14話 月明かり
なかなか、勇者を登場させることができてません。頑張ってるんですがね・・・
では、14話になります。よろしくお願いします。
男はつらいよ。って思わず呟きたくなる今日この頃。
意地を通す、これを実行し、貫いた事に後悔はない。震えて女に助けられるとか体験しなくてほんと良かった。
胸を張って生きていこう。
ギルドで依頼報告しにいって、突撃ウサギの報酬、銅貨30枚と皮が銅貨18枚、肉が30枚だったが皮の状態が良かったらしく銅貨2枚ボーナスとして貰った。端数調整で気分でくれた感じで渡された。薬草も2人で20束集まっていたので銅貨60枚になり、ゴブリンも常駐依頼だったらしく、ルナが剥ぎ取り箇所を覚えていて右耳を剥いで持って帰ったところ銅貨70枚になった。
これで、銀貨2枚、銅貨10枚の収入になり懐が温かくなった。
俺とルナはミランダに紹介された古着屋に行くために別行動する事にし、ルナは先に宿に戻る事にした。
ミランダの紹介の話は通っていて、銅貨50枚でサイズの合ってる服をお任せでお願いした。色は黒を基準に。元々着ていた服の色って事もあるんだが、汚れが目立ちにくい。更に下着、トランクスタイプを3枚を銅貨10枚で手に入れた。一応言っとくと下着は新品だ、さすがにお古では使いたくない。
買い物を終えた俺はマッチョの集い亭に戻ってきた。扉を開けると、デジャブ!!ミランダに襲われる俺、全力で逃げようとする俺、無理矢理捕まった猫の如く必死である。
「トール!大丈夫だった?ルナちゃんに聞いたけど大変な目にあったそうじゃない」
頬をスリスリされて地獄苦しみが襲いかかる。ゴブリンなんて目じゃない。ブルブルと震える俺は情けなくも女であるルナに助けを求める。プライド?何それ?食えるの?
ルナは慈愛の視線を送りつつ、首を振って視線を切る。
あれ?さっきの時と対応違いすぎない?あの時は助けてくれる気満々って感じだったのに、後ろを向いたルナの肩が小刻みに揺れている。
ルナさーん、笑ってませんか?絶対笑ってるよな?生きて明日があったらシメってやる。
とうとう、耐えられなくなり意識が遠くなっていった。
まあ実際には気を失う前にミランダに開放されたんで失神する無様を晒さずに済んだ。しかし、依頼での疲れを上回るミランダの破壊力に戦慄を感じずにはいられなかった。
「大丈夫だった、徹?」
ブッフーっと噴き出し笑いを堪え切れてないルナが俺に聞いてくる。必死にもがいてる俺の顔が面白かったらしい。
この残念女神が!っと思ってたら、俺も精神的に追い詰められて余裕ななかったせいかルナの服装が変わってるのに気付けてなかった。
ワンピースのような服からデニム生地ぽい生地で作られた袖なしの服と短パンの白の統一で手には指抜きグローブ、俺が欲しいと思ってたモノを!ニーソックスと短パンで生まれた絶対領域、ルナ恐ろしい子。
しかし、ミランダが作った服だとは思うが半日でできる代物なんだろうか?本当に恐ろしいのはミランダかもしれない。
「それがミランダが作ってくれた服か?」
「うん、とっても動きやすいいい服なの」
「ルナちゃんは素材がいいから、私は作ってて、とっても楽しかったわ」
ルナの戦闘スタイルからするとあの格好のほうがいいのかもしれない。
ミランダのセンスは良いのか悪いのかは正直センスが乏しい俺、さっきも汚れが目立たないって理由だけで黒系統一させた訳だが、
「そのなんだ、ルナ、似合ってると思うぞ」
それを聞いたルナはにへらと無邪気な緩い顔をしたと思ったら照れたらしく俯いた。
ただでさえ女の子を褒め慣れてないのにそんな反応されて頭を掻きながら明後日の方向を見る。俺はきっと顔を赤くなっているだろう。
そんな俺達を見ていたミランダはクスクス笑いながら、どこか満足そうな顔をしていた。
そんな事をやってるうちに夕食の時間になりミランダに食事を出してもらう事にする。今日は俺達が狩ってきた同じウサギの肉を使ったシチューらしい。お土産に肉を持って帰ってくれば良かった。俺って気づかい下手だな。
やっぱりミランダが作ってくれた食事は美味かった。ふと、午前中の時の話を思い出してミランダに切りだす。
「ミランダ、明日の依頼からお弁当を持って行きたいんだが、ここで作ってくれたりする?」
俺がそういうと、ルナが呟くように、徹は神なの?って言いだす。神はお前だからね?
「いいわよ、私のお昼と同じメニューで良ければ作ってあげるわ」
「ありがとう。で、いくらでいいだろうか?」
「水臭い事言わないの、ついでで作るぐらいのものにお金を取ったりしないわ」
「ミランダ、大好き!」
男前な事を言うミランダに抱きつくルナ、そしてチラチラとお前もこいっとアピールしてくるミランダ。ごめん、ムリ。
食事が終わった俺達はミランダに夕食と弁当の件の礼を改めて言って自分達の部屋に戻って行った。
「そういえば、聞こう聞こうと思ってたんだけど、ルナ、風呂とかはいいのか?体洗いたいとかは?」
「入れるなら入りたいとは思うけど、別に魔法のクリーナーで綺麗になるから特に困ってないの」
何それ、初耳なんですが、そういや、ルナは臭わないなっと思ってたけど女子力、使い方間違ってる気がするが、なんか不思議パワーかと思ってた。
「徹にも寝てる時にかけてたから、そんなに気にしてなかったでしょ?」
なんだと、何気に周りに臭いとか思われてたらどうしようと内心思ってたのにそう言う事はすぐ言おうね、ルナさんや。
「そのクリーナーって難しい魔法なのか?」
「ううん、生活魔法だから水が出せるようになれば徹でも使えるの」
クリーナーがあれば体の汚れは勿論、服に付いた汚れ、血の染みですら綺麗にするらしい。汚れが目立たないからって黒系統一した俺って単なる中二じゃねぇか・・・
改めて、先日教えられた水を出すという生活魔法にチャレンジすることにする。指先に魔力を送り出し、そこから水が出るイメージをする。
前より、いけそうな感じはするが出すに至らない。
「イメージというのは人それぞれだから自分なりのイメージを考えるといいと思うの」
そうルナは自分が説明した方法に拘らず、イメージしやすい方法で試す事を勧めてくる。
俺にとって水と言えば、やはり水道水だろうか。管の中で水が抑えつけられてる状態で栓で止められてるといった感じだ。あ、今の状況に似てるかも。だったら、自分の腕は管、流れる魔力は水、今出そうで出ないのは栓がされてる。なら栓を開けるイメージをすれば・・・
するとずっと抑え続けられた圧力が突然解放されたかのように指先から水が噴き出す。突然の事だったから俺は尻もちを付いてしまい、茫然とする。
「徹、魔力を絞って止めて」
慌ててルナが俺に言ってくる。
俺も慌ててつつ、魔力を細くするようにイメージする。するとかなり細くなった水が木でできた壁を貫き、俺の手に合わせて切り始める。更に慌てたが指先に集めた魔力を拡散させる。そうすると勢いが落ちていく。
「俺が使ったのって生活魔法なんだよな?」
茫然自失といった感じになりつつもルナに問いかける。
「うん、間違いなくそうだったんだけど、生活魔法で殺傷力を生み出したのってもしかしたら徹が初めてかも。火とかで副次的にとかだったらできるだろうけど、ここまで直接的なのはいないと思うの」
「俺、魔法の練習はこれからは安全と思われるやつでも外でやるわ」
「そのほうが良さそうなの、でも、そんなこと考える前に」
二人で目を合わせ、頷く。言葉にせずともやるべき事は分かっている。
それから数十秒後にはミランダに土下座して謝る2人の姿があった。
一応、ミランダには許してもらえた。何より隣に誰も今日はいなかったのが一番大きい。
罰は賑わう食堂でミランダに抱きしめられて玩具にされながら客に笑われるという羞恥プレイだった。ミランダはホクホクしてた。
壁は明日にでも直しておいてくれるらしい。
これから、ルナに明日以降の話をしようと思う。
「魔法の訓練も兼ねてしばらく今日と同じ事をしようと思うんだ」
「うん、いいと思うの。無理して失敗してもしょうがないし」
「ああ、今日みたいな無様な事はしないつもりだから、もうちょっと時間かけてやるつもりだから、とりあえず、目標、銀貨20枚貯めたいと思ってる。そして・・・」
「北にある封印の地に向かうのね」
俺は頷く。行って何ができるかなんて分からない。ただ、なんとなくいかないといけない気がする。ルナはあそこに言って何をするつもりなんだろう。
「あのさ、ルナ・・・やっぱいい」
なんとなく今、聞くべきじゃない気がする。いや、ちょっと怖かったのかもしれない。今、聞かなかった事を後悔しないで済むといいなとは思う。
ルナはごめんね、と言った顔して目を伏せた。
なんとなく気まずい空気になり少し早いが寝る事にした。
もしかして、もしそうするならば、もしこう言っていればといったIFの海に飲み込まれながらベットで悶々として、漸く睡魔が襲ってきた時、ルナは寝たかなと思いつつ、眠りについた。
徹の寝息が聞こえてきた頃、音も立てずにルナが起き出す。そして徹を見つめつつ、声を震わす。
「ごめんね、徹。私はあなたに罪を背負わす存在になるかもしれない」
月明かりに照らされたルナは今まで見てきた幼い感じのするルナではなく慈愛が籠った女神に相応しいそれであった。
美しい眉を眉間に寄せ、嗚咽が漏れないように口に手をあてる。ルナから零れる涙は月明かりに照らされて雫といった美しさを秘め、徹のベットに吸い込まれていく。縋りたいけど縋れないといった様子の女神は窓の外をしばらく眺めていた。
そして、封印の地に向かって出発するのはこれから1週間後の話である。
おそらく連日投稿できると思いますが間に合わなかったらごめんなさい。
感想などありましたら、よろしくお願いします。




