161話 不在、ままならない予定
よし、微熱から復帰しました。っと調子こいて、ぶり戻すのがバイブル仕様!ってオチにならないように気を付けていきます。
みんなも気を付けてね。
俺達は冒険者ギルドへ、やってきた。
勿論、シーナさんかギルド長にギルド側のルートでガンツと連絡を取って欲しいと願い出る為である。
冒険者ギルドに入ろうと、扉に美紅が触れると声をかけられる。
「よぉ?誘拐事件以来か?なんでトールは引きずられてるんだ?らしいって言えば、らしいが?」
声をかけてきたのは、ダンさんであった。
そして、そう、俺は屋台のところから美紅から許しを得れずに、ここまで引っ張られてきたのである。
呆れた様子でテリアがダンさんに説明し出す。
「ルナが串焼きを強請ろうとしたんだけどっ、それを断ろうとしたトールがっ、焼いている若い女の子の服が汗で透けてるのを見て、近寄ろうとしてっ、美紅にお仕置き受けてるのっ」
ルナはお肉っと呟き、テリアは本当に馬鹿なんだからっ、と俺を冷たい目で見つめる。
説明を受けて、そういや、あの親父の娘はスタイル良かったなっと言うと、楽しそうに笑いだす。
「ダンさんもそういうところはチェックしてるあたりスケベなのねっ!」
「おいおい、男はそういうところは見るものだぞ?さすがにトールほど分かり易い行動取る奴は少ないだろうがな」
テリアが見損なったっという感じで言うが、ダンさんの言葉を受けて、そういうものなのっ?っと上手い事、誘導されていた。
きっと俺が同じセリフを言っても、相手にされなかったであろうと思うと、イケメンで大人の余裕がそうさせるのかと思うと悔しくて堪らない。
「で、冒険者ギルドに用があってきたのか?」
都合の悪い展開から外れたと知るとすぐ方向転換をしてくる巧みさを見て、俺も勉強させて頂きますと思った。
「ええ、冒険者ギルドでシーナさんに少しお願いしたい事があったので立ち寄ったんです」
美紅がそう答えるとダンさんは、頭を掻いて困った顔して言ってくる。
「お前らが帰ってくるタイミングって、良いタイミングか、悪いタイミングかの2択かって聞きたくなるな。今、冒険者ギルドは開店休業状態なんだよ。本当に必要最低限の職員しかいなくて、依頼の受注もできない。勿論、シーナもギルド長もいないという有様さ」
どうして、そんな事になってるのだろうと思っているとルナが口にした。
「冒険者ギルドが機能してないっておかしいの。何があったの?」
「まあ、あれだ。エコ帝国と3カ国との話し合いの日時が決まらず、緊張状態が続いてて、冒険者ギルドとしては勿論、3カ国よりなのは間違いないが、冒険者ギルドとしての総意をはっきりさせようという事で、4カ国のいくつかのギルド長が参加の会議が開かれているらしい。それと、お前達もAランク騒動の時に身を持って知っただろうけど、Aランク以下の者は国に出兵を強制される恐れがある。エコ帝国の冒険者ギルドに所属するAランク以下の冒険者は、冒険者ギルドに寄りつかないのさ。簡単に言えば、夜逃げ状態ってとこだ」
まあ、確かに、普通に戦争に参加するのもイヤだろうが、今の情勢でエコ帝国で戦っても死ぬだろうし、生き残っても名誉も意義もないであろう。それは普通に逃げたくなるに決まっている。
そこで開店休業にしてて、受注できないようにしてるのは、冒険者ギルドに近寄らないでいい口実を冒険者に与える為の苦肉の策であろうと思う。
そういえば、さっきの市場を通った時、いつもより屋台の数が少なかったように思う。
おそらく、客が少なくなっているという理由か、エコ帝国から脱出し出してる人が増えてきてるのか分からないが、逃げる理由としては充分そうである。
「正直、こんな中途半端な状態が続くぐらいなら、戦争をやってしまって、負けたほうが余程、マシなんじゃないかなって思えてくる」
「そんな物騒な事言わないの!」
ルナにそう言われて、まあ、その通りなんだがなっと頭を掻きながら、参ったなっと俺を見つめてくるダンさんに苦笑いを返す。
俺はダンさんが極論を言ったつもりなのだろうが、一理はあると言わざる得ない。緊張するからって理由で戦争で亡くなる人を容認していいのかっと言う人もいるだろうが、この緊張状態が続くと下手な戦死者より死人が出る可能性もある。
副次的な問題としてなのだが、作物の収穫量の激減による食糧難、犯罪率の上昇などなど、戦争から逃げる為に田畑を捨てて逃げる人もいるだろうし、そんな状態で作物を育てる余裕もおそらくないであろう。
食糧不足が加速すると食糧を得る為の金銭に余裕あるものはいいだろう。しかし、そうでないもののほうが多い状況では、どうしても荒んだ行動を取るものが増えてくる。だから頭ごなしにダンさんを否定する気には俺はなれなかった。
得てして、こういう事の問題が浮上してから原因を取り除いても修復に時間がだいぶかかってしまうものである。
「とりあえず、まあ、なんの用事できたか知らないが、冒険者ギルドにいっても、行っても時間の無駄になると思うぞ」
確かに、時間の無駄になりそうだと俺が思って、美紅と視線を合わせると頷かれる。
「どうやら、そうなりそうですね。別の方法を捜す事にします。有難うございました」
「気にするな。俺もなんとなく歩いていたら、ここに来てしまったところでお前らを見つけて、来た意味ができて良かったよ」
無意識にやってくるなんて、職業病だなっと笑い、俺達に手を振って去っていった。
3人は目を合わせると、相談するように近づいて話し出す。
「では、ミランダさんにお願いしてみる事にしましょう」
「うん、そろそろ、お昼だから、御飯出して貰うの」
「なんでっ、ミランダなら連絡を取れるって疑いもなく言えるのっ?一応っ、今はただの宿屋のマス・・・ママ?だよねっ?後、ルナ、今までの話の流れで、ご飯の話は一切出てなかったよねっ?美紅が言ってるのは、ご飯の事じゃないからねっ?」
テリアは美紅に、ルナに突っ込み入れる為にフル稼働で頑張ったようで、ハァハァっと息切れを起こしていた。
そんなテリアを見て、俺は一言告げた。
「オツです、テリア姉さんっ!」
「うっさいっ!アンタもボケーと見てないで手伝うっ!」
俺はフムっと頷くとルナと美紅を見て、伝える。
「とりあえず、マッチョの集い亭に行こうか?」
頷く2人を見て、テリアは項垂れて、もう好きにしてっと呟くと歩き始める。
迷いもなく歩き出す、美紅の手を叩いて、俺は伝える事にした。
「そろそろ、引っ張るの勘弁してくれないか?」
「あっ!ごめんなさい、忘れてました」
本当に忘れてたようで若干、頬を赤くさせてパッと手を離してくれる。
俺ってそんなに軽いですか?っと聞いて、『ええ、存在がとても』と答えられたら立ち直れない予感がヒシヒシしたので、確認は取るのはやめた。
やっと自分の足で立ち上がり、俺はマッチョの集い亭へと歩き出した。
マッチョの集い亭の扉に触れて開けると、昼時というのに、半分ぐらいしかテーブルが使われてないのを見て、ミランダの店でもこれほどかっと俺は思いつつ、カウンターに近づくと、厨房から、ミランダが出てきた。
「お帰り、みんな」
「ただいま、ミランダ。いつもより客が少ないな。やっぱり影響が出てるみたいだな」
俺は辺りを見渡しながら言う。
ミランダも軽く見てから、そんなところねっと呟く。
「お昼食べるんでしょ?すぐ用意するわ」
「やったー、ご飯なのっ!」
そう俺達に言うとミランダは厨房へと向かうのを見て、俺達はカウンターのいつもの席に座った。
ミランダの食事を頂いて、食後のお茶を出して貰った時、頼み事を切り出した。
「実は頼み事があるんだ」
「奇遇ね、私もトールにお願いして欲しいって頼まれている事があるの。先にトールの話から聞きましょうか」
そう言うと俺に話の内容を促される。
ミランダの話も気になるが、先にどうぞっと言われて話す事にした。
「実はガンツと連絡を取りたいんだ。それもできるだけ早めに」
そう言うとミランダは腕を組んで少し困った顔をしていたのを見て、難しいのか?と聞くと首を振られる。
難しいと言われても困ったが、難しくないと言えるミランダってやっぱり凄い。
「トールのお願いを聞いてあげるのは、問題ないのだけど、私から伝える内容を受ける気になったら、無駄になるから、言わせて貰うわ。遅々として進まない交渉を進ませる為に3カ国が来て欲しいようなの?行ってあげられない?」
テリアはミランダって本当に何者っ?言いつつ、頭を抱え、美紅がルナに予定通りにとことんいきませんねっと言うと、ルナは、本当なのっと頷いていた。
それは確かに、無駄になるなっと俺は苦笑した。
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