い止められるように抑えつけられるが、穿ち続けられた矢は音もなく破壊されていき、本来のこの時間の矢だけが、穿ち続けられた事により、鱗が剥がされ、脆くなった場所に浅く突き刺さる。


「なんて丈夫なの。全力じゃないと言っても一点集中であそこまでやって、貫通させる事ができないなんて!」


 怒りに染まった目を私に向けて、ブレスを吐きまくってくる。私は距離を取って避けたり、簡易結界で受け流しながら避けたりしていた。

 その間も美紅は、かまいたちを撃ち続けていたが、意識を奪えない事に業を煮やして近接に切り替えた時、ファーブニルは笑みを浮かべたような気がした私は叫ぶ。


「駄目っ!美紅、逃げてなのっ!!」


 急加速で突っ込んでくる美紅に合わせるようにして振り返ったファーブニルは既にブレスを吐く体勢で美紅を見つめる。

 美紅は勢いがついている速度を止めて逃げようとするが、このタイミングでは逃げるのは不可能と判断したのか、駄目元で盾を翳して耐えるという賭けに出たが私には分かった。あれは美紅が耐えれる事はないと。


 私は時空魔法で美紅の隣に転移すると簡易結界を十枚前面に張る。私の中から魔力がごっそりと抜ける感覚に膝を折る。やはり、私が時空魔法を使いこなすには魔力の絶対値が足らなさ過ぎると歯を食い縛る。

 そして、ブレスが吐かれ、簡易結界に直撃する。


「どうして、来たんですかっ!これは私のミスなのに・・・」

「んっ~、私達は友達なの。理由なんていらないの」


 笑みを浮かべる私に絶句するが、美紅は簡易結界が一枚割れる音を聞いて、ブレスを睨みつけて膝を着く私の前に立つと盾を構える。


「多分、結界では耐えきれないでしょう。私が11枚目の壁になります」


 結界を覆うように吐かれているブレスから逃げる事はできませんから、これしかできませんっと微笑む。

 私も連続行使したせいで一時的に魔力が枯渇したような状況になってしまったって、ゆっくりと元に戻ろうとしてるが時空魔法は勿論、簡易結界もまともに張れないだろう。だから私は、


「じゃ、ミクを支えるのは私の仕事なの。2人で乗り越えるの!」


 美紅の肩を掴んで押さえると、はいっ!と良い返事をされる。

 簡易結界が1枚、また1枚と割れて、最後の1枚になって、予兆を感じた美紅が叫ぶ。


「ブレス!来ます!!」

「こんなのに負けてられないのっ!!!」


 私は帰るんだっと心で叫ぶと私達の前に立つモノが居た気がした。幻視だと思う。ブレスを×で斬るように両手を振るい、ブレスの威力を減殺したように見えた。

 最後の簡易結界が破壊され、私達を包む。何も怖くない。私達は乗り越えられると信じて、美紅の背中を押さえ続けた。


 そして、爆発が起きて煙が晴れると、マントの原型がなくなって盾が煤けて汚れてはいるが、無事な状態で震える足で立つ美紅と膝を着いた私が現れる。


「ガンツさん、おじ様、この防具は本物です。有難うございました!」


 無事、生き残った事をあの史上最高の2大鍛冶師に礼を述べる。

 しかし、思ったようなダメージを与えられなかったファーブニルは怒りに染まった目で私達を睨むと再びブレスを吐こうとするモーションをする。

 さすがに2発目はどうにもならないっと私達2人は戦慄した時、待ちに待った声とセリフが届く。


「お待たせっ、これが今っ、私が打てる最高の魔法っ。食らえ、神の怒り『ミョルニル』」


 青白い光に包まれた全長5mはあろうかという槌が現れたと思ったら下から掬うようにしてファーブニルを殴りつける。

 ブレスを吐こうとしていたファーブニルはブレスを止められただけでなく、空中に吹っ飛ばされて、腹が剥き出しになる。


 それを見た美紅は駆け出すが、ダメージが大きいようでいつものような動きはできていない。このままでは着く前に元の体勢になってしまうっと思った時、美紅は肩越しに私を見た。


「エアーブレットっ!!」


 私は、枯渇しかけている魔力で撃てる全力で魔法を行使すると美紅・・に目掛けて放つ。

 私を見た美紅の目が私に魔法を撃ってと言っているように見えたのだ。


 放たれたエアーブレットに慌てる事なく、美紅はタイミングを合わせるようにして、軽く跳躍するとエアーブレットに足裏を乗せるようにして、剣を掲げるようにして叫ぶ。


「いっけぇぇぇー!!!」


 美紅は全身に魔力を覆って、まさに弾丸・・のようになって、ファーブニルの心臓の直線上のコースを違わず、突き刺さる。

 一瞬の抵抗があったように見えたが爆発的に高まった美紅の魔力を感じた瞬間、ファーブニルの体を貫通する。

 貫通させて、飛び出した美紅は力尽きたようで着地もできずに地面に叩きつけられて転がる。ピクリともしない美紅に私は恐怖したが駆け寄ったテリアが、大丈夫っと叫ぶの聞くと、お尻から地面に着き、ペタンと擬音が聞こえそうな座り方をする。ファーブニルを見ると、弾けるように闇の塊になったと思ったら霞みのようになって消えたのを確認して、やっと安心して私は地面に倒れた。



 少し休むと連続行使による魔力枯渇が戻り、立ち上がると体を引きずるようにして美紅の傍に近寄る。やり切った顔した美紅が私を見上げていた。


「最後のエアーブレット、有難うございました。きっとルナさんなら気付いてくれると思ってました」

「咄嗟に私もそうだと思ったけど、本当に無茶をするの」


 無茶しないで勝てる相手ではありませんでしたからっと苦笑される。

 笑うだけで体が痛いらしく、顔を顰める美紅にヤレヤレと言いつつ、回復魔法を行使する。


 私が回復魔法を使っている間に二振りの短剣を回収してくれたテリアが帰ってきた。

 そのテリアを見て、先程の魔法を褒めちぎった。


「さっきの魔法、凄かったの。ファーブニルの意識を刈るような一撃で見てて、ちょっとびっくりしたの」

「まあっ、本当は槌じゃなくてっ、でっかい拳でトールが言うところのロケッ○パンチって言うのをさせるつもりだったようなの」


 えっと、げーむ?って言うので良く見たと言ってたわっ、っと私達に説明されるがさっぱり分からない。

 どちらにしてもテリアは良いのか悪いのか、徹に毒され始めているようである。


「それはそうとっ、ブレスを防いでいる時、最後の結界が壊れる間際なんだけどっ、私の見間違いだと思うんだけどっ、誰かいなかった?」


 私と美紅は顔を見合わせるとお互いの表情から、自分だけが見えたモノじゃなかった事に気付く。


「きっと、お節介焼きが、自分の事をほったらかしにしてやってきたのでしょう」

「そうなの、自分の事より、他の人の事が心配でしょうがない、お馬鹿さんなの」


 どれだけ、自分の置かれた状態が危ないか分かってないのっと美紅を見つめて言うと、仲良く、ねぇー?っと息を合わせると笑い合う。

 状況が理解できてないテリアが、説明を求めてくるが、もう少し先延ばししたい私達は、はぐらかしながら、早く帰らないと出口を塞がれるかもしれないのっと言ってテリアを急かして、この世界から脱出をすることにした。

 愚図るテリアに今日の寝る時にゆっくり話してあげるのっと言うと諦めてくれたのかおとなしく歩き始める。


 後ろを振り返ると何もいないと分かっているが、あの馬鹿に告げる。


「ありがとうなの、でも今度は早く、起きてちゃんと目の前にくるの」


 なんとなく黒い空間に居る者が苦笑して頭を掻いているようなイメージが伝わる。

 頬が熱くなるのを自覚するが心地よくて目を細める。先を行く美紅とテリアを追いかけて、元の世界への扉を潜り抜けた。

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