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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
8章 Road like yarnー糸のような道ー
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158話 トランウィザード

「えっと、ジジイ様?それともクソジジイとお呼びしたほうがいいのでしょうか?老け作りをした変態さん」


 俺は目の前にいる存在を窺う意味も兼ねて、言葉遊びをする事で戦闘態勢を取り始める。

 俺のカンが言っていたこの魔神の加護を受けし者は見た目通りの存在じゃないっと訴えていた。


 俺が目の前の奴と会話の最中、美紅は俺と挟む位置に位置取りをする。

 それに気付いてないはずがない。

 しかし、一切の注意も払う気配を感じさせない。それを驕りと取るべきか、余裕と取るべきか、今の段階では分からない。


「そうですね、私の好みとしては、お爺様が好みですかね?」

「で、なんで、クソジジイの擬態をしてるんだ?」


 目の前の奴の要望をサラッと無視して俺は聞く。

 苦笑して楽しそうに答えてくる。


「これは確かに轟君が気に入る気持ちも理解できますね。こっちの嘘も壁も無視して斬り込んでくる感じが堪らない。自己紹介しますので、良ければ、1つだけ質問に答えて貰えませんか?」

「ああ、いいぜ?」


 愉快そうに声を弾ませながら自己紹介してくる。


「お察しの通り、私が轟君を魔神側に招き入れた者です。トランウィザードと申します。長いのでトランで結構ですよ。で、質問なんですが・・・」


 先程まで愉快そうに笑っていたトランは声のトーンが下がらせて聞いてくる。


「どうして、最初から迷わず、私の存在を疑ってかかる?声が若く聞こえると言うのは分かるが、それだけでは、誤差として認識するでしょう?」

「そんな事か、俺の教師って言っても分からないだろうな、知識を教えてくれる人なら分かるだろ?そのうちの1人が40歳近くになっても伴侶を得れずに一生懸命若作りしてたんだよ。まあ、そのおかけでか、見た目だけなら20後半に見える程度になるんだけどさ、声はなかなか難しいらしくて、作ってる感じがお前の喋り方と被ったんだよ」


 首を傾げるトランに俺の世界じゃ、女性は30歳を過ぎると伴侶を得るのが難しいって言われてるんだよっと伝えると得心したかのように頷いている。


「たったそれだけで、迷いもなく、言い切れるという事はないでしょう?貴方をそこまで自信ありげに言わせている根拠はなんです?」

「そうたいしたものじゃないさ、お前は、2年ほど前の俺が罹ってた病気と同じ雰囲気がプンプンしててさ、コイツの見た目と精神的年齢はきっと俺より、若いって俺のカンが囁くんだよ」


 こいつはエターナル中二病だと俺のカンが囁いてくる。俺もまだまだいけるとも囁かれた気がするが無視する事にした。

 ローブで隠れて目元は見えないのに、キョトンとした目になっていると俺は気付いてしまった。

 一瞬、轟並のプレッシャーに跳ね上がるが、すぐに元に戻る。


「余りの楽しさに本気を出しかけましたよ」

「その姿をしてるのは、自分に掛けた枷か?」


 トランは溜息を吐くと腕を振ると俺の頬を掠るように水流を迸らせる。

 俺はそれでも慌てず、立っていた。

 アイツが俺の見立て通りだったら、絶対に外すと思っていたからである。

 中二病ならまずは力を示して、次は外しませんよっ的な流れが大好物だからである。


「本当にカンのいいガキだ。このまま、どんどん気付かれて行くと面白くない展開になりかねない。そろそろ死んでくれ」

「色々、情報有難う。何かに気付けば、お前をやり込める可能性があると教えてくれて、大判振る舞いだな?」


 最後の一言も失言だったと気付いたようで、チッっと舌打ちすると、掌に魔力を集め出そうとするので俺はアオツキを突き出すように構えて、気合いを入れて叫ぶ。

 俺の叫びに合わせたかのように、トランが先程より大きく強力な水流を俺に向けて放つ。

 水流を見つめて俺はニヤリと笑い、迫りくる水流にアオツキを突き刺すようにして、柄を利用して倒立するようにして飛び上がる。


「なっ、笑いやがって、一度避けたからと言って終わると思うなっ!」


 空中にいる俺に再び魔法を放とうと手を向けてくるが俺は余裕を崩さず、言ってやる。


「バーカ、俺が笑ってるのはそんな事じゃねぇーよ」


 俺が体を捻るとその影からテリアが飛び出し、トランの喉元を斬りつけ、駆け抜けるとトランの背後から美紅が袈裟がけで斬りつける。

 トランは驚愕に一瞬、歯を食い縛る様を見せるが、すぐに口の端を上げる。

 それを見た瞬間、擬態っという自分が発した言葉を思い出し叫ぶ。


「2人共逃げろ!!」


 俺の言葉に走り抜けてそのまま走ればいいテリアは思わず立ち止り、美紅はトランとテリアの射線上に立ち、盾を構える。

 俺もカラスとアオツキを×に構えて、後方へと全力で飛ぶ。


 トランの体が一瞬光ったっと思ったら、爆発が起きる。

 襲いかかる爆発をカラスで切り裂く為、振り上げる。


(カラス、頼むっ!)


ー任された!-


 カラスから放たれた衝撃波が爆発とぶつかり、打ち消そうとするが消し切れず、爆風が襲いかかり、吹っ飛ばされる。

 俺は木に叩きつけられ、木が折れる。

 堰き込むと、吐血しているようで、内臓にダメージがいっているようだ。おそらく、骨も何本かいっていると分かる。


 美紅達のほうを見ると、テリアはどうやら気絶しているようだが、美紅が酷い。盾は原型を留めていないし、鎧も変形しているようだ。

 一番、トランに近かった美紅は、俺の衝撃波とぶつかる前の熱によるダメージも受けているようで、俺と同じように吐血している。火傷となども見受けられるところが一番ダメージを受けたようだ。


 美紅は四苦八苦しながら壊れた鎧を脱ぎ棄てると口元を拭いながら立ち上がる。

 爆発が起きた何もない空間にブレが起きたと思ったらトランが無事な格好で現れる。


「ふっふふ、カンが良いもの、いいことばかりではないようですね。あのまま、爆発に巻き込まれていれば、楽に死ねたものを」

「その体は擬態なんだな、しかも、人型爆弾なんて趣味悪すぎだろ」


 強がりながら、俺も口元を拭いながら立ち上がる。

 美紅、フレイを杖替わりにしてやっと立っているといった有様で、必死に回復魔法を使っているが俺達はボロボロであった。


「爆弾?ああ、そういえば、轟君も私のこれを見た時、そんな事を言ってたような気がしますね」


 俺達の様子を見て、勝利を確信したようで、最初の余裕を取り戻していた。

 悔しいが、今の俺達に勝機はなさそうである。だから今、考えないといけない事はどうやり過ごすかであるが、まったくプランがなかった。


「さて、もう私の勝利は動かないでしょうが、トール君、君は正直、放置すると何をしでかすか分からないから、遊ばずにサクっと死んでもらうよ。遊ぶのは後ろの2人で我慢しておくよ」


 口元が邪悪な笑みを作るのを見て、やらせるかっと構える。


「トオル君をやらせませんっ!」


 そう言って、駆け出そうとするが、回復魔法をかけている時間が少なすぎたのか、ダメージがでかすぎたのか、分からないが1歩目で倒れてしまう。


「慌てず、トール君が死ぬのを指を咥えて見てなさい。その後でたっぷりと遊んであげますから」


 そう言うと俺の方に向いた瞬間、トランの胸に弓矢が突き刺さる。

 俺は射線上を目で追いかけると、そこには飛び出して行ってどこに行ったか分からなくなっていた俺達の残念女神、ルナが険しい顔して次の弓を構えて叫ぶ。


「徹達から離れるのっ!魔神の加護を受けし者」

「おやおや、今頃お帰りですか?帰ってくるならもっと早くか、事が終わってからのほうが良かったでしょうに、今更、貴方が増えたぐらいでどうなるというのですか?」


 胸に刺さった矢を抜くとへし折りながら、1本ぐらいでどうともなりませんよっと嗤う。


「そう、これならどうなの?」


 再び、矢を放つルナを見て、叫ぶトラン。


「さっきも言ったでしょ?それに来ると分かっているものに当たる訳がないでしょう」


 そう言うとトランは射線上から逃げるが、トランの胸には矢が穿たれている。

 何っと叫ぶトランに立て続けに弓を放つルナ。

 トランは射線上から必死に逃げるが全ての矢が間違いなく突き刺さっていく。

 俺も何が起きているか分からず、呆ける。


「こんなチマチマした攻撃で参るかっ!」

「数が足らないの?ご希望に沿うの」


 そう言うと再び1本の矢を放つ。


「何がご希望に沿うだっ!同じ事を繰り返しているだけ・・・なんだとっ!!」


 ルナの放った矢が一瞬で無数の数に増えたと思ったらトランに絨毯爆撃のように突き刺さっていく。

 そして、先程と同じように爆発が起きるが俺と美紅は分かっていたので距離を取っていたし、ルナは元々離れていたから被害はない。


「なんだっ?そんな事ができたとは聞いてないぞ!」


 再び、無傷のトランが現れる。


「どうやら、別次元に本体を隠しているようなの」


 ルナは虚空を見つめて言うのを見たトランが慌てる。


「何が見えている。女神よ」

「すぐ分かるの」


 ルナは見つめてた場所に向けて、弓に矢を持たずに弦を引いて弾く。

 すると、何もなかった空間から小柄な体格の仮面を被った子供といっても、おそらく俺より1,2歳下といった感じではあるが、叫びながら地面をのた打ち回る。


「くそがっ!何故、僕がいるところが分かったんだ。いや、どうやって攻撃したんだ」

「教える義務はないの。私は遊ばない。ここで死んでもらうの」


 今度は矢を持って構えると、トランと思われる少年がブレだしたと思ったら、ルナは構えを解く。


「今回は不確定要素が多すぎるから、僕の負けでいいよ。でも次はないよ?」


 トランは捨て台詞を吐くとそのまま姿を消した。



 ルナは振り返って、俺を見つめて言ってくる。


「本当にごめんね?」


 凄く悲しそうに言ってくるルナに俺は言う。

 何を言ってるんだっと俺は思った。ルナがこなかったら間違いなく俺達は死んでいたし、元々の原因は俺にあるのにっと思い、口を開く。


「それは俺のセリフだ。すまなかった、ルナ」


 そう言うと俺は気が抜けたのか、意識を失った。

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