146話 痛恨のミス!
キャラクター紹介の更新が済んでいますので良かったら覗いてみてください。
俺達は島を出て、来た時と同じようにして岸へと向かっている。
なにやら、俺はあの島が気になって仕方がない気持ちに包まれるがどう気になるか分からなくてモヤモヤした気持ちを持て余していた。
そんな俺に気付いたのか、テリアが聞いてくる。
「さっきからソワソワして落ち着かないけどっ、何かあったっ?」
「ん?ああ、なんとなく、あの島でやり残した事があるような気がするような気持ち悪さがあってな」
自分で言ってて要領得ないのに、テリアは余計に分かる訳もなく、気のせいじゃないの?っと言われる。
確かに、今の状況だけ考えるとそれが妥当だとは思うんだがなっと思いつつ、俺は島を見つめたまま、岸に着いた。
俺達は少し急ぎ帰って夜の時間に間に合わすか、一晩、野宿するかという選択で前者を選んだ俺達は、お昼も馬車を走らせながら、非常食を食べながら進んだ。
ルナが美味しくないとゴネたくらいしか問題は発生せず、無事、少し遅い夜といった時間にモスの街に到着した。
正直、断られる覚悟で昨日の宿に顔を出すと快く歓迎してくれて俺達は遅めの食事を食べた。
食べ終わるとコルシアンさんは早速と嬉しそうにスキップして部屋にお籠りになられる。
俺達はお茶を飲みながらしばらくマッタリしていると俺は帰る時に島を見て思っていた事を思い出し、未だ消えない気持ち悪さに頭を悩ましていた。
俺は何故、気持ち悪いのだろうと1つづつ、考える事にする。
1つ、和也の残した足跡にしては、酷くあっさりしすぎているように思う。
2つ、水竜がいたにはいたが、あれが和也が用意したものとは思えない、きっと偶然の賜物で、仮にあれがそうだとしても、それなりの強さの者が多人数出張ったら負けるだろう。それでは、見せるべき相手だけ見せるのは難しい。
3つ、あのメッセージに魔神の事や神、加護の事を触れていない、心構えを説いていただけで・・・
待て、今、俺は魔神の言葉に引っかかりを感じた。何故俺はそこで引っかかりを感じたのだろうかと考える。
ああでもない、こうでもないっと考えていると、ブツブツと呟きながら歩き出していた俺を見たルナが、俺に声をかけてくる。
「徹、うろうろして、『どこに行こうとしてるの』」
俺はルナの終わりの言葉を聞いて、バラバラになっていたピースが繋がった。
以前、モスの街を襲った魔神の欠片は、本当にモスの街を目指してやってきたのだろうか?
ただ、通りかかった駄賃とばかりに、モスの街を滅ぼそうとしてところで俺達と戦闘になったのではないだろうか?
しかも、終わった時に現れた轟もあそこで現れた時の言葉は全部本当じゃなかったとしたら?元々、ワビ湖に向かっている最中で魔神の欠片の消滅の危機に駆け付けていたのではないかと今更であるが気付かされる。
あの時、轟が消耗してなかった理由も理解できた。
魔神の欠片は復活してすぐに動いたのではないのであろう。
となると、事態は予断を許さなくなる。
「みんな、俺達は大きな見落としをして帰ってきたしまった!」
俺がそういうタイミングを待っていたかのように、コルシアンさんが転げ落ちるようにして息を切らしながら、叫んでくる。
「トール君、すまない!私は浮かれ過ぎて、しっかり読まずに記録する事に専念し過ぎた。大事な一文を読んでいなかった」
俺はやっぱりかっと舌打ちするのを耐える。
息を切らす、コルシアンさんに続きをお願いしますっと伝えると頷いてくる。
「あの石碑の下に自分が残した足跡を追いかけた者に助けになればと思い、魔神との戦いで少しでも有利に進められるかもしれないものを、埋めておいた。良かったら是非使って欲しいっと書いてあったよ」
アイツが少しって言ってるやつはきっと凄いとアイツの性格を多少は理解が進んでいる俺だから分かる。
すぐに出発するっと伝えて飛び出そうとした時、爆音と地響きが伝わる。
俺達は飛び出すと南東の方向に爆煙が上がっている方向だと分かると俺は、歯軋りをする。
あの方向にはワビ湖がある・・・
そんな俺の様子を見て、コルシアンさんが申し訳なさそうに言ってくる。
「すまない、私が気付いて入れば、あそこで探索をしていただろうに」
「いえ、すぐに見つけられるようにしてたとは思えませんし、時間かけて、見つけたとしても、そこで遭遇したと思われる人物に会ったら最後でした。回避できたのは命拾いをしました」
コルシアンさんを慰める意味半分の意味を込めて言う。
そう言う俺の傍に来た美紅が、俺にだけ聞こえるように言ってくる。
「あそこで、破壊活動したのは、やはり、2代目勇者でしょうか?どうしますか?」
「ああ、行っても何もないかもしれないが、夜が明けたら、もう一度見に行ってみよう」
本当は急ぎ、見に行きたいが、今から行っても間に合わないうえに、今、アイツにあったら最悪だ。
しかも、何かあったら、疲れが残る体では、ままならないと焦る気持ちを抑えて、明日に備えて寝ようと笑いかけた。
一晩経って、夜が明けると俺達は再び、ワビ湖を目指して出発した。
昨日同様、昼前に到着して見つめる先にある小島は半壊しており、ほぼ確信していたとはいえ、間違いであればとも思っていた俺から嘆息が漏れた。
バラしてはいたが昨日のイカダに使っていた木があったので再び作り直すと俺達は出発した。
到着して、石碑があった辺りに到着するが、でっかいクレーターができて、そこ、小さな池が出来ているのを見て、ここに何かあったとしても無事な事はないだろうとはっきりと分かる。
せめて、何か手かがりだけでもないかと思い、みんな別れて探索する事にした。
夕方になるまで各自分散して調べるがやはり徒労に終わり、暗くなる前に岸に戻って野営をしようっという事になり、急ぎ、イカダに乗り、岸へと出発した。
俺とルナはテントを張り終え、美紅とテリアが食事の準備をしているのを横目に見つつ、ガラクタと思われる材料を一か所に集めて、これは違うとか、保留とか言いつつ選別作業に追われているコルシアンさんを見ていた。
さっきから見ていると違うと言って横に避けているものがほとんどで保留になっているのは2つだけである。
保留ですら10個には届かなさそうだなっと思いつつ、見つめているとルナが避けられているものの中から何か見つけて取り出した。
「ねぇねぇ、徹、この綺麗な丸い球に穴が空いてるの。しかも貫通してるって面白いの!」
そう言われて俺は覗き込むと本当にルナの言うようにオレンジ色でちょっと変わった石のようだ。
「綺麗な丸に穴か面白いな」
「ああ、それは形はともかく、物としては珍しいものじゃないよ。この辺りだったら掘ったら割と出てくる、色の付いた石だから」
なんて名前なんですか?と聞くと、忘れてしまったよ、すまないっと言われる。
どうやら、価値のない石のようだが、ルナが気に入ったようで嬉しそうに眺めているので俺はカラスで自分の服の袖を細くリンゴの皮を剥くように少し斬る。それを捩って細くするとジジイを吊るしたロープを硬化した方法と同じだが、半永久的に硬化が持続するようにした。といっても、金属のネックレスと同等にしか強度はないのだが。
ルナに石を貸してくれと言って受け取るとそれを通してルナの首に下げてやる。
「徹、似合う?似合う?似合うと言うの!」
最後は強制になってますがっと言いたかったが、選択肢は与えられてないので、仕方がなく言う。
「ああ、似合ってるぞ」
そう言うと嬉しそうにスキップして美紅達にお披露目するために俺から離れていった。
俺は嬉しそうにしているルナを見て、言えなかった言葉を呟く。
「ニャンコに鈴を付けたようだとは言えなかった」
「トール君もそう思ったかい?」
俺とコルシアンさんは顔を見合わせて、笑い合った。
テリアの元気の良い声で、食事が出来たっと声をかけられた俺は作業を中断したコルシアンさんと共に3人がいる場所へと向かった。
食事が済んで、2時間ぐらい経った頃だろうか、離れて作業していたコルシアンさんが焚き火の傍にやってくる。
「選別は完了したよ。しかし、手かがりになりそうなモノは皆無だった。すまない」
「いえ、大丈夫です。まだ向かうべき、足がかりは消えてません。だから、終わったような顔をしないでください」
自分のせいで、八方ふさがりにしてしまったかのように顔を顰めているコルシアンさんを元気づける。
「本当かい?」
「ええ、俺宛にあったメッセージに、『行き先に迷ったら、勇者を呼び寄せる場所へと向かえ』とあったので、まだ手がかりが途絶えた訳ではありません。それに・・・」
俺は苦笑いをしつつ、頬を掻きながら続ける。
「実は初代勇者は生きてます。かなり限定的ではありますが・・・」
「本当なのかい!」
俺の肩を掴むと揺すってくる。
コルシアンさんの初代勇者に対する反応は激しい。
「勿論、嘘は言いません。しばらく来るなっと言って門を閉じられてますので次いつ会えるか分かりませんが、行ってみるだけでも良いかと思ってます。後、今、疑問に思われてるとは思いますが、全て、直接聞けばいいじゃないかっと思われてますよね?」
俺がそう言うと頷かれる。
「コルシアンさんの調べで、初代勇者の死亡を確認されたという書記があったと思います。それが原因で、命を繋ぐ代償の一つに魔神絡みの事を相手が知らない情報を伝える事ができないという呪いのようなものが罹っているようです」
「では、初代勇者の逸話というのは間違いが多いんだね。確かに、おかしいと思ってた場所も多かったの事実だよ」
気負いのない顔をして、そっと俺の背後に立ったコルシアンさんが俺の肩に両手を乗せて、耳元で声をかけてくる。
「さて、私が知らない、初代勇者の事を沢山知っている、トール君。今夜は寝かさないよ?」
あれもこれも聞きたい事が盛り沢山だよ!と、嬉しそうに俺の襟首を引っ張ってテントに向かうを見て、元気が出たのは良かったが情報の出し方に大きなミスがあったと俺は涙した。
俺の長い夜は始まったばかりだった。
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