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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
8章 Road like yarnー糸のような道ー
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149話 国境の夜

 仕事で少し遅れました。

 お前らと違って俺は暇じゃないんだっ!!!

 っと言えない俺が愛しいそんな金曜の夜でした(;一_一)

「馬車の調達が上手くいかなくて、残念だったな」


 俺は荷物を抱え直して、おっさんが住んでる山を昇り終えて下ろうとした時に思い出したように口にした。


「事情を聞くと正直、少し申し訳なくなりました」

「それを言ったら、俺なんか最高責任者だぜ?」


 しょんぼりする美紅を見て俺は苦笑しつつ、その事実を伝える。

 今、巷では、エコ帝国 VS 3カ国で戦争が起きるかもっと騒ぎになっており、食糧はまだマシだが、馬や武器防具が飛ぶように売れているらしい。

 レンタルなど、空きなど勿論なく、言われてみれば、コルシアンさんですら御者が用意できないほど、状況は切迫しているのであろう。


 昨日、シーナさんから聞いた情勢では戦争に発展する可能性は高くはないとは言っていたが、エコ帝国の愚かさ次第ではっとは言っていたのが不安を誘う。

 細かい事情を知らない国民の不安はそれ以上なのであろう。


 ティティとネリーが下手を打つとは思わないが、2人とも我も気も強いところがあるのが不安要素だなっとシーナさんと別れてからも部屋で居辛い空気が蔓延してたから部屋から逃げてきたところをミランダに声を掛けられて、コーヒーを出されて、俺は愚痴った時の話を思い出していた。



「トールがその心配をする気持ちは分かるわ。でもね、どんな凄い人でも出来る事にはどうしても限界がくるの。同時にあれもこれもはできない。そういう時、トールならどうする?」


 俺を見つめる視線がいつものからかう感じではなく、年長者特有の優しい、そう見守る者の目で俺を見てくる。


「ミランダ、俺を助けてくれないか?異変に気付いた時に駆け付ける為の時間を稼いで欲しい」


 ミランダは笑顔で80点と言って、おしいわねっと言ってくる。


「最初はいいけど、最後は、女王と王女を助けてくれ、俺もきっと駆け付けるが、満点ね。なんでも自分で解決しようっというのは、青すぎるわ。人は助けを求めて、助けてくれてる人を助ける事で循環して廻るのが正しい人の和。人と人の繋がりは全て和になって始めて形になるの。一方的な思いは時には攻撃してるのと大差ない事を忘れないでね?」


 そう言うと、やっと頑張って飲み終えたブラックコーヒーのカップにおかわりをされる。


「思いやりも循環しないと、攻撃してるのと大差ないねぇ・・・」

「そうよ?身をもって勉強になったでしょ?」


 ふっふふっと笑うミランダはいつの間にか、いつものからかう光を宿して俺を見ていて、俺は不貞腐れて、ヤケクソになって一気にコーヒーを煽るが、苦さより熱さで目を白黒させるが意地で何事もなかったように装う。


「美味しかったよ。ミランダ」

「熱くて、涙目になってるから説得力皆無よ」


 再び笑われた俺は。もう寝ると言って、部屋に戻った。



 改めて、考えるとミランダにはいつも遊ばれてるのか諭されているのか分からなくなる。

 まあ、それはともかく、気にし出したらキリなんてない。


「俺達は、やりたい事、やるべき事やったんだ、後悔しちゃいけないぜ?なんてな」


 どんなに言葉を尽くしても、きっと美紅は悔い悩むだろうと俺は分かっている。だから、と言って言葉を尽くさないという選択肢もあり得ない。

 俺は自分の中にある言葉を吐き出して、お前は1人じゃないと教え続ける。それは、美紅だけの為にやったことじゃないと。

 そして、俺は笑う。お前が悩んでる事なんて、たいしたことじゃない、それは乗り越えて、振り返って驚いているだけだと教える為に。


「さあ、前回来た時と同じ所まで言って野営したいから、行こうか」


 3人が頷くのを見て、俺達は山を下っていった。



 中継地点と考えてた前回の野営地に着いた俺達はいつも通りの役割分担で準備に取り掛かった。

 テントを張っているとルナが俺に声をかけてくる。


「ねぇ、徹。どうして、カラスとアオツキの事を知ろうと思ったの?」

「いや、こないだの俺の説明聞いてなかったのか?」


 ルナは被り振って、俺の目を見つめてくる。


「ちゃんと覚えているの。でもね、どうして、それを知ろうとするのが今なの?徹の解釈で何が問題があるの?剣の事を知るより、例えば、ガンツやデンガルグに強化方法の相談が先じゃないの?」


 俺は思わず、絶句する。

 何かに気付かれて、誰かに質問されるとしてもルナから聞いてくるとは考えてなかったからである。


「俺の考え、いや、カンだな。俺はカラスとアオツキは今後のキーになるものではないかと思っているんだよ」


 自分でも少し苦しいかなっと思うが言い切る事で騙されてくれと願いつつ、見つめる。

 ルナはどう判断してるのか分かりにくい表情をしながら、そうっと呟くとテントを張る杭を木槌で叩き始めた。

 誤魔化し続けるのはそろそろ難しくなってきているようだと俺は理屈ではなく体感で理解し始めた。

 やはり、俺には腹芸は無理なようだ。

 せめて、俺が答えを得るまでは、持ってくれと願うばかりであった。


 夕食を出来上がり、食事を済ませるとテリアが聞いてくる。


「ねぇ、以前、来た時、明日行こうとしてる場所でモンスターパニックもどきが起きてたんでしょっ?なんで、わざわざ、その村を狙ったんだろっ?」


 テリアは地図を見ながら聞いてくる。

 それを聞いた美紅が答える。


「国境沿いの村である事と軍を首都から遠ざけるのが目的じゃないのでしょうか?ティテレーネ王女を暗殺をする為・・・黒装束の保険?これは少し無理があるかもしれませんが・・・」


 逆に警戒されているところに襲いかかるのはリスクを上げるだけ、と気付き、やるなら、黒装束が失敗に終わってからモンスターパニックを起こすほうが良いだろうと思ったらしい。


「確かにっ、国境沿いというのだけ見れば、ここが一番近いのだけど、首都とそれほど遠くもないのよっ。国境に近くて、首都より遠くてそこより大きめな村や街があるのに、どうして、その村が襲われたのかなっ?」


 地図を指差し、あそこ、ここっと指を動かしていく。

 言われてみれば、軍を首都から離すなら、大きくて重要性がありそうな、そっちのほうが良いだろう。しかも距離が遠くなれば、軍の移動時間も向こうからすれば制限時間を延ばす要因になるはずである。


「今まで、解決してきたと思ってきた事はあくまで表面だけの解決で、本当の目的を気付かずに通り過ぎてきた事が多いのかもしれないな・・・」


 俺は苦々しく思いながら、誰と知らない者の掌で踊らされてる予感がヒシヒシし出した。

 それは何も相手側だけでなく、こちら側だと思っているほうでもそうされているという可能性がチラチラし出しているところを考えると、俺は翻弄され続けているようだ。

 だが、俺もそのままでいいとは思っている訳ではない。


 俺がもっともイヤな展開は自分の選択で動けず、動かされて望まぬ結果になることである。必死に考えた末の結果が満足行かないモノでも俺は胸を張るつもりだ。

 今は和也や誰と知らない者の標を辿るしかないが、俺は自分の道を歩いてみせると改めて、心に戒めた。




 私は一旦、テントでみんなで寝る事になったが、いつもなら横になって寝ようと思ったらすぐ寝れるのに、目が冴えて眠れず、薪を集めて、火を点けて燃える炎をじっと見つめていた。


「寝れないのですか?」


 炎を見つめていた私に声をかけてきたのは鎧を外して、マントに包まるようにしてやってきた美紅だった。

 私は何かを言いかけるがなんて言おうとしたのか分からなくなり、とりあえず頷いた。


「何かあったのですか?」


 そう聞かれて、さっきまで頭の中が真っ白になっていたのに、テントを張っていた時に徹に問いかけた言葉がグルグル廻った。

 話して楽になりたいという欲求に勝てず、私は口を開く。


「なんか、徹が最近私達に隠し事してる気がするの。下らない事じゃなくて、とっても深刻そうにしてるの」

「ルナさんも気付かれましたか。私も気付きました。そして、トオル君に聞きましたよ」


 私は弾けるようにして美紅を見るが美紅は首を横に振って、言ってくる。


「期待させたようですが、トオル君は今は話せないっと頭を下げられました。その行動で1つだけはっきりしました。トオル君は私達の為に、1人で何かを抱え込んでいるようです」

「そんなの黙ってられるより、一緒に悩みたいのに!」


 ええ、そうですよねっと美紅は優しげに私を見つめて言ってくる。


「ミランダさんが以前に言っておられました。男の子は黙って行動して、なんでもないような顔して解決しても知らない顔をしたがる子もいるのよっと言ってました」


 それをわざわざ、私に言うと言う事は、きっとミランダさんはトオル君はそういう人だと言ってるんでしょうねっと呟く。

 私はそれでも、徹に話して欲しかった、いつでも一緒に笑い、泣き、喧嘩して悩む、そんなとっても暖かい時間を過ごしたいのにと願う。


「私もどうしようかと悩んでいましたが、ルナさんも気付かれた事ですし、今回の精霊の話が片が着いたら、テリアちゃんも巻き込んで、トオル君に白状させましょうか?」


 美紅はイタズラを思い付いたような、お茶目な笑顔を私に向けてくる。


「それは、とってもいいアイディアなの!是非やろうなの!」


 私は嬉しそうにそう言うと美紅が、じゃ、明日も早いので寝ましょうかっと言って、私に手を差し出す。

 差し出されて手を掴みながら、どんな方法で聞き出そうかと悩みに変わり、今度こそよく眠れそうな予感に包まれながらテントへと向かった。

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