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高校デビューに失敗して異世界デビュー  作者: バイブルさん
8章 Road like yarnー糸のような道ー
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148話 ヒントを求めて

 次の朝、まだ着いてくると煩いコルシアンさんを説得して、一旦、クラウドに帰る事を了承させる。


「何か新しい事が分かったら教えておくれよ?きっとだよ?」


 神殿跡に行けば、インプに色々聞けて、新発見があると囁くと渋々折れてくれた。どっちが悪魔か分かったものじゃないという突っ込みはノーサンキューですよ!


 俺達はコルシアンさんの気が変わる前にと急ぎ、クラウドに帰る事にした。



 昼前にクラウドに到着した俺達は迷わず、コルシアン邸に向かい、馬車とコルシアンさんをメイドのセシルさんに押し付けると足早に挨拶をすると去っていった。


 市場を歩きながら、次、取るべき行動をどうするべきかと悩んだ俺は呟くように口にする。


「インプが国境沿いの村にヒントがあるって言ってたけど、何かそれらしいものあったっけ?」


 俺の独り言のような言葉に美紅が反応してくる。


「私も状況が状況だったので、特に周りに意識を向けてませんでしたから、心当たりは・・・」

「分からないモノは知ってる人に聞けばいいの~」


 市場にある屋台に目を奪われながらルナは言ってくる。

 俺の服を引っ張って、アレ食べたいっと騒ぐルナを無視して聞き返す。


「どう言う事だよ?ルナ」

「聞きたい事があるなら、蜂蜜漬けを買ってなのっ!」


 俺は優しい顔をして、中指と親指を合わせて、しならせ弾く真似を見せつけると、ルナは額を抑えて、親の敵を見るような目で俺を見つめながら渋々言ってくる。


「シーナが出身なんだから、心当たりがないか聞いたらいいの。ちゃんと答えたなの、買ってなの!」


 誰も答えたら買ってやると言った訳じゃないから無視しても俺は悪くはないんだが、市場の男衆の視線に剣呑な光を感じた。

 やばい、俺の返答次第じゃ、あの方に知らせが行ってしまう・・・


 俺は溜息を吐きながら、美紅に3人分のお金を渡す。


「美紅、頼むわ」

「はい、分かりました」


 クスリと笑う、美紅は俺からお金を受け取るとルナに背中を押されて屋台に近づいて行く。

 俺も甘いなって思っているとテリアが寄ってきて言う。


「なんやかんや言ってもトールって身内に激甘だよねっ」


 俺の横腹を突くと、美紅達を追いかけて、屋台に向かって行ったのを見て、再び、溜息を吐いた。



 蜂蜜漬けを幸せそうに食べる3人を見て、顔の筋肉が緩むのを感じつつ、とりあえず、ルナの意見に乗って聞きに行く事にした。


 冒険者ギルドに着いて、受付に行くとまたもや、シーナさんの姿はなく、前回の受付嬢に聞いてみる事にした。


「シーナさんはいないのかな?」

「シーナ先輩は、3カ国連合との交渉の為、出られてます。一旦、今日、お帰りになられる予定です」


 俺が書いた手紙を持って交渉しにいっているのかと分かり、納得するが少し間が悪かったなっと肩を竦める。


「もし良かったら、伝言を預かりましょうか?今日、帰って来られますから」

「そうですか?それでしたら、お願いします。シーナさんに聞きたい事があるので、明日の朝一に冒険者ギルドに伺うので、お時間をくださいと伝えてください」


 受付嬢は承りましたと言うと、お辞儀してくれる。

 俺は3人に行こうっと伝えて、冒険者ギルドを後にした。



 冒険者ギルドを出ると美紅が聞いてくる。


「これからどうしますか?」

「明日、シーナさんの言葉がどうであれ、すぐ出発になると思うから、消耗品と食糧の補充をして、マッチョの集い亭で美味しいモノを食べて、今日は英気を養おうぜ」


 俺の言葉に、美味しいモノという言葉に反応する、ルナとテリア。ルナは美味しいものならなんでも嬉しいし、テリアはミランダの料理に惚れこんでいるそうだ。

 そうと決まればと、市場に戻り、俺達は補充をすべく、市場を練り歩いた。


 補充するものを買いに歩いて、終わると太陽は茜色になっており、俺達は昼を抜いてた事を思い出し、腹を空かせてマッチョの集い亭へと急いだ。


「お腹が減ったなの」

「ルナ達は蜂蜜漬けを食べただろ?俺は何も食べてないから真面目に腹が減ったって!」


 どっちが本当にお腹が減っているかと無駄な争いをルナとしつつ、マッチョの集い亭の扉を開けて、ただいまっと告げる。


「お帰り、外で騒いでた声がここまで、はっきり聞こえて来てたわよ?」


 ミランダは、コップを拭きながら苦笑いをしつつ、出迎えてくれる。

 俺は、少し照れつつも部屋は空いてる?と聞くといつものところが空いてるわよっと答えられると荷物を置いてくるよっと逃げ出すように、部屋へと荷物を置きに向かった。


 荷物を置いて戻ってくると、そこには待ち人のシーナさんが笑顔で俺達を出迎えてくれていた。


「あれ?明日、こっちから顔を出させて貰おうと思ってたんだけど、わざわざ来てくれたの?」

「すぐに会いたくて・・・と言いたいところなのですが、私も明日の朝一には出発しないと行けないので、今日の夜しか時間が取れなかったのですよ」


 シーナさんも忙しいんだと気付き、申し訳ないっと伝えると笑顔でいいんですよっと微笑まれる。


「シーナさん、食事はお済になられましたか?まだでしたら俺達もこれからですから、一緒に食事しながらどうでしょう?」

「それでは、ご一緒させて貰いますね」


 今日はシーナさんと話しながらになるので、いつものカウンターではなくテーブルのほうに移動して食事をとる事にした。

 テーブルに着くと既に先読みしてたのかっと聞きたくなる速度で座るとほとんど時間を置かずに料理が運ばれてくる。

 俺達は少し、食べ始めると俺は口を開く。


「実は、俺達は、初代勇者の足跡を追っている最中にシーナさんの故郷で、ヒントがあるという情報を得ました。俺達もモンスターパニックの一件で行きましたが、状況が状況だったので、良く見る機会はありませんでしたが、それらしいものに心当たりがありません。そこで、そこ出身のシーナさんなら何か心当たりがないかと思いまして」


 シーナさんには申し訳ないんですが、正直、前に会った時の村長と村人の大半の様子から、相談にいっても碌に対応して貰えそうにない上に、邪魔されかねないんでっと言うとシーナさんは苦笑してくる。


「私から想像してもそうなる気がするので、お気にされずに。しかし、村に行っても誰もいないと思いますよ?こちらに流れてきている情報では、そこで立て直すより、違う場所で一からのほうがやりやすいと言う事で放棄したようです」


 何が先祖うんぬんとかほざいてたヤツが、立て直しの手間があるというだけであっさり捨てられるってどうだよっと俺は腹ただしく思っていると、隣に座っている美紅に諭される。


「気持ちは分かりますが、もう関わらなくてもいいと考えて前向きに行きましょう」


 美紅の言葉を聞いたシーナさんはどう言う事ですか?聞いてくるので美紅が簡単に説明をすると、嘆息をして、すいませんっと謝ってくる。


「シーナさんが謝る必要はないですよ。それより、心当たりはありませんか?」

「正直、初代勇者絡みの話はまったく心当たりはありませんね。あるとしたら、まったく関係はないと思うのですが、私の村に伝わる昔話で物に宿る精霊が住む場所という話を聞いた事あります」


 俺はその話をもう少し詳しくお願いしますっと伝えるとシーナさんは思い出すように言ってくる。


「大事にしてたものや、強い思い入れをしたものに誘われるようにして現れる精霊が集まる場所があったそうです。その精霊が宿ると、まるで別物のように強化されたと言う話ですが、少なくとも、私の祖父の時代でも、お目にかかった事はないそうです」


 お力になれなくて、ごめんなさいっと本当に申し訳なさそうに言ってくるので、手かがりを得れただけでも充分ですと伝え、冒険者ギルドで働いているシーナさんには、今更でしょうが、情報があるなしではまったく違うでしょ?っと笑いかけると、持ち直して、有難うございますっと笑顔を見せてくれる。

 そう言いつつ、初代勇者の足跡よりもそっちのほうがヒントに近そうだと俺は思っていた。


 聞くべき事は聞いたので、俺達はシーナさんに3カ国相手の話し合いの大変さの泣き事を聞いてあげながら、食事を進めてた。


 お茶を飲み終えると、シーナさんは立ち上がる。


「すいません、明日の用意があるので、私はこれで」


 そう言って、食事の代金を置いて行こうとする手を俺は止めて言った。


「今日の食事は奢らせてください。情報料替わりだと思って貰って良いので、こういう機会でもないと奢らせて貰えない気がするんですよね、おとなしく奢られてください」


 懐に手を入れた腕を押さえて、お願いしますっと笑顔で伝えると、微笑み返され、御馳走になりますねっと返事をされる。

 それでは、失礼しますねっと言われ、俺はシーナさんを見送った。


「私っ、さっきの腕を押さえにいったのを見た時、胸を触りにいったのかと思っちゃったっ」


 テリアが失礼な事を言ってくるので、俺は憮然な表情をして言ってやる。


「失礼な!俺も空気は読めるって」

「触ろうとして、シーナにも気付かれて、腕でガードされただけなの」


 6つの白い目が俺を見つめる。


「さて、歯を洗って寝るかな」


 そう言うと俺は席を立って裏庭へとエスケープした。

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