163話 俺は知るところから始める
想像してたより、帰ってくるのが遅くなりました。遅くなりましたが、更新させて頂きます。
馬鹿と戯れてから首都に辿り着いたのが、丁度、夕日が沈んだ頃、そんな時、俺にちょっとしたピンチが訪れていた。
まあ、聞いてくれ。
俺は、この世界の住人ではないから、色々知らない事があっても仕方がないと思うんだ。アローラに来てから、まだ数ヵ月、致し方がないだろう?そうだろう、ブラザー?
だから、寛大な心で見逃して欲しい。
「ねぇ、徹。そういえば、エコ帝国の首都の名前ってなんて言うの?」
「いい月だ。こんな日は酒が美味いな」
俺は東の空から上がってきた月を見つめて、風流な俺を演出していた。
「トオル君、前にこっそりエールに口に付けて、あんなの飲み物じゃないって騒いでたの知ってますよ?もしかして、知らないんですか?」
美紅と反対側の下に視線を向けて、俺は黙秘する。
逃がした視線の位置にテリアがしゃがんで、俺を見上げる形で視線を合わせてくる顔は、ネズミをいたぶるネコのような顔をしていた。
「トールっ、クラウドを拠点にしてたのに知らないんだぁ」
楽しそうにニヤニヤするテリアの視線に耐えられず、プルプルと震える。
「そうさ、知らないさぁ、知らなくても特に困った事なかったから気になった事なかったんだよ!」
俺の心のシャウトが迸る。俺の目から出てるのは何か?それは血液の仲間ですよ。
目から溢れて頬を伝う、心の汗を拭いながらテリアに詰め寄る。
「トールっ、分かったから、そんなにマジにならないでっ。私が悪かったからっ」
と言いつつも笑うのが堪え切れないのか、時折、噴き出していた。
そんな俺達を溜息混じりに見つめていた美紅が間に入って説明してくれる。
「2人ともそれぐらいにしておいてください。今日はもう遅いですから、宿で泊って朝にでもエルフ国の大使館に行きましょう」
3カ国側の会議はエルフ国の大使館でやっているそうだ。
このまま行っても、歓迎されて、客間を提供してくれそうだが、知らせだけ入れて、明日に行く事にしようっと俺が提案していた。
首都に入った場所の近くに、ドワーフの大使館に寄った時に場所を教えて貰い、連絡を頼んでいた。
「じゃ、宿屋を探しに行こうか」
俺がそう言うとみんなして、歩き出して、しばらくすると美紅が俺と歩調を合わせてくると、小さな声で話してきた。
「首都の名前はバックですよ」
やっぱり美紅は、いい嫁さんになるなっと俺は感激しながらバックのメインストリートを歩きながら、宿屋を探して進んだ。
早速、目に付いた宿に入ると、閑古鳥が鳴いているようで客がいなくて困っていた亭主が俺達を歓迎してくれた。客がこないから食事の用意がまったくできてないから、少し時間をくれっと言われて、ルナが絶望したぐらいしかこちらには問題がなかったので了承した。
用意ができたら、呼びにきてくれると言われたので、俺達はいつも通り、4人部屋を選択して、案内して貰った。
部屋で荷物を置き、ベットに腰がけて、伸びをしていると美紅が近づいてきて声をかけてきた。
「トオル君、どうして、エルフの大使館に直行しなかったのですか?確かに、この時間だから少し迷惑はおかけする事にはなると思いますが」
「んー、そうだな」
俺はベットから離れ、窓を開けて、外を眺めながら呟く。
外を眺めても、人通りはほとんどなく、普通ならこれから飲みに行く者や遅めの夕食をする為に歩いている人がいそうな時間であるのにまったく見えない。まあ、それはここに来るまででも分かった事であるが。
「首都、バックの今の現状を少しでも自分の目で見ておきたかったからかな?エルフの大使館に行けば、きっと細かい情報を教えてくれるかもしれない。数字で理解させてくれると思う」
俺は、俺の言葉を聞いてくれている3人と目を合わせていき、続ける。
「俺は確かに3カ国統合最高責任者という仰々しい肩書があるが、俺は為政者じゃない。きっと、今、交渉が始まらない理由は確かに、俺が表舞台に出てこなかった事が大きな理由なのは否定しないけど、どちらも数字という熱のない言葉をぶつけ合う事で突破口が開けてないんじゃないのかと俺は思うんだ」
「徹は、バック、ううん、エコ帝国で住む人達の気持ちが知りたいと思ってるの?」
ルナは、嬉しそうに頬を緩ませると俺を眺めて言ってくる。
俺の考えを一番に理解するのがルナになるであろうとなんとなく思っていた。空廻りしていたとは言え、長い長い時間をアローラに住む者達に心を割いて過ごしてきたのだから。
ルナの言葉に頷く俺を見て、2人はルナを見て関心していた。
「では、明日もいきなり朝からエルフの大使館に直行せずに、首都を見廻ってからに?」
「ああ、特に人が出回りそうな市場をせめて見て廻り、話をして行きたいと思ってる」
美紅が言う言葉に俺は頷きを返して答えた。
テリアが、へぇーっと呟き、言ってくる。
「トールもない頭を使って色々考えてるのねっ」
「うっさいわ、このキツネ娘!」
テリアの頬を引っ張って、抵抗するテリアと戯れて、ルナと美紅が苦笑する。
そうして遊んでいると、扉をノックされ、食事ができたと伝えられて俺達は食事をする為に部屋を出て行った。
俺は食事を取りながら、宿屋のマスターに声をかけた。
「こんな言い方も悪いかと思うんだけど、ここってメインストリート沿いの宿屋だよな?閑古鳥が鳴いてる店の中の状況もそうだけど、通りに人がいないんだけど、これが普通なのか?」
そっと銀貨1枚をテーブルに置いて、マスターに向けて滑らせると受け取ると辺りを見渡す仕草をした。
俺の言葉を聞いて、額に手を当てて、大きな声では言えない事だから内密にっと言われて話をして貰った。
「エコ帝国の軍人達に、3カ国の調査員がきたら、3カ国の軍隊が囲ってから生活もままならないと言うように命令されてるが、ここ数年、徐々に衰退する一方だったんだ。よっぽど、同じ国でもクラウドやモスのほうがいい生活して、別の国かって思えるほどにな」
「クラウドかモスへ移住しようって思わなかったのか?」
俺は当然、そうするだろうと思って聞くと、溜息を吐いて返される。
「アンタは余所の人だから知らないようだが、バックに住んでる者は国の許可が下りないと街を出る事すら叶わないんだ。精々、冒険者ぐらいじゃないか?出られると言ったら」
強引に出ようとしたら兵士に攻撃されるし、上手く逃げても、お尋ね者になって賞金首さっと肩を竦める。
「そんな事したら、物も人も循環しないじゃないか?」
「勿論、住んでる俺達ですら分かってるさ。偉いさん達の言い分では、奴隷の逃亡を防ぐ為に出入りを厳しくする為っと言ってるが、あれは方便だな。出入り自由にしたら住民はみんな出て行ってしまう。貴族達の当たり所と汚れ仕事を押し付ける相手を手近に残す為にやってるのは、みんな知ってる事さ」
あんまり煽ると3カ国の関係者と疑われそうな気がしたので、擁護するような言葉を言う事にする。
「でも、結果として、自分達の生活を快適にする為に、治水工事や景観を良くしたりはしてるんじゃないのか?」
「城の周りは景観を良くしているが、治水工事も何百年もやってなくて、水害なども雨が降り続けるとよく起こるよ。そして、汚水からゴミなどを、部屋の掃除で角に固めて知らん顔するように街の一角に固められてごまかしてるだけさ」
見ても面白いモノじゃないが気になるなら、北門のほうに行けば、嫌でも分かるっと呟くと、これぐらいで勘弁してくれっと言われて厨房に引っ込まれる。
上手く誤魔化してるつもりだったが、バレバレだったようだ。金を貰った事もあるだろうが、誰かに話してすっきりしたかったのもあるのだろう。
理由はどうであれ、俺は話してくれた事を感謝して、食事を食べきると厨房のほうに、美味かったよっと声をかけると手だけ出して、ありがとうよっと言われる。
部屋に戻った俺は、みんなに言う。
「明日の見て回る所が増えた。悪いけど付き合ってくれ」
俺の言葉に3人が頷くのを見て、明日の予定を少しだけ、話して明日に備えて寝る事にした。
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