幕間 予知
キャラクター紹介完了しました。お暇があれば覗いてみてください。
明日から新章の9章の予定です。
先日、外の様子を見ていた俺は、苦々しく顔を顰めて、後輩にしてやられていた。
控えめに、役に立てばと書いたが、本当の所、切り札とも言えるものであった。万が一、偶然の確率で、関係のないものが見た時に、気にもしないようにと気を回したのが仇になった形になって、後輩にしてやられたという訳だ。
「あの馬鹿野郎は、それにあっさり引っかかりやがって、毎度毎度、ポカばかりやって、見ていて、ハラハラさせやがる」
エルフ国では、宰相がおかしいと気付いた時点で、ティテレーネ王女に調べさせる手を打っていれば、帰った時にあんな横暴な事をさせずに済んだ。
また、ドワーフ国では、ザバダックが攻めてきたと分かった時点で、ガンツと共にギルドから離れていれば、あの被害は出てなかったであろう。
そして、獣人国では、アニマルガールズなんてものを・・・なんて恐ろしいモノを生み出したのかと戦慄した。それを眺めている時、俺の心のシャッターは絶え間なく鳴り響いていた。
俺の心のアルバム埋め尽くされ、何冊増刷しただろうか。
美紅ちゃんには申し訳ないが、もう少し、解決まで時間がかかればいいと思ってしまった悪い俺がいた。白いウサギさんのルナちゃんを追いかけて、メルヘンの世界に行けたら幸せだろうなっと夢想したものである。
ルナちゃんがあの衣装を取り出す度に俺の胸は期待で高鳴り、美紅ちゃんに阻止されて、死の勝る絶望に苛まされていた。
その時の事を思い出して、顰め面をしているとミラに声をかけられる。
「トールさんの心配してるのですか?和也」
「いや、どうだろうな?あの馬鹿野郎の事を心配するほど暇じゃないつもりだが?」
さすが俺、馬鹿野郎と違って他人に悟らせたりしないっと内心、あの馬鹿をせせら笑う。
でもっと眉を寄せてくるミラを見て、やっぱりコイツはあの馬鹿野郎に甘いなっと思う。どう見ても可愛い弟の心配する姉のように見える。
元々、面倒見の良い奴だが、あの馬鹿野郎はツボに入ったようだ。
馬鹿野郎が、死にそうになっているのが心配でしょうがないようだ。
「それにな、ミラ。こうなる事は分かっていたことだろう?」
あの馬鹿が、後輩じゃない魔神の加護を受けている者とやりやって生き残ったらそうなると予知で示されていた。
「その通りですが、ここから先がどうなるかは予知の力が及ばなくなると言われたじゃないですか・・・」
そう、ここから、予知が及ばない領域になる。
「ミラは予知できない未来が不安に感じているようだが、俺は違う。俺は逆に嬉しく思う。先の未来が分からないという事は、自分が未来を決めていい。そして、信じるという事を自分で選択できるということだ」
予知で先の事の高い可能性を知る事は予測を立てやすく安定するだろう。だが、それに頼り切ると心が弱くなってしまう。ここぞっという時に踏ん張りが効かなくなる。
でも今まで言った事は建前だ。
決まった未来など何が楽しい。切り開いてこその未来だろうっと俺は思う。こう考えているのはきっと俺だけではない。あの馬鹿野郎も同じはず。
「ミラ、心配いらない。アイツはまだ前に進むのを諦めたりしていない。だから、また俺達の前にアイツやってくるさ」
「そうですね、トール君はきっと立ち上がる。また会える日を待ちましょう」
ミラは、いつもの柔らかい笑顔になって言ってくる。
俺も微笑み返すと、そろそろ寝るよっと言って横になって目を瞑るとミラが語りかけてくる。
「そうそう、時々、ルナピョン、ミクニャンと声に漏れてますよ?」
クスクスっと笑われる。
思わず、動揺して噴き出しかけるがかろうじて耐える。
俺は目を開けずにタヌキ寝入りをした。
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