162話 しつこいアイツは馬鹿だった
明日は用事がある為、更新が遅れるかもしれませんが、その日のうちには更新しますのでお待ちください。
ミランダの頼みを聞いて、俺は忘れていたい肩書が、ただいまのお知らせを受けていた。
エコ帝国は、おそらく、俺、最高責任者が不在を理由に使者を追い返しているのだろうと想像している。
その予想が当たっているなら、きっと血気盛んなあの2人はだいぶ頭にキテそうだから近づくのイヤだなって、確認する前から逃げたくなってきていた。
かと言って確認せずにスルーするときっともっと面倒な事になるのが分かっているので、カンが想像を否定してないから、意味はないかもしれないが確認をする為にミランダに聞く事にした。
「えっと、もしかして、エコ帝国は俺が来ないのに、話し合いの場を用意する気はないとか言ってたりする?」
「ええ、勿論、それだけではないけど、細々した事はユリネリー女王とティテレーネ王女によって論破されたけど、どうしてもそれだけは崩せないようなの」
エコ帝国も俺がいようといまいと、大差はないっと分かっているだろうが、言い訳のネタにしているようだ。1国の未来を決めるのにトップが1度も顔を出さないのは、普通とは言えないなっとは思う。戦争を初めから仕掛ける気だから来ないのだろうとか言われたら、強硬に捩じ伏せる事も、実際に戦争をしかけても、今のエコ帝国相手なら誰からも文句は出ないが賛同も得れないだろう。
後々の事を考えるなら、間違いなく悪手である。
そうは言っても正直、表舞台にはできれば立ちたくないというのが本音だが、せっかくの今後の未来への道の1歩目から汚すような事はしないようにしたいものだと思う。
それはそうと、俺にお願いしてきたのは誰だろうっと思うっと言っても、あの2人、ティティとネリーだけは有り得ないと思う。
あの2人は優秀すぎるから、人に助けを求める思考が薄い所があるからなっと思い、俺は美紅をチラっと見て、まあ、こっちも同じようなヤツがいるから、想像し易い。
「で、お願いしてきたのは、エルフ王?ガンツ?」
俺がミランダを見て、聞くとミランダには珍しく、困った顔して言ってくる。
「両方なのよ。意外と危ないかもしれないわね。いい所を見せたい2人が頑張っちゃって、今、ちょっと空廻りしてるようなのよね」
両方っと聞いた時は、困ってる2人の顔が浮かんだようで、思わず笑ってしまったが、あのティティとネリーは、実を取るタイプだと思ってたが、名を欲しがるというか、見栄みたいなものがあるところが、やっぱり女の子だなっとちょっとほのぼのしていた。
「トールっ、アンタ絶対勘違いしてると思うわっ」
「ふっふふ、しかも、今はクリミア王女も参入して、まさに火薬庫よ?」
楽しそうに説明するミランダの言葉を聞いたテリアはアチャっと呟き、今回はお留守番のほうがいいかなっ?って少し悩んでいるようだ。
美紅とルナがお互い目を合わせて、頷き合う。
「3竦みになっている今が好機です。強力な相手を戦線離脱させるのは今です」
「そうなの、殺るべき時に殺れるのが本物なの!」
なにやら、不穏な事を言ってませんか?
特にルナ、お前の言葉は何かが滲み出てるような気がするぞ?
俺は当事者なのに、第三者のような立ち位置に行ってしまい、3人を眺めていると、ミランダに声をかけられる。
「トールはどうするの?」
問われた言葉の返答は決まっている。
「勿論、行くさ」
やはり、全て丸投げというのは無理だったようだし、無責任だったと俺は反省する。
「急いだほうがいいのは確かだけど、一晩だけでも、ゆっくりしていって。私も腕を振るうから英気を養ってね」
今日は備蓄の補充だけをして、俺達は、久しぶりのベットとミランダのカレーライスを堪能して、英気を養った。
次の日、朝に俺達は出発して、時間も経ち、お昼御飯を食べて、柔らかい日差しにまったりといつも通りで俺は馬車の御者をしていた。
「今回は馬車を手放さずに残しておいて良かったな」
「それはそうですよ。一回手放したら、戦争は起きないとはっきりしない限り、手に入れるのが困難になりますからね」
俺のなんとなしに口にした言葉に後ろにいた美紅が律儀に答えてくれる。
今回も馬車をいつも通りに手放そうとした俺を美紅が止めて、維持費を払っても手元に置いたほうがいいですっと言ってくれたファインプレーだ。
「最近、旅してても緊張しまくりだったからっ、こうノンビリできるのっていいよねっ。ルナなんか気持ち良さそうに既に寝てるし・・・」
俺は目の前に何やら複数の人影が見えたのを確認すると溜息を吐く。
「うーん、テリアには悪いけど、やっぱりそのセリフはフラグだったって話になりそうだぜ?」
「えっ、どう言う事っ!」
俺は前方を指差し、テリアに教えるとげんなりとした顔をする。
「どうやら、ただの人のようですから、油断しない限り大丈夫だとは思いますが気を引き締めて・・・なくても大丈夫そうですね」
テリアは美紅が油断をしてる様子に目を白黒させている。
俺も前方の先頭にいる者を見て、たいした事はないだろうと思ってしまった。
土でわざと汚したとしか思えないような汚れた皮鎧を着た集団が余りに底が浅そうであった。人数20人ほどで、はっきり言って、覇気がない。いや、先頭の3流臭のする男だけはやたらと元気であった。
そのまま、馬車を走らせて近づくと、前方にいる集団の先頭にいる男が叫ぶ。
「その馬車、止まれ!」
銀髪の残念イケメンが無駄に大きな身振り込みで言ってくる。
俺は素直に止まるとテリアが、なんで止まるのよっと言ってくるが相手にしない。
先頭にいた男は剣を抜いて、こちらに向けて言ってくる。
「荷物を全部置いて、来た道を帰れば・・・」
俺は頭を人差し指でコリコリと掻いて、目の前の男に聞く。
「なんだ?今度は山賊ゴッコか?シュタイナー」
「ふざけるなっ!私は誇り高いエコ帝国の特務の隊長のシュナイダーである」
ドヤ顔するシュナイダー以外の後ろの帝国兵士(仮)は驚愕に目を見開かせる。エコ帝国の人手不足はかなり深刻なのだろうとよく分かった。
やっぱりコイツは馬鹿だと思い、溜息を吐くと続けて美紅が話しかけた。
「それで、今日はこちらに何を?下水の水をお飲みにこられたのですか?」
「そ、そんな訳はないだろう!私達は、お前を首都に行かせないように命令されて妨害工作をしに来ているのだっ!」
丁寧に説明するシュナイダーを見て、帝国兵士(確)が溜息を洩らす。
そう言って胸を張る馬鹿を見て、俺の目から涙が零れた。
テリアは目が点になっていたので、これぐらいでそんな様子だと真実を知ったらもっと大変だぞ?っと耳元で囁いてやる。
俺達の残念な者を見る目に気付いて、目頭を押さえながらシュナイダーの隣にいた男が声をかけてくる。
「隊長、伏せないといけない事実を喋ったら、この任務の8割は既に達成不能です。離脱を上申します」
「馬鹿を言うな。この者らを葬れば、問題解決だ!突撃だぁ」
おそらく副隊長と思われる人が頭痛に襲われているような様子でシュナイダーに提案するがあっさり蹴られる。
兵士もシュナイダーと副隊長の顔を交互に眺め、どうしたらいいか迷っているようだ。
その様子を眺めて、敵なのに部下達に同情してしまった。
すると美紅が剣を抜いたと思ったら、シュナイダーとの距離を一瞬で詰め寄ると剣の腹でバットのように使って、吹っ飛ばして、近くにあった池にホールインワンさせる。
残った兵士に美紅は目を細めて、威圧しつつ言う。
「隊長を救う為に戦線離脱は不名誉ですか?」
副隊長は美紅の言っている意味を理解した。
「隊長に変わって、命令をする。隊長の命令を撤回する。すぐに隊長を救出に向かう。急げ」
そう言うと、脱兎の如く、20名ほどの兵士は池に向かって走り、通り過ぎると、前方に向かって、隊長、無事ですかっと白々しく叫びつつ、走り抜けていった。
「シュナイダー見捨てられていったぞ?」
「あの上司にあの部下ありでしょうね」
勿論、俺達も救出する気がないので、シュナイダーの頑張りに賭ける事にした。なんとなく生きてそうだと思った為である。
「あんな人に着いて行こうって人は存在しないねっ!」
お腹を抱えて笑いだす、テリアに現実を突きつける。
「お前の里の男共は、アイツを信頼しまくって、トンチンカンな事やってたぞ?」
突き付けられた真実に少し放心すると、私はもう、あそこの人とは無関係と呟きながら膝を抱えたのを見て、俺の美紅は顔を見合わせて笑った。
「もう、お腹が一杯なの。でも赤いジャムなら、もう1つ頑張れるの」
ルナの寝言を聞いて、更に笑う俺達であった




