168話 交渉スタート
逆ラッキースケベを発動されてベットに現実逃避していた俺をガンツが引きずり出して、さっさと着換えろっと尻を蹴るとみんなを連れて出て行った。
俺は渋々、正装に着替えると、不貞腐れた顔をしてみんなの前に顔を出す。
「何を締まらない顔をしとる。シャンとせんか!」
ガンツが喝を入れてくるが、俺の心は反応をしない。
「大丈夫です。兄様。とても立派な出で立ちですよ・・・そちらも、とっても立派でしたよ?」
ティティが褒めると、視線が下がり、少し頬を染めながらの2度目のイントネーションがおかしい褒め方をされると俺の心にハリケーンが襲いかかる。
「ごめん、頑張ってシャンっとするから、これ以上、俺のガラスのハートを叩かないで・・・」
もう、徹は一杯一杯なのっと泣きが入る。
笑みを浮かべた、エルフ王が肩を叩いてくる。
「トール殿。既に今日の最大のプレッシャーとは戦ったのだ。今日の残りの用事など、消化試合のイージーモードだ。気を楽にしていけるではないか?」
まさに、これからのエコ帝国の交渉など些事だと言い切れるぐらい軽いモノだと思える。でも、こんな目に合わなくても俺はやれたっと叫びたい。
事の張本人はさっきから俺をチラチラ見て、視線が合うと明後日のほうを見る事を繰り返している。
美紅とクリミア王女は一切、俺と視線を合わせてこないし、テリアに至っては汚物を見るような目で俺を逆に見つめている。
俺は溜息を吐くとみんなを見つめて言う。
「そろそろ、時間だから城へと向かいますか」
頷くみんなを見て、さっさと交渉に入って、少しの間だけでも現実を忘れようっと俺は用意された馬車に乗り込む為に大使館を出て行った。
時間通りに城に到着した俺達は、オルソンと合流して客間に案内されてから1時間放置される事になった。
「これは、舐められていると取るべきか、こちらの精神を揺さぶって精神的優位を取ろうという作戦なのか、相手の馬鹿さ加減を考えると、どっちか分からなくなるな」
「おそらく、どちらもでしょうね。エコ帝国は徹底的に他国を下に見てますし、現状を理解できてないでしょう。とりあえずエコ帝国の精神的に優位に立つ為の常套手段ですらかね」
この行動が既に状況を正しく理解できてないと裏付けるのに充分ですねっとオルソンが説明してくれる。
「つまり遠慮はいらないっと言う事か?」
「その通りです。極論ですが、戦争を起こすぞっと言われてもやってみろぐらい言っても問題ないかと」
オルソンは不敵な笑みを浮かべて言ってくる。おそらく、オルソン調べで、エコ帝国側でできない理由があるのだろうと思った。
常套手段というと、いつもなら、後どれくらい待たされるのだろうと思い、聞くと肩を竦めて、おそらく半日かかるかとと言うと俺の目をジッと見てくる。
オルソンの意図を理解した俺は聞く。
「エコ帝国の王と重鎮がいる場所を把握してるんだよな?」
「勿論、把握しておりますとも」
優秀だねぇっと言うとお褒めに預かり光栄ですっと前と同じやり取りをして、お互い笑う。
俺は廻りを見渡す。一緒に来たのは、ルナ、テリアにエルフ王、ティティ、ガンツ、ネリー、そして、オルソンである。そして、一名いるがこれが俺の秘密兵器である。ローブを深く被って俺達の中に混じっていた。
「じゃ、乗り込むか」
「道案内はお任せを」
そう言うとオルソンは俺の前を歩き、先導してくれる。
向かう最中に兵士と出くわして力づくで止められそうになるが、ルナとテリアに鎮圧されていく。
俺は廻りに目もくれずにオルソンの背中を付いて行くと、無駄に豪華な扉の前に到着すると10名ほどの兵士が襲いかかるが、ルナとテリアの敵にすらならずに叩き伏せられる。
俺は扉を蹴破ると中では仕立ての良い服に包まれた壮年の男を中心に吐き気を催すような目をした男共が群れいていた。
どうやら、お茶をしていたようだが、突然入ってきた俺達を見て、どう対応していいか分からないようだ。
「これは優雅なティータイムを楽しまれていたようで?客を待たして飲むお茶は格別ですかな?」
俺は半眼になってると自覚ある状態で見つめて言うと我に返ったと思われる重鎮が叫ぶ。
「ここをどこだと思っておる!礼知らずの馬鹿者どもがっ!」
俺はポケットにしまっていた飴玉を指で弾く。弾いた飴玉は狙い違わず、その男のティーカップに直撃して、軽い音をさせて、カップが粉砕されて、その場にいた者達が慌てて叫ぼうとするのを俺は被せるようにして叫ぶ。
「騒ぐなっ!痴れ者。礼知らずはどこの誰だ?お前らがダダを捏ねたから出向いてやったら、この有様だ。お前らと違って、こちらは暇などないんだ。さっさと交渉のテーブルに着け」
俺がそう言うと男共は壮年の男を見つめる。
「すぐに場を用意させる。元の部屋に戻って待っていろ」
「なんですか?礼を失した詫びもなく、自己紹介が要らないほど有名人ですか?このカスの王様は?」
俺が馬鹿にしていると理解しているようで、血管を浮かび上がらせて顔を赤くしている。
「使者様、あの愚か者は自己紹介という高尚な言葉を知りません。私から紹介させて頂きます。あの者が、14代エコ帝国国王、ショーツと申す者です」
「ジョーツだっ!国王の名前ぐらいしっかり調べろっ!」
惚けた顔してオルソンは失礼しましたっと言うと言い訳を始める。
「すいませんね、つい、貴方の趣味と混同してしまいました。女のショーツを嗅ぐのが趣味というのと名前が入れ替わってしまいましたよ」
はっははっと笑うオルソンに血走った目で睨む王を眺めながら俺はどうでも良さそうに言う。
「お前が変態だとかどうでもいいから、始めるか。お前の準備を待ってたら年が明けてしまうからな」
俺は両手を広げて、精神を集中する。
「右手に土を左手にも土を混ぜて創造魔法『クリエイト』」
光る右手を地面に叩きつけると地面が少し陥没したと思ったら大きな円卓が生まれ、椅子もそれぞれの側に10脚の椅子が現れる。
それを見たエコ帝国側は驚愕の表情で俺を見つめる。
「さあ、始めよう。さあ、座れ」
場を掌握した俺が交渉スタートを宣言した。
席に着いた相手側を見つめると王のジョーツとその俺から見て右側に座る女性3人は妃とその娘のようだ。3人ともクリミア王女と良く似た顔の作りをしているからすぐに気付けたが、似てるというだけでも冒涜だと思えるほど腐った目をしている。第2王女と思われる者など俺に色目を使うビッチぶりで吐き気すら催しそうである。
王子らしきものが見えないところを見ると男の子には恵まれなかったのかなっと思っていると、オルソンが口を俺の耳元に寄せてくる。
「王子は1人いましたが、第1王女の手の者に謀殺されたというのが有力情報です」
俺の考えている事が読めるのか?っと聞くと私は優秀なのでっと澄まされる。
俺は気持ちを切り替えて、交渉をスタートする為に確認から入る。
「一応、確認するが、今回の交渉の目的は理解してるか?」
一番端っこに立っている脂ぎった太ったおっさんが叫ぶ。
「我が帝国に難癖付けて、金を巻き上げに来てる蛮族だろう」
俺は黙って、風魔法で空気を固めたものを指弾でその男の頭を狙って弾くと命中して昏倒させる。
「お前みたいな馬鹿に聞いてない。さあ、王、返答は?」
「書状は受け取って読んでいる。我が国が3カ国に裏から攻め込んだという疑いをかけられているという・・・」
俺は机を指でトンっと叩く音でジョーツはビクつく。
「疑い?おかしいな俺は書状に疑いと書いたとは聞いてないんだが、どうなんだ?」
そう言いつつ、オルソンを見ると頷いて言葉を発する。
「書状には、エコ帝国が関与した証拠を押さえてあると記し、それに対するエコ帝国の解答を最初に聞かせて貰う為の会談だと書かれてます」
これがその写しですっと俺に渡される。
一読するが、どこにも疑いとは書いていなかったというより、既に容疑者を越えた言い回しになっているのに、どうして疑いにランクダウンさせられるのだろうと俺はジョーツを眺めて、写しをジョーツの前に飛ばす。
「お前が受け取った書状とは違うものか?それとも文字が読めないほど馬鹿か?」
「証拠を見せられてないうちは疑いで問題ないだろうっ!」
なるほど、それも一理あるなっと俺は笑う。オルソンをチラっと見ると頷かれる。
「では、その証拠をお見せして行きましょう」
まずはエルフ国を襲った者の塩漬けした首からどうぞっと言うと足元にあったモノを開けて見せつける。
エコ帝国側の者から短い悲鳴が聞こえるが無視して語るオルソン。
「勿論、見覚えがありますよね?貴方の国の諜報機関のトップの顔ですから?そして、壊れてますが、これを使って、モンスターを操ってたものです」
壊れたオーブを取り出して、王の前に置く。
「次はワシじゃな。ドワーフ国で色々やってた奴がいたんでな。ご丁寧に扱わせて貰ったわい」
引きずって持って来ていたズタ袋を机の上に乗せて口を開けると辛うじて生きてるのが分かる男が憔悴した表情を王に向ける。
「見覚えはあるじゃろ?そうじゃ、お前のお抱えの技術者じゃよ。懇切丁寧に扱ったら全て気持ち良く話してくれたぞ?」
目線を下に逃がす、ジョーツの目線を追いかけるように下から一睨みするとズタ袋を元に戻して、俺の後ろの定位置に戻る。
「次は俺からで、ネリー済まないが任せてくれないか?」
「勿論、お任せします。トール様」
ニッコリと笑ってくれるネリーに有難うっと告げるとテリアに目配せすると鎧を持ってくる。
俺は笑顔でジョーツを見つめると鎧を差し出して言う。
「この鎧はエコ帝国の近衛の鎧だよな?その上、これは隊長用ので間違いないのはこちらの調べでも分かってるが否定するか?」
黙して語らないジョーツを無視して続ける。
「これはグリードの着けたいた鎧だ。誰だとか言わないよな?俺の大事な仲間を色々させる命令をした相手だ。知ってて当然だし、その命令を再びしたのも最近の事だ。それを忘れるほどボケてないだろ?」
何も答えないジョーツをニコニコ見つめていた俺が次に口を開いた時、表情を一変させた。
「俺の大事な仲間を追い詰めて、いつもまでもダンマリ続けられると思うなよっ!!」
威圧を前面にぶつけると、王は震えあがり、隣にいる妃と娘達は涙を浮かべてお互いを抱き締め合っている。どことなくアンモニア臭がするところをみると誰か漏らしたようだ。
「使者様、威圧が漏れております。あの脆弱な者達では耐えられません。交渉を始める為にお怒りをお鎮めになられてください」
しれっと俺に注意してくるオルソンに済まないっと伝え、威圧を解く。
あらかさまに、ホっとする相手を見て、俺は言う。
「もう疑いという話じゃないと思うが、言いたい事があるなら今のうちに言え、否定する言葉がないならないとはっきりと言葉にして、否定できないと言うべきだろう?」
では、解答を頂こうか?っと言うと目を泳がして言ってくる。
「まず、こちらで調査をして吟味してから返答を・・・」
「あのな?書状でちゃんと伝えている間にするべきだったことを今からか?しかも、生きてる証拠まであるのに、これから吟味する事ってなんだ?それを俺達に納得させる理由であるなら、時間を好きなだけくれてやるぞ?」
再びダンマリをするジョーツに答えを促すが、答えず、ダンマリを続ける。
「なるほど、つまり、エコ帝国は今まで3カ国にしてきたように力づくの交渉をお求めになられているのかな?はっきり言わせてもらう。3秒あればこの城ぐらい瓦礫の山にできるぞ?試してみるか?」
俺の言葉に目を見開く王と重鎮。妃は耐えれなくなったようで気絶したようで娘に呼び掛けられていた。
ジョーツの目をジッと見つめ、返答を待っているとやっと口を開く。
「否定のしようがございません・・・」
「決断の遅い無能な王だな。まあいい。じゃ、交渉という名の裁判を始めようか?」
俺はニヤりと笑ってジョーツ達を睨んだ。
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