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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
8章 Road like yarnー糸のような道ー
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152話 再び、エルバーンへ。小さな再会

 ルエンはそう言うと姿がどんどん薄くなっていくので俺は慌てて、待てと叫ぶ俺を見て、嘲笑うかのように顔を歪めて言ってくる。


「その先をここで聞く、覚悟もないのに止めんなよ」


 その言葉を聞いた瞬間、伸ばそうとしてた手が止まってしまう。

 そして、ルエンはそのまま、姿を消してしまった。


「ああっもう!言いたい事だけ言って、どっかに行ったの!」

「本当に、言い含む言い方が多かったからっ、よく分からなかったわっ!」


 ルナとテリアがルエンにキレて怒りだす。

 美紅は逆に冷静に何かを考えているようだったが、溜息を吐くと言ってくる。


「今ある情報では判断する情報がなさすぎます。まずは朝食にしましょう。お腹が減っている状態で良い考えなど浮かびませんからね」


 美紅がそう言うと、みんなで顔を見合わせて、突っ立っていてもしょうがないと朝食の準備を始めた。



 私は朝食に出す予定のパンを軽く火で焙ったものをチーズとそろそろ痛みそうだからと思いきって全部使ったトマトをふんだんに挟んだサンドイッチを用意しながら、スープを混ぜているテリアちゃんを見ながら考えていた。


 運命を転換させる子、確かに、今までの女神がトオル君を意識する理由としては妥当な答えだと思う。しかも、神ですら運命は覆せないのが常識らしい。初耳だったがルナさんが否定しなかったところを見ると本当なのだろう。


 これについて、嘘付かれているとまでは言わないが、敢えて、言ってない情報があるように感じる。

 それはトオル君も感じているようだが、答えには行き着いてないようだ。


 トオル君の剣についても、途中で終わらされてたようだが、ルエンの最後の言葉の、覚悟という言葉を聞いた瞬間、動きが止まったのを私は気付いてた。

 おそらく、トオル君が隠している事に絡む事なのだろうが、私にはまったく分からないが、聞く相手がいない以上、取る選択肢は限られてくる。

 きっと、次の目的地は首都エルバーンであろう。

 ルエンに聞けないならトップに聞くしかないから、ユグドラシルに会いに行くという話になるだろうと私は思っている。


 私は、出来上がったサンドイッチをみんなに配っていった。

 スープもみんなに行き渡ると食事を始めた。

 始めて間もないうちにトオル君が食事の手を止めて言ってきた。


「みんな、俺はエルフ国の首都に行こうと思う」


 私も食事の手を止めて聞きながら、予想通りだっと思って、トオル君の目を見つめた。


「どうして行くの?」


 ルナさんがトオル君に聞くのを見て、テリアちゃんも頷きながら、トオル君を見つめていた。

 この質問にトオル君がどう答えるか興味を覚えて、私は黙っていた。

 少し悩んだ様子を見せたトオル君は、被り振って答えてくる。


「いや、なんかアイツ、中途半端で終わらせてるし、ユグドラシルに文句言うついでに、そのあたりの事情が聞けないかと思ってな。俺としては、そこから先が知りたいと思ったのに、職務放棄しやがったからさ」


 トオル君は、今回もまた隠すという選択を選んだようで私は少し悲しかった。

 勿論、トオル君は、良かれと思ってやっているのは分かっている。

 だが、私としては信じて話して欲しかったという気持ちで一杯であった。

 ルナさん達におどけて何でもなさそうに語るトオル君を見つめる。


 溜息1つ吐くだけで、私は今回も見逃すと決める。

 私は、男を立ててあげられる、いい女である事を感謝してくださいねっと視線に念を込めてトオル君を見つめると、背中を見てるから、こちらの様子など分かるはずないのに、トオル君は、ビクっと首を竦ませていた。

 相変わらず、感がいいです。


 でも、判断をするに足る判断材料を得ても黙るという選択肢を選んだ時は覚悟をしてくださいね。

 全部、吐くまで寝かせずに聞きだす努力を怠る気はありませんからねっと思うと笑みが零れる。


 私が微笑んでいるのを気付いたテリアちゃんが私の顔を見て、確実に引いていた。テリアちゃん、とっても失礼じゃありませんか?っと見つめると全力で目を反らして、知らないフリをして汗で凄い事になっているのを見て、その事実から、さっきの顔をトオル君に見られなくて、本当に良かったと胸を撫で下ろした。




 食事が済んで、手早く、準備を完了させた俺達は、エルフ国のエルバーンを目指す事にした。

 まさか、エルフ国のエルバーンに行く事になると思ってなかったから馬車がない事をそれほど痛手に感じてなかったが、こうなると大ダメージだよっと心の中で愚痴りながら俺達は、馬車では通れない道を使ってでもショートカットして距離を稼いだ。

 特に谷になっているようなところだと、テリアが渡れないので俺がお姫様抱っこをして、飛ぶ事で乗り越えたりして、先を急い・・・でたが、それを見たルナがゴネ出す。


「徹、ズッコイの!私もそれをやって欲しいの」


 テリアをお姫様抱っこした事を言っているようだが、ルナは既に渡り終えている。


「もう、お前、こっちに渡ってるじゃないか?」


 俺がそういうと振り向かずに後ろ飛びで、余裕・・で戻ると叫んでくる。


「徹!私、そっちに行けないから、手を貸してほしいの~」


 俺とテリアは呆れて何も言えずに顔を手で覆って、頭が痛くなってきている。

 美紅は苦笑しながら、気持ちは分かりますがっと言っていた。

 俺の反応が芳しくないのに、癇癪を起したようで、地面に大の字になって、ダダッ子を始める。

 それを見て、呆れたが妥協策を提案する。


「ルナ、あんまり手間かけさせるなよ。おとなしく頑張るなら、エルバーンについたら、俺のデザートを一口やるから」

「徹のデザートを私が選んでもいいの?」


 ダダッ子モードを止めて、顔だけこっちに向けて聞いてくる。

 俺は勿論だっと言うと、嬉しそうに立ち上がると、いとも簡単に飛んで戻ってくる。

 ルナは、ムフンっと鼻息を荒くして言ってくる。


「しょうがないの、それで手を打ってあげるの」

「本当に我儘女神だ」


 俺はそう言うとルナの額にデコピンを食らわす。

 痛がるルナが俺にあれこれ騒いでくるが、俺達は相手にせず、エルバーンへと急ぎ、向かった。



 国境沿いの村から出発してから2日目の夕食時を過ぎたあたりで俺達は、エルバーンに到着した。


「早く着けたけど、あれは駄目だな。労力に見合う結果かと問われたら首を横に振るな」


 俺がそういうと疲れたみんなは頷いてくれる。

 次、頑張るのは帰りの馬車の調達だと俺は誓った。


「とりあえず、宿、そして飯ってことで、最初に目に付いた宿に飛び込もう」


 勿論、誰からも異論が出ず、俺達は街の中心地を目指して歩いて、最初に目に付いた宿に飛び込んだ。

 宿の亭主ぽい人に声をかける。


「こんな時間に飛び込みで申し訳ないが部屋は空いてないか?」

「1部屋ならあるが、こんな時間だと、ベットメイクとかなしになるが文句は・・・アレ?アンタどっかであった事あるか?」


 俺の顔バレしてる恐れがある宿に来てしまったようだが、疲れている俺は口先で誤魔化そうとして、さあ?っとシラを切って、その部屋でいいよっと伝えると食堂になっている場所のステージで小さな女の子が俺の顔を見つめて、叫ぶ。


「お兄ちゃん、また会えたっ!」


 飛び出してきたと思ったら、俺の脚に抱きついてくる。

 俺は宿の亭主じゃないが、どっかで見た事があるように思った。

 ルナ達の俺を見る視線が冷たい。またロリコン疑惑が再発しているのかと冷や汗が溢れる。


「あの時、助けてくれて、有難う。お母さんも元気にしてます」


 そう言われて、思い出す。首都に襲いかかってきたモンスターの群れから助けた母娘である事に。

 俺はそうかっと笑いかけるのを見て、ルナと美紅は事情を察したようで視線の温度を戻してくれる。テリアは分からないから、美紅に説明を求めていた。


 俺達の様子を見ていた、亭主と客が事情が呑み込めて、騒ぎ出す。


「どっかで見たとかじゃなく、アンタ、救国の使者様じゃないか!こうしちゃいられない。すぐに部屋を用意するから、待っててくれ」


 うちの宿に救国の使者様が泊ってくれるなんて、自慢できるぞっと叫んで奥に引っ込んだ。

 そして、俺達、特に俺が客達に囲まれて、揉みくちゃにされながら、礼の嵐に包まれた。

 悪気はないのは分かるんだが、もうちょっと遠慮してくれっと声に出せたらっとどれほど思ったか。


 そうこうしてると俺達は食堂の真ん中の席を空けられて座らされる。


「では、この宿の歌姫の歌声を是非聞いて行ってやってくださいな」


 少し恰幅のよい女性、おそらくさっきの亭主の嫁さんであろう人がステージに立つ、あの小さな女の子を指し示す。


「頑張って歌います。聞いてください、貴方の歌、『救国の使者がやってきた』」


 俺はその時点で鼻が出た。歌を聞きだすと飲み物を噴き出した。

 とっても良い声で歌うその子を感心したいところだが、歌詞が凄まじく恥ずかしいうえに、かなり美化されていると俺は思い、慌てて止めさせようとするとルナとテリアが俺の両手を押さえに来て、邪魔をしてくる。

 俺は本屋で参考書はるなを買おうとした時に匹敵するダメージを受け続けて、最後まで聞かされた時、昇天間際であった。


 どれくらい凄いか分かり辛い?

 学校のHRに教壇に立つ先生に、君の黙示録せっていしょを朗読されるぐらいにヤバいよ?


 それから後の事は記憶が曖昧で覚えていないが、俺は泥のように寝たという事だけは間違いはなかった。

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