155話 魔神の加護を得し者
次回予告!!
とっても手ごわいアイツとガチバトルっ!
バイブルは勝利を勝ち取れるのかっ!
『歯医者さん!?』
明日の更新遅れます(;一_一)
俺はミドリとの会話が済ませると洞から出て、宣託の間と繋ぐ廊下で律儀に待っていたメイドに礼を言う。
「待っていてくれて有難う。どれくらい、俺は入っていた?」
「入って1時間と経っておりません」
俺の礼は静かに目礼で返し、質問に答えてくれた。
もっと長い事話してたような気がしたが、どうやら思っていたより短時間だったようだ。
ルナ達がいる場所に向かおうと思ったが道が分からなかった俺はメイドに頼む。
「悪いけど、連れがいるところまで、案内頼めるかな?」
思いつめていたからと言って、帰り道が分からなくなっているのは、さすがに恥ずかしかったので、言葉尻が小さくなるのは仕方がない事であったと思いたい。
メイドは、ご案内しますっと深く礼をした時、激しく自己主張するものがあったのを、今頃、気付いた。
くっ、俺はそこまで視野が狭くなっていたのかっ!!
プルン、プルン・・・
どうして、エルフにはこの夢が詰まったモノが大きい人が多いのだろう・・・
シーナさん、ミザリーなど、見かけるエルフはとても豊かである。
俺の世界の常識ではエルフは貧乳が定番であったはずである。
ビバ、異世界
そういえば、ミラさんも豊かだったと思った瞬間、俺の表情に笑みが広がる。
きっと、和也はこの事実に行き当たった時に絶望しただろうと思うと飯を3杯おかわりできそうである。
その素晴らしき、オーパーツを眺める為に横並びで歩こうとすると、先導してるという職務意識か俺の前を歩こうと歩みを早めるメイドの行動と俺が横に並ぼうとする攻防に火蓋が切って降ろされた。
結局、勝負が着かず、ルナ達がいる部屋の前まで到着する。
最後には走るようにしてきたせいで、メイドは頬を紅潮させているが、メイドの意地がさせるのか、息切れを感じさせない態度で、扉を開いて、どうぞっと中へと促される。
中に入ると、美紅とテリアは食後のお茶といった感じで、まったりしていたが、ルナは人差し指を咥えて、色とりどり置かれたデザートに視線を彷徨わせていた。
アレは間違いなく、何を食べるべきかというところから動けず、まだ食べてないと俺は気付いた。
「トオル君、お帰りなさい。得るモノはありましたか?」
当然のように、帰ってきたのに気付いていた美紅は、俺にお帰りっと言ってくれる。
テリアも続いて、お帰りを言ってくれて、トールもデザートを食べると聞かれたので俺は首を横に振る。
こう会話がされているのにルナは未だに俺が帰ってきた事に気付かず、デザートを凝視していた。
「まだ得たか分からないが、やるべき事は分かった。すぐにクラウドに戻って、デンガルグのおっちゃんとガンツと連絡を取る必要がある」
すぐにも出発したいっと言って、出れるか確認すると問題ないと言われる。
「後は馬車だが・・・」
「馬車なら宰相さんにお願いしたら用意してくれました。既に外に用意してるそうです」
美紅のそういう気の廻しは相変わらず素晴らしい!
「美紅はいい嫁さんになるぞ」
俺は嬉しさから軽口を叩くと、美紅はフリーズしたかのように動かなくなるが、それに俺は気付けず、未だにデザートと睨めっこするルナの頭にチョップを入れて気付かせる。
「イタっ、あっ、いつの間に戻ってきたの?」
「さっきだ。すぐに出発するから、行くぞ」
俺がそういうと世にも信じられない言葉を聞いたかのように目を大きくする。
「待つの!私はまだデザートを食べてないの!!」
「また、今度作って貰おうな?いくぞ!」
ルナは俺の言葉を聞くとテーブルの足に四肢を使って抱き締めて、イヤイヤっと首を振って、拒否してくる。
「私だけデザートを食べずに行くのイヤなのっ!」
これはテコでも動かないなっと思った俺は、控えていたメイドさんを呼ぶと頼む事にする。
「申し訳ないのですが、このデザートの中で比較的、日持ちするデザートを包んでくれませんか?」
俺の言葉に目礼をすると、テキパキと包みに包んで手渡してくれる。
「じゃ、行くぞ!」
俺は包まれたデザートをルナに渡すと嬉しそうにテーブルと一体化から解除して受け取る。
「さすが、徹!愛してるの~」
やはり、ルナの愛は安いなっと苦笑して、部屋を出ようとするとテリアが声をかけてくる。
「あの~美紅が動かないんだけどぅ?」
美紅の解凍に手こずり、出発の時間が遅れるハメになった。
俺達は馬車に乗り込み、エルバーンを出て、順調に走っていると、通常復帰した美紅が俺に質問を投げかけてくる。
「トオル君、ユグドラシルとどんな話をしてきたのですか?後、そろそろ、伏せている話を聞かせて貰っても良い頃ではないでしょうか?」
俺は何も反応を示さず、御者を務めていた。正確に言うならどう反応をしたらいいか分からないだけであった。
美紅は勿論、ルナもデザートを食べるのを止めてカバンに仕舞ってまで俺を凝視してきている。テリアも薄々気付いてたようで、成り行きを見守っているのは背中に越しにチラっと見て、分かっている。
確かに、ミドリから明るい情報を得たのは間違いはないが、それこそ、拾った宝くじが1等当たりましたというほうが簡単な恐れがあるレベルのような気がしている。
不透明な部分が多すぎて、少し、追い込まれたら、ルナが自分で命を断つ事で世界とみんなが救われるならと思ってしまいそうで、俺は今、伝えるのをまだ先延ばしにしたい。
ルナは食い意地が張っていて、馬鹿で、怠け者、甘えん坊な駄目駄目女神だが、ここぞっと言う時は、自分が背負えば、みんな幸せになれると思えば、笑って背負ってしまう大馬鹿野郎だ。
そんなルナだから、アローラに最後まで残って、足掻き続けた。方法は間違っていたから、今まで無事でこれたが、それを伝えるとどうなるかと思うと恐怖しかない。
だから、俺は白々しいと思われても嘘を吐き通すと決める。
「ユグドラシルは、カラスとアオツキのポテンシャルを引き出すといいっとアドバイスをくれただけだよ。伏せている事?何の事か分からないな」
俺の言葉を受けた美紅の表情に悲しみが彩られるのを気付いて、俺の胸も張り裂けそうになるが耐える。
俺と美紅の様子を見て、耐えられなくなったようでルナが噛みつくように言ってくる。
「徹は嘘を吐いているの!だって、徹は美紅に今は話せないっと言ったはずなの!伏せてる事がなかったのなら、美紅に言った、今は話せないって言った事を話すの」
何故、ルナがそれを知っているっと思うが、すぐに答えに行き着く。美紅がルナに話したのだろうと分かると身勝手な怒りに包まれる。
「話せない事は話せない事だ!それにあれこれ要求しすぎだ、最近の我儘も目に余るぞ!」
最近だと、蜂蜜漬けや、谷を越える時にダダを捏ねたり、さっきはデザートを食べたいからと、騒いだりと説明して行く。
話が進むにつれ、ルナの瞳に涙が浮かんでいくが、勢いのついた俺は止まれなかった。
瞳に溜まった涙が臨界を迎えようとした時、ルナは叫んだ。
「徹のアホっ!!!」
そう叫ぶとルナは馬車から飛び出し、木々を越えて姿を消す。
言い過ぎたっと自覚した俺は唇を噛み締めると、馬車を停める。
「少し、休憩をしよう」
エルバーンを出たばかりで、無駄に休憩を取る事にした。
休憩っと言ってから、そろそろ2時間経とうとした頃、美紅が近寄ってきて言ってくる。
「トオル君、ルナさんは決して我儘な性格だった訳じゃないんですよ、だから・・・」
「すまない、美紅。俺もちゃんと分かってたはずなんだ。アイツは少なくとも500年ほど、誰にも甘えられなくて、俺達とじゃれてるのが楽しかったって事は分かってたはずなんだがな・・・」
言い訳になるが俺も精神的に追い詰められていたと自覚する。
ここで年長者、例えば、ミランダなどがいれば、徹の年齢ではよくやっているっと慰めてくれただろうが、今はいない。
「やっぱり、話す事にするよ。話して、話した事を後悔するかもしれない。でも、話さないでバラバラになるのは悲しすぎる」
俺は腹を決めて、ルナを捜そうっと美紅とテリアに言うと嬉しそうに頷かれると、そこに俺達に声をかけるものが現れる。
「これは、これは、ただ、近くにきたものですから様子を見に来ただけでしたが、女神が別行動していて、戦力激減してるところに出くわすとは、我が神の御加護でしょうな」
魔法使いといった感じの白い長い髭を蓄えて、ローブで目元で覆っているジジイ?っと自信なさげなのは、声が若々しいのに手などを見ると年を隔てたソレといった年季の入った皺クチャな手が覗いている。
このプレッシャーに覚えがありまくりだ。俺は美紅にボソっと呟く。
「美紅、目の前のヤツを2代目勇者と同格と思って戦ったほうがいい」
美紅も相手が只者ではないと感じていたが轟ほどじゃないっと思っていたようだ。
俺の呟きが聞こえてたようで、老人?は声をかけてくる。
「クックク、どこまでお気付きになられてるので?」
「今、言ったぐらいだよ、轟を誘って魔神側に引きこんだ。魔神の加護を受けし者よ!」
ジジイ?は口を弧を描かして、俺達に与えていたプレッシャーを膨れ上がらせた。
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